2015/10/05 のログ
阿多福ウズメ(自称) > 「仕留め損なったカ…。できるナ!」
振り返り、地を滑りながら減速。騒ぎたつ観客。

「お褒めに預カリ恐悦至極。その顎、飛ばして伊達にしてやるつもりでいたガ…」
脅しか本気か、声だけでニヤリと笑う。されど内心どうも穏やかでない。

「…こちらの攻撃を『見て』から対応したな…。吹き飛びこそしたが、受け身をとったセイだ。
 見た目以上に…」
やるようだな。そう言い切ると、再び先と同じように構える。追い打ちはせず、仕切りなおす腹積もりのようで。
「来イ…。その上で斬り伏せ、勝利してヤル…!」

リビドー >  
「見ることと考えること、そして妄想<予測>する事は好きなものでね。
 そして好きこそ物の上手なれ――だったかな。来いと待ってくれるなら、お言葉に甘えるよ。」

 来い、と聞く。
 どうやら先手をくれる様子だ。
 時間をくれるの、ならば今一度――

「―――。」

 すぅ、と、たらふく息を吸う。
 直後、地鳴りを響かせる程に踏み込んでみせる。同時に――

「ぅ―――ァ、んッッ!!」

 会場一帯に響く轟音の波動。吊り下げられているものがあれば、それを示すかのように大きく揺れたこtおだろう。

 なんてことはない、異能でも魔法でもないただの"叫ぶ"。
 ――飛ぶ鳥すら落としかねないような、腹の底から裏声のような高く耳をつんざく、鋭い声をぶち放つ。

 最初のような加速を付けた『攻め』でなく、相手が『待ち』の『構え』を見せた故に、取りやめた行動を臆面もなく使い直す。
 

阿多福ウズメ(自称) > 「ムッ…!!?」
相手の口が開くのが見えた、何やらまずい、
と思った時には音速で叩き付けられる攻撃のほうが早く。

「…! がっ…ふっ…!」
ヒビの入った面の目元から血が流れる。
三半規管がぐらぐらと痺れているのか、その場で膝をつき。
木刀を杖のように床に刺す。

「音っ…か…それハ…。それは予想していなカったぞ!」
耳元が熱い、鼓膜が破れたか。だから何だ健在である。はははといっそ笑った。

「ダガな…叫ぶだけで倒される程、当方甘くはないゾ…!!」
勝負なり。

床に刺さったままの木刀を握り、そのまま奇怪に構える。
めり、と床が貯めこまれた力に押し負けてヒビが入るが…まだ木刀は抜けない。
力を蓄える極太の綱のような筋肉の音が響く中、おたふくが再び、待つ。あえて待つ。

リビドー > 「何の。これはただの布石だよ。
 ちょっと揺れてくれればそれでいい。」

 膝を付いた頃には追撃を始める。迫る頃には立て直すだろうが、それでも"畳み掛ける"事は出来る。

 だから踏み込んでから叫んだのだ、と、後ろの足を踏み出し、溜めをつけて、跳ぶ。
 ――そのまま飛び込んでみせれば、ドロップキックを"木刀"めがけて叩き込む。

「その木刀も随分と硬そうだな。受け止めてみろよッ!」

阿多福ウズメ(自称) > 「…『  』。迎撃機動」
ぞわ、と殺気のように青い焔がレインコートの中から漏れる。
おいあれって…! とどよめく観衆たち。それを背景に。

「受け止める? 冗談ではない…その攻撃ごと…斬り伏せル…!!」
そんなつもりはない。攻めるため、後の先をとるために、こうして我慢をしていたのだ。
床から木刀が抜け、蓄えた力を糧に鞘から抜くよりも早く、猛烈な勢いで刀身を射出してみせる。

「完成せよ、『逆流れ星』…!」
狙うは相手の正中線。駒のようにスピンすると、竜巻のような勢いでドロップキックに攻撃をぶつけ、爆ぜる。

爆音と閃光。地面に転がり壁に激突して止まるおたふく。

「~~~~ッッ!!!」
ボイスチェンジャー破損。ここまでか。

「遣るかたなし…!」
ガハッと喀血して、素の声でぼそりとつぶやいたか。

リビドー >  
「ああ、冗談じゃない。"攻撃ごと斬る伏せる"には、斬る為には、
 どうしたって受け<ふれ>ないとならないだろう……ッ!」

 爆音、閃光。ぶつけられた攻撃で反対側の壁に衝突。
 受け身を取れた素振りはない。

「……ち、だがまぁ、美事と言っておくぜ。
 そこまで出来るなら、"避ける事も出来ただろうに"。」

 乱れた呼吸を整えながら、壁に手を付いて立ち上がる。
 が、その出で立ちには疲弊と損傷――ダメージが見受けられる。

阿多福ウズメ(自称) > 「…」
レフェリーの方に合図を送る。送られた方は、あの中に突撃するのか…と蒼白したままウズメの方に駆け寄る。

「…」
何事か耳打ちすると、阿多福ウズメ、面にヒビが入ったため棄権でーす! とレフェリーの男が声をあげて試合終了。
ひっくり返る観客、どっから出したか不明だがなぜか座布団まで飛び交っている気がするが、
もっとやれだの盛大にブーイングが吹き荒れるなか、涼しい顔(面)のまま木刀のダメージを確認する。

「ヒビはないか…ならいい。」
業物だぜ。とニヤリと笑い、木刀を収める。ヒビの入った面のまま、リビドーに申し訳なさそうに一礼。

「避けるはたやすい。しかし立ち向かわなければならない状況もきっとある…そのための"実地"…です!」
リビドーだけに聞こえるように口に手を当て、どうぞ内密にと言い切ると、と踵を返した。

リビドー > 「全く。」

 事情を読めぬ観客の不理解から来るブーイングには苦笑をしてみせる。
 飛んできた中身入りのペットボトルをキャッチすれば、遠慮無く中身を飲み干した。

「罅の入るような安物でもないだろうに。
 ……ふむ。そうかい。キミの覚悟は良く分かった。
 成る程、それがy――キミを確かなものにしている地金かい。」

 独り言へと苦笑を呟いてみせてから、寄ってきたウズメのナイショ話を聴き通す。
 満足の言った様に頷いて見せてから、踵を返す阿多福ウズメ(自称)を見送る。

「ミス阿多福ウズメ、キミと試合を出来た事を嬉しく思うよ。また会おう。」

ご案内:「地下闘技場」から阿多福ウズメ(自称)さんが去りました。
リビドー >   
 
 彼女が立ち去ったのち、会場をぐるりと見渡す。
 そして、会場の隅まで通るような声を挙げる。


  「さて――もっとやれと思う諸君。
   是非とも此処まで降りてきて、一つボクと戦ってはくれないかい?」

 
 

ご案内:「地下闘技場」からリビドーさんが去りました。
ご案内:「地下闘技場」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > ―――来てしまった。

来てしまっていた。



歓声とも、絶叫とも取れるむさ苦しい声があちらこちらから聞こえる。
激しい肉体と肉体のぶつかり合い。 弾き出された人間が観客にぶつかって上がる別の悲鳴。

唐突に始まる場外乱闘。 レフェリー役が駆け寄る足音。


10月の初旬。
四季の訪れはともあれ、秋めくスポーツの秋にて
谷蜂檻葉以下、図書委員会の数名の女子は落第街地下闘技場へと足を運んでいた。

知的好奇心、といえば聞こえが良いけれど。
”落第街”という汚れたヴェールに包まれた秘密基地の空気を【ちょっと味わってみたい】
という実にお気楽な発想を抱いてしまった少女。
それに便乗してしまうような少女。
それらを気にかけて、万が一に備えようと護衛役を買って出る少女。

時折柄の悪いという言葉で一絡げに出来ないような風体の男共に視線を受けたりはしたが
(概ね)無事に、こうして"落第街観光"最後の地に彼女たちは足を運んでいた。

谷蜂 檻葉 > 一番気の弱そうな子と、その子の相方的な女の子は数分もせずにダウン。

階上へ再び戻る事を余儀なくされ、他の子も余りにも非現実的な『裏の世界』とでも称するほかないこの場の空気に当てられ、怖気づくようにしてチラチラと凄惨な事故現場―――あまり遠いわけでもないが―――を見るようにして、この場を後にしていた。

それらに付き添うようにして、学生間でも”腕っ節”に自信のある子も早々に撤退して。


この場には唯一、檻葉だけが残っていた。

谷蜂 檻葉 > 地下闘技場という場に特に強い思い入れがあるわけではなく。
この場の空気に何かが想起されるとか、そういったことでもなく。

さらに言えば、それじゃあ力試しでもしてみよう。
なんて、この場にいる者達と同じような思考回路が脳にセットされているわけでもなく。


(――――凄い。)


この”戦場”に漂う、赤い光を灯す妖精たち。
血の気に誘われて漂う、火炎と生き死にに携わる彼女たちに目を奪われて
結果的には同行者たちと逸れるようにして、この場に取り残されていた。

谷蜂 檻葉 > 熱に浮かされるように、普段は見れない妖精たちの舞踏に体を寄せる。
叫び声が遠くなる。

下品な言葉の応酬、無軌道な凶器の交わし合い。
血気が度を越して殺気となって無作為に飛び交う。
またすぐ横で、ただの口論が―――いや、ある種の了解として、戦いに変わる。

その間を踊るように、駆け抜けていく。

出るわけでも、進むわけでもなく。
ただ、この戦場で踊る。

不躾な視線が体を舐める事も気にせずに、人と人との間を縫うように動きまわる。


赤い光が、檻葉の周囲を包み込むように増えていく。


増えれば増えるほど、『戦場』が拡大していく。
最も大きな『会場』以外での、ある意味本来でのストリートファイトが拡大していく。

かつては鉄道の騒音が響いたこの場所で、怒号のような喧騒が響き渡る。

谷蜂 檻葉 > 舞踊は起きうる全ての戦場を周り、最後の最後。
彼女が踊らずとも妖精たちが最も騒いでいた場所。
そこへ、一夜の魔法に囚われた戦乙女は舞い降りた。

地下『闘技場』。


「――――今、すっごい気分がいいの。 誰か、私とヤり合わないかしら?」


ぐるりと観客席を見渡して、スカートをフワリと広げながら『お相手』を求める。

ご案内:「地下闘技場」にヴァルトラウテさんが現れました。
ヴァルトラウテ > ええと、誰でも良いのなら……良いですか?

(金髪のツインテールをなびかせつつ、姫騎士然とした美少女が太刀を携え、おずおずと立ち上がる

小規模な大会で優勝したりしてしまっているためここではそれなりに顔が知れてしまっている少女だが、本人はあまり気にしていない
もともと目立つため、目立ち慣れているのもあるが、本人のあまり気にしない性格も大きい

ただ、少女は戦闘を好むよう設定されているし、戦闘データを広く集めたい
本人は特にそう言う意識はないが、戦いそのものは好きだったしそれで十分だった)

谷蜂 檻葉 > 「アハ――――っ!」

ヴァルトラウテ、地下の汚れた電灯の中でも輝く金髪の騎士が声を上げたと同時。
狗が吠えるような、ゴウ。とも、バウ。とも言えない酸素を食い散らかす火球が連続して三つ。

ぐるぐると踊るような動きの流れのまま振りぬかれたその手を号令に、
檻葉の背面から次々とヴァルトラウテ、ひいてはその間近の観客席へと叩きつけるようにして繰り出される。

スイカ玉よりも二回り大きな火球を目にして、
騎士の少女の回りにいたチンピラどもは大声で投手に罵声を投げかけながら一目散に逃げ出した。


「―――ええ、勿論ッ! 遊びましょうッッ!!」

ヴァルトラウテ > ……リップサービスとお見受けして御相手させていただきますね?

(その火球を絡めとるように、綺麗に太刀で逸らし流す
受けるでも斬るでもない

要は、けが人が出ないことを確信しての盛り上げのための所業だろうと好意的に判断する
ただ、こう、どうも……少々上がっているようで、もしかするとアレは自身でも制御できていないのかもしれない
などと思いつつ、闘技場の方へ

ゆらりとした構えのまま、近づいていく)

どうしましょうかね、初手から派手に振っても良いのですが

(言いつつ、何もなければいとも容易く間合いに踏み込んでくるだろう……いつ?
少女には日常の延長線上だ、故に話しかけて挨拶するような気軽さで歩を進める)

谷蜂 檻葉 > 「あははははっ!! はははっ!! あっはははははははは!!!」


―――目は、既にヴァルトラウテを見ては居なかった。

檻葉が、戦火の妖精が見ていたのはこの場の『闘志』。

火球が弾け、そこからからくも逃げ出した者達の敵意。怒気。殺気。
そういったモノを味わい、それらを求め、彼女は独りでに昂っていく。


妖精は踊る。

タン、タン。とステップを踏むように距離を取りながら今度は火炎の鞭が袈裟斬りに落ち、
同時に先ほどと同じように火球が飛ぶ。 線と点。 まだ連携のないそれらが、再び騎士を狙う。

―――賭金をどうするか話し合う雑踏からはまだ、15m以上も離れている。

ヴァルトラウテ > これは割ってはいったほうが早いですかね?

(…………アレはもしかすると、暴走しているかもしれない

鉄槌の弐、轟雷
火炎の鞭を力技で弾き消すような形での剣圧による面攻撃

無論、短くなったところでさして意味は無いだろうが、そのまま剣閃による飛来斬撃を繰り出す
鶴翼の型、飛燕
風の斬撃が檻葉に飛んで行き……その対処をしようとすればその間に間合いが詰める)

谷蜂 檻葉 > 攻撃は全て、目前の騎士を狙っているように見えている。
だがしかし、現実はそうではない。

見ているものがそうでないように、狙いもまた『戦場』にあった。

きっと、ヴァルトラウテが声を上げた上で「やっぱりやめた」等と言えば
”切っ掛け”だけを弾みにして彼女は無差別に攻撃を始めていただろう。


そういった意味で、檻葉は運が良かった。


目前、最も”わかりやすい”戦地へと矛先を向けるだけなのだから。


剣圧に依って叩き潰すようにして火炎の鞭が霧散する。
火の粉が爆ぜる中を突き進み、一閃が檻葉を捉え――――


「そぉおれっ!!」


大きく後ろに飛んだ檻葉の背後から弧を描くように風の刃が叩き落とされ、斬撃を止める。
剣閃と鎌鼬がぶつかり、ビシビシと音を立ててひび割れた瓦礫が宙を浮き、
今度はそれらが歪な杭となって、大小十数の岩の牙が騎士を襲う。

観客席からヴァルトラウテも離れ、進む者と退く者の差は10mに近づいていた。

ヴァルトラウテ > ……なるほど、周囲を味方にするように見えますね?

(鶴翼の拾弐、双翼
刀を中心とし、左右に押し広げるよう剣圧が広がる型

基本、ヴァルトラウテは乱戦も乱撃も全ては流し逸らしていく
異能を使っても良いのだが、それは剣の補助で良い

それに熱は多少燃やしてやらなければ収まりがつかないモノだから
無理に足元をすくって沈火するのも勿体無い

そう言う意味ではヴァルトラウテが正面から殴りあうタイプでないのも良かったのかもしれない
そして彼女が戦いを通じてコミュニケーションを取ることを好むということも)

谷蜂 檻葉 > 闘技場に、どちらがどう勝つか賭ける声が遠く聞こえる。
「どう勝つか」という最終的な戦況まで賭けの対象になる理由は言わずもがな、
二人が、というよりも挑戦者を呼びかけた檻葉が、『決着』について言及していないからだ。

だからこそ、賭博者は好き勝手に騒いではその一挙一動を見逃すまいと視線を向ける。



むさ苦しい野郎共を外野に、舞台には二人の舞姫だけ。


足を止めて次々に飛び込んでくるその全てを打ち払うヴァルトラウテに対して
同距離を保つように檻葉も足を止め、魔術師にしては詠唱らしき詠唱をせずに魔術を打ち込んでいく。

腕を振れば火炎が鞭となって線を薙ぎ、
足で虚空を蹴れば風が槍となって直線を穿ち、
手を掲げれば石弾が扇状にはじけ飛ぶ。

まるで世界を従えるように、彼女の動作が"魔"を呼び、ヴァルトラウテを襲う。



「キャハハハハハ!!!」

瞳が、金色に輝く。

ヴァルトラウテ > 荒れ狂う波であるならば、海に返し
燃え盛る炎であるならば、薪を減らし
噴き上げる山であるならば、雨を降らせ
轟く突風であるならば、流すだけです

……さて、そろそろよろしいですか?

(術としてというより、もはやその魔法は舞である
となれば、受ける側もまた舞う

切ったり受けずに、流し逸らし落とす様は最初からそういう組手なのではないかと思わせるほど

そして是非もない
ヴァルトラウテが鶴翼の裏飛燕……飛燕の裏にもう一枚飛燕を隠す一閃を放ったかと思うと
それを受けようとするときに足元の空間がぐにゃりと歪むだろうか
謎の浮遊感

そして、その空間の歪みを認知した時、相手の感覚をもずらし、揺さぶりに入る
それはきっと、斜め上に転ぶような感覚だ)

谷蜂 檻葉 > ―――檻葉の瞳が金色に輝くのに呼応して、『魔』を見る瞳にはさらなる光が映っていた。

何かに惹かれるようにして、何かに導かれるようにして次々に闘技場へ、
檻葉の下へ妖精が集っていく。

その光景は精霊達の姿を見ることの出来る素養のある者だけに現れる、
傍目には何も変わらないものではあったが、
確かに相対する者には「場の魔力」が徐々に増している事が肌に感覚的なものとして伝わる。


瞬速の二連の剣閃。
最早それを檻葉が理解することはない。

理解すること無く、『撃ち落とす』という意思に反応して
妖精たちが次々と鎌鼬を打ち込み、連射砲の如き魔力を帯びた風弾が威力を”砕く”。


「――――?」


しかし、それは次の布石。
剣閃そのものは何一つ届かなくとも、揺さぶりの一手は彼女に通じ――――



トンッ。

と、地を蹴った彼女の背に3対の輝く翅が現れ、浮遊感のままに斜め上に『飛んだ』。

キラキラと煌く鱗粉のようなものを尾を引かせながら、クルクルと檻葉が空を走る。

ヴァルトラウテ > なら……遠慮はいりませんね?

(その羽の幾つかを「ずらす」

そもそもアレで揺らがないならその中身は通常の人間の感覚ではない
なら、少々の無茶はしてもいい

あの状態で斜め上に飛べば地面に向かって上昇するようなものだ
つまり彼女は下に向かって回転しながら下降したことになる

故に空間を操り、その羽の位相をずらし、動きの精度を奪ったうえで、飛燕
さらに飛燕の終わり際、空間をひねって剣先を移動させての羽への斬撃による前後への攻撃

鱗粉は……後回しにする)

谷蜂 檻葉 > 果たして、空間を操ることで『翅』を強引に操作し地面を叩き落とすという目論見は


「―――――ッハハ―――ッハハハッッ!!!」


一つ、二つ。
三つ四つ五つ。 三対六翼 その全てをどう操作しても、彼女を堕とすに至らなかった。

それもそのはず。

彼女の翅はあくまで”象徴”。 
飛ぶという概念を持つことを表すただの『ハリボテ』でしかないのだから。

檻葉が落ちないことを訝しむだけの数瞬の空白に、鱗粉は丁度目線ほどの高さにまで降りてきており
奇しくも自分から軌道をジェットコースターのようにL字に落ちた檻葉の手には
網膜を焼くような眩さは無いものの、
確かな輝きを持ったバスタードソードの様な形状をした白塗りの両刃剣が握られていた。



「お終いにしてあげる!!!」


慣性で直進する中、再び空中で制動をしながら僅か数メートル先。
鱗粉のような光の霧の中、バッティングフォームのように大剣を横に振りかぶる。

ヴァルトラウテ > ……概念的存在ですか?
ならばどうやっても良さそうですね?

(剣は打ち合わない受けない流さない
剣であるかどうかもわからないものなど構うべきではない

代わりに「合わせる」
相手が相手の思う通りに動いたら、その動きに中に綺麗に割って入り、当たる、というそれ

一にして全「切落」

更に、空間と重力も捻っておく
この手の概念存在に対応するかは分からないが、影響を受けるなら少なからず巻き込まれるだろうが、さて
上手く行けば当たるなり転ばすなり出来るだろう)

谷蜂 檻葉 > 合わせ"太刀"。

さて、その光景は必然か偶然か。



キラキラと場にそぐわぬ光の霧が、やもすれば飛蟲にも見える中。
粗雑で豪快なスイングに対してすれ違うように浴びせる一太刀は、
概念存在であることを前提に檻葉の体をすり抜けて、


「――――――」

ドパ、と。

血袋を引き裂いたような音共に、盛大に赤色をぶちまけた。
空間を歪ませた必中の一撃は見事に妖魔を討ち取り真っ二つに大地へ落とし、


『――――お、おい……あいつ!!』 『おいおいおいマジかよ!』
『ど、どうすんだよコレ!!』『ぎゃははは!!やりやがった!!俺の勝ちだぜ!なぁ、おい!!』
『馬鹿野郎んなこと言ってる場合じゃねえだろうがよ!!』

ザワザワと、観衆の声がどよめきとなって広がっていく。
【不殺】―――― 唯一かつ最大の不文律が破られた光景に先程までとは違う緊張感が場を支配した。

ヴァルトラウテ > (剣術であれば、分があったと……そういうことかもしれない
少なくとも、受けるでも交わすでもない太刀は、容赦もない

……そもそもそのつもりで突っ込んできている存在には、そうだ)

……このような場所であれば。
治癒なり何なり「そういう」方もいるでしょう?

少なくともそれほど下手に斬ったつもりはありませんし、そもそも殺す刃ではないので

(ヴァルトラウテは戦闘中であれば、平時と唯一違い、基本的に驚くということがない
故に、斬ってしまった今でも、くっつけられる者がいるとそう考えていた
くっつかないように斬った覚えもない

そうでない場合はまあ、その時はその時だ

それにあれだけの概念存在を扱っていて、ただ死ぬというのも考えにくかった
つまり死ぬと思わないかぎりは死なないからだ

とはいえ、本当に何も無いのであれば
殺すつもりはないと言っていたが、それだけで十分に致命傷であり、放っておけば死ぬだろう
檻葉はそれくらい深く踏み込んでしまった)

谷蜂 檻葉 > 『あーらら、つっまんなーい。』

騒然とする場内に、不特定の場所から不満気な声が響く。
それは冷静に対処―――というより『無感動』なヴァルトラウテに対しての不満を露わにした声だった。

『出禁どころか、そこら中から恨みを買うっていうのにどうってこともないの?』

――――霧が、晴れる。

正確には一箇所に集まっていき、また新たな。
けれど、同じ姿を形作っていく。

粒子片がくるくると人型を包むように集まり、密集してそれが消えると腰元に手を当てた
鮮やかな金髪金眼の少女が睨むようにしてヴァルトラウテを見ていた。


『お、おおおお?』『なんっだよーただの死んだふりかよ!』
『ビビらせんじゃねーよッバァーーカ!!』『ぎゃあああ!!っざけんな!俺の十万!なぁ、おい!!』
『馬鹿野郎”医療班”無駄呼びさせんじゃねーよ!!』

「はいはーいごっめんねー。私は生きてまーっす! もう、やる気ないけどね!!」

次々に、また別の観衆の声が響く中。
文句をいいながら、胴元に呼ばれてきた医療術の心得がある青年がやってきて、
審判代わりにヴァルトラウテの勝利と、そのまま彼女に近づいて厳重注意を言い渡す。


―――何がどうあれ、『殺してしまうような行動』を慎むよう徹底しなければこの場所は成り立たないからだ。


檻葉は、ただその様子をじっと眺めていた。  ……少しだけにやけながら。

やがてクドクドと若干罵声染みた説教が終わっても、檻葉はその場に残っているだろう。
最後に話しかけるも、悪戯好きな彼女に踵を返すも自由だ。

ヴァルトラウテ > だって、羽を落としても問題のないものですから「そういうもの」でしょう?
そもそも、世界が回転しても己は回転しない、そういうものなので、岩の下敷きになっても
岩が下敷きになる結果に書き換わるものです
だから死ぬと思わないかぎりは死なないです

で、私は心が真っ二つになるような斬り方をした覚えはないです
それに、そうなるように踏み込んできたじゃないですか、重さも中身もないのに

だから「実際にどちらでもいいように」斬っただけです

ヒントはありましたから、なるようにしただけですがなにか問題が?
まあ流石に放置したら死にますが、此処での放置も無ければ、彼女がそれほど弱いと考えたつもりもないので

(言い訳、というよりかは、最初からそういうものだと思っているようだった
そもそも、剣術の達人によくわからない大振りをしてくるのだ、必ず意味があると思っていた
受ければ素通りするなり、弾いたことが弾かれたことになったり
剣術の腕は存分に見せているのだから、どう考えても仕掛けしか無い
そこでわざわざ引く理由もヴァルトラウテにはなかった

……つまり説教というより押し問答であった
こうなるとヴァルトラウテはむしろ困ってしまう
真面目、というより、死なないはずの相手に剣を振るって悪いと言われることがどういうことかわからないからだ)

谷蜂 檻葉 > 『だーかーらー!その問題のないっていうのが「異能やらなにやらのせい」だったらどーすんだって言ってんだよ!!テメーの常識で適当ぶっこいて無茶を押し付けんじゃねーってーの!!

 ”手違いで殺してもま、いっか”じゃ通んねーっつってんだよ!

 なぁおい、コイツどーすんだよ話通じねえぞ!! 出禁にした方が早えーんじゃねーか!?』


押し問答になると、ザワザワと男と周りの人間たちで協議が始まる。


―――当然だろう。『解らない』というのは責任の放棄と同義である。
   解らないから、という文句で場の秩序を乱すような輩を悪戯に置いておく訳にもいかず、
   このままヴァルトラウテが引かなければ、『出入り禁止』を言い渡されてもおかしくない……。

勿論、公的な束縛はここには存在しないが、
だからこそ、私的な締め出しには敏感に彼らは動くだろう……。

ヴァルトラウテ > ……すいません、はい
ごめんなさい、もうしません……

(……どうしていいかわからない
そもそも、斬っても死なない相手だから斬っただけで、それ以上でもそれ以下でもない
最悪斬れたとしても、問題ないように斬ったはずだ
しかも相手は最初からそれを利用してきている、つまりあの剣を受けるなり流せ、ということになる
合わせずにただ避けるには、無理な剣のはずなのに
アレはきっと、そういうものだ

ヴァルトラウテはとにかくこういった混みいったことには弱い

戦闘では迷いなく判断を下せるが、理屈が通らない、となるとその先がない
だんだん目に涙を浮かべながら怒られる一方になっていく

よく分からないが怒っている
相手は死なないはずなのに斬ってはいけないという
今回の場合、相手に刺されろとそういうことになる
説明してもわかってもらえない

そうなるともう、自分の主張は通せない
あとは理不尽だと思っても頷くしかなかった)

谷蜂 檻葉 > 『ったくよぉー てめーが美人じゃなかったら2,3発殴って言うこと聞かせるっつーのに……。』

やがて、一通りの小言と協議の結果

「コイツ見かけたら注意して最悪横から手を出せ」

という辺りで結論がついた。 ―――男の言うとおり、"顔"がいくらか効いたのかもしれない。


『次来るときは”峰打ち”でも覚えてこいよ!!』

そう言って、ゾロゾロとチンピラ―sは場を後にした。
奥で、今度は賭けの結果についてヤイヤイと騒ぎ出す。


まるで祭りの後のような静けさで、
クスクスと笑う声だけが残っていた……。

ヴァルトラウテ > ……。

(なにがなんだかわからない、だって殺さないはずだ
まるで剣を握ってはいけない気がして、混乱する

確かに合わせることだけなら峰打ちでもいいが、果たして半ば切られに踏み込んできたアレはそれで止まったのだろうか……

わけがわからなくなって、仕方なく、席の隅っこでうつむく)

……どうしたらいいんだろう?

谷蜂 檻葉 > 「あぁーー……面白かった。
 この場所で十分遊んだし、
 最後はせっかくだからって、そういう貴女が見てみたかったの!……ッフフ、アハハ!」

ただの段差を几帳面な誰か――もしくはそういった”異能”のある者が磨いた
即席の観客席の隅にちょこんと座るヴァルトラウテの頭上に、小さな影が落ちる。


「やっぱり楽しいわね、誑かすのは!
 ニンゲンは結果だけを見て判断するから、扇動するのが楽でいいわ。……クフフフ!」


見下ろして、笑う。 嗤い、嘲笑う。
金髪金眼。 キラキラと輝く鱗粉を散らす翅を背負う妖精の少女は

「それじゃ、アデュー☆ また何処かで会えると良いわね!」

ヴァルトラウテに波紋を投げるだけ投げて、今度は自ら粒子状に解けて消えた……。

ご案内:「地下闘技場」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
ヴァルトラウテ > ……っ。

(単に騙されたのだ、と知った
つまり、いいように弄ばれたのだ
もしかしたら周りをそう操ったのかもしれない

だが、驚いたり、人を悪く考えたりしないため、逆に混乱する

本当にそれだけのためだったのだろうか
だって手合わせの内容そのものはあんなに楽しかったのだから

……どうしても悪い人ではないように思えて、余計によくわからない)

ヴァルトラウテ > (……要は「なぜあんなことをしたのか」に思い当たるフシがなかった
だからどうしていいかわからない

ただ、もしかしたらまだ未熟なだけなのかもしれない
父様の期待に応えられるだけの自分でないからかもしれない

そう考えると寂しかった

そんな、よくわからずに、ふらふらと闘技場を後にした)

ご案内:「地下闘技場」からヴァルトラウテさんが去りました。