2017/08/27 のログ
■神代 理央 > 「その事実に対して、財団は兎も角委員会の上層部が何処まで対応出来ているか気になるところではあるが…所詮は自治を得ているだけのこの島では、島内より島外の外交活動の方が大変かもな」
食料・エネルギー・生活資源等。産業区や農業区で使用する資源は当然島外からの輸入に頼る事になる。人類にとって巨大過ぎる程の知識に満ちた此の島は、逆に言えばその自治を守る為に情報を制御し、各国政府や国連と渡り合わなければならない。
胃が痛くなりそうだな、と他人事の様に笑ってみせる。
「お小遣い稼ぎ…?失礼を承知で聞きたいんだが、イチゴウが貨幣を必要とする状況があるのか?何か買い集めているものでも?」
機械の同僚から告げられた予想外の言葉に目を丸くする。
一体彼に何の小遣いが必要なのだろうかと、首を傾げるばかり。
「人間なんて、所詮単純な……どうしたんだ?
…なんだ、あんな店に興味があるのか?イチゴウがその店で得られるものは、特に無いとは思うんだが」
歓楽街に尤も相応しい店を眺める彼に、苦笑いと興味を半々にした様な口調で声をかける。
こういう生産性のない店に人間が喜びを覚える事を疑問にでも思っているのだろうかと、店に入って行く男性客を眺めながら考えていたり。
■HMT-15 > 「そもそもその財団についての情報が
何もない。情報網に一片の欠片さえない。
ボクからすればこの島の何者よりも異常だ。」
そもそも規模不明の財団とだけ名乗る組織が
何故一般的に制御しづらい異能などを
封じ込めておけるのだろうか?
もはやその異能を封じ込めている事実が
財団のパワーを表すとともに他組織の信用を
勝ち得ているのだろう。
「ん?ボクは任務で複数種類の弾薬を使っているが
純正の徹甲弾以外はボク持ちなんだ。あと
ボクの動力源である有機物においても自腹だ。」
風紀委員会がサポートしているのは
主に正規メンテナンスだけ。
メシくらいは自分で調達しろという事なのだろう。
「普段、摘発対象としてもああいった店を
よく見かけるが実に不思議だ。
ただのおしゃべりがこれほどまでに
大きなビジネスになっているという事が。
一体何がこれほどの客を引き付けているんだ?」
ガラスに対して顔を押し付けるようにして
店内を凝視している。店内の何人かが
この妙なロボットに気づいた様子だ。
■神代 理央 > 「同感だな。異能持ちや魔術適性のある者。果ては異種族迄集めて、この島は、いや、財団は何処へ向かっているのやら。人類にとって良い方向である事を願うばかりだな」
彼の言葉に深く頷く。元々諜報については中小国並のPMCではあるが、それでも財団についての情報は全く得られていない。
だからこそ、こうして自分が此の島に居るのだが。
「…弾薬代と動力源が自腹とはね。というよりも、風紀委員会からは給与に近いものは出ていないのかい?それとも、徹甲弾やメンテナンスが実質的な給与なのか?」
同僚の待遇を聞けば、意外だというように目を瞬かせる。
弾薬は兎も角、有機物―彼に取っては食事になるのだろうか―くらいは委員会で手配しても良いだろうにと思わなくも無いが―小遣い稼ぎは彼の趣味と言うし、敢えてその趣味を奪う事も無粋かと言葉を飲み込んだ。
「色々と理由はあると思うが…一番はやはり異性と接触出来る事じゃないか?金さえ払えば、見目麗しい女性と楽しく酒が飲めるというのは、男性にとっては大きな楽しみ…なんだろう。
あとイチゴウ、少し見すぎだ。摘発する訳でも無いんだから、余り目立った行動は控えた方が良いぞ?」
自分自身がこの様な店で遊んだ経験を持っている訳では無いので、言葉にした意見も想像の域を出ない。
少し自信なさ気な発言の後、店内の様子に気が付けばさり気なく彼の装甲をコンコンと叩いて注意を促そうとするが―
■HMT-15 > 「力による変化は良いものと悪いものが
平行して進行する。少なくとも歴史はそう語っている。」
例えば究極的な科学者が集まって開発された
コンピュータは元々弾道計算用だったが
今や人類の生活の一部である。
「いや、給料は少し出ている。他の風紀委員と
比べれば微々たるものだが。」
従順な機械相手だからか新人風紀委員よりも
給与は出ていない。しかし彼は何の不平も言わない。
「・・・?男性は容姿に優れた女性と交流すると
無条件に楽しいものなのか。ボクも男性パターンのAIだが
それは全く理解できない。」
やはり生殖欲求が備わっていない以上
男女間の関心の根元である
性欲というものは発生し得ない。
ある意味、人間らしいが人間ではない
ということを証明する一つの事実だろうか。
そしてシャーシを軽く叩かれば
ピクッと反応してガラスから離れる。
■神代 理央 > 「それを進化と呼ぶべきか否か、と悩むところだな。人類が生み出した英知の数々は、果たして進化と呼ぶべきだろうか?異能や魔術の素養がある者も、果たして「人類」とカテゴライズするべきだろうか?……なんて、こんな場所で討議するべき事じゃないな」
力による変化。それを果たして進化と呼称すべきなのかどうか。そもそも、進化と仮定した場合人類は何処に向かうのか。
そんな事は、歓楽街の通りで語るべきではないかと苦笑いを浮かべて首を振った。
「そうだったのか。まあ、イチゴウがそれで良いなら構わないんだが…。もし有機物の手配に困った時は声をかけてくれて構わない。多少であれば、融通しよう」
友人に食事を奢る…とはまた違うとは思うが、困った時は声をかけてくれと言葉をかける。
彼自身の趣味を奪うつもりは無いので、本当に困窮した時に声をかけてくれたら良いな、程度の認識だが。
「人間に限らず、生命には子孫を残す本能があるからな。優れた子孫を残す為には、相性の良いパートナーを求めるのは当然なんだろう。…と偉そうな事を言っても、俺自身にそういった経験が無い以上、イチゴウに偉そうな講釈は出来ないけどな」
思えば、此の島に来て委員会に入って以来、硝煙と鉄の匂いに包まれてばかりな気がする。
異性とのコミュニケーションについても努力すべきなのかと思うが―努力してどうにかなるものでも無いだろうと早々に諦めた。
そんな悲しい諦観を覚えていれば、ポケットから伝わる振動音。通知を知らせるスマートフォンを確認すれば、華やかな異性からのお誘い…では無く、定時連絡を求める実家からのコール。溜息を一つ吐き出せば、彼に向き直り―
「…すまないが、急用が出来てしまった。今夜は、先に家に帰らせてもらうとするよ。また機会があれば、食事でも行こう。なるべく変換効率の良い有機体の出す店で、燃料補給と洒落込もうじゃないか」
スマートフォンをポケットに仕舞い込み、申し訳なさそうに彼に声をかける。
もう少し彼との談話を続けたいところではあったのだが、実家――というよりもPMCの幹部連――からの呼び出しを無視する訳にも行かない。
少し名残惜しげに笑みを浮かべながらも、彼に軽く手を振った後、踵を返して夜の歓楽街に消えて行くのだろう。
貴重な時間を邪魔された恨みは、父への無茶苦茶な要求で発散してやると心に決めながら―
■HMT-15 > 「人類に限った話じゃない。
世界全体が次のステージへ進むならば
それはどんなものであれ進化だと
ボクは捉える。・・・キミの言う通り
それこそここで議論するものではない。」
彼も歓楽街の通りというフィールドを認知している
のか並びかけた論理を一時白紙に戻す。
「それはありがたい。いざという時は
ご馳走になる。」
思わぬ供給ルートの確保に繋がった。
これにはロボットも大満足の様子である。
「生物のそういったシステムは
確かに理にかなっている。
なるほど男女間の関心は遺伝的作用に
基づくものなのか。」
理央の話を聞きながらまた自分の中で
勝手に結論付ける。
そうしていれば彼の携帯が振動し
それを見た彼はため息をつくと共に
別れを告げる。
「ボクもそろそろ戻ろうと思っていた所だ。
興味深い有機物の供給を期待している。」
そう言って理央に別れを告げれば
ロボットもまたこの騒がしい歓楽街を
後にしていくだろう。
ご案内:「歓楽街」からHMT-15さんが去りました。