2017/04/22 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 落第街の裏路地の一つ、ひっそりと乱雑な建物の一角に存在するとある違法組織のアジト。
昼でも尚、陰湿で冷たい空気が漂うそこに一人の人物が静かに佇んでいる。
「………。」
黒い外套で全身を覆い隠し、フードを目深に被り、そして白い無機質な仮面。
容貌はある意味で地味でありそして目立つ。その姿だけでとある殺し屋を連想する者も居るだろう。
静かに、アジトの天辺に佇みながら右手には僅かにバチバチと放電する黒い刀を携えて。
先日、とある同業者と共に行った鏖の報復にてその組織の長から奪った刀だ。
中々に頑丈で切れ味も良いので、ついでに頂戴したのだが…いざ、使ってみると地味に扱い辛い。
でも、まぁ殺し屋としての”売り”が一つ増えた程度にはなるだろう。
「………逃げた者は居ないか」
そう呟く男の眼下…3階建ての建物の中は、あちこちに死体が転がっている。
何の事は無い…ただの依頼で、違反組織の一つを丸ごと皆殺しにして潰しただけだ。
外に逃げおおせようとした者も居たようだが、当然依頼はきっちり遂行した…誰も彼も生かしては出していない。
■百鬼 > 仕事は順調といえば順調。変わり映えしないが殺しは殺しだ。ただ始末するだけ。
…とはいえ、最近は一部嗅ぎ回る輩も出てきているというのが面倒ではある。
(――…あの四足歩行…確か風紀の特別攻撃課所属、だったか)
正直、仮に彼の破壊を依頼されても戦いたくない相手だ。勝てないとは言わないが…面倒でしかない。
もっとも、落第街やスラムを中心に、腕利きの殺し屋なぞ腐るほど存在する。
自分がマークされているのは、ただ純粋に詳細不明…データが少ないからだろう。
(…後は、例の報復行動が引き金になったと見るべきか。…あちらもマークされていそうだな)
以前、報復行動で共闘した白い少女もあちらの調査対象の範疇と見るべきだろう。
もっとも、お節介を焼くつもりは無い。殺し屋は基本は単独行動。
そもそも、互いに腕利きなのだから独力で切り抜けてこそ、であろう。
「――どの道、面倒な事に変わりは無い…”ヤツ”の出番が増えそうだ」
学園生活を謳歌する”バカ”の表舞台の頻度が増えそうで、我が事ながら何とも面倒臭い。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にステーシーさんが現れました。
■百鬼 > あちらは表であり裏、こちらが裏であり表。彼岸のとある女性には道化師(ジェスター)と誂えられていたが。
(――あぁ、まぁ…”ヤツ”は道化師、であるだろう。私には真似出来ん…いや、私自身でもあるが)
矢張り、こちらの時にあちらの行動を思い返すと何とも言えないものが多少湧き出る。
既に標的は皆殺しにしたのもあり、ゆっくりと鋼鉄の鞘へと黒刀を納める。
…10年、いやそれ以上だろうか?記憶が一部曖昧だがこの島で殺し屋を始めてその位だ。
切っ掛けは何だっただろうか?…肉体の本来の持ち主が脱走してからだろうか?
仮面の奥から、淡々とした眼差しで雑然混沌とした落第街の光景を無感情に眺め。
■ステーシー >
窓から逆さまに顔を出す。
そのまま黒の外套の人物に声をかけた。
「ダスキンでーす」
肩には生活委員会の腕章。
そのまま割れた窓をするりと抜けるように飛び込んでくる。
「……すごい血の匂いね」
■百鬼 > 「――…生憎と呼んだ覚えは無いが」
仮面の奥から、男とも女とも判別し難い声を漏らす。認識阻害の術式も重なり、性別がまず分からないだろう。
相変わらず、仮面の向く先は逆さまに現れた彼女ではなく…雑然とした落第街の光景であり。
…現れた人物の声に覚えは無い…と、なれば遭遇した事は無い。自分も”ヤツ”もだ。
いっそ無防備とも言えるほどに突っ立って景色を眺めていたが、漸く僅かに仮面の顔をそちらに向ける。
「……異邦人……その腕章は生活委員会、か」
風紀、公安とは接触した事はあるが生活委員会は多分無かった気がする。
■ステーシー >
「呼ばれなくても即、参上。隅から隅まで清掃活動」
「それが生活委員会のモットーでねー?」
歩けばブーツが血とガラス片を踏んでジャリ、と音を立てた。
そのままゆっくりと歩を進めていく。
ジャリ、ジャリ。
「この辺の清掃活動に勤しんでいたら、外からでもわかる咽返るような血の香り」
「調べないわけにはいかないでしょう?」
腰の刀の鯉口を切る。
ディバインブレード、旋空。
時間の止まった金属で作られた不壊の刃。
「そう、異邦人にしてフェルパーにして生活委員会にして怪異対策室三課にして」
「掃除屋。ステーシー・バントラインよ」
仮面の人物を指差す。
「ついでに風紀に遊びに行く用事があるから、ご同行願えないかしら?」
■百鬼 > 「……そうか、どうでもいいが」
周囲に散乱するガラスの破片と鮮血、そして死体の群れ。
ゆっくりと歩を進めてくる相手を一瞥したままその場から仮面は動きもしない。
「……仕事熱心な事だ。」
彼女が腰の刀の鯉口を切ったにも関わらず、仮面の方は手に持った黒刀の柄にすら手を掛けない。
淡々と彼女の獲物を眺めていた。…ほんの僅かに、白い面の奥に隠された瞳を細める。
「――不壊金属…時間停止、の類か。また地味に珍しい刀剣だ」
一瞥しただけで、大まかな情報が分かったのか独り言のようにボソリと漏らし。
彼女の名乗りに対し、こちらは淡々と名乗る事もなくその言葉にこう返そう。
「………面倒だ、断る」
次の瞬間切られてもおかしくないというのに、未だにその刀を抜く素振りも見せず。
■ステーシー >
「あら、神の遺物である旋空を一目で理解したのね」
あと三歩で刀が届く距離。
あと二歩。あと一歩―――――
「花には水を、鳥には空を」
「荒野に希望を、罪悪(あやまち)に裁きを」
強く一歩を踏み込んだ。
「覚悟を牙へと変えッ!! いざ往かんッ!!」
抜刀、そして峰打ちで黒衣を打ち据えにいく。
まずは袈裟掛けの一閃。
■百鬼 > 「――神遺物か…成る程」
あと三歩、といった所か。だが仮面は動かない、彼我の距離が縮まる―…二、一…そして。
「――進むのは君の勝手だが…生憎と…」
次の瞬間、強い踏み込みと共に袈裟懸けに叩き込まれた峰打ちの一撃。そのまま、無防備に受けた―かと思えば。
「……その邁進に付き合うつもりはないのでな」
僅かに体を傾けただけでその一撃をやり過ごす。積み重ねた殺人技巧。そして明らかに”剣術の心得がある”体捌き。
重心そのものはしっかりと体を支えながら、最小限の見切りと動き。
そこからカウンター…等しない。邁進に付き合うつもりは無いと言った。
故に、彼女の太刀筋を観察する事にする。どれだけの使い手か…さて?
■ステーシー >
「……ッ!」
かわした、それも紙一重で。
自分にこれができるだろうか?
否、眼前の魔を恐れるは、己が未熟の水鏡。
足元に広がる血は語る。
無念を。
ならば、必ず贖わせるッ!
「バントライン一刀流――――……」
呼法、バランス、そして脱力と力み。
左肩、胸、右肩を狙った三連刺突。
「雪童(ゆきわらし)ッ!!」
相手を殺すほど突けば己も修羅道へ堕つる。
目指すは加減と速度の両立。
■百鬼 > 「――まず、峰打という時点で温い…まぁ、そちらの信条か信念なのだろうが。」
紙一重で交わしても何の感情も揺らがぬ声は淡々と響く。彼女の未熟に興味は無い。
無念?だからどうした。殺される側に回っただけの事だろう。殺し屋にそんな感情も感慨も無い。
彼女の気配が変化する…技が来るか、と思えば何も持っていない左手をゆるりと上げる。
黒い革手袋に覆われてはいるが、特に何の変哲も無い手で何の変哲も無い動作。
――左肩、ゆるりと上げた左手を翳し…迫る不壊の刃切っ先を手首のスナップで軽く”叩いて”軌道を逸らす。
――右肩、僅かに右足を引き、半身の姿勢になりながら紙一重で交わす。
――胸元、半身になった瞬間、身を無造作に屈めてギリギリでやり過ごす。
「――速度は悪くない…が、加減を見誤っている。殺す寸前までの領域には持っていけ」
まるで淡々と教授するかのように告げながら、屈めていた身をスゥ、と起こす…トンッ!
次の瞬間、無拍子(ノーモーション)で右手に握った刀の柄…それで、彼女の腹部を”捻る様な動きで突く”動作を試みる。
■ステーシー >
「!?」
雪童を全て回避された。
それも、達人が剣童の太刀筋を撫でるが如く。
神業――――としか言いようがない。
「何をッ!」
次の瞬間、弾かれるように後方に飛ばされていた。
「………ッ!」
無拍子。獣性で咄嗟に鞘で防がなければ一撃で戦闘不能もあり得たタイミング。
ほぼ本能で防御したが、背筋に冷たいものが走る。
「ふぅぅぅ………」
呼吸を落ち着かせる。
血の匂いは心をざわつかせたが、理により心の全てを統べるが剣の道。
「……この地に来て二年で貴種龍(ノーブルドラゴン)を討伐し、剣の聖女と呼ばれて舞いあがっていた」
「感謝するわ……やること成すこと、雑になっていたもの…」
峰打ちにしていた刃を返した。
殺意、剣気、そして己がこの世界に存在するための力『プラーナ』が全身を薄く覆う。
「あなたなら、殺しても死なないでしょう」
跳ぶ。
地面を、壁を、天井を、そしてプラーナにより何もない虚空を蹴り。
多角的三次元跳法を駆使し黒衣に迫る。
そして、真剣による胴体を薙ぎ払う逆袈裟の刃が振るわれた。
今までとは速度が違う。踏み込みが違う。覚悟が違う。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「――流石に防ぐか。…だが、君ならそのくらいは当然出来るだろうな…。」
先程から、あれこれ指摘していたが別に仮面は彼女の力を侮っても見縊ってもいない。
むしろ、将来性という点で見ればまだまだ伸びるだろう…だが、それはそれだ。
無拍子によるただの突きだが、まともに食らえば常人ならそれだけで良くても昏倒、悪ければ内臓を潰していた。
が、彼女はそれをやり過ごした。成る程…生活委員会も侮れない。
「……私みたいな者に感謝をしてもしょうがないだろう。…まぁ、寝惚けた目が覚めたなら何よりだ」
つまり、ここからがこの少女の本分と言えるだろう。さっきまでのは前座、戯れの領域だ。
峰打ちの刃を返す…そう、そのくらいの覚悟は持って貰わないと己を連行など絵空事だ。
右手に握っていた刀…それを左手に移し、右手はそのまま刀の柄をここで初めて握る。
構えらしい構えは特に無いが、殆ど回避と一部カウンターしかしなかったさっきまでとは違う。
「――そうだな、まぁ殺してても死なないのは間違っていないだろう」
緩く仮面は頷く。…さて、来るか。不意に少女の身が跳ねる。
壁、天井、地面、そして虚空。…プラーナ、というものを仮面は知らない。だが。
(…多角度からの超高速の強襲攻撃…練度は高い…か)
刀の柄を握る右手が、一度軽く”緩む”…次の瞬間。
逆袈裟に対し、袈裟懸けの紫電迸る一閃がそれを迎撃する。
矢張り無拍子、余計な手順を一切省いた無駄の無い一閃がその刃を相殺せんと。
「―――…成る程」
先程とは全てが段違いだ。だが、仮面は相変わらず淡々としていて揺るがない。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に百鬼さんが現れました。
■ステーシー >
黒衣の人物の紫電を纏った斬撃で攻撃を返される。
だがもう怯まない。
この呼吸が、この意志が、この鼓動が。正義だ。
刃を弾かれたままの勢いで相手に背を向ける。
そのまま姿勢を低くしながら一回転、相手の足元を斬りつける。
バントライン一刀流、真・黒法師。
閃光の剣にて悪を断つ、その意思の体現。
恐らくこの手の敵には範囲攻撃そのものが通じない。
ならば、剣気で全てを薙ぎ払う奥義『星薙』は無用。
剣戟で上回る以外にない。
■百鬼 > 斬撃を相殺すれば、分かった事が二つ。一つ…矢張り刀剣の質は明らかにあちらが上だ。
そもそも、神遺物とやらと業物では天と地の差があるのだろうがそれは致し方なく。
もう一つは―…
「――”真似事”だがそこは大目に見て貰いたい」
剣戟の腕でも、殺し合いの領域に至れば彼女の方が上かもしれない。
とはいえ。刃が互いに弾かれると同時、こちらはそのままバックステップ。
すかさず、足元狙いに放たれた一閃をまるで空中でも渡るかのように軽く飛んでギリギリ回避。
…【瞬光】、何時の間にか鞘に収まっていた黒刀。そこから放たれるは名の如く、一瞬の光にも似た剣閃。
それが三条――×の字、そして縦一文字…「*」の軌道で彼女へと放たれんと。
■ステーシー >
また寸前で回避された。
だが十重にて届かぬならば二十重に斬る。
二十重にして届かぬならばさらに連ねる。
瞬間的三連閃。
だが順番がわからない。
引きつける。見切るのだ。できなければ敗北は避けられない。
猫の瞳が輝く。
右の袈裟掛けを切り払う。
左の袈裟掛けを寸前で回避……しきれない、僅かに目の上を掠り、血が流れる。
そして無駄のない動きで放たれる黒衣の唐竹に柄尻を合わせる。
払う、そして右目に血が入る。
視界が防がれた場所に、師匠が。
リルカ・バントラインが立っていた。
自分と同じフェルパーの師匠は、語りだす。
『自分より強い相手と戦うのであれば…』
『一瞬だけ相手を上回るしかないわね』
『たった一閃、ただし三倍の速度で剣を振るいなさい』
脳裏に浮かぶは師の言葉。
この想いを刀身に預けて……今、戦いの道を選ぶッ!
「白刃一掃ッ!!」
背骨を含む全身27箇所の関節の回転を連結加速させ、自身の300パーセントの斬撃を放つ。
ただの横一文字。
しかし、過去に違う世界から来た亜人王の命を奪った兇剣。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 【瞬光】、かつて仕事で殺した”同業者”の技を真似たものだ。
だが、所詮は真似事…真の剣士たる彼女に通用するとは限らない。
(――成る程、矢張り”この程度”ではあちらが上手か)
この”先”が分かる。右の斬光は袈裟懸けで切り払われる。
左の斬光は彼女の目を掠めるに留まる。
縦一文字の一閃は…これも払われる。鮮血で彼女の視界を半分奪うが。
「……っ!」
分かる、全身の間接駆動を連結させた超高速すら生温い一閃が飛んでくる。
こちらは忽然と、既に抜き放った筈の黒刀を納刀しているが…生半可な一撃ではそれごと斬られよう。
だから、仮面はただ”斬られた”。高等な防御術式の外套ごと、横一文字に胸元辺りをバッサリと切断され、鮮血が迸り――…。
ギシリ、何かが軋む音がする。それは筋肉で、骨で、関節だ。
斬られながらも、静かに仮面の奥で息を零して居合いの構えを取る…そして仮面の姿が”消えた”。
「――【雲耀】。」
呼吸法に加え、彼女とはまた別の全身駆動…”溜め”と”捻り”と”脱力”を使った”不可視の魔剣”。
彼女が防ぐにしろ、交わすにしろ仮面の姿は既に彼女の後方に数メートルの位置に在っただろう。
■ステーシー >
浅いッ!!
この技は放てば必ず相手を殺してきた。
だからこそ、斬ってなお相手が動くことが信じがたい。
世界が軋む音が聞こえた。
防御、いや、回避。
――――そんなものが何の役に立つ。
認知の外から斬られた。
逆袈裟に切り裂かれ、体から血を吹き出してその場に蹲った。
「そん………な……ッ!!」
相手も白刃一掃を。
いや、違う。
それだけで不可視の速度で動けるはずがない。
ステーシーの白の衣装が血に染まっていく。
「あ、ぐ………」
気を失ってはダメだ。意思の力で立ち、プラーナで傷を薄く塞ぐ。
だが目に入った血はもうどうしようもないし、失った体力は戻らない。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「――全く…面倒な事だ…」
ここまでバッサリと斬られたのも久々だろうか。ここ数年は無かったと記憶している。
そもそも、生粋の剣士相手に対してこちらは剣士ではなく”殺し屋”なのだ。
何故、わざわざ相手の土俵に合わせているのか…我ながら理解に苦しむ。
そして、どう見ても致命傷に近い傷跡はそのままに、無造作に彼女へと振り向いて――。
「――悪いが、少し”寝ていろ”…ステーシー・バントライン」
次の瞬間には、立ち上がり、まだ勝負を諦めていないであろう彼女の懐へと音も無く潜り込まんと。
先程とは明らかに違う、音も、気配すら無い。…殺し屋の動きだ。
そして、無手の左手で彼女が薄く治療した傷口に手刀を叩き込まんとする。
もし、決まればその勢いで彼女を仰向けに床へと叩き付けるつもりで。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にVJさんが現れました。
■VJ >
その『異能』を発揮して、ようやく彼女は気配を現す。
真下、すなわち二階から。
「VaporJail」
彼女の居る部屋の天井付近。炸裂する水蒸気。無数の連続爆破。まともな建築基準を満たしていないビルディングの天井は、脆くも崩れる。
だから、三階の床が落ちる。
■ステーシー >
負傷で防御反応ができない。
いや、そもそも音も気配も、殺気すら虚空に紛れた本物の殺し屋の一撃だ。
傷口に手刀が叩き込まれる。
「………ッ!!」
口から空気が出て行かない。
そのまま床に叩きつけられ、ステーシーは意識を手放した。
血が流れ続ける。
流れ続ける血。
ディバインブレード、旋空から虚像が浮かび上がる。
それは貌のないネズミのような、醜悪な姿をした―――神。
『我が供物への狼藉、そこまでにしてもらおうか』
彼女の剣に宿る神は世界にまどろむ。
『我は夢を司る神、アルテミドロスなるぞ』
『この娘は我が贄……善き夢も悪しき夢も観る憐れなるモノ』
『斯様な個を使い潰してなるものや』
その時、三階の床が崩れて落ちる。
『我が贄は命を拾うか否や』
神は姿を消し、気絶したステーシーは二階へと落ちていった。
■百鬼 > 「……その程度で死ぬなら、”そこ”がその娘の限界だろう」
彼女にきっちりトドメ…否、最初から殺す気は無かった。ただ、それでも意識を保てぬ一撃で昏倒させる。
不意に彼女の刃から浮かび上がる虚像。それを見ても殆ど無反応に等しい。
何故なら、ある意味でこの仮面の”本性”はそちら側の領域に近いからだ。
淡々と、神へと言葉を返しながらもフ、と仮面の視線が下を向く。次の瞬間起こる爆発。
「……次から次に千客万来じみているな」
たかが殺し屋一人に大袈裟な、というような吐息を仮面の奥で零す。
当然、仮面も一緒に落下する筈だが…忽然と、お隣の建築物の屋上に降り立っていた。
相変わらず傷口からは横一文字の深い傷跡と鮮血が流れ続けているが。
「……殺し屋の【百鬼】だ…ステーシー・バントラインにはそう伝えておけ、夢神アルテミドロス。」
爆発の衝撃による崩落。落下していく彼女の体と顕現している夢の神へとそう言い残す。
■VJ >
天井と床を形成する石材鉄材は、瓦礫となって降り注ぐ。
見上げて、選択する。多分あっちはもう動けなさそうだ。
「あれ、タイミング微妙に間違ったかしら……。
もう少し完璧に『そこまでよ』って感じにしたかったんだけど」
格好つけてビルを壊した意味がない。やることが増えただけだった。
うぅん。唇を尖らせて、硬質の俄雨をすり抜けながら、気絶してしまったステーシーの落下点へ。
特に妨害も入らなければ、どさりと彼女を受け止めようか。
「死んでなきゃいいけど」
息をするように応急処置。彼女が操る水は、間もなく傷口を塞ぎ、かさぶたと同じ顔をして止血を行うだろう。
触れるだけで異能を弾く体質でもなければ。
さて。
「特に執着がなければ、彼女を病院に連れて行くわ。ええっと……君もご一緒する?」
一緒に落ちてきたら、身柄も拘束したかったところだが。
出来ていたかは別として。
隣のビルへ移ってしまった相手へ、大声を出して呼びかけてみた。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に百鬼さんが現れました。
■ステーシー >
VJに受け止められたステーシーは、整わない呼吸で生命を維持していた。
異能により操作された水で応急処置を受け、止血こそされたものの重傷だ。
刀は鞘にひとりでに納刀され、いつの間にか彼女の腰に収まっている。
■百鬼 > 「……タイミング以前に、そちらは”気配を殺しすぎて”逆にある意味で違和感が満載だったが…」
殺し屋からの率直な意見はそれだ。最初から気付いていた、などと言うつもりは無いが。
爆発と崩落を引き起こした張本人であろう、矢鱈と気合の入った格好の女を隣の建物の屋上から見下ろしつつ。
無論、気絶したステーシー・バントラインに追い討ちを掛けるつもりもない。
ただ、どのみちあちらのドレスの女が彼女を助けるだろう。後はあちらに任せればそれで問題ない。
見た感じ、どうやら異能か何かで応急処置的な事もしているようだし。
…と、唐突に右手に持っていた黒刀。【雷切】をドレスの女へと軽く投げ落とそう。鞘に収めているのでキャッチは簡単…な筈。
「……彼女が目覚めたら伝言を。【その刀を預ける。いずれ”返しに来い”】…と。」
ただの戯れかもしれないし、気紛れかもしれない。久々に深い傷を拵えてくれた相手だ。思う所が無い訳でもない。
後はただ、二人が去っていくならば見送るだろう。無論、こちらを捕縛しようとするならさっさと逃げるが。
■VJ >
「それは……まあ仕方ないんじゃないかしら」
人間らしい生命活動を行っていないのだから。
動く異能力と表現出来る死体である。人としての気配は消せても、気配がないのに『存在』を隠せない。
違和感があると言われたら、"まあ仕方ない"のだ。
それでも、能力バトルの真っ最中に『違う異能の気配』を察していたのであれば感服だ。
流石は闇の住人という他ない。
飛んできた刀。ふいと避ければ地面がガチャンと悲鳴を上げるだろう。
「私、この刀を彼女が君へ返すために、今日みたいな無茶をしそうだと思うから、わざわざそんなこと言わないかもしれないわよ。
余計なお世話かもしれないけど、怒ってるからね?」
それでも結局、刀は拾う。
多分相手の言葉を伝えないことは、腕の中で眠る彼女にとっては、下手すれば『死ぬより辛い』ことなのだろう。
因縁や事情を把握しているわけでもない。
セップクするより命を正しく使えるなら、やむを得ず伝えるしかないわけだ。
眉間にしわ。百鬼の姿をひと睨みして――。
宣言通り、まずは病院に向かおう。
■ステーシー >
人に運命があるとしたら。
常世島にあって長い後日談を過ごす私にとって、今日という日はどういう意味を持つのだろう。
私は次の日に病院で目を覚ました。
黒刀の持つ重みと、再開の予感を両手に感じて。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からVJさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からステーシーさんが去りました。
■百鬼 > 「………。」
無言でドレスの女を改めて仮面の奥から眺める。人間、であるが人間とは言えない。
例えるなら動く死体(リビング・デッド)…それ、そのものとは限らないが。
ただ、仮面が彼女を大分前から感知していたのだけは事実だ。
その辺りは、もう殺し屋としての直感と観察力の合わせ技みたいなものか。
「…憎悪の類は仕事柄慣れているのでな。今更でしかない」
ドレスの女の言葉や睨みに、緩く肩をすくめてみせる。投げ落とした黒刀は交わされてしまった。
が、彼女は結局回収してくれたようだ。後日、病院で目覚めた猫耳剣士にその刀と伝言は渡るのだろう。
そして、ドレスの女が猫耳剣士と己が使っていた黒刀を持って歩き去るのを見送り――…。
「………ああ、まったく」
珍しく、その場に軽く座り込むようにして一息。出血そのものは既に止まっている。
が、一張羅の黒い外套が台無しだ。かなり高度な防御術式などを組んであるが何の意味も成さなかった。
(……いや、この外套があったからこのくらいで済んでいるのだろう)
もし無ければ、確実に一度あの一閃で仮面は死んでいただろう。
しかし、この外套…修復に地味に手間が掛かるのだ。こうなると…。
「……下手すれば、暫くは”ヤツ”の出番となる…か。…やれやれ」
■百鬼 > 「……猫耳の剣士に、夢の神…それに、派手な衣装の女…と。まったく…賑やかな事だ」
ある種の”因縁”が出来てしまった感が否めないが、それがどうなるかは分からない。
そんな事よりも、まずこの外套の修復が最優先だ。足が付かない修復の手順を頭の中でザッと組み立て。
「……行くか」
殺しの依頼そのものは既に済ませたし、血痕、匂い、足跡などの痕跡も都合よくあのドレスの女がぶち壊してくれた。
証拠隠滅の手間が省けて何よりだ。この場合、死体ではなく己に繋がる足跡という意味でだが。
「………。」
最後に、彼女たちが立ち去った方角…そして、常世学園がある方角をそれぞれ一瞥して。
仮面の殺し屋はゆるり、とその姿を屋上から消すのだった。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から百鬼さんが去りました。