2016/08/31 のログ
影打 鈍 >  
(聞かれたくない、と言うよりは聞かせない方が楽しい、と言ったところか。)

うむ、――何と言うかな。
主の顔を見るとな。
なんと言うかこう……そもそも顔を見れんのだ。

(羞恥心と言うヤツらしい。
 対象は主だけで、今こうして彼と話している分には全く問題はない。)

なんだつまらん。
汝も童貞か。

(キスもしていない、胸も触っていない。
 アレだけ彼女がアプローチしているのに手を出さないと言うことはそう言うことだと勝手に結論付けた。
 口を尖らせて、しかし目は笑っている。)

汝に頼まれんでも仲良く出来そうだな。
主に汝と我が主をからかう方向で。

滝川 浩一 > 「ふむ、その反応…俺が好きな人を前にした時の反応と少し似ている気が…」

腕を組んで、顎に手を添えてそのように返す。
顔を見れないだけじゃ如何ともわかりずらいが何処となく共通点があるような気がする。

「うるせぇ!どどど、童貞ちゃうわ!」

分かりやすい反応を見せそう否定する。
実際、女性との対人関係が少ないためどれだけアプローチされてもどのように扱えばいいかわからない。
田舎者の短所である。

「あ、あぁ…出来れば俺達に安らぎを少しでも残してくれたらうれしい」

苦笑いして彼女の言葉を聞けば安心する。

影打 鈍 >  
――主の事は好きだが?

(自身は人ではない。
 人ではない故に、色恋沙汰の感覚は無いのだ。
 ライクもラブも同じ好きだと考えている。)

はいはいわかった童貞童貞。
主は従者のオモチャだと昔から決まっているからな。
そこは保障出来ん。

(その反応だけで童貞だとわかる。
 とりあえずさらりと流しつつ弄っておいた。
 安らぎについては、彼女と自分はどうもウマが合うらしい。
 となるとブレーキ役が居なければどこまでも突っ走るのはなんとなく想像が付くし、だからこそ保証は出来ないと正直に告げた。
 ブレーキ踏むつもりもあんまりないけど。)

滝川 浩一 > 「いや、そういう好きってことじゃなくて…まぁ、いいか」

頬をかき、いまいちピンと来てないような彼女にそう返す。
あまりここで多く語るのは意味を成さない。そう判断したのだろう。

「主が従者のオモチャってどんだけ主の立場弱いの!?
 普通逆じゃねぇの!?」

突っ込みにもだんだんキレが増してきた。
その様に返すと少し疲れたのか荒れた息を整える。
深呼吸をしてなんとか落ち着く。

(…はぁ、羽切少年も毎日大変だなぁ…)

自分の相方はそれはそれで大変だがこの妖刀少女ほどではない。
聞き分けはいいし、自分をあまりからかわないし…うん、アプロ―チが激しいときはあるけども

影打 鈍 >  
ん?
そう言うことではないって……、――
――――いやいやいや、刀だぞ、私。
そんな、好きになるとか、そう言うのは、ない……と、思う。

(何か言いたげな彼に、頭を捻る。
 が、すぐに彼の言いたいことに思い至ったようだ。
 ないないない、と手を振って否定。
 が、あまり強く否定するのもなんとなくイヤだ。
 よくわからないその感覚に、曖昧な言葉。)

まぁ力のある主であればそうでもないんだがな。
年頃の男子なんて、一番からかって面白い相手じゃないか。

(勿論加減はするし、主である少年が本気で嫌がってはいないと言うのをわかっての事だ。
 ただ、ここ数日はどうも上手くからかえないのだけれど。)

滝川 浩一 > 「はは、確かに、羽切少年はイケメンだからなぁ
 刀かどうか、なんて気にしないと思いますけどね」

腕を組んでそう強く否定しない彼女を笑いながらそう言う。
人間か刀か、そこらへんに拘り、言い訳にしているような少女を見て少し微笑ましく感じる。
羽切少年はそれこそ良い人間だ。うむ、おっぱいが好きな人間に悪い奴は居ない。

「ち、力が無いのか俺は…う、うぅむ。強くなるために精進せねばな…!」

拳を握り、何やら別の方向で燃え上がる少年。
揶揄われたくない訳ではないが少なくとも、力のある主としては認めてもらいたいようだ。
まぁ、目の前の妖刀娘は契約相手でも何でもないが。

「…っとやっべぇ、もうこんな時間だ。俺はもう帰ります。
 楽しかったです。主は大事に、よろしくお願いします」

時計を確認する。
もう日も落ちてきて辺りが暗くなり、街灯もつき始めている。
歓楽街の夜は怖いことを知っているのか帰ろうと歩き出す。時折少女の方を向き手を振るだろう―――

影打 鈍 >  
あぁ、そう言うことではなくて。
刀だし、生き物ではないし。
人を好きになる機能なんて無いと言うか。
それに、子供も作れんし、好きになっても、だな――ああ、だからそう言うことではなくて。

(人差し指をつんつんしながら。
 途中でなんだか話がおかしなことになっていることに気が付き、ブンブンと手を振って改めて否定。
 自身でも良く分かっていない。)

まぁ、とりあえずは童貞を捨てることだな。
頑張れ。

(燃え上がる彼に励ましの言葉を掛けておこう。
 ちゃっちゃと襲ってしまえば、少なくともさっきの彼女からからかわれる事はないだろう。)

おう、それではな。
私はもう少しうろついて帰るよ。

(そう答えて立ち去る彼に手を振り返す。
 何度もこちらに手を振ってくる彼に、律儀だなと苦笑を漏らしながら。)

ご案内:「歓楽街」から滝川 浩一さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から影打 鈍さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ >  
「ふぅ……」

 夕涼みと食事を兼ね、歓楽街へと足を運ぶ少女。
 たまには良いものを食べようか――そんな軽い気持ちだ。

(さて、何を食べようかしらね。) 
 

ご案内:「歓楽街」に加賀智 成臣さんが現れました。
加賀智 成臣 > 「……………はぁ。」

エニィの通りがかった歓楽街の一角、の付近の路地裏。
その中から、ひょっこりと何者かが現れた。歓楽街では珍しくもないことだが……
その服装に違和があった。

「……あ。財布に生徒手帳あったのに……」

ズボンもシャツもボロボロ、泥の上を引きずり回されたように汚い。
にも関わらず、破れた布の下に覗く皮膚には、傷一つない。
服が破れるほど引きずり回されたりすれば、打撲なり何なりの外傷はあって然るべき…
であるにもかかわらず、である。

水月エニィ >  路地の合間から現れる姿を認める。
 乱暴された形跡とも云うべきか、乱れた衣服はそういうものだろう。
 傷一つない身体、には違和感と既視感を同時に覚えた。

「……ちょっと貴方、大丈夫?」

 とは言え、それは彼に声を掛けない理由にはならない。
 さも当たり前のように近付き、身を案じた調子を見せるだろう。
 

加賀智 成臣 > 「………あ、学生証。」

特にその状態に気にする様子もなく、地面に落っこちていた学生証を拾い上げる。
おそらく乱暴されて財布を持って行かれ、足が付くのを懸念した犯人が抜き取って捨てた…といった所だろう。

「……あ、は、初めまして。大丈夫ですよ、今はもう……。」

声をかけられ、一瞬びくりと背を震わせる。
大きな体躯を小さく丸めた、卑屈っぽい外見である。黒縁の眼鏡に、死んだ魚のような金の目。
顔自体は頑張れば端正と言えなくもない程度にも関わらず、クマや肌荒れなどがそれを台無しにしている。

水月エニィ >  
(乱暴のものだけでもなさそうね。
 ……随分と病んでいる。)

 風貌を確かめ、内心で彼を評す。
 何とでも云えるといえばそうなのだが、随分と卑屈だ。
 乱暴以前のものとして、調子や身だしなみに構うつもりがないように見えた。

「ええ、確かに怪我も無さそうだし、大丈夫と言えばそうなのでしょうけれど……。」

加賀智 成臣 > 「まあ、その……服とかは買えばいいですし……
 財布のお金は残念ですけど、まあどうにかなるでしょうし……」

この【どうにかなる】は、『死なないから金がなくてもどうにかなる』という意味である。
だがおそらく、それはエニィが知るところではないだろう。
頭をがりがりと掻きながら、砂まみれの学生証をポケットにしまう。

「………あ、そうだ…え、えぇと、加賀智です。よろしく。」

せっかくしまった学生証を即座に取り出し、エニィに見せる。

水月エニィ >  
「ふぅん……」

 死なないからどうにでもなる などと知る由はない。
 だが、困窮した素振りではない事は十二分に理解できる。
 恐らく、今の状態は彼に取って困難ではないのだろう。

「ん……私は水月エニィよ。
 ええ、宜しく頼むわね。」

 彼の方から名乗り出た事は少々だが意外なものを覚えた。
 乱暴の一つや二つをされ、乱暴を抜きにしても身だしなみにも構わない。
 故に、自分から名乗り出る程の積極性は意外であった。

加賀智 成臣 > 「………あ、はい。どうも。」

はぁ、と溜息を吐く。
最近、誰かに会ったら先に名乗るべきなのではないかと感じてきているのだ。
図書館のビジネス本で読んだ。

ぎゅるるるる。
マヌケな音が響いた。エニィからではない。目の前の男からだ。

「(……そういえば、ちょっと前にサラダとコーヒーを食べたきり何も口にしてなかったなぁ。)」

水月エニィ >  
「んー……」

 おぼろげながらの為人が掴めそうでイマイチ掴めない。
 空腹の音に、一度思考を切り。

「立ち話も難儀な話ね。
 ご馳走するからついてきなさい。丁度昨日ご馳走して貰ったから、その位の余裕はあるわよ。」

 軽く手を掴み、適当な店へと連れ込もうとする。
 彼が指定をしなければ、最も手近なハンバーグ屋さんへと引き摺り込むか。
 

加賀智 成臣 > 「えっ、いやそんな申し訳ないです……
 ああ、すみません……」

と言いつつも、手を引っ張られれば抵抗はしない。振り払うのはむしろ失礼だと感じているのだろうか。
ともかく、ハンバーグ屋へ連れ込まれて、現在は席に着いている。禁煙席だ。

「………………。」

落ち着かなげに周囲をきょろきょろと見回している。
挙動不審とハッキリ言っても文句を言われない程度に怪しい。

水月エニィ >  
 ……拒まない事、申し訳ないと返した所である種の確信を得る。
 当然、まだ見えぬ所はあるが。

「落ち着かない? まぁ良いわ。
 ドリンクバーとライス・スープは付けるとして、後は好きなものを選びなさい。」

 メニューを寄せて押し付ける。
 ……強引な自覚はあるが、今日の所はこれで良い。  
 2つの歴史と今に基づく記憶がそう告げている。
 

加賀智 成臣 >  
「…………え、ええ。その……こういう店はあまり……人も多いですし…
 あ、え、あー……い、一番安いので……あとおろしポン酢で……」

そっと、メニューに写ったスタンダードなハンバーグセットを指差す。
見てみればなるほど、一番値段的には安い。そしてソースも選べる。

「………そ、その…良かったんですか?
 あ、いえ、否定するわけではないんですが……僕なんかにこんな……」

水月エニィ >  
「構わないわよ。」

 断言する。
 自己が弱く、そのことにかけて意固地だろう。
 少なくとも自分を卑下するなと言っても聞くようには思えない。

「したい事だからしているの。
 少なくとも、私の基準ではそうするわ。……じゃ、頼みましょう。」

 手早く注文を通す。
 加賀智と同じものを頼みつつ、大きなサラダも付け加える。

「飲物はどうする?
 甘いのとそうじゃないの、それで甘いのなら炭酸かそうじゃないか選んでくれないかしら。」

加賀智 成臣 > 「あ、はい……」

断言されてしまった。
どこか達観しているような、芯の通った口調を感じた。

「そうですか……なんというか、すみません……
 あ、そうですね。頼みましょうか……」

また一言卑屈に謝り、店員呼び出しボタンを押そうとする。
が、直前で指を止める。

「……あ、あぁ……えぇと、じゃあ食後にコーヒーを……
 あ、ブラックで……」

そう言って、改めてボタンを押した。

水月エニィ >  
「ドリンクバーもつけたのだから、好きなだけ飲んでも良いのに。」

 軽く笑ってみせる。
 いずれにしてもその注文も承諾され、食後のコーヒーは届くだろう。
 
「ま、振り回して悪いわね。
 ……別に気兼ねしなくていいし、降って沸いた幸運位に思ってくれれれば幸いよ。
 特に何も望まないわ。」

 自分の行動がどういうものであるかは分かっている。
 とは言え、勝てぬ故に自分が最底辺と言うつもりはもとよりない。
 彼は確かに自分より弱い。少なくとも意志を出す事を躊躇い、振り回される事を当たり前と認めている。

 いくら彼が選びやすい様に振る舞っているとは言え、当然自己満足と言えば自己満足だ。
 身勝手な押し付けには厭なものを覚える懸念はある。それに反抗を覚える事も良く知っている。

 ……とは言え、今の所はそれでも構わない。
 彼だって少しは幸運に見舞われて、少し良いものを食べたっていいじゃない。
 そのような意のもとに引き摺り込んだのだ。
 

加賀智 成臣 >  
「………あ、その……甘い物は、苦手というか……
 あ、でも飲めって言われたら飲みますから……飲めないというわけではないので、そう言うなら……」

妙なことを言いつつ、ひゅんひゅんと目線をあちらこちらに飛ばす。
本当に落ち着かないようだ。

「………あー…ええと。ありがとう、ございます?
 でも、それは僕以外にした方がいいのでは……。
 何も返ってきませんよ、僕にこんなことしても……あ、でもお金に余裕ができたら料金は払いますから……」

嫌がっている様子はない。迷惑そうにしている様子もない。
だが、この男は『他の人間にやれ』と言う。

自分に価値が無い、と思い込んでいるのか、それともただの演技なのか。
自己満足のはけ口にされたことに怒る様子も見せず、目の前の男は目を伏せたまま顔を上げようとしない。

水月エニィ >  
「それなら食後のコーヒーだけにしましょうか。」

 しれっと自分の分のメロンソーダだけ取って来て、暢気に啜る。
 苦手と聞けばちゃんと引いてみせる。

「そうね。他の人にもしたいと思ったらしましょうか。
 それにお礼なんて求めていないから不要よ。
 求めない以上自己満足に過ぎないのだから、降って沸いた偶然だと思っておきなさい。」

 そこまで言い切った後、ふと、思い立った素振りで口を開く。

「それとも、そう言うのは厭?
 理由なく降り注ぐ幸運とか、不幸とか。振り回されるだけの人生とか。」
 

加賀智 成臣 >  
「あ………はい。」

しれっとした対応に、少しだけ動揺する。
確かに苦手とは言ったが、ここまでサラリとスルーされたのは初めてであった。

「……そ、そう、ですか……」

特に反論する言葉も見つからず、口をつぐむ。
しかし、次に紡がれた言葉には、きちんと言葉を返した。

「………嫌、というか……
 偶然に振り回されてここまで来たようなものですし……もう疲れました。
 僕は不幸だろうがなんだろうがどうでもいいので、その分誰かに幸運を与えてほしいな
 ……とは思いますね。まあ、僕の分の不幸を幸運に変換しても大したことにはならないでしょうけど…」

水月エニィ >  
「……難儀な話ね。」

 きっと、私も"振り回される事を諦めていたらああなっていた"のだろう。
 故に思う所は有るが、ちょっとやそっとでどうにかなるものではない事は十二分に招致している。

 大抵、そうなるに事足りる何かがある。
 本当に何もなければ生まれついてのものとなる為、それはそれで恐ろしい話だがそれは別の話だ。

「しょうがない話ねえ……。
 ま、貴方が付き合ってくれた事は幸運よ。だから変換されたものかもしれないわ……ハンバーグきたわよ。
 変な話はここまでにして、食べましょうか。」

加賀智 成臣 >  
「よ、よく言われます……
 まあ、でも……僕が不幸になれば他の人が幸福になるなら、別にそれでもいいかなって…」

へらりと笑う。その顔はどこか空虚で、諦念に包まれているようにも見えた。
どうにも、深い事情がありそうだ。

「そうですかね…だといいんです、けど。
 あ、それじゃ、頂きます……」

そう言って、ハンバーグを切り始める。
食器の扱いを見るに、マナー自体は良さそうだ。基本的に暇潰しに読んでいた本のせいだが。
ポン酢に付け過ぎたのか、酸っぱそうに顔をしかめている。

水月エニィ > 「分からなくもないけれど、認めたくない話ね。」

 断言する。
 そうであることがまかり通っているが、それだけであると認めたくない。
 そんな熱の下にある断言か。とは言え、食事が来れば会話は減らす。
 ……彼の食べ方は綺麗なものであった。
 何処で学んだかは分からないものの、身に着けるだけの能力はあるのだろう。

 もぐもぐ。
 

加賀智 成臣 >  
「……もし現実がそうだったら、認めるしかないんじゃないですかね。
 まあ、こう……現実がどう以前に、僕の願望でしかないんですけど……
 大事な人達には幸せになってほしい、とか。嫌いな奴らは不幸になればいい、とか。
 ……そう思っちゃうのって、自然ですよね。」

食べるのを中断して、そんな話をする。
話を終えれば、また食べ始める。時折、顔をしかめながら水を流し込む。
どうにも、妙な雰囲気だった。

黙々と、肉の塊を食い進める。

水月エニィ >  
「概ね私もそう思うわ。それぞれ報いを受けてほしいと思うもの。
 ……この世は善意で回されもしないから、特にそう思うわ。
 勝てる奴らだけが好き勝手出来るのが世界だなんて、認めなくないわよ。
 救われぬ者に救いの手を。言い換えてしまえば……」

 瞑目しつつスープを飲み干す。

「お前たちも報いを受けろ。そう思うわ。
 それでもこの世界は強さがモノを言うし、勝たなければやっぱり無力だもの。
 だから、同じものに身をやつしてでも認めさせたいわ。
 ……それを言い換えると、加賀智さんと同じ言葉になるのよね。色々あることぐらいは分かるもの。」

 会話を挟みながら食事を進め、肉を食べきる。
 手を合わせて。

「ごちそうさま。」

加賀智 成臣 >  
「………………。」

パクリと、最後の一口を口に運び、ライスを頬張り、スープで一緒くたに流し込む。
少しだけ行儀の悪い食べ方を披露して、ますます暗い顔をした。

「ごちそうさま。
 
 ……世界って、何なんでしょうね。
 勝っても負けても、不幸より幸福のほうが少ないんですよね。……それに……」

そこまで言って、コーヒーが運ばれてくる。
早速手に取り、一口啜る。……なかなかに美味しい。

「価値がなければ負けもない。……あ、ダジャレじゃないです。
 勝つのも負けるのも、それに値する『勝負』に挑む権利があるから、というか……
 
 そもそも、『勝負に挑めない』人種、って居ると思います。」

かちゃりとコーヒーカップを置く。
そのレンズの向こうの目は、金であるはずなのにドス黒く濁っているように見えた。

水月エニィ >  
「居るでしょうね。
 勝負しなければ”負け犬”で無い。」

 当然の如く断言する。

「色々な理由で有り得る話だわ。
 力もなく、立ち場もなく、吠えた所で見向きもされなければ勝負にならない。
 ええ、もっと言ってしまいましょう。」

 空っぽになったグラスを置き、
 目の前の彼の特異性を、知ってか知らずか。

「――死んでしまったら勝負が出来ない。」

 そのように、最も勝負から縁の遠い者を挙げる。
 
「生きているもの総てが勝負出来るとは言わないけれど、
 死んでいるものよりは何かが出来る筈よ。」
 

加賀智 成臣 >  
「………。」

コーヒーを一口啜る。

「……お強いんですね。
 僕なんかとは違う……あ、でも一緒にされても迷惑でしょうけど……」

そう言って、疲れたようにため息を吐く。
何に疲れているのか、そこまでは分からない。

「……命あっての物種、ですよね。大事な事ですよね。
 
 …生きながら死んでるような、僕みたいな存在とは、違う……
 どんなに汚れてでも、生きようと足掻く人って、立派だと思います。」

水月エニィ >  
「意志だけが強くたって勝てないものよ。
 想いだけでどうにかなるなら苦労はない。貴方だってそう思っているんじゃないかしら。」

 改めて視線を遣る。
 どうにも疲弊している様に見えた。
 それでも訴えようとするものが多く見える。

「……変な話になっちゃったわね。
 ごちゃごちゃいった所でどうしようもないのは分かっているんだだけど、何て言うのかしらね。
 勝負に挑めないことは負けるよりも負けているのかもしれないわ。
 貴方がそうかどうかは、私では何とも言えないけれど……ああもう、ハンバーグよハンバーグ。
 今日はそれ以上でもそれ以下でもないわ。そう言うことにしておきましょ。」

 こめかみの手のひらを押し付け、粗っぽく捻る。
 思考と議論を放棄せんと、声を発するか。
 

加賀智 成臣 >  
「そう、ですね。気合だけで勝てれば苦労はしないです。
 だから根性論とか、そういうものは嫌いなんですけど……」

そこまで言って、かたりとカップを置く。
どうやら、飲み干してしまったようだ。

「……そうですね。こんなところでする話でもなかったです。
 すみません、妙な話になってしまって……」

再び謝りながら、今度は頭を下げる。

「……どうしましょうか。
 なんだか、このまま食事続行という空気でも……お腹いっぱいですし……」

水月エニィ >  
「でも、だからと言って蔑ろにされなくもないわ。
 ……ええ、勝ちたいわ。勝ちたいもの。」

 どうしようか。
 目の前の彼に、そう問われれば小さく首を振る。

「続行もなにもお互いに食べ終わっている井じゃない。
 と言うか私もお腹いっぱいよ……。」

 そもそもお互いに食べ終わっている以上続行も何もない。
 おろしポン酢ハンバーグの塩気と酸っぱめの刺激は食欲を進めるしライスも進むが、食べたものは無かった事にはならない。
 炭水化物に肉、どちらもお腹にたまるものだ。

 見た目的にも少し膨れたお腹をさすりながら、これ以上食べる気はないと告げるだろう。
 
 

加賀智 成臣 >  
「……………。」

勝利への執念。それは加賀智に一番存在しないものかもしれない。

「ですよね……かと言って談笑というのもなんですし……
 ……出ましょうか。」

そう言って、のそのそと立ち上がる。
相変わらず、細長い体を小さく丸めるように卑屈に歩いている。
が、エニィより先に行こうとはしない。会計してもらうという負い目からだろうか。

水月エニィ >  
「そうね。談笑は次の機会にしましょ。」

 彼の素振りを横目に見つつも言及せずに進む。
 そのままあっさりと会計を済ませば振り返る。

「会計は済ませておいたから、先に行くわね。
 それじゃあまた会いましょう。加賀智さん。」

ご案内:「歓楽街」から水月エニィさんが去りました。
加賀智 成臣 >  
「あ、はい。それじゃ、また…
 ……………。」

一人で店を出て行ったエニィの背を見送り、自分も外に出る。
外はもう既に暗い。夏の終わりを感じさせる、寂寞を感じさせる夕暮れ。

「…………………。
 疲れたり、しないのかなぁ。」

ポツリと独り言を残し、自らもその場を後にした。

ご案内:「歓楽街」から加賀智 成臣さんが去りました。