2015/08/02 のログ
渡辺慧 > ――まずったな。
内心、冷や汗を落とす。

そう。……彼女は、無邪気であり――。
――まぁ、そう。自らのそういう“目線”には、自信などないが。

だけれど、そのぐらいは。
そう、なにか。……ひどく幼い、なにか。

「あらやだ。意外とあっさり」
――なんてことは、ないな。

戻る。……それは、誰の意思だろうか。
分からないが――まぁ。

隣に座った彼女を、横目で見る。
「気に入ってるのかい? その、姿」
「あぁ、でも。その姿もいいと思うよ」

実際。……ひどく明るいそれは。
あぁ、悪くはない。――だけれども。

「でも、俺が知ってる檻葉、ではないからさ」
「……さぁて。じゃあ。……なにか」
「君にとって。それ以上の、面白いもの」

誘い、いや。
一体、そうなるならば。
どうなってしまうか。……まぁ、それを聞いてからでも、遅くはないだろう。

「そりゃ、なんなんだろうね」

谷蜂 檻葉? > 「えぇ、とっても! 最高よ? 他でもない私が認め… ンンッ!ごほんっ!

 ―――可愛さには!自信あるものっ!」

あたふたと、慧の何気ない会話のつなぎのつもりの言葉に酷く狼狽え、
わざとらしい咳で誤魔化そうとし、ワタワタと椅子から転げ落ちそうになる。

その様子からは、確かに考察通りの『無邪気さ』がありありと見えた。



「とっ、ともかくっ! そう、そうね。 そ・れ・じゃ・あ~…… ♪」

ポン!と手を打って仕切り直し!と顔をしかめてから、
『奢りだよ』と言われた料理店のメニューを見定めるようなワクワクと期待した顔で、口を開く。

そして―――


「材料はナンデモいいから愛の誓い《指輪》と……愛の印《キス》が欲しいナ?」


告げた。

渡辺慧 > 一連の会話の流れ。
……いくら、疎い自分とて、それはわかる。

――要求されたそれ。
さぁ、まさしく。
言葉通りなら、“そういう”風にとらえるのだろう。

だが、しかし。――彼女は“オリハ”ということならば。
――まぁ、“檻葉”であっても。

自分のために、は。

「……シ」
「シッシ」

少し、顔を俯かせ、笑い声を覗かせる。

「……そりゃ、ちょっと、無理かな」

――だって。
「俺と“彼女”は友達だもの」

例え、この返答が。
その場しのぎをすることすら放棄していたとしても。
「だから、それ以外の面白いもの。……もしくは、“君”が満足するもの」
「それをお願いしたいかな」

谷蜂 檻葉? > 「―――それじゃあ、"私"とアナタで交わしましょう?」

ニッコリと。
それなら問題はないだろう?と。

そして『それ以外は許可しない』と改めて念を押して立ち上がる。


「『愛の形と愛の印』、アナタなりの形でそれを両方揃えてちょうだいな。


 ―――また会いましょう、次会う時はどっちかだけでも用意しておいてね☆」


その言葉を最後に、 キャピっと顔の横にピースを決めて、
粒子状に、ほどけるようにして掻き消える。

ご案内:「ゲーセン」から谷蜂 檻葉?さんが去りました。
渡辺慧 > 「……君は」

そういう話ではない。
そういう問題でもない。

誰であったところで。
それを、言葉にしようと。
いや、しかし……それを、言葉にする前に、彼女は掻き消えた。

……騒音。
白々しい、電子音に包まれて、椅子に座りながら、力が抜ける。

片手で、顔を覆うと。

「……どーしろってのさ」
「……なんなんだよ、おい」

普段より、弱気な独り言を。
かき消されるような、大きさで、そっと呟いた。

ご案内:「ゲーセン」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「歓楽街大通り」に桐竹 琴乃さんが現れました。
桐竹 琴乃 > 「あっつい……」
正確には蒸し暑い。
既に夜ではあるので日光がどうの、はない。
ただ蒸す。
この蒸し暑いと言うのは本当にこう、何とかならないのだろうか。

寝る事の無い街をだらりと歩く。
黒いジャケットに黒い髪。
何時ものスタイル。

「あー。どっかコンビニでも入ってアイス、買おうかなあ」
ぼやきながらゆっくりと歩く。
当然、目的地は無い。

桐竹 琴乃 > ゲーセン、カラオケ、ファーストフード店。
立ち並ぶ店を通り過ぎる。
結局コンビニも通り過ぎた。
口に出すだけでその気は無いと言う事がある典型であった。

せめて風があればいいのに風も余り強く無く。
これでは熱風を掻き回すだけの嫌な風にしかならない。
「……」
ツツと汗が額から流れ頬を伝う。
既に額に汗が来ている、と言う事はもはや背中は浸食され切ったと取っていい。
故にもう気にしない。

適当なイスに腰掛け、携帯端末を取り出す。
目的も無いので行動自体も適当。
SNS「ドリームランド」を開く。
聞いた話であるととんでもない事故放送があったとかどうとか言われている。
タイムシフト放送も見ていないし、リアルタイムでも見ていないが。
とりあえず凄かった、と。
何が凄かったのか聞けば口を噤まれてしまった。
後は自分で見ろ、と言う事らしい。
「んんー……」
ドリームランド自体には登録しているし、たまーに使っている。
が、その事故放送を今更見ようか、という気にはイマイチならなかった。
気が向けば見よう、そう思いドリームランド内の情報などを見て回る。

しばらく、そこに留まるだろう。

桐竹 琴乃 > 「ふーむ」
流し読み。
言う程彼女が興味を引くことは無かった。
夏をどう楽しむか、やら。
ここは行っておきたい!
そんな場所やらの情報を適当に読む。
読んで気づく事と言えば。
「……ううーむ」
夏らしい事をトンとしていない気がしてくる。
いや遊ぶ約束は取り付けられているので多分、この後、きっと。

「……」
どうなるかはさっぱりわからないが。
ふう、と息を一つ吐く。
辺りを見ればまだまだ元気にあっちへ行こうだのこっちへ行こうだのと遊ぶ学生。
ぶっちゃけそれもう夜遊びですよー、なんて突っ込みもあるが限りなくブーメランである。

気にしない事にする。

桐竹 琴乃 > 携帯端末を閉じ立ち上がる。
「さって」
とりあえず汗も少しだけ退いたので。
また歩きはじめる。

ぶらぶらと。
露店やらを冷やかしながら。
ゆっくりゆっくり。

ご案内:「歓楽街大通り」にミウさんが現れました。
ミウ > ここは歓楽街大通り。時間帯は夜。
あらゆる人達が行き交う中、そこには浮いた存在もいる。
その幼い風貌の少女は、白い翼を生やしており、白いワンピースを着ている。
ベンチに座るミウが翼を広げると、辺りに白い羽根が舞った。
そして、通りすがる人々を無表情で見つめている。
何か用があるわけでもなく、ミウはなんとなくそこにいた。

桐竹 琴乃 > 歩きはじめて、ふとそれは。
「おお?」
目に留まる。
というよりかは。
目に強烈な印象と一緒に飛び込んできた。
白い羽の生えた子。
白いワンピース、白い翼。
何ともこの黒やら赤、青、その他の色をぐっちゃぐちゃに織り交ぜた街には似合わない、なあという感じだ。

異人の子も今は一杯居る。
こう、天使族という奴なのかな、なんて思いながら少し立ち止まって、ミウの方をじっと見る。

ミウ > ベンチに座るミウは、表情を変えずに周囲を見渡す。
夜遊びしている人達が通り過ぎる。
結構な視線を感じる。
そんな時、立ち止まる一人の少女と視線があった。
しばらく見つめると、
上品な笑みを黒髪ロングのその少女へと向ける。
「こんばんは」
と、その少女に声をかけた。

桐竹 琴乃 > きょろきょろと周りを見るけれど。
立ち止まってまで見ているのは琴乃だけであり。
どうも話しかけているようで。
少し考えて。
「こんばんわ」
と言いながら、ゆっくりと近づく。
「異人の子?かな、っていうかまあそうだよね」
羽を見ながら当たり前か、なんて少し笑って言いながら。
近づけばわかるが随分と小さい子だ。
「この辺、それほど物騒、ってワケじゃないけどあんまり君ぐらいの子が居ると危ないかも」
ポケットに手を突っ込んだまま、そう言った。

まあ、実際ここまでここの空気と乖離していれば、逆に早々誰も近づきはしないだろうけれど、とも思いながら。

ミウ > 異人の子と質問されたので、首を縦に振る。
「そうよ。
 わたしは異邦人。
 門に吸い込まれて異世界から現世に来てしまった神なのよ」
さらりと、神と言う。
「ご忠告ありがとう。
 もし危ない目に会ってしまった時は、そうね……」
と、少し考える仕草をした後、
「なんとかするわ」
そう笑顔で返した。
「落第街ではよく事件が起きるのだから、せめてこの辺りは何事もないと願うわね」

桐竹 琴乃 > 神。
少しだけ目を見開く。
「神様、っていうとアレだよね。へえ……」
まじまじと見つめる。
言われるとうん、確かにこう、神々しいというか。
まあこの場所に関して言えば相当に違う印象。
後は絵本やらなんやらでみた神様というののイメージに似て無い事も無い。
この世界じゃなくて別の世界の。
「なるほどねー神様か」
そしてあっさりと受け入れた。

余り詳しくないけれど、八百万の神というし。
きっと私では想像も出来ない程色んな力もあるんだろう。
「じゃー大丈夫だね」
ミウの言にへらっと笑い返す。
「落第街、に比べると安全ではあるねー。人が多いから、その分酔っ払いとかも多くて小競り合いとかは多いけど」
隣いい?とベンチを差しながら。

ミウ > まじまじと見つめられる。
どうやら、ミウが神である事を受け入れたようだ。
その様子を笑顔で見守る。
「わたしは神。名前は、ミウというわ。
 あなたは?」
こちらは自己紹介をして、相手にもそれを求める。

「そういう事よ」
と、返事をする。
「酔っ払いの小競り合いは、確かに……巻き込まれないように気をつけなければいけないわね。
 特にこの時期は、歓楽街もさらに人が多くなるかしらね。
 とは言っても、この常世島は十代も多いから、お酒を飲む人も限られてくるはずだわ」
そして、隣いい? と聞かれたので、少し寄る。
「どうぞ」
だが、寄ったところで、翼が少々邪魔になるかもしれない。

桐竹 琴乃 > とす、と座ればぽふ、と羽が当たる。
ふわっとしていて中々気持ちいいが流石にくすぐったい。
「羽までは考慮に入れてなかったなーまあふわふわしてるから気持ちいいけどね」
なんて笑いながら。

「あ。私?桐竹琴乃(きりたけことの)名前でも名字でもご自由に」
彼女にとっていつも通りの何時もの挨拶。
「ミウちゃんかー……んん?、神様って考えるとミウ様とかの方がいいのかな」
指を顎に当ててうーん、と少し考える仕草。
「まー。こう呼んで!とかあったら言ってね」
とミウにゆだねる事にする。

「まあねー、とはいえ未成年飲酒も中々あったりするし。そういう街でもあるしね」
風紀委員やら何やらが定期的に見回りなどが入るとはいえ、中々全域カバーと言うのは難しい。
「で、こんなトコで何してたの?」
首を軽く傾げて問うた。

ミウ > 翼が少女と接触する感触がする。
当然、この翼にも感覚があるのだ。
「翼が当ってしまっているわね。
 ごめんなさい」
翼が接触した事で、申し訳なさそうに謝罪する。
だが、スペース的にこれ以上寄る事はできない。
「この翼、今みたいに生活する上で不便なところもあるのよね」
空を飛べるのは便利だ。
だが、羽根が舞ったり、何かにぶつかりやすかったりと、メリットばかりではない。

「では、琴乃ちゃんと呼ばせてもらうわね」
そう言って、優雅な微笑みを琴乃ちゃんに向ける。
「とても素敵な名前ね。
 わたしの事はお好きに呼んで構わないわ」
ゆだねられたが、こちらからは特に指定する事もない。
「よろしくね、琴乃ちゃん」
笑顔で、握手しようと手を伸ばす。

「未成年飲酒は、確かにありそうな街ね。
 時期的にも、結構お酒を飲んでいる学生は多いかしら。
 どちらにしても、健全とは言えないわね」
学生なのだから、ある程度背徳的行為をするのも青春だろうか。
「別に何かしていたわけでもないわ。
 ただなんとなく、この街の人間達を眺めていたのよ。
 楽しそうに笑っている人が多いわね、この街」
優しく微笑みながら、そう言う。

桐竹 琴乃 > 「いいよー、気持ちいいし」
触るのは流石にあれなので触らないが。
「そうだね。羽があるとちょっとこの街だと、不便だよね」
異人街とかならその辺も考慮されているだろうが、流石にこの辺りはまだ羽の生えた子が歩きやすい環境とはお世辞にも言えないだろう。

「じゃーミウちゃんでいいかな」
神様相手に不遜だ、と言う事もなさそうのでそうする。
「ん。私もそれでいいよーよろしく」
その小さな手を取って笑い返し握手を交わす。
何も変わらない感触。
神様と人の違いってわからないもんなんだなあ、なんてぼんやり考えつつ。

「まー、ハメを外すっていうヤツだよね、うん」
かくいう自分も飲酒やらはしないものの、確実に健全ではないので余り強く言える事でも無かった。
「そっか。まあ歓楽街、だからねー。娯楽というか楽しみは一杯あるよ」
うん、と頷く。
「遊ぶ所は多いし、美味しいモノが食べれる所も多い。夜は遅くまで開いてるし」
だから自然と人は集まるし、自然と人は楽しそうな空気になる。
「まー細かい所はうん、健全じゃないけど大事な街かなー、って思う」

ミウ > 「気持ちが良いのね」
そう言って悪戯な笑みを浮かべると、
翼を動かして、少し翼で琴乃ちゃんをくすぐろうとする。
「そうなのよ。
 人が多い場所だと、どうしてもぶつかりやすいのよね。
 柄の悪い人にぶつかってしまったら、大変だわ」
さらに外見が十代にも満たないので、相手次第では舐められやすい。

「いいわよ」
と、ミウちゃんで承諾する。
握手をした時に、琴乃ちゃんの手の温もりを感じ取った。

「ハメを外す、そうね。
 わたしは神と言っても、風紀でも公安でもないから、非難するつもりはないのだけれどね。
 むしろ、そういうのも青春と言えるかしらね」
未成年が多少飲酒するぐらい、誰にも迷惑がかからないなら強く非難する理由もない。
「ゲームセンターやカジノみたいなアミューズメント施設が多いわね」
あまり行った事はない。
「だからこそ、みんなが楽しそうに笑えるのね。
 大事な街なのは分かるわ。
 人を幸せにできるというのは、とても素晴らしい事よ」
こくこくと頷きながら述べる。
「辛いよりかは、楽しい方がいいわよね」

桐竹 琴乃 > 「わぷっ」
ヘンな声を上げて羽に埋まる。
「くすぐった……あはは」
羽で顔は見えないが、多分悪戯っ子のような顔をしているんだろうな、と思いつつ、羽の感触を堪能する。
「気持ちいいけどくすぐられてると……流石にむずがゆくなるね!」
やめてくれ、とは言わないのでそのふわふわ具合を楽しんでいるようだ。
「私とかにはうん、生えてないからミウちゃんの気持ちはちゃんとはわからないけどやっぱり感覚掴み辛そうだな、とは思うねー」
羽を手で撫でながら、そう言う。

「うん、批難しないよーにして。そーしてくれると私も嬉しい」
あはは、と頬を掻く。
「うん。そういうトコは多いね。若者の娯楽に特化してるから」
飲み屋、よりはそちらの方が多めであろう。
少し通りを外せば、オトナ向けの所などもあるだろうけれど。
「辛い事は、まあそっちの方が人生的には多いとは思うけど」
ぺたん、とベンチに深く腰を掛けて辺りを見回す。
「そういうストレスとか溜まったものを発散できる場所だからね。楽しくないとね。……まー、余裕無さそうに遊んでる人とかもいるんだろうけど」
決して健全ではないが悪と言いきれない街だ。
無論、悪な部分も当然ある。
要はここをどう使うか、本人次第であろう。
そう、琴乃は結論付けた。
そこでふと思い至る。
「っと……何かヘンな話してるなーあはは」
照れ隠しに少しだけ自分の髪を弄った。

ミウ > 羽に埋まる琴乃ちゃん。
ヘンな声をあげたりで、とても可愛らしい反応。
そして、笑い声が聞こえてくる。
「そう?
 なら、もっとしてさしあげるわね」
笑顔で、さらにくすぐる。
その際に、多くの羽根が舞って、地面に落ちていく。
「さすがに、始めから翼が生えていた身だから、感覚とかは自然に身につくわね。
 出来るだけ人や物にぶつからないよう気をつけて歩く事はできるわ」
羽を撫でられて、気持ち良さそうに笑う。
その姿はまるで、小動物のよう。

琴乃ちゃんの言葉に、彼女もまたハメを外した行動をしている事に察する。
「あなたもハメを外しているのね」
ジト目で、琴乃ちゃんを見る。
「仕方がないわね」
だが別に、ハメを外している事を非難する理由はない。
「常世島は学園都市なのだから、若者の娯楽を重点的にするのは大切ね」
人間、やはり娯楽というものは必要だ。
外見が子供である身、オトナ向けの所など、ミウは知らない。
「辛い事の方が多い……という事は、琴乃もまた辛い経験をしてきたの?」
きょとんと首を傾げる。
「そうね。
 辛さがふっとぶぐらいに幸せなのがいいわよね。
 不幸な人達も、こういう街で楽しく過ごせるようになるといいわね。
 でも、娯楽も行き過ぎてはいけないわね……」
行き過ぎると、琴乃ちゃんの言うように、余裕無さそうに遊ぶ人にチェンジしてしまうかもしれない。
「別にヘンではなかったわよ。
 むしろ、あなたの率直な意見を聞けて、わたしも楽しいわ」
そう言って、柔らかく微笑んでみせる。

桐竹 琴乃 > 「ミウちゃんはそうかも知れないけど、他の人たちがね」
荷物とかを避ける感覚にはなると思うけれど、少し当たってしまった、の意味が荷物と羽では違うと思う。
「ひー。ふわふわで気持ちいいけどくすぐったい!」
やはり、まんざらでは無かった。

「う、まあねー。とはいえ飲酒とかそーゆーのは無いよ、うん。ただふらっと歩いてるだけ」
慌ててジト目を避ける様に明後日を見ながらそう言う。
「どうかなー私がどの程度辛い事をしてたか、っていうのはちょっとわからないかなー」
ちょっとだけ目を細めてから空を見上げる。
「人並みには辛い事もあったかなーと思うけど。私がどの程度かなんて基準は何処にも無いし。皆どこかしら辛い事は経験してるのだろうし。私だけが何で、なんて言う事は」
少しだけ考えて。
「うん、今はもう無いかな、多分。いや、きっと。……ちょっと自信ないけど」
自分の髪を触りながら、どんどんとトーンダウンしつつそう言う。
「まあ何事もほどほどに。とは言うしね」
琴乃的には快楽主義であるのでまあハメを外しまくる事は非常に多い。
……そこは伏せておくことにする。
「遊ぶ時は遊んでる人と一緒に楽しみたいかな。一人の時は……まーストレス解消をメインに考えますけど。不幸だ、って思ってる人が少しでも笑えるといいよね。そういう力があるとも思うよ」
逆に不幸な人が増える所も無いことは無いが

「いやー……そう言う割れると余計に照れるというか」
頬を掻き、髪を弄りながらはは、と照れ笑い。

ミウ > 「他の人達は……そうね。
 少し、迷惑をかけてしまうわ……」
申し訳なさそうに言う。
自分だけの問題ではない。
ミウの翼が邪魔だと思った人は、これまで多くいたかもしれない。
例えば、授業の時などは後ろの人は羽で黒板が見えない、とかあるかも。
翼でくすぐられて、琴乃ちゃんもまんざらではない様子。
もっと、翼でくすぐってあげよう。

やや首を捻る。
「ただぶらっと歩いているだけが、いけない事なの?」
別に、いけない事ではないと思うけど……。
「何にしても、人並みには辛い事を乗り越えてきたという事ね」
品良く笑いながら、かなりプラスな解釈の発言をする。
「ほどほどにね。
 遊ぶのも、熱中し過ぎて破綻してしまえば元も子もないわ」
遊ぶ事も大事ではあるけど、それで不幸になっては本末転倒もいいところ。
「自分一人が楽しんでいるわけではないものね。
 遊んでいる人全員が等しく楽しめないとね」
笑顔でウインクする。
「そうね。
 不幸な人も、どん底な人も、きっと幸せに笑顔になれればいいわ。
 だから、歓楽街がこれからも明るくあり続ける事を願うわね」
もっとも、真に不幸な人は歓楽街に来る余裕なんてないかもしれない……。

「あなたは、わりと照れ屋さんなのね」
静かに微笑むと、その照れた顔を眺める。

桐竹 琴乃 > 「んーどっちかっていうと、ほら荷物に、当たるのと、羽にあたるのじゃ意味が変わってくるかなって」
荷物は少し体が揺れるだけだが羽に当たられると痛い、と思う。
「だ、段々慣れてきたぞ……」
くすぐったいがそれは少し慣れてきたので感触を楽しみ始めているのであった。

「まあ、門限とか、ね」
ちなみに既に尞の門限は越えている。
彼女にとって門限などはあって無きにしろ非ずではあるが。
「そう言う事かな。辛い事自慢なんてしても、こう悲しみの連鎖しか生まないというか」
人の苦労を正確に全てを理解する事は難しい。
不可能だとすら思う。
人には人の人生がある。
人には人の苦労がある。
近づく事は出来ても。
そのものにはなることは無い。
共感はあれども同化は出来ない。

「ミウちゃんにそー言われちゃうとね」
笑いながら言う。
神様直々の軽いとはいえお咎めである。
「まあ、こう、お約束は出来ないけど鋭意努力はします、というか」
何ともしまらない答えであった。
素行がよくない事は自覚するところであるので、こう約束しにくいのであった。
今更ぱっと治るものでもないのである……。
「べ、別に照れ屋と言う訳では、うん、無いと思うんだけど」
髪を触りつつ。
「あんまし本音を言うって少ないからかな。いい慣れてないだけ、だようん」

ミウ > 「そうなるわね。
 この翼には感触もあるから、当然、痛覚もあるわ」
とは言え、神の体は頑丈なので、少しぶつかっただけではなんともない。
「さすがに、慣れてきたのね」
ならあとは、羽のふわふわな感覚を堪能するのみだろう。
翼でくすぐるのもやめない。

「門限……という事は寮暮らしなのね。
 実際のところ、門限はどれ程守られているのかしらね」
夜でも結構ぶらついている学生は多い。
当然、全員が全員寮生活しているわけではないが、中には寮生もいる事だろう。
「辛い事は話さないのね。
 立派ではあるわ。
 だけど、時に苦痛な事を発散してみるのもいいかもしれないわよ」
場合によっては、琴乃ちゃんの言う通り悲しみの連鎖しか生まないかもしれない。
だけど、発散して楽になる事はある。
もしかしたら、話す事で助けてくれる人が現れるかもしれない。

「わたしもそれ程、強く言うつもりはないわ」
なにせ、ミウもわりと自由が好きだ。
しまらない言葉であるが、努力はすると言ってくれる。
「分かったわ」
と、笑顔で返答。
「今は、その言葉だけで十分という事にしておくわね」
ミウはかなりあまい。
そもそも、素行がよくない事を本格的に駄目だしする気はあまりない。
それはそれで、その人の生き方なのだ。
ただ、それで我が身を滅ぼす事になったり、他者に迷惑をかけるような事になれば、少々いただけない所はある。
「なるほどね。
 そんなあなたが、わたしに本音を打ち明けてくれるのは、とても嬉しいわ」
にこりと優しく微笑みながら、言う。

桐竹 琴乃 > 羽を触ったり撫でたり。
「本当はもっと道が広かったりするといいのよね」
そうすれば羽と身体も接触することは無い。

「さー。どうかなー、私は気にしたことは無いけど。真面目な子はちゃんと気にするし。気にしたことが無い、とはいえ私も帰る気になったらそれを目安にはするし。普通はでも気にする子の方が多いかなー」
うーん、と考えながら言う。
一種の目安であるし、そもそも守らないと締め出しを喰らう。
締め出しを喰らうと言う事は寮母に反省文やらを出さないとその日は戻れないし、それが嫌だと言うならどこかで一夜を過ごすしかない。
そうなればコストがかかるのは当たり前で、学生である。
ポン、とお金が飛んで行くのは流石にお財布事情は厳しくなる事であろう。
「ご忠告ありがと、ちょっと前に恥ずかしながら発散したので。琴乃さんはまあしばらくは大丈夫」
あはは、と髪を掻きながら笑う。

「そう、そうしてくれると私も嬉しい」
にひ、とさっきとは違う笑いをしながら。
「当然、自業自得な事は色々あるけれどネ」
羽から少し名残惜しそうに手と身体を離し、ベンチから立ち上がる。
「ま、自分の責任は自分で。取れなかったら……」
うーん、と考え。
「誰かに助け、求めてみるし。ダメならダメでそれはそれかな。生きてれば安い安い」
受け売りだけど。
と付け加え。
「気分かなー」
伸びをしながら。
「なんとなーく話してもいいかなって気分だったから。後ほら何ていうんだろう?」
少し考え。
「神様に嘘を言うとバチが当たる、だっけ?そんな感じ」
勿論ミウが罰を当てるとは考えても居ない。
彼女なりのこれまた照れ隠しであった。
苦笑する。
「さってそれじゃあそろそろ行こっかな」
色々話したし、今日はそろそろ帰ろう。

「ミウちゃんありがとねー」
何が、とは言わないお礼。
話す事で色々と理解する事やすっきりする事があるのだ。

最初に来た時のように自然とポケットに手を突っ込んだ。
そしてゆっくりと、元来た道を戻ろうとするだろう。

ミウ > 羽を触ったり撫でられたりすると、こちらがくすぐったくなる番だった。
ただ、撫でられて気持ちが良い。
「さすがに、翼ある者を想定してつくられてはいないわよね。
 ここは人間の世界なのだから、仕方がないわね」
島内でも、常時翼が生えている人なんて中々見かけない。
展開したりひっこめたり出来る人は見かけたが、あれは便利だと思う。

「寮生にも色々いるわけね」
そう納得する。
島には色んな人種がいるように、寮でも当然、あらゆる人々が入り混じっている。
琴乃ちゃんが、うーんと考えるのも頷ける。
「それは、よかったわ」
髪を掻きながら笑う彼女に、やわらかく微笑んだ。

「自業自得の自体には、出来るだけならないようにね」
そういうミウも、自業自得な自体に結構出くわしている気がする……。
これは、自分にも言い聞かせないと。
琴乃ちゃんの手が、羽から離れる。
「それだけプラスに考えられるなら、きっと大丈夫そうね」
やさしく微笑みながら言う。
「あなたのその気分で、わたしはこの時間を楽しむ事ができたわ」
そして、バチが当るという発言に笑いそうになるも、上品に自身の口を抑える。
「そうね。
 わたしは軽い気持ちで人を罰する神ではないから安心していいわ」
照れ隠しする琴乃ちゃんにのるような感じで返答する。
「行くのね。
 またね、琴乃ちゃん」
去っていこうとする琴乃ちゃんに手を振るのだった。

桐竹 琴乃 > 「ん。それじゃ、また」
ひらひらと最後に片腕だけポケットからだし、笑いながら手を振りかえす。
そして今度こそ踵を返して、その場を後にした。

ご案内:「歓楽街大通り」から桐竹 琴乃さんが去りました。
ミウ > 琴乃ちゃんが去って行く後ろ姿をしばらく見守る。
その後、しばらく行き交う人を眺める。
数分経過すると、ミウの姿は突然消え、そして複数の羽根が風で舞った。
ミウは空間転移して、この場を後にしたのだ。

ご案内:「歓楽街大通り」からミウさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に三枝あかりさんが現れました。
三枝あかり > 「あれ、ここどこだろ……」

頼りない携帯端末のナビを元に歓楽街付近を歩く。
どうしよう。道に迷った……かも。
と、そこまで歩いてナビが白地図になる。
指示は『次の高速道路に入ってください』?
生身だよ……生身だよ!!

「ど、どうしよう……」

ご案内:「歓楽街」に奇神萱さんが現れました。
奇神萱 > 歓楽街の酒場をめぐり、楽器を奏でる者たちがいる。

酔客どもを相手におなじみの曲を奏でて、ささやかな慰めを提供するのだ。
アコースティックギターを抱えたやつとサックス吹きはたまに見かける。
中でも流しのヴァイオリン弾きは珍しい部類だ。

明日のスターダムを夢見てるロマンチストには格好の練習場だ。
うらぶれた場末のイメージが付きまとうが、実のところそれなりの収入にはなるのだ。
かくいう俺も、今日は二軒廻ってきたところだ。

奇神萱 > 喧騒をはなれて小休止を入れよう。
静かな場所を選んでヴァイオリンケースを開いた。

今日の客は年配の教師が多かった。長老格の教師にリクエストされた曲がある。

いわゆる「戦前」の作曲家、成田為三―――。
今では形骸化した言葉だが、20世紀の前半を生きた人々をそう呼んでいた時期もあった。

日本という国がはじめて西洋の現代文化に触れてから、半世紀ばかりたった頃に書かれた曲だ。
唱歌。『浜辺の歌』。

俺の演奏は老人の心に響いただろうか。
表情を思い出しながら無銘の楽器を肩にあてた。

三枝あかり > 音楽が聞こえてくる。それは、ヴァイオリンの音色。
その旋律に導かれるように、道の奥へと入っていく。
少しだけ胸が高鳴る。こんな場所へと入っていって、私は怖いもの知らず?

「あ………」

そこで見つけたのは、メロディアスに奏でられる和の音楽の奏者。
三枝あかりが、奇神先輩と呼ぶ彼女だ。
どこか安堵しながらも、演奏の邪魔をしないようにそろそろと彼女に近づく。
先輩の視界に入っておかないと気付かれずに立ち去られそうだしね。

少し離れて奇神先輩の前へ。笑顔で頭を下げて。

奇神萱 > その音は優しく、清清しくも格調高く。
和魂と洋才の邂逅。異質なもの同士が出会って生まれた最良の奇跡のひとつ。

唱歌と銘打たれた歌の数々は、西洋の大家が遺した歌曲にも通じるものがある。
その旋律は聴く者の心を揺らし、爽やかな風が吹き込む。

自分の心に残った綺麗なものをよく見定めたくて、老人が口ずさんだ歌詞を思い返した。

 「―――あした浜辺を さまよえば」

          「昔のことぞ 偲ばるる」

「風の音よ 雲のさまよ」

      「寄する波も 貝の色も―――」

俺はあの老人とおなじ景色を見ることができない。ただ瞼の裏に思い浮かべてみただけだ。
それは城よりこぼれた欠片のひとつ。久しく失われた原初の輝きだ。
美しいもの。心揺るがすもの。―――今は遠く、喪われてゆくものたち。

人の気配を感じて現実に引き戻された。子リスみたいな生物がいた。

「……前にどこかで。お前も飲みにきたのか?」

三枝あかり > 「いや……お酒飲める年齢じゃないですからっ」

本当はもっとしっかりとしたツッコミをしたかったけれど。
先ほどの音楽の余韻が残っていてどうしてもダメだった。
余韻。それは素晴らしい音楽に触れた時、人が声を出す力すら奪ってしまうものなのだろう。きっと。
―――雰囲気を壊すことへの躊躇いもあった。

「良い音楽ですね、何か昔聴いたことがあるような……」
「あれ、授業で習ったっけ? ううん……ちょっと思い出せないですね…」
「奇神先輩はここで何を? 独奏会ですか?」

それからは一気にまくし立てた。心細かったことからの反動だ。

奇神萱 > 「ここにいるのは呑み助だけだ。お前も飲みたそうな顔をしてるぞ」
「土地勘のない人間はこの界隈まで踏み込めない。となると、連れに置いていかれたかだな」
「男か。酷いやつもいたもんだ」

ふふんと意地悪く笑って嘆いてみせる。

「酷かっただろ。俺の歌はひどいんだ」

ヴァイオリンに比べての話だ。声楽の世界で正規の教育を受けたわけでもない。
聴衆が楽しみにしているものに、素人芸を並べて披露することはできない。
だから普通は聞かせないんだ。困ったような顔になる。

「小学校で教えてるところもある。音楽の教科書はずっと変わらないからな」
「1916年作曲。成田為三の『浜辺の歌』だ。『はまべ』っていうタイトルで載ってることもある」
「何って、一息入れてたところさ。お前、やっぱり酒が入ってるんじゃないか?」

よく喋るやつだ。前の印象とすこし違ってる。雰囲気に当てられて酔ったんだろうか。

三枝あかり > 「ち、違いますよ……私、まだ未成年ですから…」
「う……生活委員会の同級生とは、はぐれただけで…」
「それに女の子です、はぐれたのは!」

意地悪な笑みにわかりやすく頬を膨らませて。

「そうですか? よかったと思いますよ」
「音楽の授業なら5段階評価で5がつきますよ」
これは彼女にとっては褒め言葉である。

「ああ、浜辺の歌! なるほど、それならわかりますよ!」
「だからお酒なんて……一息入れるためにヴァイオリンを弾いていたんですか?」
「奇神先輩、本当にヴァイオリンが好きなんですね!」
意地悪をされながらも、にっこり笑って。
「私、夢中になれるものって少ないので……」