2018/07/25 のログ
■神代理央 > 業火と砲煙が夜空を彩り、厳重に守られていた正門は鉄屑のオブジェと化した。
その横を、武装した風紀委員達が駆け抜け、右往左往する警備兵達を次々と無力化していく。
此処までくれば、此方の仕事は終了だ。後は、眼下で駆け回る同僚達が片付けてくれるだろう。
「…ふぅ。以前よりも召喚数を増やしてはいるが、今の所問題は無い様だな。少しは、異能に慣れてきたと思いたいのだが」
小さな溜息と共に再び缶コーヒーを呷る。
今回の作戦では、倉庫群を取り囲む様に大量の異形を召喚し、一斉射と共に作戦が開始された。
敵の有力な能力者に異形が倒されれば、倒された数を上回る様に召喚を続け、今やその数は数十を超える。
我ながら随分と精神衛生上宜しくない光景にしてしまったものだと小さく苦笑する。
「さて、後は異形共を片付けつつ、作戦完了の報告を待つばかり、か」
砲撃を停止した異形達は、未だ倉庫を取り囲む様に鎮座している。一度命令を下せば再びその砲火が降り注ぐことになるだろう。
尤も、既に味方が入り込んだ倉庫に攻撃するのは若干躊躇われるのだが―
ご案内:「落第街の倉庫群」に國宏一実さんが現れました。
■國宏一実 > 砲撃による轟音が止み始めた頃、ようやく目的の場所に辿り着く。
『サッキチラットミエタンダガ、使役者ハコノ辺ニイルハズダ、タブン』とかいう信憑性に欠ける案内を受けながらビルの屋上に辿り着く。
なるほど、此処からなら犯罪者達の様子がよく見えるし使役する化け物も操作しやすい。
「アンタがあの化け物の親玉かい?あぁ、風紀委員か、アンタ。」
腕章を見れば気に入らないと言わんばかりの顔を浮かべればそう声をかける。
通りで行動が早い訳だ、折角この手で犯罪者共に制裁を下すことができる予定だったのにと心の中で唾を吐く。
「んで、皆殺しなんだろう?奴らは犯罪者だ、生きる価値がない。」
燃え上がる倉庫を見れば笑みを浮かべながらそう問う。
当然だ、あんな奴等存在する価値がない、風紀委員なら同じ考えだろうかと思いながら返答を待つ。
■神代理央 > 投げ掛けられた声に、飲み干した缶コーヒーを地面に置きながら小さく溜息を吐き出す。
こういう事があるから、護衛をつけて欲しいと要望はしていたのだが。
「概ね君の言葉通りだ。化物とやらが金属製のアイツラを指しているなら、その召喚者は間違いなく私だとも」
声をかけてきた男に視線を向けつつ、淡々と業務的に言葉を返す。
現れたのは体格の良い金髪の男。異能持ちか魔術使いかは判別出来ないが、一つだけ予想出来る事がある。
ほぼ間違いなく、近接戦闘の得意な相手。即ち、自身が苦手とする戦闘スタイルを取る相手であるということ。
「ふむ…?いや、別に殺さんよ。ああ、殺さないというのは語弊があるか。死んでも構わないが、皆殺しにする予定は無い。全て死んでも構わないが、殺す段取りは組んでいない。生きる価値が無いというのは同意するが、使い所が無いわけでは無いからな」
どうも組織の手のものという訳では無いらしい。
ならば一体何者だろうか、と僅かに首を傾げながら男の問いかけに言葉を返した。
■國宏一実 > 敵か味方も分からないのにも関わらず随分と落ち着い奴だ、視線があってようやく顔を視認できたが、男か女か分からない。
『タブンオトコダゾ』脳内で異形がそう教えてくれるが、どうでもいいと舌打ちをする。
「いい能力だなァ、俺もそんな力持ってたら気持ちよく奴等を殺せたのに。」
『俺ダッテ似タヨウナコトクライデキルゾ』頭の中で早口でそういう異形の言葉をスルーし、相手の返答を聞けば目を細め、側頭部を掻く。
「あー、その言い草、予想通り風紀委員ってのは正義の味方って訳じゃなさそうだ。お前はどう思うよ?居候。」
視線を斜め上に移し、内側の異形に話しかける。『善人、トイウ訳デハナイダロウ。全部ガ全部ソウダトハオモワナイガ、規則ニ乗ッ取ッタ犯罪者ッテ奴ジャナイカ?』
あぁ、やはりそうかと虚空に向けて言葉を一人で返す姿は奇妙なものだろう。
そして認識を変える、目の前の男は将来的潜在犯、悪だと。
■神代理央 > 「別に能力など無くても殺すだけなら簡単だろう。銃でも剣でも、異能でも魔術でも、好きな様に好きな方法で殺すと良い。決意表明くらいなら、別に補導等せぬよ」
物騒な言葉を連呼する男に対して、僅かに肩を竦めて首を振ってみせる。
別段、男の事を警戒していない訳では無い。ただ、敵意を見せない相手に此方から敵意を露わにする必要性を感じていないだけ。
眼前に佇む精悍な男は、取り敢えず不意打ちでは無く対話から此方へと接触してきたのだ。ならば、此方も相応の態度で応えるべきだろう。
…恐らく年上だろうが、その恵まれた体格と身長には若干複雑な心境にならなくも無いのだが。
「……相談は終わったかな?此方も、仕事が無い訳では無いんだが」
独り言を呟く男に怪訝そうな表情を向けつつも、そういう能力もあるのだろうと割り切って声をかける。
倉庫から逃げ出す連中を少しは間引いておかねばならない。完全に殲滅する訳では無いが、風紀委員に対する恐怖心は覚えて帰って貰わなければならない。
その意図を果たすため、僅かに意識を集中すれば、己の背後に現れるのは2体の醜い金属の異形。
ひしゃげた鉄屑をかき集めて無理やり足を生やした化物が無数の砲身を背中から突き出したその有様は、出来損ないの前衛芸術かくありなんといったところ。
その2体の異形は、砲身を空中に向けたまま跪き主の命令を舞っていた。今の所、男に対する敵意は見せていないが―
■國宏一実 > お世辞を言ってやったのに随分と高圧的な物言いだと思いながらも冷静に相手の背後に現れる異形を目にすれば『イツモ通リ、オ前ニマカセヨウ』と一言。
まぁどの道将来的な悪になるのであれば今芽を摘めば後が楽になるということだ。
「随分とやる気じゃねぇか。まぁそっちの方が今後やりやすくなる。」
「Phase-1」そう小声で呟けば左腕を覆うように赤黒いゲル状の何かが生成され、ふつふつと泡を立てながら纏わりつくように空中に浮く。
『毎回思ウガホントオ前ハ短気ダヨナ』うるさい。異形が茶々を入れてくるが不機嫌そうな顔でそう脳内で返す。
言わばこれは制裁兼腕試しといったところだ。初めての風紀委員との喧嘩、お手並み拝見だ。
「アンタは恐怖ってのを知らないらしい。一度その身で味わってみるかい?」
■神代理央 > 「別に貴様と戦いたい訳では無いのだが…」
何か誤解を招くような行動をしただろうかと一瞬考え、背後の異形かと僅かに嘆息する。
とはいえ、敵意を見せるならば対処しなければならない。これもまた、仕事の内だ。
どうにも近接戦闘の相手とばかり戦う羽目になっているな、と再び溜息を吐き出しつつ―
「お断りしよう。知らぬが仏、という諺もあるからな」
短く言葉を告げると同時に、背後の異形が一斉に砲火を放つ。
しかし、無数の砲弾が殺到する先は男から少し逸れていた。男に命中させようと言うわけでは無く、その足元――正確には、己と男の間――に、ありとあらゆる光景の砲弾が放たれる。
此処は単なる雑居ビルの屋上。過度に強化されている訳でも無い。そんなビルの屋上が、砲弾の雨に晒される事になれば―
■國宏一実 > 相手の言葉を聞けば眉を顰め、拳を構えるが。そんなとき脳内で異形からの一言。
『アシラワレテヤンノ』脳内で異形が大爆笑している。
コイツは一体どちらの味方なのかと、正直この際さっさと消してしまおうかと考えていたそのとき、足元に砲弾が放たれ、崩れる。
「おいおい、随分と派手じゃねぇか!!おい、居候!!」
落下する寸でのところで相手の首元を掠るように左腕の異質なそれから放たれる硬質化した鏃。
当の自分は砲撃による爆風も合わせて足場のない空中に投げ出される。
「あれ狙い通りいったと思うか?」
異能に話しかけるが『サッサト逃ゲロ、元カラ派手ニヤリアウ気ハ無インダロウ?』とのお言葉。
正直なところどこまであの男に手が届くか試してみたかったが、これ以上は無駄のようだ。
今回は挨拶として、また日を改めてまともに彼と対話をしてみようとそう思った彼であった。
「って危ねッ!!」
異形の能力で着地のサポートが無ければ危うく転落死していたとまた茶々を入れられて帰路に着くのはまた別の話。
ご案内:「落第街の倉庫群」から國宏一実さんが去りました。
■神代理央 > 「……油断大敵、ということか。やれやれ、俺もまだまだ詰めが甘い」
轟音と共に崩れ落ちるビルの屋上。辛うじて残る一角で、何度めか分からない溜息を吐き出した。その制服の詰め襟は、抉り取られたかの様に無くなっている。
「さて、此方もそろそろ迎えが欲しいところだが……と、持つべきものは仕事の早い同僚と言うべきか」
上空から風切音と共に接近するのは大型のヘリコプター。風紀委員の紋章が描かれた機体から、縄梯子が落とされる。
その縄梯子を掴み、ゆっくりと上昇していく機体に身体を揺らしながら先程の男に思いを馳せる。
「…しかし解せんな。違反部活の者では無かった様だが、風紀委員を敵対視している様な言動もあった。落第街の住人…?それとも、他に何か理由があったのか。単なる腕試しか」
恨みはそこかしこで買っているので、思い当たる節が多すぎて男の正体が掴めない。
今度風紀委員のデータベースを探ってみるか、と思考を走らせながら、少年を乗せたヘリは学生街の方角へと飛び去っていった。
ご案内:「落第街の倉庫群」から神代理央さんが去りました。