2015/07/14 のログ
ご案内:「落第街大通り」にヴィクトリアさんが現れました。
■ヴィクトリア > 【オープンカフェで炭酸飲料を飲みながらだらっとする
具体的には、別にここはオープンカフェでもなんでもない
単に、厨房と販売のみの狭い飲食店の前で勝手に出来た場所だ
適当なプラケースや一斗缶、ドラム缶など、ゴミが勝手に持ち寄られて出来た飲食スペースである
そこを占拠してブリトーを頬張る】
あー、うざー。
【正直、海は嫌いだ
体型ひとつでアレだけ嫌な思いをするところも少ない
……ので、今日も落第街である
正直、別に好き好んでこの周辺にいるわけではないが、使える2級の連中が多く、女王様として振る舞える以上
どうしてもこのへんに来ることが多い
犬飼や代理の野郎との関係がもっと良かったら海というのもなかった話ではないが、いまの彼女には関係ない】
■ヴィクトリア > うーあー、どーして夏なんかあるんだちくしょー
だいたいあんなのリア充どものイベントじゃんか
そっち側にいけりゃそーかもしんないけどさ、まったくふざけんなっての
結局ボクなんかはこーやってくすぶってるのがお似合いだからなァ
【ドラム缶に突っ伏して頭をあずけつつぼやく
正直なっとくいかねー
だいたいボクのそう言う事情はここのところ最悪といえる
夏前に長年の友人に振られ、かと言って好意を振ってくれてたと思っていた犬飼には騙され
その上、体は汚され踏んだり蹴ったりだ
ヴィクトリア自身は事実をねじ曲げられていることに気づいていないため、そう思っている
2代目がしでかしたあおりを受けているとも言える
何にしても現状は変わらないしついていないのはそのとおりだった
仕方ないのでブリトーを齧ってもきゅもきゅする】
■ヴィクトリア > ……ま、しょーじきなんもないんだけどさ
だからって、海は体型だけで差別されるしよー、そもそもハードル高すぎ
どーせボクみたいな貧弱なお子様は着ていく服がねーっての
やー、海ムカつくわ、マジでムカつくわ
【海に興味はあるといえば大いにある
だが、実際行くとなると何を着ていいのかわからない
そもそも、誰といって何をするのかが重要なのだ
取り巻きの連中を連れてってもいいのだがボクが面倒見るのは困る
とゆーかボクは面倒は見れないしむしろみてもらう側だ
ドラム缶に頭を預けたまま恨み節三昧だった】
■ヴィクトリア > ……だいたい水着が選べる時点で選ばれた人種じゃねーか
ずりぃ
【なお、ヴィクトリアは先代ボディより少し成長しているため、AAAがAAになっている
そう言う意味ではまだ悲観したものではないはず】
■ヴィクトリア > あー、なんだよ酔ってないぞボクは
ってゆーか、ただのサイダーで酔うわけねーだろ?
こっちみんなてめー、愚痴ぐらいこぼさせろまったく
【胸囲の格差社会は落第街のほうが深刻かもしれない
こんなところにまで影響があるのだから
集団で店の前を占拠してるヴィクトリアにガンくれてるやつを追い払う】
いーじゃんかよ、胸の代わりにボクは懐膨らますしか能がねーんだからよー
■ヴィクトリア > だいたい、海だけでもうぜーのに劇団の連中がボクの庭を荒らしやがる
ったく、公安もロストサインも劇団もボクの財産食い荒らしやがって
好き勝手壊しやがって、物事整理するボクの身にもなれってんだ
【2級IDは一応、擬似的に滑りこませてる以上、死んだままとかでアクセスがなくなったら問題が起こるのだ
もしそういうのが出たらダミーに中身を入れ替える必要がある
だからこういう大規模に使い倒されるようなことをされるとヴィクトリアは単純に面倒くさい
さらに言うなら、借金未払で死ぬ奴が出てくる
正直、情報屋で金貸しで偽造屋としては何のメリットもなくめんどくさいことしか無いのだ】
■ヴィクトリア > 特に劇団はマジ好き勝手するから死んでほしーなー、ドラッグパーティはボクの管轄外でやってくれよナー
【ギリギリまでコップを傾けてストローをくわえる
ストローを無理やり折ってるので吸えない、ぐぬぬ
じたばた】
■ヴィクトリア > ……正直ドコでウサを晴らすかって話にしかならねーなコレ
ボクには特にできること無いんだしさ
なんつーかな、暇なのにウザい感じ?
しかもボクのせいじゃねーって言うな
【ついこの間まで、ボクの周りはもう少し賑やかだったり、もう少し充実してたはずだ
……全部なくなったけど
で、夏で騒動で、対処法もないのにボクは仕事を強いられる上に削られる
なんだこれ
自分で内容をまとめててなんだか悲しくなってきたぞおい】
■ヴィクトリア > ああ、ちきしょうっ!!
【ガバっと起き上がると、椅子代わりの飲み物ケースを蹴飛ばす
……マジやってらんない
何だ何なんだこのところの運の悪さは】
■ヴィクトリア > 【ヴィクトリアは、自分が改変されたことを知らない
満たされていながら満たされないよう調整されたことも
他人を頼りに行きすぎないようにされたことも
事実をねじ曲げられたことも、恋人と引き裂かれたことも知らない
そう言う意味では、室長代理補佐の勘は実に正しく、危機管理が正確だったとも言える
もともと深入りしたら問題が起こるようにできている少女なのだ
実際問題、学校にも顔を出さず落第街で閉じこもってくれたほうが運用上都合がいいのだ】
■ヴィクトリア > あー、マジやってらんねー、ホントやってらんねー!
くそッ、マジざけんなあいつら!
なんでこのボクがこんなくすぶってなきゃいけねーんだよ!
ざっけんなよマジで!!
あーくそ!くそくそくそッ!!
ボクがなんでこんな目に合わなきゃいけねーんだよ!
【チュッパチャップスの包みをはがすとガリガリと齧りながら壁を蹴る
一人でいる、もしくは話し相手がいなくなると大体こうなるのだ
特に何もなければ、その後は決まって宴で騒ぐだけだ
いかがわしいのもそうでないのも含めて
……体を汚すことにも慣れてしまった
ボクの体なんかに意味は無い
少なくとも少女はそう思わされ、性行為に大した意味など無いのだと思うようにされてしまっている
誰にも頼らないよう、頼れないよう、満たされつつ、満たされないように
少女はそう言う人形だった】
■ヴィクトリア > 【作られた心は適度に濁され、都合良く踏みにじられ、調度良く調整されている
ジオラマを汚すように、新品のジーンズを洗うように、少女の心は穢されている
これだけ言っていながら、結局落第街でクダ巻いてじゃれあうことで心を埋めることしか出来ないのだ】
ご案内:「落第街大通り」にアンヘルさんが現れました。
■ヴィクトリア > ……ああ、もういいや、くそっ
【所詮、少女の力だ
蹴ったところで、もちろん飲み物ケース一個壊せない
頑張って、壁に当たる程度だ
何もかも気に入らなかった】
■アンヘル > 「あー……あ゛ぁああー……」
まるで地を這う蛇のような、あるいは地獄の底を這う虫のような。
低く、暗く、気だるげな響き。
ガン、ガン、ガン、と地面を叩く金属音とともに見知った影が現れる。
「あぁあー?」
ちょうど、壁に当たり散らす知人の姿を見て、チェーンがじゃらりと音が鳴った。
■ヴィクトリア > …………。
【明らかに落胆半分でイラつきを隠せない
所詮、蹴ったところで、樹脂製の飲み物ケースは頑丈だ
ドラム缶のテーブルを蹴らないのは、蹴ったところでせいぜい揺れる程度
足のが痛いのを知ってるからだ
ヴィクトリアができる暴力など、せいぜい一斗缶を凹ます程度だ
弱い自分も、一人の自分も、この息苦しさも許せなかった】
■アンヘル > まるで。その怒りを代弁するかのように。
ヴィクトリアが蹴り飛ばしたケースを勢い良く踏み砕く。
「おいおい、こんなところでよォ、ポイ捨てなんてしちゃいけねえよなあええおい!?
ヴィークートーリーアァ! 生活委員のお兄さんたちがよォ!
よなべして整備してるわけもねえ努力が特に無駄にもならねえだろうがァ!」
ついいましがた、自分で踏み割り破片をまき散らしたという事実を圧倒的に棚上げしながらアンヘルが無実の罪をあてこすった。
どかんと、ヴィクトリアの対面にあるケースに改めて足を載せ、座ることもなくヴィクトリアを見下ろした。
「ごきげんじゃねえか。ええおい、なぁ」
■ヴィクトリア > ……ナンだよ、今ボクは虫の居所が悪いんだよ
いくらお前でも、下手なこと言えばその記号抜くぞ、ええ?
【交渉としては最悪だ
最初から最高にひどいことをするぞ、と言ってしまうのは交渉でも脅しでもない
単なる強がりの虚勢だ】
で、劇団とかロストサイン共はどーなってんだよ、ええ?
【この野郎、ボクが転がしただけのケースを簡単に壊しやがって
どーせボクは非力なガキだよ……
何を言っても虚勢にしか見えないだろう
こういう時のヴィクトリアはだいたいそんなものだ
怖さも凄みも交渉の上手さもない、ただのガキだ】
■アンヘル > 「あぁ!? おいおいおい、ヴィトクトリアァア、オレがァ!?
そんなおどしにびびると思ってんのかよいちょっと危機感足りてねえんじゃねえのかぁ!?
お前はあれかぁ! バカなのかぁ!?
ライオンの前で肉チラつかせながらこれが欲しけりゃ輪っかをくぐれとか言ってくる一般人かよええおい!」
思わず勢い良く、もうひとつのケースをも踏み潰してしまった。
なくなる椅子。座る場所を失ったアンヘルはガリガリと頭を掻きむしりながらドラム缶へ座り込んだ。
「鋭意捜索中ですゥー! そもそもオレぁそのフェニーチェくんの顔も知らないんでなあ!
鼠どもを走らせてる最中なんだよ、ちったぁ頭を回せテメエはアホかぁ?!」
仕事の話に対してはまともに応じる。明らかにあおっている態度だが、
彼にとっては平常運転。ガン、ガン、と地面を蹴りながら報告する。
■ヴィクトリア > ……うるせぇよ
テメーは黙って依頼こなしてりゃいーんだよ
【最悪のタイミングだ
コイツの軽口なんかに付き合わないで話の論点だけ持ってきゃいいのに、何だコレ
全部コイツのペースじゃねーかよ……くそッ!
明らかに、アンヘルのペースで、まともに言葉を返すことも出来ない】
■アンヘル > ガン、ガン、ガン。
徐々に早まるその速度は、アンヘルに明らかに苛立ちが高まっている証拠だ。
見下ろすようにヴィクトリアを見ながら、不機嫌そうに頭を掻き毟る。
「あああ? 黙ってればァ!? テメエの頭は本格的に鳥以下かおい!
オレが黙るときなんざ女抱いてる時ぐらいしかねえって知らねえかそりゃしらねえよなぁ! テメエはオレのおかんじゃねえもんなあええおいクソ!」
高まってきた苛立ちをぶつけるように、アンヘルの回し蹴りが近隣のドラム缶に炸裂した。
ひしゃげる、を通り越して抉られたドラム缶。
ひしゃげ切られた鋼板が地面に落下してやかましく音をたてた。
「おいおい、このオレとのおしゃべりなんざつまんないってかぁ!?
学園の講義じゃねえよなあ! 黙ってて得することなんてひとつもねえぜおい!」
■ヴィクトリア > 黙れよ……だいたい、その名前で呼ぶなっつったろーがよ
つまんねーからその臭い口をふさげって言ってんだよ、このマザコン!
ことあるごとにおかんおかん言いやがって、おっぱいが恋しいのかよええ?
【えぐれるドラム缶……泣きたくなるほどの差だ
チュッパチャップスの新しい包みを剥がして齧る
それでもヴィクトリアは軽口をやめらんない
軽口というよりかは既に煽りのレベルなのだが、それしか出来なかったからだ
端的に言っていいようにアンヘルのペースで思惑通り動かされている】
■アンヘル > 「マザコン! オレがマザコン! そりゃあいい!
だったらなんだ、親の顔も知らねえオレに! テメエがお母さんプレイでもしてくれんのか!?
お優しい落第街のマザーは言うことが違うじゃねえか、ええおい!」
ヴィクトリアほどの人間ならば聞き及んでいるだろうか。
あらゆる記憶操作系能力者を駆使してなお、その素性を突き止めることのできなかった記憶喪失者。
アンヘルという名の孤高の男。
苛立たしげに地面を蹴るが、それが誰に向けての、どのような怒りなのかは分からない。
「お前はアレか? 誕生日のプレゼントをねだるガキかァ!? 泣けば済むってもんじゃねえぜなあおい!」
ヴィクトリアは泣いているわけではない。
だが断定するように言ってのけながら、
自分は胸ポケットからグレープ味の板ガムを三枚取り出して一気に噛み始める。
■ヴィクトリア > だから……だまれっつってんだろ!!
テメエいーかげんにしろよな、ええ?
【キレた
ダメだった、この感情を指摘されてしまってはさすがに耐えられなかった
どうしようもなく泣きたいのだ
誰かにすがりたいのにどうにも出来ない
だからパーティで誰かを抱くなり抱かれるなりしようと思っていた矢先だったというのに
だというのに……アンヘルの前に力なく転がる程度に一斗缶を蹴り飛ばすのが精一杯だった】
■アンヘル > 「じゃあどうする? テメエはよお!」
挑発に乗る形だ。穴の開いたドラム缶に足を乗せながらアンヘルは猛る。
「オレのIDを剥奪するか? いいぜ、やってみろ。それで困るのはテメエらだ。分かるよなあ、なあ!!」
壁を拳で叩く。ダン、ダン、ダン。
耳障りなチェーンの金属音とともにやかましい拍子が刻まれる。
「いつものかわいこぶってるヴィクトリアが! お笑いだぜ、ええおい!
どうしたァ、今日はずいぶんしおらしいじゃねえか。あぁ? ケツふってんのかよ!」
アンヘルは笑わない。いつも狂ったような猛りを何かにぶつけるだけ。
怒りに満ちた指がアンヘルの頭を引き続いて掻き毟る。
ぐちぐちと噛まれたガムはあっという間に味を失っていく。
それだけでもただ苛立ちを募らせた。
■ヴィクトリア > ……っ!
【IDを奪っても負け、奪わなくても負けだ
別に奪ってもいいのだが、此処で挑発に乗せられて奪うことにまったく意味はない
上司に帰ってもいいんだぞ、と言われてる時と一緒だ
実際、いまの彼女とアンヘルにはそれぐらい開きがある】
だまれよ……黙れっつってんだろ!!!
【俯いたままアンヘルに殴りかかる
まともに前も見ないままで素人が殴りかかるそれは
避けられたら転ぶ程度のそれだ】
■アンヘル > 殴られる。いくら殴られようとアンヘルはびくともしない。
避けようともしないし、避ける意味も感じない。
ただヴィクトリアを見下ろしながら、苛立たしく壁を殴るだけ。
いや。
「おいおいヴィクトリア! オレを殺したいならせめて急所ぐらい狙ったらどうだ!
分かるかぁ!? ええおい、ウブなネンネじゃあるまいに!
ここでの作法なんざ心得てんだろレディだろなぁ!」
片手で己の分かりやすい急所――筋肉を鍛えた程度では対処できない喉元や睾丸などを指し示す。
指し示したあとで、打撃を避けようともせずヴィクトリアが口に咥えた飴玉を奪い取るだろうか。
■ヴィクトリア > ……っ、うるせえよ!
うるせえええええって言ってんだろぉ!!
黙れよ……だま…………ッ!?
【奪われる飴……明らかにうろたえる
なんか自分の大事なものを奪われたような気分だ
目の前がぐるんぐるんする、吐きそうだ
吐きそうなだけで吐くわけでも目眩がするわけでもない
ただ、ショック症状が演出されてるだけだが、それで十分だった】
あ……あぁ………………あ……
かえせ、かえせよ………………ボクの、ボクのそれを返せよ……ぉ!
【明らかに半泣きで、すがりつく
いつもの強気な彼女はドコにもない……
取り巻きの制御もままならくなったのか、いつしかアンヘルと2人だけになっていることにも気づかないまま】
■アンヘル > 「はっ!」
笑い飛ばすような語調。しかし彼の顔はただ苛立ちに歪んでいる。
「なんだよオイ、こんなもんが欲しいのか!? えぇおい!
ヤクでも決めてんのかハイなのかぁ!? ダウナートリップ決めてんじゃねえぞおい!」
そういって。飴玉を自分の口の中に放り込む。
ガムと飴が同時に存在するという奇妙な食感が、また男を怒りへ駆り立てる。
ガン、ガン、ガン。
じゃら、じゃら、じゃら。
すがりつかれ。周囲には誰も居ない。二人だけ。
常日頃からアンヘルが口にする"想像力"。それを働かせるだけの力が彼女には無いらしい。
「オレはテメエのおかんかァ!? 違うよなあおい!
友達でもなけりゃあ恋人でもねえ。それはこないだも言ったよなあ!
想像力足りてねえんじゃねえのか!? ええおい!」
とうとう、壁が根負けして拳によってヒビが入る。
壁の破片を握りこみながら見下ろした。壁を叩いていた片手がようやく空いた、とも言える。
■ヴィクトリア > 【チュッパチャップスはプリン味である】
かえせよ……、それを……
それは……ボクのだ
……ボクの…………なんだから…………ぁ
【拠り所を失ってしまえば、不安定な精神がのこるだけだ
代理も犬飼も知り合いも取り巻きも飴玉さえ失い、唯一の特技とも言えるIDまで効果が無いとなれば……
ヴィクトリアはただアンヘルにすがりつくのが精一杯だった
想像力どころではない
ただただ、泣きながら懇願していた】
■アンヘル > 「ああー……ああぁあ……ああァアア!!!」
いらだちの中、飴玉を噛み砕く。
もう味もしないガムとプリンの生ぬるい甘みが混ざり合う。
手のひらの中の破片が粉と化して握りつぶされた。
「テメエ! テメエはそうやってよォ! 都合がいいよなァ!
あァいいぜ! 相応に扱ってやらあ! クソ! クソが!」
猛りながら強引にヴィクトリアの口付けることだろう。
アンヘルをはねのけられなければ、ガムにまみれ少し砕けた飴玉がねじこまれるはずだ。
■ヴィクトリア > んぅ………………ッ!?
【抵抗できるはずもない
もともと全力で抵抗してすら、ほとんど抵抗にはならないのだ
されてから抗ったが……アンヘルには抵抗とすら思えないレベルだろう
せいぜい、フリなのか何なのか、と思うような強さでしかない
都合がいいと言われても仕方がない
ヴィクトリアはそうされるようにすべてを作られてるのだから
だから、いやいやながら受け入れざるをえない
そして受け入れてしまえば……いやいやだけではすまなくなるように作られていた
もちろん、自分ではなぜそうなるのかもわかっていない】
■アンヘル > その姿にすら、アンヘルは苛立ちを覚えるのだろう。
だから一度身体を離して、
「あ、あ、あぁあああ!!」
苛立たしげにドラム缶に回し蹴りを叩き込む。
どれほどの苛立ちか、最早原形を留めぬドラム缶が壁にたたきつけられ轟音をかき鳴らした。
ガン、ガン、ガン。
男の怒りは最高潮に達しつつある。かつてのリズムと同じ拍で金属音が刻まれる。
「選べよヴィクトリア。ぶっぱらされてえか、殺されてえか、抱かれてえか、それともここでオレからケツまくって逃げるかだ」
ダウナーテンション。頬をがり、と掻きむしって、睨みつけるような表情で。
選択を与える。いつもどおりだ。彼は自分から選び取らない。
■ヴィクトリア > 【アンヘルも結局は2級IDだ
もしかしたらヴィクトリアの無意識に操られているのかも知れないしそうでないのかもしれない
何にしても、絡め取られるような、糸を手繰ってしまったような、そんな感触を感じるのかもしれない
もちろん、ヴィクトリアは……ただ望まれるぐらいの行動をするだけである
離されれば、地面にへたり込む
泣きながら抵抗もできないし逃げることすら出来ない】
……ああ、なんだ、そっか
つまり……ボクは
【なんとなく理解した
前はまだ、女としてはとりあえず役立つのだと思っていた
それもうぬぼれだったと気付いたのだ】
……もう陵辱すらされないのか
【分かってしまえば、乾いた笑顔で見上げるだけだった
なんだ、つまり、やっぱりクズなんじゃないかボクは
そうやってネガティブに設定された自意識を認めざるを得なくなってしまう
当然、そのままであればヴィクトリアは沈んでいってしまう
だから、周囲に助けを求め、その能力を行使する
3機目の実用機である彼女は、そうしてアンヘルを絡めとっていく】
■アンヘル > 「これだから」
アンヘルは狂気の淵に沈んだ男だ。だからなのか。ヴィクトリアの命令は跳ね除ける。
いや、そもそも精神操作系の異能を跳ね除けられなければ
そもそもこの十年、とっくの昔に男は骨までしゃぶり尽くされていたはずだ。
望まれている。糸をたぐられている。不快な感覚だ。
「これだからよォ……」
苛立ち。"かわいこぶって"いないヴィクトリアの姿に、狂おしいほどの怒りを抱く。
「今頃わかったのかよ、ヴィクトリア! テメエはクズだ。オレもクズだ。
この常世島にゃあなあ! 生き方を教えてくれるゼミなんてねえんだよ!」
その糸に手繰られるように。いや、むしろその糸を引き寄せるようにヴィクトリアの腕をつかむだろう。
「知らなかったか!? 知らなかったよなァおい! テメエがクズだって誰も教えてくれなかったか!?
そりゃあ悲劇だなあ! シェイクスピアも鼻で笑うぞおい!」
こいつはダメだ。ヴィクトリアはそのまま沈んでいくだろう。
結局のところ、ヴィクトリアが力を行使した以上遅かれ早かれ変わりはしない。
「どうせ"この場面"はゼミで習ったんだろう。
抱くぜ、クソッタレ」
■ヴィクトリア > 【昏い瞳で、笑う
感情が何も浮かばないから出る笑いだ、悲しいとか言うより、虚無感からくるそれで見上げた】
……クズだってのは、知ってんだよ、ボクは
たださ……価値があると思いたいじゃないか、なんでもいいから
いーだろ、少しぐらいなんかあるって思ったって……
お前だって……力が何もないとか思いたくないだろ?
なのに……なのに、さ
ただでさえダメなのに……そのダメなことすらも価値がないって思ったら……
【その先は言わせてもらえなかった
腕を捕まれ強く引かれたからだ】
■アンヘル > 抱き寄せ、抱え上げ。こんな猥雑なところでヤるのは趣味じゃない。
しかし、そうなるとどうしても両手が塞がる。
ガン、ガン、ガン。
苛立たしげに地面を蹴る。額には青筋が浮かび、手は震え。
ただやり場のない怒りを抱えている。
「価値? 知るかよおい! テメエに金積んで買い取りゃ満足かァ!?
一億でも十億でも言い値で積んでテメエに価値をつけてやりゃあ満足かぁ!?
違うよなァ、ええおい!」
この常世島で、個人で金を貯めこんでいる男といえばこの男は上位に食い込むだろう。
失う以上に勝ち取った金たち。一戦で何千万と金が飛びかねないほどの装備に身を包んだ男。
所詮仕事など生きる手段でもあり道楽だ。おおよそ、暴力で己の価値を認めさせた男といって相違ない。
「テメエの価値なんざ……まあいいや。どうせ言ったって分かりゃしねえし、
分かったらそこでテメエはテメエじゃなくなるんだろうな」
言いながら、ヴィクトリアを自分の寝床へ連れて行く。
何の雑音も混じらないような、静かな場所に。
■ヴィクトリア > ……。
【知ってんじゃねーか……
コイツはきっと持ってるんだ
ボクには……
ヴィクトリアは、そう思うことしか許されていない】
…………?
【ヴィクトリアにはわからない
何を言おうとしているかも、実際の価値も、真実も
人形は人形であることは可能な限り理解できないから
人形らしく操られている
アンヘルの怒りも、行動の意味もわからない
そもそもこれだけ怒っていながら抱くというタイプではない
なのに連れ帰ってまでそうするというのもよくわからない
だから、涙をにじませながらキュ、と抱きつくしか出来なかった
……プリン味になったガムは少し甘かった】
ご案内:「落第街大通り」からアンヘルさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からヴィクトリアさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に『美術屋』さんが現れました。
■『美術屋』 > カランカランっと下駄の音を鳴らしながら
一つの屋台。その暖簾をくぐる。
「日本酒。熱燗。一口おでん、適当に」
席に着けば、一瞬ぼーっとしていた店主が
返事をして、テキパキと用意し始める。
長い髪をうっとしそうによけたあと
静かに、頬杖をつく。
――やれやれ
心の中でため息ひとつ。
先日こっぴどくやられた。
それは”もう一つ”からのぞいていたし。
まだ動いてもいないそれに、わざわざそんなことをしたのは
一体どれだけの意味があるのかと、瞑目して考える。
――ぼく等は求められての演劇はしない。なぜなら自分たちが
したいからだ。あの狂った劇を、披露し完成させたいからだ
しかし……
――求められても、いる
静かに、あったかい雫を喉に落とす。
切れが、いい。安物かもしれないが
高級感あるそれとはまた違う良さがあった
■『美術屋』 > 人は正しさだけでは生きていけない。
むしろ、正しさが勝つ場面を見たいと思っているのは
ごく少数かもしれない。
なぜなら、きれいにそこまで人は生きていけない。
だから――それが時に眩しく、時に闇のように暗い
小さながんもを、これまた小さな口に含む。
じゅわっと広がるだしが心地よい
つまるところ、演者は誰一人として
舞台から降りてはいない。
場所と、後ろ盾がいなくなった。
ならば、まだ”不死鳥殺し”はなっていない。
――違うかい? 『脚本家』
いない、誰かに声をかけるように
猪口を静かに持ち上げた。
――資金、か
串を次の種にさしながら
静かに考える。
ルートならそれなりに持ってる、が――
それが必要なのかどうか。
――必要ならあっちからくるか
カードは取っておくからカードなのだ。
切ってしまえば、タダの紙くず。
今頃きっと、墓を掘り返している頃かもしれないし。
血に染め上げて鮮やかを彩ってるかもしれないし
既に新たな機械仕掛けの神を下ろしている頃かもしれないし
輝きの橋を渡している頃かもしれないし
ひっそりと気付かれないよう、殺陣を仕込んでるのかもしれないし
もうすでに新たな舞台―おおどうぐ―ができているのかもしれないし
布地をみつくろって仕立ててるのかもしれないし
気ままに演奏してるのかもしれないし
演出の選別に入っているかもしれない
――根拠なんてないけどね
でもそうじゃなきゃ、とっくにチキンの丸焼きになってるだろうさ。
■『美術屋』 > ちっちゃなロールキャベツ。
しんなりとしたキャベツと肉だねが実に合う。
じーっと店主に見られているのでにこりと微笑んでおいた。
――もう少しゆっくりしようか
次の”客”までは時間がある。
重労働だから、あまり食べすぎ、呑み過ぎはよくない
戻してしまいかねない
どんな、ニーズがあるかわからないし
それでも今は、そっと次の産声をあげるまでゆっくりしたかった
「というわけで、ぼくは元気だよ。皆々様、いつかの公演、お楽しみにね」
くすりと微笑んで、誰かに告げた
■『美術屋』 > 「ごちそうさま、店主。”またがあればくるよ”」
お代を置いて、静かに立ち上がり。
そっと屋台を後にする。
目の前にはひとりの男と女。
カップルだろうか――
舌が潤う……
まだ、時間はある。
1、2戦くらいは――
少し、ファンを増やしておこうか
「ねぇ、おにーさん、おねーさん」
――…………?
魔法の言葉をささやいて。
どこかうつろげな表情になった男女に腕をからませて
からんからんっと下駄の音を
闇に響かせながら路地裏に三人で消えていった
ご案内:「落第街大通り」から『美術屋』さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」にギルバートさんが現れました。
■ギルバート > ロストサインの件が落ち着いたと思えば、今度はフェニーチェといった演劇集団が暴れていると巷でも噂になっていた。
一難去ってまた一難とは聞こえはいいが、厄介事は複数の層となって、まるでパイ生地の如くこの島に覆い被さっている。
そんな環境で生きなければいけない自分を含めて、どうにも彼にはこの島が、巨大な虫かごに思えて仕方がなかった。
外に居場所がある人間が、どれだけいるのか。
考えるだけで、薄もやに頭の中が取り込まれてしまいそうになる。
錆びたトタンのアーケードの下で、缶コーヒーを一口啜った。
■ギルバート > 一般的な学生が訪れる意味なんてない場所なのだが、妙に足を運ぶ島民が後を絶たない。
おまけに露骨に治安を脅かす組織が跋扈しているとなれば、監視の目が必要となる。
こうして公安委員の中には、住民の中に紛れ哨戒任務に当たる者もいるのだ。
今日はたまたま彼だった。ただそれだけのこと。
■ギルバート > 少年の前、店先で肩が当たった当たらないでケンカを始めた男達がいる。
こんな街中では空調設備もあるわけがなく、双方汗が迸る。
火を点けたのはこの熱帯夜かそれとも互いの余裕の無さか。ついには取っ組み合いにまで発展した。
少年はといえば、あれこそが"狭量"なのだなと何処か他人事。
"心の器"とはよく言ったものだと一人頷く。
「いつ来てもこうだな。」
手入れの行き届いていないゴミ箱に、空き缶を投げ入れる。
ご案内:「落第街大通り」に四ノ宮 雪路さんが現れました。
■四ノ宮 雪路 > 「はあ、ずいぶんと蒸し暑いね。こうも蒸し暑いとみんなカリカリするんじゃないか? そうだ、フェニーチェといったかな。彼らが動き出したのもこの暑さのせいじゃないかと思うのだけど、どうだろう。これがせんべいを焼く火鉢の熱なら気にならないのにな」
(まくし立てるような早回し。風に吹かれた風車のようによく回る舌。落第街の大通りを、白衣の長身が歩いていた)
(まるでコンパスのように規律正しい歩幅で、几帳面に真白く洗濯された白衣は落第街には不釣り合いでもいささか浮く風貌だ)
(焼きたてのせんべいの香りを漂わせながら、白い包み紙をゴミ箱に捨てる)
ご案内:「落第街大通り」にエルピスさんが現れました。
■エルピス >
髪を靡かせながら歩く少女の姿が一つ。
まめに周囲を見渡しながら、大通りを歩いている。
「少し、空気がピリピリしてる気もするね……。」
ふと見かけた店先では、喧嘩を始めた男性二人の姿が見える。
周辺に被害を出す様子は今の所ない為、一瞥し終えれば視界を戻した。
■ギルバート > 「誰に向かって語ってるのかは知らないスけど……。」
「無闇に躍ると、コケた時が大変だ。あんまりオススメしないッスよ。」
自分が公安委員だと嗅ぎ付けて接触を図ってきたのか、それとも事情通自慢の狂人か。
少なくともああまで自らを主張する手合いは、ロクなもんじゃないと経験則。
出る杭は打たれるのがいつの時代だってお決まりだったが、それでも引かない杭は特に始末が悪い。
「夜遊びなら歓楽街がオススメですよ。」
「"まともな方"のね。」
公式的にはここも歓楽街の一部だが、そんなこと信じてる奴は誰もいない。
この街に住んでる奴らですら、ただの一人もだ。
■四ノ宮 雪路 > 「ん? ああ!」
(親切か皮肉か。白衣に向けられた声に驚いたように手を打った。目を丸くするようにして)
「また僕はしゃべっていたかい。悪いね、どうにも口を動かしていないと落ち着かないんだ。確かにそれで躓いた時は多いから、気にしていつも鼻歌にしているんだけど!」
(まくしたてるように続けられる言葉は、むしろ涼やかな風のように聞きやすいはずだ。細身の長身が、まるで正直な瞳をギルバートに向けて語る)
(彼とて夜遊びをしているわけではなく、いわゆる落第街の住人というやつだった)
「おっと! 夜遊びというよりは散歩だよ! でも、確かに危ないことには変わりはないかな」
(その特異な風貌。第八区画の居酒屋『熱焼』の店主であることが分かるかもしれない。書類上、確かな認可の降りている真っ当な飲食店である)
■エルピス >
「(……あ。)」
確か、と判断する。
目の前の金髪碧眼の彼については、同じ委員会の中で、ちょっとした縁がある。
とは言え彼が今此処に紛れる様に居ると云う事は、多分"アレ"なのだろう。
知らない風を装いながら、さりげなく金髪碧眼の彼――ギルバードと、白衣の男へと視線を移す。
■ギルバート > 妙な男だな、と少年は思った。
こんな燻った街において、彼は転がる鈴の音のように言葉を紡ぐ。
目を細めて一瞥するが、視界に同じ公安の……と言うには立場もあまりに違うが、見知った顔をその向こう側に確認する。
行動理念と存在意義の関係で、公安委員は基本的に所属を明かすことはしない。
顔が割れれば警戒もされるし、名が知れ渡ればそれだけ捜査に支障をきたす。
犯罪者の報復行為など日常茶飯事だ。リスクは少なければ少ない方がいいに決まっている。
それなのに彼は、自らの名と性能を公言して任務に当たる。
外見は少女のようにしか見えないがあくまで全身は兵器、その魂はれっきとした男だというが。
「(……相変わらず、女にしか見えないよな。)」
肩を竦めて、改めてエルピスに向き直った。
「何してんスか先輩。」
■四ノ宮 雪路 > 「おっと!」
(ギルバートが向き直った先に居たのは可憐な少女。その姿を認めると一度だけ足を後ろに下げた。思うところがあったのかは分からないが、改めて手を叩く)
「もしかして逢引の最中だったのかな。気づかなかったみたいだ。もし第八区画に来ることがあったらぜひ『熱焼』に来ておくれ、謝罪の意をこめてカップル割ということにさせてもらうよ!」
(せんべいの売上を伸ばすためならば躊躇はしない。手焼きせんべい屋店主でもある男は、それこそ踊るように二人に言い放つ)
■ギルバート > 「いや、そういうわけじゃないんスけど……。」
訂正するにしても、どうにも向こうのペースに乗せられそうな気がする。
曰く店主のようだ。人と接する仕事柄、ああいうのは常套句なのだろう。
「……炉端焼きの店なんスか?」
「すいません、オレこの辺あんま詳しくないんで。」
■エルピス >
公安委員会はそのものは完全な秘密組織と云う訳でもない。
故に――公安委員会の委員は『目立たない方』と『目立つ方』に大別出来る。エルピスは後者だ。
エルピスは公安委員会として、所属と性能を公開する事は多い。
故に彼(姿は彼女だが)が、裏方として調査にあたる事は少ない。
但しその異端なスペックから、実働部隊として駆り出される事も多い。
だが、彼は何処にでもいるし、何処にでも現れる。故に、
『常世財団のある一派が寄越した、
健全な公安警察のシンボルとしての公安委員。』
『闇を生徒の視線から覆う為のブラインド』 『汎用人型決戦兵器』
『浄化作用』『婦警さん』
とも云われる事も少なくはない。
――お飾りの名刀が一、其れがこのエルピスである。
「あ、うん。ちょっとね。」
くす、と笑って誤魔化す。
いくら自分が後者と言えど、前者を暴くような真似はしない。
■四ノ宮 雪路 > 「おや、そうだったのかな。手焼きせんべい屋……兼、居酒屋でね」
(あまり認めたくはない事実に、後半部分は肩を落として語る。いかにも残念だ、と全身で表現する様はまるで子供のようだ)
「あ、居酒屋といってもお酒を飲むとか席代を要求するとかそういうのじゃないんだよ。未成年歓迎、どっちかといえば大衆食堂って感じかな。居酒屋って言った方が通りがいいんだ」
(肩を落としたまま、舌の速度も変わらぬまま、自分の店について説明してからはっと意識を取り戻す。まるでバネ人形のように飛び上がった)
「おっと、申し遅れたかな。僕は四ノ宮雪路。その店の店主さ。よろしくね、先輩くん、後輩くん」
(肩をすくめながらウィンク。ころころと表情と動きが変わる男だ)
■エルピス >
当然、敵討や襲撃に逢う事は多いかもしれない。
それを一手に引き受けている、とも言えるのかもしれない。さておき、
「あっ……もう、違います。
ボクじゃ釣り合わないですって、お兄さん。宜しくお願いします、お兄さん。」
くす、と笑みを零し、四宮へと向ける。
そう言えばこのお兄さん、どこかで見たような。
■ギルバート > 「居酒屋でも食堂でも、煎餅とはまた面白い組み合わせッすね。」
「メシ食いに来て煎餅買うってのもあんまない気もしますけど。」
何でわざわざ煎餅を? そう思うだけの普通の感性が少年にはあった。
何処か思考が逸れたエルピスに向かい、何か知ってるのか?と目配せひとつ。
「オレはギルバートって言います。つい春先に学園に入学したばっかで。」
「店開いて長いんスか?」
■エルピス >
目配せを受ければ、自然に視線を外したまま左頬を抑える仕草。
それはサインの1つであり、YES・NOで云えば、No――有力な情報を持っていないの意を示す。
もしかすればギルバードにも、覚えがあるかもしれない。
■四ノ宮 雪路 > (流れるように喋るこの男は、過去、常世財団で一部門を任された研究員だった。今はもう隠遁暮らしの手焼きせんべい屋だが、見覚えがあるとすれば最近、知人の頼みで仕事のバックアップを務めた時かもしれない)
「ギルバートくんだね。そっちのお嬢さんの名前を聞いてもいいかな?」
(そう、実は彼もまた、エルピスのことについては知っていた。そのバックアップを務めた仕事こそ、彼、あるいは彼女の身体に関係することであった)
(しかしそんなことはおくびにも出さずに人懐っこい笑みを浮かべながら一礼した)
「僕は去年入学してね、せんべい屋はそれからさ。けどこの落第街にはせんべいの素晴らしさを理解できる人が少なくてね! 仕方がないから、せんべい屋を続けるための副業として居酒屋を開いたんだ」
(今は居酒屋のほうが儲かっているよ、と再び肩を落とす店主。そのアップダウンは彼の人生の山谷を表しているようだ)
■ギルバート > 「あー……。」
そりゃ煎餅はメインで売れやしませんよね、と肯定しそうになるが初対面。
言葉にはせず吐息に混ぜた。
「しかしフェニーチェをご存知とは。」
「店先でも話題ですか、あいつらは。」
あれだけド派手に連日連夜やらかせば、嫌でも名は知れるのは当然のこと。
昨夜はついに公安の第二教室とかち合ったと彼は聞いた。
そこからありえないほどの情報を接収したそうだが、具体的に何かまでは知らされていない。
情報はそれだけで価値がある。末端の自分まで知らされていないのは、それだけの価値があると彼は思っていた。
―――まあ、この場では関係性の薄い話ではあるが。
■エルピス > 「フェニーチェ……」
一応、フェニーチェに関して情報の幾つかは掴んでいる。
痛ましい事件を幾度と起こす彼ら彼女らの話題を聞けば、消沈の様相を見せた。
「……あっ、う、うん。ボクはエルピスって云うよ。
えっと、宜しくね、四ノ宮お兄さん。」
ほぼはっきり認識と認識する。
四ノ宮の姿は、この前の『アップデート』の時に確かに見かけた。
とは言えそれだけであり、それを伝えても意味がないと判断すればそのまま何もしない。
ばらしてしまい四ノ宮の不興を買えば巡り巡って副主任の機嫌を損ねるだけであり、
また、中途半端に伝えても困惑させるだけだろう。
「せんべい屋さん、なんだね。
確かにしょっぱいせんべいは喉が乾くけど、お酒にも合うのかなぁ……?」
飲んだことないので、知らない。
■四ノ宮 雪路 > 「お茶と合わせてもおいしいし、お酒にも合うはずさ。何より自慢のせんべいでね。よろしく、エルピスちゃん」
(先にエルピスの言葉に答えてから、ギルバートの言葉に答えることにした。少なくとも四ノ宮は会話を好むタチで、風紀にも公安にも協力的な姿勢を崩さない)
(だから、ギルバートの吐息混じりの本音には、はは、と困ったような苦笑を返すだけだ)
「なにせ居酒屋だからね。酒の肴に彼らの動きはちょうどいいんじゃないかな。そういう意味ではフェニーチェの動きは大成功だろうね。注目する人が多くなれば、目を輝かせるのが演者という奴だろう? 物騒だから、第八区画で騒動は起こしてほしくないけどね」
(肩をすくめながら語る姿は、言うほどもフェニーチェに嫌悪を抱く表情ではない。あくまでニュートラルに語る姿は、実に落第街の住人らしい態度といえる)
■ギルバート > 「ただの演劇集団ってなら、誰も咎めやしないんスけどね。」
「法を犯し他人を脅かし、そこまでしても"したいこと"ってのは、オレにはちょっとよくわからないですよ。」
眉を潜め露骨な嫌悪感。
彼らの存在が、自分自身の否定にさえ繋がっているような感覚。
相容れぬものだからとわかっているからこそ、一刻も早く鎮圧をしたかった。
既に少年は今まで何人も団員を確保してきたが、それでも一向に止む気配はない。
「それじゃあ……オレ、行きます。」
「もし今度こっちによる用事があれば、寄りますよ。」
「煎餅を買いに。」
ご案内:「落第街大通り」からギルバートさんが去りました。
■エルピス > 「うんっ、宜しくね! えへへ……お茶とおせんべいは美味しそうかも。
今度来た時、休憩がてらに立ち寄らせて貰うね。」
くす、と微笑みを一つ見せる。
「あっ、うん。またね。ギルバードさん。」
ひら、と手を振って見送る。
そして、四ノ宮の言葉を改めて反芻する。
「……それでも、いっぱいの被害を出しているし、
傷付ける事は、殺す事はは悪い事だよ。ボクとしては、看過出来ないから。
だからなんだと言われれば、それまでだけど――」
ただ単純に、純粋に、そう零す。
■四ノ宮 雪路 > (ギルバートの去り際の言葉、そしてエルピスの言葉。二つ合わせて聞き入りながら店主はステップを踏むように前に出る)
「なかなか難しいものさ。そうしなければ生きていけない住人たちも居る、ってね」
(法を犯し命の危険に晒されてまで、この落第街に留まるものは数多い。そうしたいから、そうしなければいけないからと理由は様々で、どうしようもない例も四ノ宮雪路は見てきている)
(だからこそギルバートの言葉も否定できないし、否定する気もない。きっと彼もそうしないと生きていけない住人なのだろう)
「ああ、それじゃあね、ギルバートくん。もしも来てくれたら、とっておきをサービスするよ!」
(元気よく手を振って見送ると、そのまま両の手をポケットに突っ込んでエルピスに向き直った)
「君もそれでいいんじゃないかな、エルピスくん。少なくともここじゃ、誰もがしたいことをしているし、しなくちゃいけないことをするよう懸命だからね。僕も、だからここで煎餅を売っているのさ、懸命にね」
(相変わらずに銭独楽のように回る舌。涼やかな風。ひょうひょうとした態度を崩さず、笑顔も崩さず笑いかける)
■エルピス > 「そうかもしれないね。そうしなければ生きていけない人もいる。
でもボクはそれを掬い取るよりも前に、あくまで行った事に応じて公正に法を使わなきゃいけない。
ボクは司法を背負う責任を、そう認識しているよ。……あっごめんね、変な事言っちゃって。」
何処か、自分に瞑目し
暗に彼(姿は少女だが)が、委員などの所属――云うまでもなく公安委員会所属であることは周知の事実だが――
例え知らずとも、"そう"である事を察す事は容易だろう。
「……えへへ、ありがとう。四ノ宮お兄さん。
これでいいかは何時だって悩みながらになるけど、そう言ってもらえると嬉しいかも。うん、頑張るよ。
それじゃあ、ボクもそろそろ行こうかな……暗くなってくると、危ないし。」
■四ノ宮 雪路 > 「ああそうとも。君もやりたいようにやればいいのさ。享楽主義ではなくてね、結局、あれこれと手を伸ばすと大事なものを取りこぼしてしまうから」
(声を弾ませ、針金細工のような四ノ宮の身体が揺れた。落ち着いてはいられないのだろう。相手の変な言葉にはこちらも好きなように返す。もともと、人に話をするのも話を聞くのも好きなタチだ)
「うん。もしも悩みがあって、誰かにそれを話したい時、僕でよければ話ぐらいは聞くよ。僕はね、人と話をするが大好きなんだ。その時は、彼と同様サービスするから」
(ポケットから片手を出してひらりと振った。最後まで剽軽な様子を崩さずに姿勢を正す)
「あ、別に悩みがなくても来てくれよ! せんべい好きは大歓迎だ!」
(後ろにゆっくり下がりながら声を掛け、恐らくこれから去っていくエルピスを見送る形となるだろう)
「それじゃあね、エルピスくん。良い学生生活を!」
(そのまま振り子のように背を向けて、こちらも歩き出していく)
■エルピス > 「大事なもの……」
ボクにとって大事なものとは何だろうか。
そう疑問に思ってしまえば、四ノ宮とは対照的に少しだけ様子が崩れ、視線が揺らいだ。
サービスすると声が掛かった所で、我に返る。
「……あっ、うん。サービスは楽しみかも。
それじゃあまたね、四ノ宮お兄さん!」
別れ際には声を弾ませる。
そう言って一度手を伸ばして振り、その場を小走りに去って行くだろう。
ご案内:「落第街大通り」からエルピスさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から四ノ宮 雪路さんが去りました。