2017/11/05 のログ
ご案内:「落第街大通り」に陽太さんが現れました。
陽太 > 雨上がりのとある日。
ぬかるんだ地面を泥に汚れた裸足で歩く。
ねちゃねちゃした感触を楽しみながら、
しかし服を汚さないように慎重に。

「ふふん、ふん、ふーん」

桁外れの可愛らしい歌声。
小さく響くそれは、落第街の喧騒に掻き消される。

陽太 > ぺたぺたと足元の泥を踏み固めながら、
ざんばらの髪と、ぶかぶかの袖を揺らしながら。
濁った水溜まりに姿は映ることはなく、
戯れに爪先で掻き混ぜて波紋を作ってみる。

「ふふっ」

落第街の道の片隅で子供らしく水遊びをしながら
はしゃいでいると、路地の方からか細いなにかが聞こえた。

「ん?」

水たまりをぱしゃぱしゃと進み、しゃがみこむ。
そこにあったのは泥の塊。
しかし、僅かに息をするように動いていた。
陽太は不思議そうに首を傾げ、塊から泥を掬いとる。
そして、顕になったそれに素っ頓狂な声を上げた。

「ねこ?」

ご案内:「落第街大通り」に陽太さんが現れました。
陽太 > 泥だらけに汚れた灰色の毛並み。
長くてぼさぼさで、ちぢれた尻尾と
かろうじて三角の形を保っている耳から
ようやく猫と判別できるほどに変わり果てている。

陽太が知る子猫よりあまりにも小さく、
哀しさに満ち溢れた弱々しいに過ぎる存在。

「だ、だいじょうぶ、じゃないね、」

どうしよう。
毛玉のような子猫を胸に抱き、
おろおろと周囲を見渡して。

しかし誰もこちらを顧みず。
濁った目で自分の目的のみを追う
落第街の住人には子供など興味に無かった。

途方に暮れた陽太は、半泣きだった。

ご案内:「落第街大通り」に陽太さんが現れました。
陽太 > か細くひゅうひゅうと息をする猫。
陽太は涙目になって焦りながらも
できることをやらなければと自らの服で泥を優しく拭い
冷えきった体に熱を与えるように優しく抱き締めた。

「つめたい...」

毛は固くなって、どうやら氷かけのようで。
こんな寒空の下に、何日置き去りにされていたのだろう?
親とはぐれたのだろうか?人間にいじめられたのだろうか?

昴が姉に重なるとしたら、子猫は自分。
子猫の気持ちは、痛いほど分かった。

道端に座り込み、足が悴むのも無視して子猫を抱き締め続ける。
やることはしなければ、と。

陽太 > にぃ、とまるで虫が鳴くような声がした。
慌てて見下ろせば、薄汚れた灰色に
一筋の金の色が見えて陽太は驚く。

「あ、めさめたんだな。
よかった、はやく、なにか...」

たちあがり、ポケットから取り出して握り締めるは硬貨。
なにかあたたかい飲み物を買ってこよう。
猫好きだった姉が飼っていた猫は、よくミルクを飲んでいた。

「あるかな、ミルク...」

あたたかいミルクなんてものが、落第街にあるかどうか。
望み薄でも、冷えたミルクでもいい。
火は付けられるから、それで温めよう。

この小さな命を救いたいと、陽太は確かに思った。

ご案内:「落第街大通り」に柊 真白さんが現れました。
柊 真白 >  
――何してるの。

(この街に似合わない――いや、ある意味では落第街らしい少年の姿。
 実は一度その側を通り過ぎていたのだが、用事を済ませた帰り道でもう一度通りがかった今は様子が違っていた。
 彼の後ろから近付いて声を掛ける。
 猫の姿にはまだ気が付いていない。)

陽太 > 丁度ミルクを買いに走ろうとしていた時、
現れたのは白く綺麗な少女だった。

「えっ、と、ミルクかおうっておもって。
こいつ、しにそうだから」

あまりにも場に似合わぬその姿に、
目をぱちくりと瞬かせながらも抱いていた猫を見せ。

柊 真白 >  
――貸して。

(す、と視線を落とす。
 少年が抱えているそれは泥まみれで薄汚い毛の塊。
 小さく動いている猫を半ば奪い取るように抱え、そのまま自身の服の中へすぽんと入れた。)

子猫に普通の牛乳はあげちゃだめ。
おなかを壊す。

(そのまま服や肌が泥で汚れるのにもかまわず抱く。
 冷え切った子猫の身体に熱を移すように。)

陽太 > 「...え、うん」

ぽかんとしたまま頷いた自身から
奪われるように抱かれた子猫。
何だか扱いに慣れているような気がする。

「そ、そうなんだ。
.....なんか、ありがと」

少し少女を見上げ、戸惑いながらも礼を言う。
よく分からないけれど、このままでは余計に猫を苦しめてしまうところだったようだと理解はできて。

柊 真白 >  
子猫用のミルクはペットショップに売ってる。
でも今は体力落ちてて食べても消化できないと思う。
体力を戻すほうが先。

(それでもエネルギーを補給しないと体力は戻らない。
 僅かにでも鳴く体力はあるようだが、果たしてどうなるかはわからない。)

――君、家族は。

(とりあえず今は抱いて暖める以外にないだろう。
 視線を彼に戻し、尋ねる。
 もっとも、答えは大体わかっているが。)

陽太 > 「ペットショップ、かぁ...」

真面目な顔をしてスラムにあったかどうか悩むが、
.....まず無い気がする、と肩を落とす。
とりあえず抱きしめて温めようと試みたのは正解だったか。

「.........」

問われた問いには、少し黙り込んだが
俯いて、黙ったまま首を横に振る。
...確かに姉はもう一人できたが、彼女はどうも違う気がする。

「...えっと、そっちは?」

一見近い年に見える少女。
そちらこそどうなのかと、顔を上げて尋ねる。
...やけに発言や雰囲気は大人びているような気はするが。

柊 真白 >  
――。

(返事がない。
 と言うことはやはりそうなのだろう。
 別に珍しいことじゃない。)

もういない。

(なんでもないことのように。
 実際なんでもないのだから。)

――それで。
この子、助けてどうしようと思ったの。

陽太 > 「...そっか」

珍しいことじゃない。
それはわかっている。
...でも改めて聞けば、いい気持ちになんてなれなくて。

「......そだてようって、おもってた。
あと、ふつうに今たすけたかったから」

子猫を見つめたまま、神妙な顔つきで。
助けたかった理由は、よく分からない。

柊 真白 >  
どうやって?
お金は。
家は。
病気とか怪我とかした時は。
動物の病院はお金掛かるよ。

(彼はどう見ても裕福には見えない。
 住処は恐らくスラムか、どれだけ良くても落第街の裏路地だろう。
 とてもじゃないが、他人や動物に構っている余裕があるような立場ではないはずだ。)

助けようと思うことは大事だけど。
そんな余裕もないのに助けようとするのは誰も幸せにならない。
そう言うのを見捨てる勇気も大事。

(他人へ構う余裕があるものだけが他人へ手を伸ばす権利があるのだと。
 そうじゃないなら余計なことはするなと言うように、彼の目をまっすぐに見る。)

陽太 > 「.....う」

確かに動物を養うお金も時間も無い。
病気にかかったら、病院にだって連れていけない。
...自分のことで精一杯、ということではないけれど。
痛いところをつかれたかのように、陽太はぐっと黙り込んだ。

「.....じゃあ、こいつはしなないといけないの?」

涙は浮かべず、じっと少女を見上げ。
まっすぐにそう問いかける。