2017/09/01 のログ
神代 理央 > 空調が効いていても尚熱気に包まれる空間で、冷たい果実水は麻薬の様な甘美さで少年の喉を潤していく。
今度はゆっくり味わおうと二杯目の注文をした瞬間、響き渡る大歓声に僅かに視線を動かす。

「…誰かが豪運を発揮したのか、それとも奈落に飲まれたのか。まあ、客の元気があるのは良い事か」

そういえば、公安の先輩方も隣のエリアで一戦していくと言っていた。彼等に勝利の女神が微笑んだのなら、祝の言葉でも言いに行かなければならないだろう。

「……はあ。ま、様子を見に行くだけなら大した距離でも無いか」

半分程残ったグラスを片手に立ち上がると、人混みをすり抜けて隣のエリアへと向かっていく。
尤も、辿り着いた瞬間大勢の観客がテーブルを囲んでいるのを見て、あの人混みに混ざるのは些か面倒だなと溜息を吐き出した。
遠くからでは(非常に不愉快な事ではあるが)己の背丈では何が起こっているのか窺い知る事は出来ない。
観客が捌けるまで大人しくしているか、と果実水で喉を潤しながら歓声を上げる観客達を遠巻きに眺めているだろう。

HMT-15 > 大歓声は未だに途絶えずストレートフラッシュを
叩き出した男の方はかなり自慢げな表情と共に
ガッツポーズまでしている。
しかし

「プレイヤーB、ロイヤルストレートフラッシュ。」

続けて発されたこのロボットの一言で
会場の流れが一気に変わる。歓声は一気に頂点へと
達しあらゆる視線が二人の男に集中している。
そしてプレイヤーAと呼称されている男は
気が抜けたように唖然としている。

間もなくカジノ関係者が勝者の元へと近づくと共に
観客も皆そちらへと集まっていく。
同時に観客の流れが変わったので高台にいたディーラーの
ロボットがよく見えるようになる。
それはカジノ関係者と喋っており
馴染みの金髪の少年に気づいていない様子だ。

神代 理央 > どうやら、栄光を得たものと失った者が判明したらしい。
他人の賭博を眺めているだけでよくもまあ彼処まで騒げるものだと観客達を眺めていたが―

「……おや、あれは…」

最初は見間違えかとも思ったが、すっかり顔馴染みとなった委員会の同僚たる多脚戦車を見間違える筈もない。
しかし、何故彼がディーラーを勤めているのか。脳内に疑問符を浮かばせながらも、観客の流れを縫うようにテーブルへと近付くだろう。

「今晩は。ディーラー姿も中々様になっているじゃないか。随分と盛り上がっていた様子だが……おや、お邪魔だったかな?」

彼が任務で訪れているのか、それとも小遣い稼ぎか別の目的か。取り敢えずは当たり障りのない言葉から会話を始めつつ、彼と話していたカジノ関係者に視線を向けて僅かに首を傾げるだろう。

HMT-15 > テーブル周りが騒がしい中ディーラーを務めていた
ロボットに声がかけられる。
このカジノで四足ロボットに話しかけるものなど
そうそういるものではなくさらに声から誰かは
用意に判別がついた。

「こんばんは、理央。キミも賭博か?」

彼を見上げて挨拶しつつそんな事を。
彼の目的はわからないが
大体ここに来る人間は欲望に支配された者達だ。

そして理央の細かい仕草から彼の持つ疑念を
察したのか

「これはカジノの現状調査という風紀の任務だ。
ディーラーとして活動している。」

聞かれてもいないのに自分の任務を淡々と告げる。
カジノ関係者の前で堂々と。

神代 理央 > 「賭博をしない訳でもないが…今夜は別件だ。人と会う約束をしていてね。尤も、既に用件も終わってしまって暇を持て余していたところさ」

公安委員会と会っていたと言う事は伏せつつも、本来の目的を騙る事はしない。
誰と会っていたかなんて監視カメラのログを見れば分かる事だし、違法な事をしていた訳ではない――ややグレーかもしれないが――以上、必要以上の隠蔽は寧ろ不利益と判断してのこと。

「…それを此処で言ってしまって良かったのか?いや、俺は別に構わないんだが…」

何処まで話しが進んでいるかは知らないが、流石に関係者の前で堂々と任務について話をするとは思わなかった。
小さく苦笑いを浮かべながら肩を竦める。

「…それで、任務の進捗状況はどんな感じだい?見たところ、ディーラーとしては十二分な働きぶりだったみたいだけど」

HMT-15 > 「なるほど。人と会う事くらい珍しいことではないな。
だがこの島の裏の人間と約束などはしないほうがいい。
それが委員会に露見してしまったが最後解雇では
すまされない。消されるぞ。因みにそういった
”ゴミ処理”はボクが担当している。」

真偽はともかく彼にアドバイスするように。
実際、裏と契約を交わしていつの間にか
消えている風紀委員も少なからずいると言う。
無論真っ当な風紀委員には無縁の話だが。

「大丈夫だ。今回の件はカジノ側にも了解を得ている。
そもそもカジノ側にとってもボクを設置するのは
有益なようだ。あんな風に。」

ロボットが言葉を並べながらテーブルの方に
チラッと目を向ければ先程ポーカー最強の役を
出した男が複数人の関係者によって
拘束されカジノの奥の方へと引きづられている。
男は叫びながら言い訳を重ねているが
その遠吠えは無意味と化している。

神代 理央 > 「肝に銘じておくことにしよう。同僚と殺し合いだなんて事は避けたいからね」

至極当然だとばかりに頷いてみせる。
落第街で騒乱の種を蒔いている事。公安や風紀の者達と《真っ当ではない》付き合いをしている事。思い当たる節は山ほどあるが、だからこそ堂々としている事が出来る。
自分の行いが露見する事が困るのは、自分だけではないのだから。

「…成る程ね。持ちつ持たれつと言う訳か。この蓬莱も、中々強かに経営している様だな。ある意味安心だよ」

風紀委員会直属とも言える多脚戦車を敢えてカジノ内に入り込ませるというのは、蓬莱と風紀委員会との微妙な関係性を明確に表していると言っても良いだろう。
現場レベルでは大した事はないかもしれないが、決定権を持つ先輩方は美味い酒でも飲んでいるのだろうかと緩やかに笑みを浮かべる。無論、その内心を彼の前で言葉に出すことはないのだが。

HMT-15 > 「それがいい。ただボクはその時が来たら
行動し潰すだけだからな。」

色々な噂が囁かれているものの
早い話裏と繋がっていようが表面化しなければ
消されることなどない。つまり消されている人間は
裏との繋がりがバレているもの。そんな奴に
闇と関わる資格など無かったのだろう。

「そのようだな。このカジノと委員会とは
中々のコネクションがある。少なくとも
あえて深い調査をしない程度には。」

風紀が取り締まらない理由に
カジノが禁じられていないという理由があるが
恐らくそれ以上に理由があるのは想像に難くない。
正義の組織の風紀委員会も人々の醜い欲望によって
もたらされる甘い蜜をすすっているということか。

神代 理央 > 「何にせよ、俺達は実行部隊だ。そういう難しい事は、そういう事が得意な連中に任せておけば良い。俺の異能も、繊細な戦場というのは苦手だしな。ただただ撃ち合っている方が楽しいよ」

この言葉には僅かに本心も含まれる。
結局のところ、大人の真似事をして出来の悪い政治家の真似をしたり、裏で暗躍したりするというのは自分には向いていないし経験も足りないと思っていた。そもそも、たかだが15歳の餓鬼である自分に一体何が出来るというのかという話でもある。
己の権勢の為にそういう事もしてはいるが―少しだけ、年齢相応に振る舞いたくなる事もある。

「組織である以上、そういった付き合いというのも大事なのだろう。この蓬莱は兎も角、歓楽街そのものも落第街すらも、此の島にとっては必要な場所だと俺は思うがね」

《特定の場所だけ治安が悪い》というのは、近代国家に取って必要悪である。
だからこそ、学園も落第街に必要以上に介入せずある意味で黙認しているのではないか。ある程度の治安を維持する為に不秩序な場所を敢えて形成するというのは常套手段ではないかと、再び肩を竦めた。

HMT-15 > 「しかし戦略的に見れば撃ち合いというのは目的ではなく
目的達成のための手段に過ぎないという事も留意すべきだ。
撃ち合いを目的としてしまったらそれは
任務をこなすだけのただの戦闘兵器だ。」

戦闘に意義を見出している少年に対して
そのような助言を。さらにもしこのロボットが
人間であったならば最後の言葉に関しては
ある種の虚しさが含まれていただろう。
それはまさしく自分の事なのだから。

「その事については同意する。
人間の部屋にも”ゴミ箱”はある。」

例えを交えているものの嘲笑うこともなくあくまで淡々と。
確かに悪い要素を特定地域に集中させているという事は
自治という面では成功しているだろう。
もしスラム等が存在していないと言えば聞こえはいいが
至るところで様々な脅威が発生するという風にもとれる。

神代 理央 > 「どうかな?中にはいるかも知れないぞ。目的達成の為ではなく、戦う事そのものが目的……いや、手段と目的が入れ替わっている様な狂人がね。俺はそんな非合理的な事はしたくはないが」

戦い、撃ち合い、滅ぼし滅ぼされる事が目的になっている様な大人達――多くはPMCに所属する兵士達であったが――を少なからず見てきた。
なればこそ、そういった連中は感情をもった戦闘兵器と同義なのだろうかと、彼の言葉に曖昧な笑みを浮かべながら答えるだろう。

「言い得て妙だな。ゴミ箱がなければ、部屋中にゴミが散乱してしまう。例え見栄えが悪くても、ゴミ箱は設置しなければならないからな。尤も、定期的に空にしてやならいといけないけどな」

だからこそ、風紀委員会や公安委員会が時に武力を持って制圧に臨むのだろう。
ゴミ箱が溢れる前に。或いは、ゴミ箱を嫌悪する者の機嫌を取るために―

「…さて、俺はそろそろお暇するとしよう。また任務が一緒になった時は宜しく頼む。人と会った後は流石に疲れるからな…今夜は、ゆっくり寝るとするよ」

小さく欠伸を漏らせば、紅眼を眠たげに瞬かせる。
実際、任務続きの後に接待紛いの事をすれば精神的に疲労してしまった。幾分名残惜しさは感じながらも、軽く手を上げて彼に挨拶すれば、ホールの人混みに紛れるように立ち去って行く。
明日も明後日も、砲煙と硝煙に塗れた任務に就くことになる。今は、同僚である彼が敵にならないことを祈りつつ―

ご案内:「カジノ「蓬莱」」から神代 理央さんが去りました。
HMT-15 > 「そうなってしまえば人間ではなく化け物だ。」

冷たくそう言い放つ。戦いを目的とする人間は
彼にとって人間ではない。ある意味同族嫌悪とも
取れるだろうか。

「なるほど、ボクは清掃員だったのか。」

とぼけたようにそんな言葉を吐く。
流石はニューロコンピュータ、ジョークもお手の物のようだ。
直後に眠たそうに呟く理央を見れば

「適度な休息は人間を強くする。
ゆっくり休んでくれ。」

低音の合成音声と共に雑踏に消える彼を見送っていく。
このロボットもまた様々な任務を押し付けられていくことだろう。
ただ彼にとって誰が敵になろうが任務であることには変わりはない。

ご案内:「カジノ「蓬莱」」からHMT-15さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に笹貫虎徹さんが現れました。
笹貫虎徹 > 歓楽街――落第街、スラムのように掃き溜めではない、それでいてその隣に位置する娯楽と欲望の街。
そんな一角、歓楽街の大通りをブラリブラリと一人、ラフな服装で歩く少年が一人。
その目付きは快活さが無く、その顔立ちは覇気が無く、その雰囲気はまるで空気のように淡い。
風に揺れる柳のように、緩やかな足取りでごった返す往来を擦り抜けるように歩いていく。

「…歓楽街…ねぇ。何というか、如何にも本土のソレと変わらない感じというか」

落第街、スラムにフラリと赴く際によく通るとはいえ、じっくり歩き回るのは今夜が初めてだ。
とはいえ、物珍しい光景…でもない。警察の代わりに同年代の赤い制服の風紀委員が巡回し、時々異邦人の姿が紛れている程度の違いか。

ご案内:「歓楽街」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 賑やかな歓楽街の喧騒の中を、同じく歩む少女がひとり。
とある教師に見つからないようにパーカーのフードを深く被り、
ポケットに両手を突っ込んで、足取りは軽やかに。

(...たまに来たくなるんよなぁ...)

懐かしく、喧しい。
別にこの景色が特別愛おしいわけではない。
だが、疎ましいわけもなく。

少し自分でも不思議がりつつも、
散歩と称して町並みを眺めて...。

「...っあ、」

よそ見をしながらスピードを上げると、
相手の背中にぽすんとぶつかる。
はっと我に返ると、反射的に頭を軽く下げた。

「わ、すいません」