2016/05/23 のログ
ご案内:「落第街大通り」に蕎麦屋さんが現れました。
蕎麦屋 > ちりん、ちりん、と涼やかな音が響く。
音のも元は屋台の軒先に吊るした二羽の精緻な鴉の装飾の鉄風鈴。

「この国では鴉は神だと聞きましたが。」

人によっては装飾を不吉というだろうか。まぁ、先導として不吉かどうかはともかく。

「さて、今日はどこにしますか。」

屋台を肩に担いで大通りをふらふら。
客入りのよさそうな場所、というのは中々無いものです。

蕎麦屋 > 暫く大通りを歩いた辺りで。何やらの建屋の跡地だろう。少し開けた空間を見つけた。
これなら、店を広げても問題なさそう。

「此処らにしますか。」

空間に入り込めば、屋台を置く。
提灯に火を入れ、簡易机を広げてしまえば、準備は終わり。

ご案内:「落第街大通り」に一樺 千夏さんが現れました。
一樺 千夏 > お腹が空いたのでとりあえず、うろつく事にした。
残金は小銭が少々と、新鮮な財布が3つ。
喧嘩を売ってきたほうが悪い。壊されなかっただけ運がいいと思ってもらわなければ。

「あら、屋台?
 やってるのー?」

蕎麦屋 > 一通り設置を終えたころには鍋の湯も程よく沸いている。
さて、今日はどれだけの客入りがあるやら――

「おや――毎度。やってますよ。」

早速の客。幸先がいい。思わず笑みが零れる。
屋台には掛け、100円、の文字。

一樺 千夏 > 「いやー軽く運動したからお腹すいちゃってさ。
 一杯ちょうだい」

やや乱暴に座る。
椅子の作りが柔なら、嫌な悲鳴を上げるだろう。

「おねーさん、お店は長いの?」

蕎麦屋 > 「毎度。――少々お待ちくださいね。」

手慣れた様子で器を用意し湯を浴びせて起き。
続けて取り出したのは、一般的なパック蕎麦でなく、手打ちの半生麺。撒くようにさくっと鍋に投げ入れて。

「はい?数年、という所ですか。――老後の趣味のようなもので。」

底につかぬように箸でくるりと混ぜてやる。優しくやるのが一つのコツ。
笊に引き上げ、軽く湯を切り、器に開け、別の鍋から暖かい露を注ぐ――

「――はい、御待ち。」

最後に刻んだ海苔と葱を添えれば完成。
物の2,3分といった間に――ことり、と客の前に差し出した。

一樺 千夏 > 「老後って言うにはまだ若いでしょー。
 見た目と年齢が一致してればだけどねー」

そんな事を言うあたりそういう手合いにはなれているのか。

「あら、手打ちなのね。期待できちゃいそう。
 饂飩とか蕎麦って昔から好きなのよねー」

手馴れた動きで完成していく蕎麦を見て、期待が膨らむ。
やっぱりこの出汁の匂いはいいモノだ。

「いただきまーす」

左手と口で器用に箸を割り、軽く手を合わせてから蕎麦を啜る。
ズゾゾゾゾゾゾ。

熱い喉越し。
だが、それがいい。
蕎麦の風味と、海苔の香り、そして葱の食感とほのかな苦味。

「やっぱりこれよねー」

蕎麦屋 > 「いえいえ、御世辞がお上手ですこと。
 昔はやんちゃもしてましたけど、この歳になるとそういうのにも疲れちゃいましてね?
 一念発起して蕎麦屋、という具合ですよ。」

軽く手を振ってあははと笑う。

「はい、素材から自家製です。口に合うと良いですけれど。」

なんてことはない、二八蕎麦。つゆは昆布と鰹節をたっぷりと。
ただ。すべて異変に呑まれなかった素材、というだけである。

「これを初めて食べた時に感動しましてね。
 もう、これだって思ったものです。――気に入っていただけたなら蕎麦屋冥利の限りで。」

これだ、というのには過去の自分を思い出して頷いたりもする。

一樺 千夏 > 「三つ子の魂なんとやらっていうじゃない。
 そのうち何かに巻き込まれちゃうかもしれないわよー?
 ここら辺、いろいろときな臭いしね」

ずぞぞぞぞ。

「天然物はやっぱ味が違うわねぇ……」

しみじみと味わう。
故郷の人工物で作られた味とはやはり違うのだ。

「すっごいわかるわ。
 初めて食べたときに、こんな美味しいものがあったのかーって。
 おかげで今でも好物で食べ歩きとかしちゃうしねー」

ご案内:「落第街大通り」に”マネキン”さんが現れました。
”マネキン” > 女将、一杯くれ。

【在れば暖簾を潜り、担い屋台に顔を突き出したフード姿の学生がそこに100円を置く。
注文を済ますともう一人の客とは少し離れた位置に静かに座った。】

【葱を入れようとすれば、声を挟む。】

…ああ、薬味は抜きで頼む。

蕎麦屋 > 「はい、昔取った杵柄、なんて言葉もございますから。
 自衛程度でしたらどうとでもなりますのでご心配なく。
 ――いえね、この島の話を聞いて勢いで来てしまったもので。」

心配はご無用、と。
一度中心部の方へ行こうとはしたのだが、なにやら手続きが必要らしく、豪い目にあったのは伏せておく。

「天然には天然の良さがありますからね。人工モノも――よくないわけではないですが。」

と、気配にみやれば、新しい客。今日は客入りのいい日だ。

「はい、毎度。葱抜きで、少々お待ちを。」

新しい器を一つ、湯を浴びせ。蕎麦を鍋へと。
軽くかき混ぜながら――

「美味しいものは食べ比べたくもなりますけれど、この辺りは他にいい蕎麦屋、ございます?」

歩いては回るけれど、あまり『マトモな』店は見かけない。
あるならぜひとも教えていただきたいところ。
話しながら笊に引き上げ、器に盛り――

「はい、かけ、葱抜き、どうぞ。」

す、と新たな客に差し出した。葱はなく、具は刻み海苔だけのシンプルな一杯。

一樺 千夏 > 「まぁ、騒動には困らない島かもね。
 胡散臭いのから怪しいのまで選り取り見取りー と」

ズズズズズ。
出汁を飲めばホッとする。

「全部工場で作った安価がとり得の代替品は美味しくないのよ、やっぱり。
 似せてるだけで別物だわ」

それでも生きるためには食べるしかないのだけれど。

「食べるだけなら、落第街から外れれば結構あるわよ。
 味は治安のよさに比例するけどねー」

ここら辺には滅多にないという事でもあるけれど。

”マネキン” > この店のそばは花巻か。
まあいい。次は海苔も抜いてくれ。

【出された一杯に文句を言うと、一味を手にとる。
七度か八度、ツユの表面が赤くなるまでそれをかけた。
箸を丁寧に横に持ち、割る。】

いただきます。

…ずぞぞぞぞ。ずぞぞ。ずぞ。ごく、ごく、ごく。

蕎麦屋 > 「騒動は、どうなのですかね。胡散臭いから怪しいまで、ですか。
 いやはや、退屈だけはせずに済みそうな――いい店が近くにないのは難点ですねぇ…。」

なるほど、と頷く。島の内情には疎い。日が浅い。

「人工物は供給量や保存性に関しては優れていますから。味を求めてしまうと劣りますけれど。
 兵糧の供給は今も昔も難しい問題でございましょう?」

まるで食堂のおばちゃんのようなノリで、それで昔はいろいろと難儀しましてねー、と冗談めかして手を振りながら。

「おや、海苔も要りませんでしたか。これは失礼を。――なんでしたら作り直し、いたしましょうか?
――どうでございましょう?」

と言っている間に振られる一味。紅く染まっていく出汁、そういう食べ方もある。
食は人それぞれですしねぇ、と。味の感想を待つ。

一樺 千夏 > 「食べるだけ、ならあるんだけどねー。
 ここの蕎麦と同じかそれ以上ってなると、やっぱりねー」

食べられればよい とする貧困層は多いのだろうやっぱり。

「兵糧って……ずいぶん古風な言い回しねー?
 まぁ兵站を潰すのは基本中の基本だけど」

元々暗躍するのがメインの商売。
どっちかっていうと潰す側である。

喋りながらでも、食は進む。
もっと喋っていたいが、食べ終わったら席を空けるのがマナーだろう。
閑古鳥が鳴いていたとしても、だ。

「ごちそうさま、美味しかったわ。
 タイミングが合えば、次も寄らせてもらうわねー」

一樺 千夏 > そう言って、代金を支払ってから席を立つ。
マネキンの方に少しだけ鋭い目線を送ってから―――。

「ま、いいか」

そのまま歩いて去っていった。

ご案内:「落第街大通り」から一樺 千夏さんが去りました。
”マネキン” > 【箸で避けておいた海苔ごと、すでにツユまで飲み干した。
女将の問いかけにははっきりと首を振る。】

ごっそさん。
いい。そういうつもりじゃねえ。

次は一味もいれずに喰うべき味だな。

【箸をおく。
こちらも席を立ち、立ち去る素振りを見せた。
その際に”マネキン”も、一度だけもう一人の客の去る背中に視線を向ける。】

…あんな目立つガラクタ、よくバラされねぇもんだ。

蕎麦屋 > 「あら、それは随分と高く買っていただいたようで。
 価格だけは周辺に合わせてみたのですけど、」

蕎麦屋冥利に尽きる話に笑みをこぼしながら。

「はい、毎度。今後とも、よろしければご贔屓に。」

大体この辺りでやっておりますので、と帰る背に声をかけて見送る。
食べ終えた器は下げて、水を張った桶の中へ。

蕎麦屋 > 「いえ、こちらこそ配慮が足りませんでしたから。
 次来られた時におまけさせて頂きますので――でしたら、次は一味抜きで食べていただければ。」

こいういう一言が聞きたくての屋台蕎麦、というのもある。

「そういうわけで。次もまたお待ちしておりますね?」

去る背中に声をかける。
何やら今日の客はつかみどころのない人ばかりだな、と心中思いながら。

”マネキン” > 【女将には答えず、手だけ背中から左右に揺らした。
懐から取り出したスチェッキンの薬室を確認しつつ、
もう一人の赤い髪の客が消えていったのと同じ方向に歩いていく。】

ご案内:「落第街大通り」から”マネキン”さんが去りました。
蕎麦屋 > 「さて――」

客の去ったあと。
器は下げて桶の中へ。机を軽く拭いて綺麗に。

「ふふ。」

自然と笑みがこぼれる。
この辺りの客は、食べられればそれでいい、そういう客ばかりかと思っていたけれど。
ああいう客も居るならやる意義も増そうというもの。

次の客が入るまでは、再びの静かな時間――