2015/07/12 のログ
ご案内:「歓楽街」に桐竹 琴乃さんが現れました。
■桐竹 琴乃 > コツコツと深夜近くの歓楽街を歩く。
色々なんだかんだあって趣味の夜歩きをしていなかった。
久しぶりだ。
真っ黒なジャケットに黒髪と夜に埋もれそうな容姿。
ネオンやらで華やかなこの景観には逆にくっきりとその姿は表れているようにも見えた。
歩きながら適当に目に入れるのはこの街の景色。
こんな時間でも歓楽街は眠ることは無い。
無関心を飾りつつ人は人を観察する。
ただこんな時間に会う人などは無関心を装う方がいいのだ。
利になる事が少なすぎる。
などと考えつつ。
この夜歩きは趣味であって目的がある訳でもないのでフラフラと。
■桐竹 琴乃 > 目的も無いので行先も無い。
ただただ街を歩き、目についた景色を流しながら見ているだけ。
視線だけを動かすのでパッと見ではどこに注視しているのかなどは極力、出さない。
こういう時に異能は滅多に使わない。
使う事もたまにはあるが。
何だろう、そもそも異能を使って歩くのなら、こんな所には来ない。
それこそ、大時計塔にでも行く方が良い。
何だかんだこういう空気も好きなのだ。
そういえば約束をしてたが。
この辺りはセーフになるんだろうか、など少しだけ考えた。
■桐竹 琴乃 > コツコツ、靴が音を鳴らす。
「まあ、そもそも危険なんて何時巻き込まれるモンかわかったもんじゃなし」
巻き込まれない時は巻き込まれない。
巻き込まれる時は巻き込まれる。
そんなものだ。
それこそ天災だか事故のようなものなのだ。
つまりどこにいても起きる時は起きる。
……確率に関しては敢えて触れまい。
適当に腰掛けれる所に腰掛ける。
疲れた訳ではないが気分でそこに腰掛けた。
位置的には大通り、よりは外れてるが路地裏でも無い中途半端な距離。
オモテとウラの境界線。
■桐竹 琴乃 > ぼんやりと眺める表と裏裏を眺める。
その行動にもやっぱり余り意味は無いので本当に何となく見ているだけである。
単純に久々の空気を噛みしめているだけで。
しばらく、この場に留まっているつもりだ。
ご案内:「歓楽街」に朽木 次善さんが現れました。
■朽木 次善 > クルクルと。指先で懐中電灯を回しながら人影が現れる。
夜闇の中にいる桐竹の姿を見ても、さして驚きもない様子で、どこか堂々としながら。
最初からその闇の中に目的の相手が居ることを知っていたように、懐中電灯の光を琴乃の足元に向けて尋ねる。
「こんばんは。
いい夜ですね。いや、いい夜かどうかなんて気にしたことはないですけど」
ひらひらと両手を広げて、尋ねる。
「『空歩き』さんを探してるんですけど、キミで間違いないですかね」
噂で伝わってきたその名前を、相手に向けて投げた。
■桐竹 琴乃 > さて―――続きを。
そう考えた所で。
光が自分の足に当たり。
声を掛けられ。
ぱちくりと、一瞬だけ呆気にとられてそちらを見る。
懐中電灯を持った歳は同じぐらい、の男性。
「さて、そうかも知れないけど。どこかで会ったっけ?」
ポケットに手を入れ、腰掛けたままそう返した。
■朽木 次善 > 「いや。初対面すよ。
昼間だと、中々落ち着いて話せないですから、
この辺で見かけたって目撃談を元に、地味ぃに張り込みしてて、ようやくの初対面です」
両手を広げて、男は言う。
「空歩きさんの道順に中々当たらなかったせいか、ようやくって感じすけど。
ご本人さんならそろそろ嬉しいなあって……。
声かけるのこれで六回目で、もしかしたら人違いも六回目かもしれないんで。
ああ、ええと、所属は生活委員会です。ちょっと話させて貰えないかなと」
少し暗闇の向こうを覗き込むように腰を屈める。
■桐竹 琴乃 > 生活委員会。
確か学園都市内のインフラとかを管理・整備してるって委員会だったはず。
さて色々素行はよろしくないので注意はされそうだが、それは風紀委員のお仕事な気がする。
しかも探してたというのだから。
ますます疑問符が浮かぶ。
が。
「生活委員会さんが私を探してナニか用なのかな」
とりあえず話を聞いてから決めよう。
何となく、危険という感じも今は無し。
と結論つけて。
■朽木 次善 > 「空の」
と声を出して、懐中電灯を上に向ける。
光の広い筋が夜闇を弱く切り裂いて、少しだけ明るくする。
へらっ、と顔だけを綻ばせて、生活委員会と自称する男は、言葉を続ける。
「空の飛び方を、教えて貰えないですかね。
俺は、空が飛んでみたいんすよ。
自由に空を歩ける『空歩き』の存在を知ってから、ずっと思ってました。
空を歩ける人の視点って、どんなんなのかなあって」
億面もなく、そんなことを言ってのける。
本気か虚言か定かではないが、表情は笑っている。
■桐竹 琴乃 > そして飛んできたその言葉に。
一瞬呆気にとられた。
「え……」
思わず声が漏れた。
そんな事、と言うのは憚れる。
わざわざこんな所まで何回も探し回った理由なのだ。
「……その為に私探してたの?こんな所まで何回も?ホントに?」
笑う朽木の顔を見ながら再度の確認をしてしまう。
それほど琴乃からすれば想定外の質問であった。
■朽木 次善 > 「……あれ、何かおかしいこと言いましたかね」
呆れたように声を漏らす桐竹にへにょりと手首を垂れさせて苦笑いする。
「ええ、まあ。
その為に。何回も。本当に。
人間、地面に足ついて生まれてきたからには空に憧れる時期が一回はあるんじゃないですかね。
俺はまだそれが抜けきってないだけかもしれないですけど。
……ダメ、ですかね? ダメなら、まあ、仕方ないかなって思うすけど。
そんな見世物みたいなものではないですか? その辺も、俺には良くわからないんで」
ポリポリと頭の後ろを掻いて尋ねる。
■桐竹 琴乃 > 「ダメというか何というか」
まず自分でちゃんと説明が出来るのか、というのがある。
が。
わざわざ探してまで来ているのだ。
そして別に隠すものでも無い。
発現した時を少しだけ思い出して。
目を細めてすぐ戻して、はあと息を一つ。
「……期待してる応えと違うと思うけどね」
最初にそう、彼に前置きを述べ。
「まず飛んでるワケじゃない。あくまで私のは歩く・走る。何ていうのかな、空に私だけの道がある感じ。結果は一緒なのかもしれないけど。何ていうか違う感じがする」
ぽつりと。
「難しいな」
頭を掻く。
そもそもこの異能に関してしっかりと理解をしようとしていなかった。
それにも理由はある。
そこを言うのは少し、彼女の奥に当たる部分だ。
余り言いたくは無かった。
「視点は……うん、いいものだと思う。普通に生きているだけじゃ、絶対に見れない光景」
それは紛れもない本心。
一旦、そこで言葉を区切る。
彼が求めている答えではないかも知れないし、しっかり伝えられているかは分からない。
どちらかというとこの独白は。
自分への確認という意味合いが大きくなり始めていた。
■朽木 次善 > 溜息と共に話し始める桐竹に顎に手をやって話を聞き入る。
「あぁ……飛べるっていうわけではないんですね。
だから俺の耳には空歩きって単語が飛び込んできたわけだ。
……私だけの道、ですか」
難しいですね。と同じように首筋を掻いた。
そもそも自分にはない感覚だ。理解をしようとすれば難解であることは尋ねる前から知っていた。
「『いい』ですか。視点。
それは、羨ましいな。きっと普通に生きてる俺には一生お目にかかれない景色かなって思います。
だからこそ、一度でいいから味わってみたいと、本気で思ってるんですけどね。
……視点の高さは、視界の広さに繋がりますから。
きっと、地上からでは見えないものが見えるんじゃないかなって、勝手に思ってますよ」
独白のような桐竹の呟きに、邪魔にならないような声色で感想を述べる。
異能とは、一人ひとりに備わった個性のようなものだ。
どの時点で発現したにしろ、ほぼ永遠に、その力とは共に暮らしていかなければならないし、
その力と向き合っていかなければならない。目を向けるにしろ逸らすにしろ、そこには確かな存在感がある。
男は両手を広げて、空を見上げる。
「いいなあ。って、無責任に思っても大丈夫です?」
へらり、と笑って尋ねる。
■桐竹 琴乃 > 「お好きに。別に人の気も知らないで―――なんて月並みなセリフは言わないし」
あっさりと。
それこそ人の苦労なんて千差万別だ。
彼には彼の苦労がある。
彼女には彼女の。
大だ小だあるけど苦労は苦労だ。
「難しいね。ホント。自分の異能なのに―――自分でもちゃんとわかってないよ」
困ったよね、何ていいながら苦笑する。
「でもね、やっぱ怖いんだろうなあ」
何が、とは言わない。
そしてもはや彼に聞かせるのかどうかすら怪しい独白は続く。
「確実に違うモノになった感覚も。例えば突然使えなくなって墜落ていったら、とか」
うーん、と首を傾げる。
纏まらない思考は纏まらない言葉しか生み出さない。
「何時までも一緒にあるのかな?突然寄り添ってきたこの力って。何時離れてもおかしくないんじゃないかな、なんて―――」
そこまで言って。
ああ、これは彼が聞きたい言葉じゃないな、と思い直し。
「ええと―――なんで、って言うのもヘンだけど。私から君に『歩き方』を教えるコトは出来ないかな、ごめんね」
慌てて言葉を取り繕った。
■朽木 次善 > 賢い人だ。
そしてそれゆえに、先にある来るかもしれない悲しみに向き合わないといけないことも
ちゃんと知っている、ある意味では不幸な人だ。
心のなかでそう彼女のことを評する。
おくびにも出さずに笑う。両手の指を互い違いに編み込み、俯きながら言う。
「……これは、生活委員会のセンパイが言ってた言葉なんですけどね。
例えいつか離れていく関係であっても。
いつか切れてしまう一時の縁であっても。
もしそれが原因で、『空から落ちる』ことになったとしても。
『出会えなかったこと以上の不幸は存在しない」らしいですよ。
『知らないこと以上の知ってしまった不幸は、存在しない」らしいです。
俺も、なんとなくそうなんじゃないかなと思ってて」
懐中電灯を上に向ける。
「墜落(おち)ることは、空にいない出来ないでしょうから。
きっと、それすらも、地上にいる誰かは羨ましいと思ってしまう。
『墜落ることも出来ない人』よりは、なんて思えてしまうものだと、俺は思います。
まあ、知ったような口でしかないですが」
一転して、ぱっと表情を明るくして。
「ああでも大丈夫ですよ。なんとなく俺にも空を歩けるんじゃないかと思えてきました。
感覚でしかないですけど、なんかこうして」
片足を踏み出す。空中に穴を空け、そこに足を掛けようとして。
空に穴を空けることを失敗して、そのまま足を滑らせてぐるりと『空を踏み外す』。
バランスを崩し、夜闇の中転がるようにして歓楽街のゴミ捨て場に勢い良く頭から突っ込む。
上下さかさまになったまま、眉根を寄せて苦笑する。苦笑するしかない。
■桐竹 琴乃 > どうしても、発現して自分の力になってからの事を思い出すと、そうそう前向きには捉えれなかったのだ。
そして彼の言う言葉に。
なるほど、と頷く。
「そういう考え方あったんだねえ」
その先輩は強い心の持ち主だな、そう思いながら。
墜落ることすら羨ましい、そんな考え方も。
彼女には初めての捉え方。
と、考えていると少しばかり大きな音。
そちらを見れば豪快にひっくり返った彼。
ひょい、と腰かけて居たのを止め、立ち上がり、ポケットから手を出して彼の方へと手を差し伸べた。
「大丈夫?」
「―――まあ、教える事は出来ないけど」
軽く口の下を掻きながら。
「少しだけ、見せる事は出来るよ―――ちょっと恥ずかしい事になるかもだけど」
と。
■朽木 次善 > 「ああ、すいません。
もう少しばかり上手いこと出来ると思ったんですが……。
いや、出来ないから探してたんでしたね、忘れてましたよ……」
顔を拭いながら桐竹が差し伸べてきた手を取り、中腰に立ち上がる。
苦笑いで膝を払った上で、相手の見せることは出来るという言葉に、片方の眉だけを上げる。
その言葉の意味の方向性をなんとなく感じ取り、素直に嬉しそうに頬を持ち上げ。
「それは……光栄ですね。
是非とも、とこちらからお願いしたいくらいだ」
桐竹の言葉の意味を、正確に理解していたわけではないが、
空を歩くことが出来る彼女が、自分に何かを見せてくれることを期待して、呟く。
■桐竹 琴乃 > 「まあ、ぶっちゃけ、力技です」
彼女が言うのはこうだ。
琴乃が朽木を抱えて、ただ琴乃が異能を使う。
シンプルかつそれだけ。
以前にそうやって抱えて空を走った事がある。
問題は。
「君を私がお姫様抱えするという事が一点と、そんな力技なので私の体力が持つ限りというコトです」
一拍置いて。
「それでもよければ」
実に力技な提案であるが、これは彼女なりの考えた上で、こんな場所まで何度も来てくれたという事へ対するせめてもの彼女に出来る事、なのであろう。
■朽木 次善 > 「……っ」
表情を微笑のまま、ビキリと固まる。
その発想は自分の中にはなかった。
お姫様抱え。自分より二つは視線が低い相手、しかも異性にそれをされて。
見える世界があるとしたらそれは空からの視点ではなく別の扉が開いた景色だろう。
だが一応は逡巡し、しっかりと12秒悩んだ後に、肩をすくめた。
「……出来れば、自分の力で空を歩けたときに見たいですね。
自分の安いプライドを守るために、婦女子にそんな力技をさせて、
体力をすり減らすことをさせたくないって理由を、今回は掲げてもいいすかね」
それは、折角の申し出であったけれど。
逆にそれで新しい世界を見せてもらってしまえば、空歩きの少女に会いに来る口実もなくなる。
目の前の餌で、大きな魚を釣れなくなるのは、本人としても少しだけまずいと思えた。
「一つだけ。
また、見かけたら声掛けてもいいですかね。
その時はぜひ、空を歩く空歩きさんの姿を見せて貰えればと思うんですが」
次の約束だけ、最後に取り付けようとする。それは、いつになるかは分からないけれど。
■桐竹 琴乃 > 「そ」
彼女としてはどちらでもいい、という感じ。
ひょい、と朽木から一歩だけ距離を取る。
「ま、言っといてなんだけどホント疲れるからね。じゃあ今の提案はナシって事で」
あはは、と。
恐らく素の笑いだろう、それが漏れた。
口調も少し砕けており、笑いだけでなく、素が出てきたようである。
「声かけるのはいいよー。空歩きは、まー気が向いたらね」
余り意味は無い勿体ぶりである。
日常的に使ったりもしているので勿体ぶる理由が本当に無いのだが。
そしてふと、気付いたような顔になり。
「そういえばお名前はどうしよう?生活委員さん。その次にお会いした時にでも?それとも今交換しちゃう?」
本当にどっちでもいい、ただ気楽な投げかけ。
■朽木 次善 > 「そりゃ、感謝するしかないですね……」
流石に、普通の男児として姫抱きはされる方よりする方がいい。
何より、いつ墜落るか分からないような不安さを抱えた少女に、
二人分の命を預けてのほほんと楽しめる程肝も座っていない。
丁重にお断りできたことに胸を撫で下ろした。
昼間にも『空歩き』の目撃談はある。
そう出会うのは難しいことではないかもしれない。だからこそ。
へらり、と笑い、両手のひらを上に向ける。
気楽な投げかけには、気楽な返答が返ってくる。
「ああ、じゃあ。
次に会ったときにでも」
何も簡単な事ばかりが、人生で愉快なわけではない。
難解でないことには取り組む気が起きないように、理由であったり課題であったりは多ければ多い程達成感がある。
何より、手ぶらで訪れたのだ。
去るときも手ぶらであるべきだと思った。
彼女を見ていると、きっとそういう余計な物を持っていては、
空なんか歩けないかもしれないとそう思ったので。
「楽しみにしてるすよ。んじゃ」
別れの言葉も簡素に、手の中の懐中電灯を弄びながら生活委員会の男は去っていった。
ご案内:「歓楽街」から朽木 次善さんが去りました。
■桐竹 琴乃 > 「じゃ、次会った時にでも」
こっちからも声を掛けるし、そう続け。
「じゃ、おやすみ生活委員さん、いい夜を」
去っていく朽木をひらひらと見送る。
「……今日は帰るかな」
ちらと路地裏の方を見て。
十分に楽しめたし。
もう一度、ポケットに両手を突っ込み。
空を見上げる。
「んんー。さっきまでよりかはホントに少しだけ怖くはなくなったかなあ」
モノは考えようだな。
そうひとつ納得と頷きを残し。
彼が行った道とは別の道を戻って行った。
ご案内:「歓楽街」から桐竹 琴乃さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」にルギウスさんが現れました。
■ルギウス > テストも終わり、開放感に溢れた学生がバカンス以外に刺激を求めるというのならまず歓楽街を目指すだろう。
あまり上品な場所ではないが、落第街ほど危険なわけでなく学生街より刺激に満ちている。
「いやいや、活気があって結構ですねぇ……」
宵の口に差し掛かる街を眺めている人影が一つ。
「そこの貴方、少しお時間よろしいですかぁ?
貴方の幸せについて祈らせてくださいませんか?」
胡散臭い。
■ルギウス > 「ああ、置き引きの類ではありませんので荷物もそのまま。
目も瞑らなくて結構ですよ。
布教活動の一環……というよりは、自己満足の類です。
ですから祈らせていただければ、足止め料として飲み物もご用意しております」
胡散臭い男の近くには簡易テーブルが設置されており、そこにあるクーラーボックス内には氷とキンキンに冷えたラムネとビールが見えるように鎮座している。
■ルギウス > 相手の了承を得られれば、祈る。
『偉大なる自由神よ、目前の哀れな子羊の枷を解き放ちたまえ。
子羊の望むままに願うままに……』
異世界の言語、しかもその中でも古代語を理解できる人物が歓楽街に居るのなら男の祈りがごくごく弱い呪いである事に気がつけたのかもしれないが。
理性の箍を、ほんの少しだけ外す呪い。
いつもは我慢できるような些事を少しだけ、ごく少しだけ利かなくする呪い。
「ありがとうございました。
冷えているお飲み物をご自由にお取りください」
恭しく一礼をする。
腰を深く折るが、相手を見つめたままの一礼。
■ルギウス > 相手が飲み物を手に取り、その場を去れば笑みを濃くする。
当然のように飲み物にも細工がしてある。
素敵な素敵なお薬が混入してあるのだ。
製造者曰く、『自分に素直になれる薬』だそうで。
中毒性の有無は聞いてない。
聞く必要がないからだ。
「舞台に上げてしまえば、後はアドリブで演じてくださるのを見るだけですからねぇ……。
いやいや、夏の夜は危険が一杯ですねぇ」
■ルギウス > 「ああ、そこの貴方……少し祈らせていただけませんか?
お時間は取らせませんよ」
■ルギウス > 「はい、ありがとうございました。
これからカジノですか。がんばってくださいねぇ」
祈りの後に、相手を見送る。
胡散臭いことこの上ないが、それでも成果がないわけではない。
「派手な事は、<脚本家>さん達が行ってくれるでしょうからねぇ。
その時により派手になるような仕込みは今からじっくり行っておきませんと……」
強制的に仕込むことは容易ではあるのだが、それでは面白くない。
後になって操られていた だなんて免罪符を相手に与えるつもりが毛頭ないからだ。
舞台は続くよどこまでも。
「どうですか、冷たい飲み物と引き換えに祈らせてくださいませんか?」
■ルギウス > 何より、祈る相手が学生だというのがチョロい。
開放感と一緒に警戒心まである程度捨ててきたのではないだろうか。
なまじ異能や魔術に親しい故に、大抵の危機なら身内で対処できる自信があるのだろう。
意識的か無意識的かに関わらず。
だから気がつかない。
胡散臭さで相手を見縊る。見縊れば自分なら大丈夫、と根拠のない行動に出る。
この男は、獲物のそれを逃さない。
今は些細な喧嘩やトラブルでいい。
火は燃え広がるものだ。
種火さえこさえれば、油は他人が勝手に撒いてくれる。
そうすれば―――。
「対岸の火事を楽しむだけ。
いやはや、お手軽簡単でスナック感覚でエンジョイ&エキサイティングですよねぇ」
くつくつと笑う。
「風紀や公安の方が見回りに来て、私の顔にピンと来ればそれはそれで面白いですしねぇ。
ゲストでなくモブの方なら退場願うのもいいですねぇ……。
末端を静かに消すのは組織運営側としては地味に辛い事ですから」
■ルギウス > 「まぁ、私が楽しければなんだっていいんですがねぇ。
ああそこの貴方。
そうそう、可愛らしい貴方ですよ……少し、祈らせていただけませんか?」
■ルギウス > 飲み物が尽きるまで、男の行動は続く。
隠す気は毛頭ないので目撃者もそれなりにいることだろう。
ご案内:「歓楽街」からルギウスさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」にエアリアさんが現れました。
ご案内:「歓楽街」に『墓掘り』さんが現れました。
■エアリア > 【所持ホテルのVIPルーム
ソファに座り、ワイングラスを傾けつつ、夜景を眺める
エアリアは価値しか気にしない
金にしていくらの価値があるかどうかが全ての基準だ
もちろん、金で動かないものもあるが、それも金で動かない、という価値だ
世の中、ほぼすべて金でモノが動くと知っている
金で動かないのは希少価値が高いか、金以上に必要としているものがある場合だけだ】
■『墓掘り』 > 珍しく余所行きの格好で『墓掘り』はVIPルームに案内される。
男は劇団復帰公演にあたり、どうしても筋を通さねばならぬ相手に会いに来た。
――さて。俺はフェニーチェの一員として、演じられるかどうか。
「お会いできて光栄です」
ゆっくりと一礼。
■エアリア > ようこそ、私がエアリアです
ふふ……適当にかけて楽になさってください
【黒い眼帯の白い少女は、微笑しつつ、ソファに座るよう促す
飲み物が用意され、その後は2人きりだ
こう見えて、実は礼をあまり重視しない
礼そのものはコミュニケーション上、相応に大事だとは考えているが、礼はあまり実力には関係ない
故に、あまり気にしないのだ……あって困るものではないが、能力によってはなくても関係ない】
さて……いらして早々で悪いけれど、どんなお話を聞かせていただけるのかしら?
【どんなプレゼンを見せてくれるのか
それがショーであり交渉である
カネを払うだけのショーを見せてくれるならなんだっていい】
■『墓掘り』 > 「――我が劇団の凱旋公演が決まりまして。お知らせと――宜しければ、御招待を、と」
墓掘りはソファーに座り、一枚のチラシを取り出す。
髪ではなく、もっとしっかりした布か皮のようなそれに、真っ赤な文字と絵の描かれた悪趣味なそれを、エアリアに向けて机に広げる。
「それと、暫く落第街で『即興劇』が開催されるでしょうから――あなた方の『賭け』には、もってこいのイベントかと」
仕掛けを頭の中で確認する。
誰か助手でも連れて来たかったが、連絡先を確認するだけでも一苦労、それにこういう場に似合わない人間もゴマンと居る。
結局、こういう雑用は自分でするしかない。
■エアリア > そうね……だいたいにおいて、そう言う群像劇は落ち着くところに落ち着くというのが歴史が表しているけれど
【賭けにもってこい、とはまた大仰な
わかりやすく評判があり判定が明確なものであるというのだろうか
今の話を聞く限り、表の範囲を出ないように思える、せいぜいもう少し下の賭事だ】
凱旋公演自体は面白そうだけれど、賭け、となると本当に向いているのかしら?
そうね……一言で言うなら、何を勝ちと負けにするのか、
明確な決着がついてクレームが起きないこと
そしてその物事が面白く、ベットするに相応しいかどうかだわいこと
そういった内容にもってこいということなのですか?
【劇というだけでは、内容がわからない
だから、相手がわかりきっているであろう説明をわざとしてみせて、
にこやかに次の用意された言葉を待った】
■『墓掘り』 > さあ、ここからだ。
存分に狂え『墓掘り』――
三文役者にも意地があるところを見せてみろ。
そう、自分を鼓舞し。
エアリアの言葉に、にやりと笑って見せる。
「勝ち負けは簡単ですよ。
――俺たちが一番歓迎したい『お客様』から、拍手喝采を貰ったら勝ち。で、いかがです?」
そう言うと彼は。
持ってきた大きなスーツケースから、『仕掛け』をソファーの横の地面に転がした。
それは、公安委員会の制服を着た少女。
落第街をマジメに見回っていた一年生『柿園アキ』その人だった。
だが、彼女が普通と違う事は。
――その背中が。制服ごと、まるで皮を剥いだように無残に切り取られている事だ。そう、丁度目の前に置いた『チラシの大きさ』程度に。
「前にお世話になった方々でしてね。
なぁに、『ロストサイン』とやらで忙しそうでしたが、最近暇そうなので――是非、公演に招待しようと、ね」
■エアリア > ……拍手喝采、と言うのであれば
【そう言うと、空になったグラスにワインを注ぐ】
このグラス……私が手を付けたら喝采、手を付けなければ不興
そういうことになるのだけれど?
【当然予想されるであろう「お客様の自由意志」をどう操作するのか
そこが一番の肝である
公安の少女が生きているか死んでいるか、そんなことは最初から考慮にも入っていない
この道具でどんな芸を見せるのか
それが問題なのだから】
■『墓掘り』 > 「そこが我が劇団の腕の見せ所でして」
再びにやりと笑うと。
公安の少女の頭を無理矢理上げさせる。
ー―殺してはいない。
死体はエキストラであり小道具だ、観客にはなりえない。
そして彼は用意した『クスリ』を。
公安の少女に飲ませる。
少女が目を見開き、わなわなと震え。
そして立ち上がり叫ぶ。
「この世界という広大な劇場は、我々が演じている場面よりもっと悲惨な見世物を見せてくれる!!」
かつてミラノスカラ座で使われていた『クスリ』。
それがあればこの通りだ。
あとは耳元で囁けば――
少女が狂ったように拍手を続ける。ただ拍手を続け、シェイクスピアの台詞を叫び続ける。
「――本来はもう少し薄めて使うものですが、今日は特別製でして。
自由意志など、我が劇団の前では無意味。それを塗りつぶす程の興奮、悦楽を与えてこその演劇です」
■エアリア > 相変わらず騒ぎの方は面白そうだけれど
【グラスを傾け、一口つける】
さっきは私が手を付けるかどうかだった話が
私がひと口つけたら喝采、ふた口つけたら不興
そう変わっただけに思うのだけれど
【要は量と使い方の問題で、成功と失敗が操作されるでしょう?
ということと、その判定基準が不明瞭、という問題がクリアされないということだ
もっとも、騒ぎ自体には興味が有るようだ】
■『墓掘り』 > 「――そういう事でしたら」
賭けにするのは失敗か……
こういう所が舞台監督は難しい。スポンサーの望むものを用意しつつ、演劇の範囲でことを収めなくてはならない。
「当劇場――ミラノスカラ座の『放映権』を買っていただけませんかね?」
『墓掘り』は説明する。
騒ぎは落第街中で起こるが、中でももっとも興奮し、もっとも凄惨な公演はミラノスカラ座で起こる。
その劇場の生放送の権利。
「当劇場の狂騒は――他と比べ物にならないと自負しております」
公安の少女が呻く。
クスリが全身に回ってきたか……
もう一度、乱暴にケースに詰めた。明日あたり委員会街へ送りつけてやろう。それまで生きているかどうかは分からないが。
■エアリア > なるほど……
これは劇作家特有なのかしらね?
結論を先に、本題を後に
提示できる条件は最後に
今は条件を大仰に紹介しているところだから、交渉の場面としては気を持たせすぎというところかしら
【ゲームとして順序が違う、と言っているのだ
ます今日の勝敗条件を彼は提示していない
つまり何のためにどういう金が入り用なのかを提示せず、金があったらこうなる、という説明をしているため
劇としては引きこむ段階なのはわかるが、交渉としてはそもそも話の土台に立っていない
金が必要だし何かしたいのはわかる、だが、まず何がしたいのか
それがないまま条件の交渉をすることは、天秤の片側に乗せるものがないまま
これから天秤に乗せるものの魅力を語っているようなものだ
劇としてはわかるが、交渉の場面としては持って回った言い方である、と
今こちらは観客ではなく相談なのだから、そろそろそれ相応の内容を見せて欲しいということになる】
今のところ宣伝が下手そうだから、劇がよくとも理解してもらえなさそう、というところまでは把握したけれど
このままだとあなた方の取り分は少なくなるわよ?
■『墓掘り』 > あぁ、また経歴に追加しなくては。
『三流交渉人』と。
まったく、男はとことん才能の無い人間らしい。
――なら。
「金があったら何に使うか?
衣装、照明、大道具に小道具、クスリの確保。団員の寝床に奴らのしでかした事の後始末。公安風紀どもへの鼻薬。
そして下手でもしなきゃならん宣伝にチケット販売!
まったく、演劇一本ブツのにもこんだけ金がかかるわけだ!」
口調が砕けた。
どうせ交渉は失敗だ。なら、いける所まで行ってしまえ!
「嗚呼そうとも、この世は何でも金がかかる。演劇の準備にもな。
ところがうちの劇団員どもと来たら、どいつもこいつも自分の好きな事しかしやしない。
裏方のそのまた裏方の苦労なんざ、誰も考えもせず、自分自身という役を精一杯演じる事しかしやしない!
――最高だろう、えぇ!?」
立ち上がり、大きく手を広げる。
けらけらと嗤いながら、目の前のエアリアではない『誰か』に語る。
「そうだ、これがフェニーチェだ!
誰も彼もが常世島という舞台で即興劇を演じているのに、下らないモラルなんぞというものに縛られ、己自身を演じようともしない!
俺らは何も取り繕わない。
浮浪者、街頭の孤児、娼婦、殺人嗜好者など、折り目正しい舞台劇には登場しないようなキャラクターが多く登場し、妖怪譚、嫉妬からの殺人、嬰児殺し、バラバラ殺人、火あぶり、ギロチンで切断された後も喋る頭部、外国人の恐怖、伝染病などありとあらゆるホラーをテーマとする芝居。
――それを演じ、観客を魅了する事が俺たちの目的だ!」
そして、再びエアリアに向き直る。
「最高のエンターテイメントを見せてやる。
だから、金を出してくれ。俺から言えるのはそれだけだ」