2017/11/06 のログ
柊 真白 >  
君に他人に構う余裕がないなら、君はこの子を助けるべきじゃない。

(自身の服の下で泥に塗れている子猫を助けるべきではなかったと。
 はっきりと告げる。)

――そう言うのは。
お金もあるしちゃんとした家もあって、何かあった時にすぐ病院へ連れて行ける私みたいな人の仕事。

(少しずつ暖かくなってきた子猫が落ちないように抱えながら。
 連れて帰って泥を落として、それとも病院が先だろうか。
 元気になったらトイレとか餌とかも買いに行かないと行けない。
 やることが多い。)

陽太 > 「.....そっ、か。...ごめん」

謝ったのは、少女では無く猫の方に。
中々に厳しい言葉をいただいてしまったが、
...上手く笑えていただろうか。

「.......!」

だが、少女の言葉に驚いて顔を上げる。
少女はどうやらこの猫を保護する気があるらしい。
勝手に嬉しさを感じながら、言うべき言葉を必死に探して。

「.....よろしく、おねがいします」

柊 真白 >  
見なかったことにするのは、流石に寝覚めが悪い。

(服の中で丸くなっている猫を、襟元から眺める。
 体温は上がってきた。
 それでもまだ目は薄くしか空いていないし、丸まったまま動く気配もない。
 助かるかどうか微妙なところだが、それは口には出さない。)

それで、名前は。

(再び視線を彼に戻して。
 一瞬後に何か気付いたように一度瞬きをして、)

この子の名前。
君がつけてあげて。

陽太 > 「.....いがいとやさしい人、なんだね」

子供も足蹴にするような大人を連日見ていれば、
そう呟いてしまうのはあながち無理も無いことで。
今の相手は、陽太にはそう見えた。

「...なまえ?おれは、陽太だけど...。
.......え?いいの?」

自分の名前をとりあえず名乗った後、
名付け親に指名されて、小さく息を飲んだ。
逡巡した後、何故か深呼吸をする。

...この名前を言うのは、勇気がいる。
だけど自分はこれ以上に、好きな言葉を知らない。
それを表す代名詞は、少なくとも名前ではないから。


「じゃあ、
つきか がいいな」

柊 真白 >  
外なら普通。

(余裕のない者の多い落第街では仕方ないだろう。
 しかし自分より弱いものへ手を差し伸べると言う行為はそこまで特別なものではない。)

あぁ、うん。
私、柊真白。

(やはり勘違いさせてしまったらしい。
 彼だけに名乗らせてと言うのも申し訳ないので自身も名乗っておいた。)

良し。
じゃあお前は今日からツキカだ。

(襟元から猫を覗き込んでそう語りかければ、小さくみいと鳴いた。
 偶然かもしれないけれど、自身にはそれが彼に対する返事に聞こえた。)

陽太 > 「...そうなんだ。
...そうだったかも」

外で暮らしていた記憶はもう曖昧と言っていいけれど、
確かにこの少女のような優しい人は沢山いたかもしれない。
そんな気はした。

「ましろ...。
名前までしろいね。
お姫さまみたいなかっこう、すきなの?」

反復するように少女の名前を呟いた後、
服装をじっと見つめて思ったままのことを言う。
ひらひらで、ふりふりのそれは陽太には
絵本かなにかで出てくるお姫様のように見えていた。

「.......ごめんね、ありがとう」

返事を返した小さな猫に、もう1度そう語りかける。
何故この名前を名付けてしまったか、理由は上手く説明できなかったけれど。
少しでも長く、生きてほしいと漠然とそう思ったのは分かる。

柊 真白 >  
ここ、出れば良いのに。
君でも普通に暮らせると思うけど。

(生徒にさえなってしまえば衣食住全て面倒を見てもらえる。
 それを知らないか、それとも知った上でここにいるのか。)

そうだね。
好き、ってわけじゃないけど。
この方が――

(そう言ってターンしながら腰を跳ね上げ、スカートの裾を翻す。
 それで一度彼の視界を塞ぎ、)

――死角が多いから。

(彼の視界が開けたときには、目の前に大きなナイフが突きつけられている。
 右手でくるりと回転させ、スカートの中へしまった。)

――そろそろ病院連れて行く。
君も来る?

(もう一度みいと答えるように鳴いた猫。
 少し声が小さくなっている。
 そろそろ獣医に見せないと間に合わないかもしれない。
 彼も共に来るかどうか、尋ねてみた。)

陽太 > 「...いいよ。
おれ、ここにいたくてここにいるし。
あと、外でくらすと...たぶんつかまるし」

申し訳なさそうに苦笑して。
...陽太自身もよく忘れてしまう事だが、
自分の立ち位置は実際逃亡者に近いのだ。

「...え?
え、う、うわっ.....」

翻るスカートの裾を、呆然と眺め。
そうしている内に、目の前にナイフが突きつけられていて。
思わず出かかった悲鳴を飲み込む。

陽太のような子供でも分かる、完璧な身のこなし。
...ようやく合点がいったらしく、納得したように。

「ましろ、ああいうしごとしてるんだな」

...なら、こんな清潔な格好をした人物が
好き好んでこんな場所を出入りをしているのも頷ける。
範囲は広いので暈すが。

「...あ、そ、そうだった!
い、いく...!!」

小声で叫ぶように、しかし大きく頷いた。

ご案内:「落第街大通り」に陽太さんが現れました。
柊 真白 >  
じゃあ、うちくる?

(自分も学園の生徒とは言え、身分は偽装だ。
 自身の家を訪ねてくるのもその辺りは深く追及してこないものばかりだからちょうど良い。
 猫が一匹増えるのも、更に一人子供が増えるのも大して変わらない。)

そうでなければこんなところ出入りしない。
――病院行くなら、一度お風呂入ったほうが良い。

(その格好では怪しまれるだろう。
 病院の場所も表になるだろうし。)

陽太 > 「.....う、だいじょうぶ」

ここで生きていくと決めたから、と
少し迷ったがそう断言する。
姉の家にもちょくちょく行かせてもらっているが、
やはり一緒に暮らすことはこちらから断っている状態だし。

「...おふろは、はいったほうがいいか...」

ぼろぼろの衣服はさることながら、
足は泥だらけで病院をも汚してしまうだろう。

柊 真白 >  
そう。

(無理強いをするつもりはない。
 彼にもなにか考えがあるのだろうし、ここで食い下がるのはそれこそ押し付けだから。)

うちでお風呂だけでも入っていくと良い。
服も貸してあげる。
いくよ。

(子猫の方も一分一秒を争うと言うことはなさそうだ。
 とりあえず一度自宅へ帰って、用意をしてから連れて行くことにしよう。
 割と有無を言わせぬ感じで歩き出し、自宅へ向かおう。
 帰りにどこかで彼の服や靴を一式買っていく。
 自宅に帰れば彼を風呂へ叩き込み、ついでに自分も子猫と共に風呂場で泥を落とすだろう。
 子猫は病院へ一晩預けることになったとか――)

ご案内:「落第街大通り」から柊 真白さんが去りました。
陽太 > 少女の細やかな心遣いに感謝し、
大人しく頷いてみせた。

「うん、ありがとう...」

子猫を気遣いながら陽太は少女と共に
始めて訪れた学生街の一宅にて風呂に叩きこまれたり
ほぼ無理やり新品の服を着せられたりと散々な目に遭うだろう。
しかし少女はきちんと猫を病院に預けてくれ、
やっと一息つけたのだとか。

ご案内:「落第街大通り」から陽太さんが去りました。