2016/10/24 のログ
■龍宮 銀 >
――先輩って、優しいですね。
(おかしな人だと思っていたけど、風紀委員でもないのに困っている人を助けようとするだけの事はある。
かっこいいポーズとか、余計で無駄な動きが多いけれど。)
そこは、大船じゃないんですか。
らしいとは思いますけど。
(くすりと笑う。
彼の手の届く範囲、と言う意味ではとても的確な表現なのだが、どうしてもスケールの微妙な小ささに笑ってしまう。
その後保健課の生徒から応急手当を受けている間も、なんでもないように彼と世間話を続けるだろう。
救急車は保険課の生徒が手配したらしく、程なくして到着する。
当初は拒否していたのだが、彼に言われればおとなしく乗るだろう。
病院へ向かう途中も、ずっと会話を続けていて――。)
ご案内:「歓楽街」から龍宮 銀さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から真乃 真さんが去りました。
ご案内:「酒場「崑崙」」に谷蜂檻葉さんが現れました。
■谷蜂檻葉 > これで良いのだろうか。
檻葉の脳内はこの一言によって右へ左へ揺れていた。
歓楽街の先にある、とある店に用があって足を向けた彼女を待ち受けていたのは古典的な言い訳にも使われる
『老人を助ける』イベントであった。
ちょうど、目の前を歩いていた御仁が足を引っ掛けてそれを助けたのが数十分前。
軽く擦りむいていた手足を治し終わったのが十数分前。
親切に気をよくして、食事がまだか確認した老紳士が檻葉をこの店に連れたのが数分前。
その老紳士が、何やら電話を取るとやおら物々しい雰囲気になって
『支払いは良いから、食事を楽しんでいってほしい』と出て行ってしまったのが先ほどの事。
■谷蜂檻葉 > どこか断りづらい迫力のある御仁の言葉に流されるままに席に座ってしまったが、ここは『ダイニングバー』。
お酒を飲むのが本来の目的であり、平均年齢層は自分よりもはるかに高い。
誰かと連れ合いになって訪れるならともかく、未成年(本島基準で、だ。)の檻葉には敷居が高い。
けれど、ここで何も頼まずにそそくさと出るのも老紳士の面子を潰すのではないか?と思うと気が引ける。
さて、これで良いのだろうか。
「……すいません、この『アボガドと茄子のフリット』と『ジンジャーエール』お願いします。」
悩んだ顔のまま、すっと注文が口から流れ出る。
ああ、良いのだろうか。
■谷蜂檻葉 > 時の流れがゆっくりと感じる落ち着いた薄暗闇。
そっと、周りを見渡せば誰も彼もがその穏やかな時間に身を浸している訳ではなく。
どこか剣呑な雰囲気で額を突き合わせる人たちもいる。
それが何を意味するのか、風紀委員でもない檻葉はただその様子を見て思索を巡らせるばかり。
仲睦まじげな男女を見ても、闇に溶けいる暗い表情の傷者を見ても。
「あの小説みたいな、ドラマチックな話をしているのだろうか?」
そんな、小市民じみた妄想を重ねて胸をわずかに高鳴らせる。
■谷蜂檻葉 > じっと、見つめてしまいそうになると流石に視線を受けていれば気づかれる。
目が合いそうになって、慌てて視線を戻してまた静かに料理を待つ。
また別のテーブルを見て、視線を戻す。
そんなことを2、3度繰り返しているとようやく自分のテーブルにも皿が運ばれてきた。
音もなく佇む揚げ物と、プチプチと泡を弾けさせる『子供のエール』。
場所か、それとも空気か。
どことなく、高級感を漂わせるソレに静かにフォークを手に取る。
がっつかないように、落ち着いて。
■谷蜂檻葉 > 一瞬の手ごたえと、スルリと突き抜けるような感触でフォークが揚げ物に突き刺さる。
(たぶん、これは茄子。)
多分。とつけるのはアボガドは大きく形は違うので見た目に分かりやすいのだが、
明らかに茄子とは違う、けれどもアボガドとも違ういくつかの揚げ物がおまけのように混じっていたからだ。
口元に近づければ、揚げたての音はなくともしっかりと熱が唇を温めてその中の熱さを伝えてくれる。
猫舌ではないけれど油で揚がった水分たっぷりの茄子を口に放り込むのは気が進まずに、歯の先でサクリと噛みつく。
(熱。)
やっぱり熱い。
(でも、”甘い”。)
甘い。いや、旨い? 味覚の差異を言葉にするのは難しく、一番頭の中に強く思い浮かんだ言葉が甘さだった。
それは『比較の甘さ』。塩気で膨らんだ、野菜の甘みが染み出て口を覆っていく。
■谷蜂檻葉 > (こっちは……。)
茄子のうまみ冷めやらぬ中、適当に空いたフォークの先端にフライを差し込む。
その先端に来たのは、三つ又を綺麗によけた細長い誰かさん。
避けても剥けた、衣の隙間から緑の肌が透けて見える。
(アスパラだ。)
さく、さく、さく。とテンポよく歯に刻まれて口に流れ込んでくるアスパラガス。
身が細い分、衣とよく合わさって香ばしく味を伝えてくれる。
茄子の柔らかな果肉と違った歯ごたえのある触感が食べる楽しさを増してくれる。
しかし、揚げ物は続けて食べると少ししつこい。
口の中を一色に染め上げる喜びもあるが、食べ始めの今は少しリセットしたい。
■谷蜂檻葉 > グラスは何か加工がしてあるのか、結露せず手にしっくりと馴染む。
その少し厚手のグラスを、冷気が手に伝わる前に軽く煽る。
(―――――!)
口に殺到する爽快な炭酸の奔流は一瞬でそれまでの味の積み重ねを無に帰する。
しかし、今はその快気に一心地つく場合ではなかった。
「――――っ…!! ……げほ! っ痛ぅ……!!」
ツンと鼻裏を突く『痛み』。
ただの、自販機で飲むような子供用の飲料と思って油断していた。
これは『”ジンジャー”エール』なのだ。 男共が、濃いツマミを流し込む為の飲み物なのだ。
油断の対価に、生姜の辛さが涙を誘う。
■谷蜂檻葉 > リセットどころか、痛みに上書きされた口元を癒すためにもう一度改めてフォークを差し込む。
その穂先に何がいるのか確かめもせず、涙の薄くにじんだ目を擦りながら一口。
(甘!)
瞬間、「ぶわっ」と口元に甘みが広がる。
茄子の時のような曖昧な表現の『甘み』ではなく、『濃厚な甘み』。
塩気で引き立てられるのではなく、塩に比べても圧倒的な甘み。
舌で押しつぶし、ねっとりとした感触のソレを味わうように噛み込む。
アボガド。
「森のバター」とも呼ばれるその芳醇な甘みを堪能して、今度はゆっくりとジンジャーエールを飲む。
(くぁ、効く……!)
ゆっくりと、口に注ぐように溶かし込めば辛さも味に和らげられてゆっくりと馴染む。
10に-10をぶつけて消すのではなく、-1を10回。
ゆっくりと0に近づけていく。
そしてまた旨味の数を足していき、ジンジャーエールで減らすのだ。
■谷蜂檻葉 > (美味しかった……。)
しかし、元よりつまみ。
大した大きさもない皿の中身は食事をするよりもずっと早く無くなってしまう。
チラとメニューを見れば、まだまだ普通の飲食店ではみないような『大人の食べ物』が並んでいる。
あぁ、それで良いのだろうか。
「―――すいません。」
もう一皿ぐらいは、良いのではないのだろうか?
ご案内:「酒場「崑崙」」から谷蜂檻葉さんが去りました。