2015/06/24 のログ
狭間操一 > 「人の事より、自分のことやで
 人は、所詮ひとりぼっちや、今君がそうやって生きてるのと一緒やな…」
耐性はなかったらしい
ここから現実に帰還するには、彼女の精神力如何に左右されるだろうが
煌々と光る瞳が、ゆっくり彼女の視線からハイライトを奪っていく

まるで、深い沼に落ちていくかのように、その意識を落としてしまおうと

「州子ちゃんのお母さん…吹き飛んでもうたんや…へえ……
 大変やったなあ……そうや…君は悪いないわ……」
クスクスと、凄惨な身の上を語る少女を見下ろしながら
まるで喜劇でも見ているかのように、おかしそうに目を細めた

「君は幸せやったんやな……家に帰ればお母さんがいて、お父さんが帰ってくる
 そんな当たり前の日が、まだ続くと思っていたんやな…
 それを…君の手で…吹き飛ばしてしまった…
 どんな気分やったかな?その男は…どうしてやりたい思た?」

膝を突くと、こちらもしゃがみこみ、耳元で囁くように、追い討ちをかけた
まるで磐野のネガティブな感情を、引きずり出そうとするかのようだ

磐野 州子 > 「自分の事を大事にしたからって…そんな良い事が起きる訳じゃないし、
 ただ人の不幸を見るのが好きじゃない。
 こんなのただの自己満足だろうけどね」
州子の特徴的な語尾もなくなっている。
それだけ自分を偽ってきたのか、それとも何か思い入れがあったのかは知らない。
更に自分を爆発物として気を使っている分、
州子の精神力はそんな丈夫ではない上に十分な睡眠さえも取っていない。
所謂最初から州子の精神はボロボロである

「悪くない…?私、悪くない?
 どうして?私、人殺しちゃったんだよ?普通許されない事だよ?
 なんで?ねぇ、なんで…」
耳元で言葉を囁かれると、絞りだすような声を出してひたすら男に問いかける。
ただまともな答えが帰ってくるかは知らない。

「その男は…もう、もういない。バラバラになったけど、バラバラになったけど。
 そいつはまだ見てるの。私をどこかで見て、笑って、私が不幸に見舞われると私に聞こえるように笑って…
 ほら、そこに…人の顔した悪魔が笑ってる…」
州子は腕を上げてその男が見ていると言っている場所を指さす。
ただそこは何も無い。精神を追い詰められている州子の幻覚だろうか

狭間操一 > 「そうかも知らんな…でも、ええんやないかな…
 自己満足で…自分以外の誰が助けてくれた?
 君はそれでいいんやで…自分以外、信用したあかんわ…フフ…」

自己啓発セミナーの講師めいて、深層に落ちた少女に告げる
君は正しい、間違ってないよ
ネガティブな否定のない、甘い言葉だけをかけていく

「そう、悪ないよ……そうや、悪いのはその男…
 そしてそんな奴等をのさばらす社会やで…
 君は、被害者やんな…俺はわかってるよ…」

「だから、君は悪くない……」
語り聞かせる
こんな事になんの意味があるのかもわからない、ただ、カウンセリングめいて
事務的に、自分のした事、その責任を否定する
悪いのは他の奴等だ、全部他の奴のせいにすれば、楽になれる…と

「そうやな…今もどっか見てるわ…何も悪くない君を…許せるか?許せんよなあ…
 ほら…居てるよ…そこに居る…君を笑いものに着てる……
 なあ…あの許せん男…どうしようか………」

曲がり角だった箇所を指差し示した
そこには、先程の爆発音を聞きつけて来た浮浪者が居た
事情が掴めていないのか、きょとんとした顔をしている

その男が、あの男とやらの顔に見えるかどうか、わからない、だが催眠は深い
けしかけるように、その背中を押そうと

磐野 州子 > 「誰も、誰も助けてくれなかった…
 大体の人は皆私のことを爆弾って言って煙たがっていた…」
男の言葉が州子の身体に満ちていく。
州子はただ男から言葉を貰うだけで何かが満たされていく、そんな感覚になっているのだ

「私は悪くない…悪いのは男。
 あの男………」
男が指さした方向を見ると先程からの暗い表情から明るく口角を上げて背中を押されるままに浮浪者に近付く

「いたぁ……」

何の躊躇いもなく右手を浮浪者に差し出し、そのまま触れる事が出来るならば州子の異能が発動する
勿論、男の能力によりその出力が不安定なために…男の顔は無残なことになるだろう

狭間操一 > 「そらあ…そうやな…
 他人ってのはな…皆自分を傷つける為に居るんや……
 可哀想な洲子ちゃん……君は…『この世界で一人ぼっち』や……」
ポン、とその肩に手を乗せようとする
抵抗があるにせよないにせよ、そう呟くように語りかけ
手を離すつもりだ

「そうや…君は悪いない………社会と、男や
 憎いなあ…他の全てが君を置いてけぼりにしてる……
 君は…前向きに生きすぎやで…少し…憎む事を思い出そう…な?」
そう、憎いのは周りの全てだ…
周りの全てが、君を不幸にしている…

落とし込むような言葉で、浮浪者を指し示す
彼は何が起こっているのかよくわからず、こちらを胡乱な目で見ていた
こんな人間が一人、死んでしまった所で
誰も気にはしないだろう

『えっ…何ッ…………』

ボン……電子レンジで卵が爆発するような音がした
男は、それきり何も言う事はなく、その場に倒れ付した
アゴから上がどうなっていたのか…

異能の出力、リミッターを外した爆破に、生身の男が耐えられたとは、とても思えないが
ともかく、男の体はゆっくりと地面に倒れ、物言わぬ肉の塊となる

その光景を、ニコニコと笑いながら、携帯で撮影している自分。

「やったと思うか?いや……まだや…まだ見てる…
 あっちからこっちから……君を……」
煌々とブラックライトのように、瞳が覗く
まるで、狭間という男、自分以外の全ての人間が
『あの男』に見えてしまうような…そんな深い闇に落ちていくような……

そんな根底に訴えかけるような、刷り込みを行おうとするだろう

磐野 州子 > 「憎い、こんな異能があるからといって変なあだなつけたやつが憎い
 異能を目覚めさせたあいつも憎いッ!
 異能というものを作った世界が憎いッ!
 何もかも、全部、全部ゼンブゼンブぜんぶゼンブゼンブゼンブ!」
今までに鬱憤を晴らす以上に、封じ込めてきた憎しみを全て吐き出すように落第街の闇に吼える。


「駄目じゃないの。エステル。ここにいちゃぁ、こんなところにいたら、貴方、死んじゃうよ?
 ね、ねぇ。全部トばすよ?跡形もなく、消えるよ?」
刷り込みは成功しているのだろう、言葉を囁かれるとまだその男がいるかのように呟き、
今度は右手だけではなく、ブカブカの白衣より綺麗な左手が現れる。
この左手は全く異能として使っていないのだろう、ただ両手で、
出力が不安定な爆破の異能を使うとなればこの辺りの建物もただでは済まない

州子はその両手で地面に触れようとする

狭間操一 > 「くく…ひゃはは………」

狂騒めいて慟哭する少女を見て、笑った
くぐもるような暗い笑顔だった

こんな事をして何の得をするのか
得などない、損もない
ただ、そうしたかったから

こんな町で燻っているだけの哀れな少女
哀れな身の上、彼女は社会に復讐する事すら知らない無垢な子だったのだろう

ああ、だから…そんなザマでは『可哀想だから』
もっと大きな炎になれよと、油を注ぐのだ

「危ない、危ない……焚き付けて巻き込まれたシャレならんわ…」
ヒョイ、ヒョイ…と飛び散る瓦礫を避け、飛ぶ
彼女にかかった呪いが解ける姿はない
もしかしたら、彼女自身の意志が同化してしまったのかもしれない

もう、楽になろう?と呼びかけるように堕落を促すその声に
抵抗しなかったのかもしれない

「想像が刺激されよんなあ……スッとするわ…
 へへ…ハハハハハハ……」
ギィン…と飛来した瓦礫を、ベルトに差し込まれたハサミを抜き打ちして弾く
そろそろヤバいかな…と、後ろへ下がっていき

磐野 州子 > 床に触れる、というのは州子を中心とした爆破が起こる。
つまり州子が一番被害が大きい、はずなのだが眼鏡が割れている事以外に本人は至って平気そうに立ち上がる。
どうやら男に刷り込まれて見えた幻覚は全て打ち払ったかのように爽やかな表情で男の方を見る。
距離を開けて、男の鋏を見ると爽やかな表情が一変し、誰かを責めるかのような表情に変わる

「…どうして逃げるの?そんなもの持って、何でそんな離れてるの?
 ねぇ、何で?そんな物を持ってるの?」
火傷痕が増えた右手を前に出し、追いかけるように男へ近寄っていく。
ふらり、ふらりと一歩ずつ前へ、前へと

狭間操一 > 「あっ…ぶな……」
ヒュン…とハサミを一閃する

空を切るハサミの軌道に合わせた様に
異能による爆破のエネルギーが、綺麗に自分を避けて二つに分かれた
現象を現象のままに断ち切る鋏の呪いだ

最も、今はある一件から弱体化している、その力は半分だ
左の肩から先が爆破の衝撃に当てられ、飛礫のつぶてに打撃される

「痛ぅ…いやあ、思ったより闇が深かったみたいやなあ
 こらやらかしたかもわからんわ…フフ…」
痛みを、どこか別の場所で起きている出来事かのようにさて置いて
左肩を抑えながら分析する、さも楽しそうだ
自分の掌で事が動いてるうちは
それが自分の起こしたことで人生のデッドエンドに立とうとも、笑っていられる

「まあそう怒りなや…なんや?自分が必要か?
 それはわからんかったわ…僕が…傍に居ったほうが良えか?」
なだめるように声をかける
興奮した熊を落ち着かせるには、冷静に話しかけろと言う
この状況で適応するのかはわからないが、ゆっくりとした口調だった

磐野 州子 > 鬱陶しかったのか首を思いっきり横に振って割れた眼鏡を飛ばす。
それは先程の浮浪者だったもののところに飛んで行く
そして男の問いに対してゆっくり、自分の心を確かめるように口を開く。

「必要、かもしれない。
 貴方は私に悪くないってくれた。ただそれだけで必要っていうのはおかしいかもしれない。
 貴方は欲しくないけど、言葉が、言葉が欲しい?
 言葉を貰えると心が暖かくなる…」

くすり、と微笑み男の顔をジッと見た後に両手を構える。

「私を受け入れるなら何もしない。
 ただ、受け入れられないなら、私から逃げるならば貴方は逃さない。
 それは貴方に触れるか。はたまた地面を触れるかして貴方に危害を加える。
 ねぇ、どうする?」
くつくつ、と笑い声を漏らす。
それは今の自分を見て嘲笑っているかのようなそんな笑い声。

狭間操一 > 「へぇ……以外やな…意識に、過去に押しつぶされたんかと思たわ
 案外素質あるかもな、君は…フフ………」
正気か正気でないのか、判別の付かない笑みを浮かべながら
それでもクス、と笑う少女の瞳を見る

あるいは、そんな憎しみを開放した自分と
正気である自分、混ざり合ったのか

「例えばや、コーヒーが一杯あるな
 ここにミルクを一滴たらす……
 そうすればもうこれはコーヒーやない、カフェオレなのか、コーヒーなのか…
 それは曖昧や…そして、それをかき混ぜてるのは僕
 わかるか?」
「ええよ」
「一緒に行こか…混ざりきってしまえば、もう後戻りはでけんようになるけれども…
 『きっと楽しい事になる……』そう思うやろ…」
クル…とハサミを回転させる
閉じて、中指に引っ掛けたままのその手を伸ばした
手を取られれば爆発するだろうし、無傷では済まないかもしれない
それでも、手を伸ばす

逆に問いかけよう

その手を取れば、もう戻れない

それでも――――――

とでも言うように
呪われた、根源的恐怖を呼び起こす黒の瞳が、覗き込んでいた

磐野 州子 > 「毎日爆弾を運ぶなんて狂気じみた事やってたら過去なんて気にならなくなるよ。
 ただ、貴方にすっきりさせて貰ったお陰でもあるけどね」
先程やったことは多少は堪えているのか、どこか疲弊を感じさせる笑みを浮かべる

もう戻れない。その言葉と男の瞳が州子に電流を走らせる。
戻れない、手を取ってしまえば表には戻れない。
州子は膝を付く
「そんなの……そん、なの出来ない。
 私はもう『きっと』という言葉に縋れない。その『きっと』はズルいよ…
 今まで沢山の数後悔してきた私に『きっと』という言葉には勝てない…」
男の瞳の力なのか、言霊の力なのか膝をついたまま涙声のままに叫ぶ。
ただ無防備に泣きじゃくる

狭間操一 > 「そうやな…スッキリしたやろ?」
ちょい、と脇で倒れている浮浪者を指差した
未だに浮浪者は倒れている
もう起き上がることはないのかもしれない

「そうか…僕の手は取れへんかな…フフ
 残念やな…なら君は…ひとりや…
 一人で、ずっとその呪いを抱えて生きる。」
泣きじゃくる磐野を見下ろした
先程の甘やかすだけの言葉とは違う
その言葉には温度がなかった、先程よりもずっと

突き放す

「それに…君はもう、この場でも一人やってもうたな…
 事実がどうであれ、命は一つや、取ってやっぱり戻すはでけん
 自分の都合で、弱さのせいで…この哀れな通りすがりの誰かの未来を奪って…
 それでも、平然と一人で背負って生きてられるのなら…」

クイ……と暗視ゴーグルをかけ直せば
ゆっくりと、切り捨てるように

「一人でおったらええわ…」
そう告げる

誰も追いすがる事がなければ、そのまま去って行こうとするだろう

磐野 州子 > 「この呪いはもう、ずっと私が背負う物…
 別に…もう、それでいいや…」
力無く、そうぽつりと呟く。

「…いいよ。貴方はただ何か言っただけで私が悪いだけだから…
 ただ、私はこの人を埋葬するぐらいはさせて貰うけどね。自分の自己満足のために」
ゆっくり立ち上がり、男が行く先とは反対の方向であろう浮浪者だったものの所へ近寄っていく
ただ、男の去り際に口を開く

「…また、会えたらお茶ぐらいいいかもね」

狭間操一 > 徐々に正気に戻ったのだろう
その声はハッキリしたものに聞こえる
もしかしたら、最初から正気など存在しなかったのかもしれないが
少なくとも、理性はあるように見える

「つまらんなぁ…自分
 もっとほっぽって生きんと、人生辛いで」

フ、とどこか煩わしそうな笑みを残す
何故あれだけ自分を見失って、今こうして平然としているのか
わからない
やっぱり能力者ってのは、変わった生き物だ……

「なに、悪い男やで、僕は。
 そういうのが好きならええけどな、相手したるわ」
ひら、と手を挙げ、別れの挨拶めいて去っていく

好意的とも取れる目で見送られたのは初めてだ
なんだかわからないやりづらさを感じながら
夜の街に消えていこう

ご案内:「路地裏」から狭間操一さんが去りました。
磐野 州子 > 「別に、誰だって鬱憤を晴らしたい時だって…ある」
誰にとも言わないようにぽつりと呟く
州子はぐるりと周りを見る。
残ったものはただ、3つ爆破した後と首から上が亡くなった何か。
後は中身はまだ無事だが、ボロボロになった紙袋。

また人を巻き込んでしまった、という後悔もあればこういうのを見るのを慣れてしまった自分もある。
やれやれ、と言った様子で州子はその死体に右手を当て、ごめんなさいと呟く
それもどこか慣れた様子で、涙を流すことはない

磐野 州子 > 動かなくなった者は物として、州子の自己満足として跡形もなくなる。
一つの爆発音と共に飛んで行く自己満足。
それで満たされるなら、それで済むならばどれだけ楽か。

「あの男は憎い、憎いけど…」

「あの時の甘言に乗ってしまった私が一番、憎いから」

州子はそっと自分の首に触れる。
ただそれは爆破しない。憎い相手を爆破出来ないというのはどれだけ辛いか。

州子は紅く染まった眼鏡を踏み潰し、ボロボロになった紙袋をどうにか纏めその場を後にする

「…あー、州子の新しい眼鏡。買わなきゃですねー」
いつもの自分に蓋をして

ご案内:「路地裏」から磐野 州子さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に道鉄さんが現れました。
道鉄 > 路地裏の奥の奥。
そこで、手錠の女は何かを口にしていた。
―― 干し肉。
最終手段の食事。
ディナータイムを迎えることができなかった日の
栄養と、ちょっとの満たしを得るための
そんな時間、ぎじっと歪む
いっときの椅子となった鉄パイプを気にせずに。
最後のチャンスだと言わんばかりに、そこに留まって……

道鉄 > 「ぁと、50分……」

一日の終わり。でも予感はしてた。
なんだか今日はいい日になりそうだと。
期待はずれか……それとも……

「……あぁ、はら、へったぁ……」

干し肉を味わいながら。
時間を待つ。一日の終わりか、それとも……

道鉄 > 人が通りかかった。
その人数は4人。
それを見た瞬間……

「あ、やべ……」

つい反射で、それらを”食い散らかした”
轢いて、潰して、綺麗にバラして
口元には真っ赤な赤……

「ぁぁ、でも満足しねぇよな。でも、始まっちまった」

――だからもう、止められない。

「”殺戮時間―ディナータイム―”だ……」

解禁する。自分のロックを、制約を。
そのままがつがつと、4人を食べる。
喉を鳴らし、はしたなく下品に
ある2つの”マナー”を守りながら

道鉄 > 飛ぶ、走る。駆ける……

人を見かけては殺(たべる)という行為をするために
そしてまた一人、出会ってしまった。
それと……
だから、大きく口を開けて、食べようと……

 ――あぁ、もっと食べたい

拘束された両腕を振りかぶって

道鉄 > 「ゲハハハハハハハハ!!!」

女に似合わない声を上げながら、殺(たべる)
きっちり食い散らかして、
まるで気づけとばかりに食い荒らして。

「……っはぁ……いい匂い……でも飽きた匂い……」

うっとりと、恍惚の表情。
23時間まった、唯一の時間は
飽きたそれでも十二分に心地よくて

ご案内:「路地裏」に異形の影さんが現れました。
道鉄 > 「はぁ……いい、感じ
異能持ちは味がそれぞれで違うが、たまには当たりを引けたかなぁ?」

すとんっと、地面に”降りる”。
曲芸めいたそれで、着地すれば
女ひとりが落下したと思えないほど、陥没して。

「……美味しかった。でもまだ時間はあるよな?」

道鉄 > さぁ、来い来い来い来い来い来い……
オレはここだ、ここにいるぞ?
最近いろんなやつと遊んでんだろ。
つまみ食いくらいさせてよ、ねぇ……?

「はぁ……」

何かが来てる、そう感じさせる。
でも、まだ確証には至らない。
だから……”手錠”はまだつけたまま

「……メインディッシュはまだかしらぁ?」

異形の影 > 《――――》

【女が降りたその路地。女の背後。物陰から滲むように、その怪異がゆっくりと体を起こす。
 アレは極上の獲物だ。
 最高に壊れた、狂った、美味い獲物だと。
 狂気を求める怪異は、女の背後で傘のように広がり。
 女の体に覆いかぶさろうと、喰らいつこうと。
 その闇よりも黒く、恒星の如く熱い、流体の体で飛び掛った】

道鉄 > 「……ぁぁ?」

ちっと舌打ち。”人”じゃない。

「……前菜のつもりか、あてつけかこのやろう」

腹減ってるのに餌じゃない。
そのことに内心、悪態をつきながら
体をひねり、思いっきり両腕を振りあげて、下ろした。
重さ、300kg。それを、止めもせず、鞭のようにしならせて

「……1時間で足りんのか、これ」

異形の影 > 《キ――》

【気付かれて、振り向かれた。
 そして、攻撃をされる。
 逃げるのでなく、反撃される】

《キキ――ッ》

【ソレは怪異にとって愉快な事であり。
 振り下ろされた腕によって散り散りに吹き飛ばされながら、金属音のような笑い声を上げる。

 怪異の体内は非常に高い熱を持っている。
 その金属すら触れるだけで溶かす熱に対して、肉体的であれ魔術的であれ。防備がなければその肌を焼くだろう。
 そして飛散した怪異の体は雫となり、それもまたそれぞれが高熱を有している。
 触れればこれもまた、肌を焼く事だろう。

 だが、触れれば肌を焼くその雫は、振り下ろされた両腕が地面に叩きつけられ。
 その衝撃でやはり散り散りに飛ばされる】

《――――》

【体積を減らしつつも、液体のようでもある怪異は残った部分で滑るように女から距離を取った。
 その大きさは、本来の半分ほどだろう。
 だが、飛散した体のうち、近くに散っていた雫は本体に向けて蠢き、再び一つに戻った】

道鉄 > 「……あっつ……」

女のカラダは中身こそ異質であれど、外見はそのままだ。
だから、肌は焼けて、焦げた匂いがする。
思いっきり体を後ろに飛んで
”熱”の範囲から外れて、思考する。

「……触れねぇんならダメだな。しかも形状変化も自由かよ。
ほんと一時間じゃ足らなさそうだ。返せ、俺のディナータイム」

とはいえ、逃げるのは性に合わない。
それに今はやめたらルール違反だ、逆に”落ちる”。
だから……

「なら仕方ねぇなぁ!!」

もう一度。その場で飛び上がって思いっきりかかとを
地面に打ち付けるようにして着地する。
地割れ。そこから迫る砂塵……
圧倒的な質量から生み出される衝撃波である

ご案内:「路地裏」に照山紅葉さんが現れました。
異形の影 > 《ギ――ッ!》

【女の肌を焼いて、それは予想していた。
 衝撃での攻撃。それは予測していた。

 だが、それに対抗する手段を実のところ、この怪異は持ち合わせていない。
 だからその流体でもある体は吹き散らされるように、路地の壁へと叩きつけられる。
 その様は墨汁をぶちまけたようにも見えるだろう。
 先に散り散りとなっていた体もまた再び砂塵に混じり、どこかへと飛ばされる。
 そのどれもが、一番大きな破片である壁に飛ばされた部分へと集まろうと蠢くが、その速度は特別に速くはない】

《キキキ――》

【それでも、怪異は壁の染みになりながら笑い声を上げる。
 心底このやり取りを愉しむように。

 そして、壁に叩きつけられた体を制御し、棘のようにして女へと伸ばす。
 その速度は銃弾のように速く、細く、鋭く伸びていく。
 接触すれば肉体を溶かす高熱。刺されば貫通を免れない鋭さの棘。
 さあ、かわしてみせろというように、笑いながら棘を伸ばす】

照山紅葉 > 人間の域を外れた者達が激突する路地裏
そこはまさに一般人から見れば、末法の世を思わせる
冒涜的な終末光景だった

辺りの生き物は静まり返っている
騒いでるのは2匹の人外だけだ

そこに突然、バラバラと7本ばかりの
オレンジ色のマラソンバトンめいた筒が降り注いだ
そのバトンにはヒモがついており、先端には火花が散っている

そしてどのバトンにも真ん中には丁寧に「TNT」と
油性マジックで書かれたような文字が書き込まれていた

2匹が激突する戦場に、小高い廃家屋の屋根からそれが降り注ぐ
5秒後には、それら全てが、人一人ぐらいなら地面の染みにするであろう程度の
小規模な爆発と轟音を撒き散らすだろう

道鉄 > 「……っは、命がいくつあっても、時間がいくつあっても足りねぇな、こりゃ」

吐き捨てる。あぁ、殺し方がわかってない。
壊し方がわかってない。故に劣勢、故に”勝てない”

理解はした、が。その上で

――どうする?

思考を回転させようとした矢先、気づいた。
落ちてくるそれ。
間に合うか、間に合わないか……

「関係ないね?」

上、屋根を目指して飛び上がり
”爆風を一身に受けながら”上に上に

異形の影 > 《キ――?》

【突然降ってきたソレ。
 突然の闖入者と、その攻撃らしき事は理解した。
 だが――その『火薬』についての知識は、怪異にはない。
 ゆえに、対応はしない。
 ただ最も大きな破片――本体で地面に飛び降り、棘を引き戻し。
 そこで、丁度爆発に飲み込まれた】

照山紅葉 > 「イェー……うおぉい…テメェ等ぁ……」
屋根の上から気ダルげに首をストレッチしながら
男が一人現れる
その背中には人一人が入りそうなサイズの棺桶と
ソードオフショットガンが担がれている

「人がゆっくり寝てりゃぁよー…ア?
 ドンパカドンパカよぉー…ア?
 お祭り騒ぎしやがってよぉー…ア?
 眠れねえんだよ!テメェ等ァ…脳みそあんのかぁー…
 腐ってんじゃねぇかァ!祭りなら俺も混ざるぜェー!
 テメェ等全員オブジェにしてよォー
 キャンプファイヤーでもすっかよぉー」

BLAM!
屋根のヘリに片足を乗せ
上空に向け、ソードオフショットガンのマズルフラッシュが閃いた
その姿はマカロニウェスタンの保安官めいて、どこか向こう見ずなエントリー

住民代表のクレームだ、バカにしやがって…と口元が動く

「おぉい…テメェー…聞いてんのかぁー…」
まっすぐ駆け上がってくる一方の異形を見下ろした

道鉄 > 「……オレにじゃなくて向こうにいってくれる?
オレは静かに”食事”してただけだよ」

下を見た。そこにはロングコートの男。
向けられる銃口。飛んできた弾。
当たれば即死。だから……

「まずいけど”喰ってやる”」

旋回、回る回る。車輪のように……
体を横にして、ぐるぐる回りながら。
銃弾が迫った瞬間、腕を振り回して。
すると、弾が”消えた”

「……まっず……」

すとんっと、近くのビルの屋上に降り立ってつぶやいて。

「人一人に、なんかがひとつ、か……」

見下ろしながら、状況把握

異形の影 > 【怪異の体は爆発に巻き込まれる。
 そして、散り散りになる、はずだった】

《キ、キ、キキッ》

【身に降りかかった惨劇に、怪異は笑う。

 爆発と轟音。爆炎と熱を撒き散らし、衝撃と共に周囲を破砕するそれは、人間であればひとたまりもないだろう。
 しかし、怪異に取っては、飛び切りの食事に他ならない。
 爆発により発生した熱、そして炎が、まるで吸い寄せられるように怪異の体へと集まっていく】

《キキキッ!》

【爆薬の燃焼反応により発生したエネルギーを吸収しつくし。
 怪異は衝撃にすら吹き飛ばされる事なく、ビルの上を見上げた。
 この怪異には空を飛ぶ術も、ビルを重力に逆らい登る術もない。
 だから、ただ見上げて笑う。ただ哂う】

ご案内:「路地裏」にクロノスさんが現れました。
クロノス > 炎の上がる路地裏に、純白がはためく。
口元を笑みで彩り、鉄底の音を立てて、
彼女はゆっくりとその場に現れた。

「こんばんは、『外道』諸君。」

その場に居る2人、そして1体を見て。
血染めの鎌を両手に構えながら。

―――彼女は笑う。

照山紅葉 > 「人間ってよぉ…食いモンじゃないらしいぜぇー…勉強んなったなぁー…
 肉が欲しけりゃぁー…サバンナにでも移るンだなぁ…」

ショットガンを指に引っ掛け、クルリと一回転回して
銃弾を排莢しながら、鬼のような生き物に胡乱な言葉を向ける

やっぱり当然のように銃弾は効かないか…
いや、防いだのを見ると、効くのかもしれない
以前アンドロイドに打ち込んだときは防ぐ動作すらしなかった
だが…出鱈目にぶっぱなしても通じない事には代わりがないか

チラ、と下を見やる
アッチはアレでくたばってくれたら重畳なのだが
「かはぁー……面倒…くせぇー……」

下の方でシュルシュルと元の形へ戻っていく液状生物を目にする
見なきゃ良かった、相手が雑魚なら面倒は無かったが
生憎どちらもピンピンしている

ショットガンを肩に担いで、コートから取り出したタブレットケースから
何錠かタブレットを口の中へ放り込むと、ガリガリと奥歯で噛みしだく

「オッケーオッケー………今日は賑やかだなァ…次はなんだァ…
 ゴジラだろうがガメラだろうが構わないぜェ……」
チラッ、と新たな乱入者に目を移す、今日は忙しい日だ
明日も変わらぬ商売は、出来そうにない

クロノス > 「ふむ。」

帽子の鍔をつかみながら、
ビルの上の2人と、目の前の怪異を眺める。
まずは、彼のほうにその笑みを向けた。

「お久しぶりです。監視番号262。
 ―――変態性癖は相変わらずですか?」

道鉄 > 訪れた新たな影。女だった。
力量は、見なくてもわかる。
来たってことはそういうことだ。

そこの、ボロボロコートの男も、だ。
何かしらの根拠があってここに来た。
生き残れる、か。もしくは、死にたがり、か。
それとも悦楽か。

下のわけのわからない生き物もそうだ。
何かしらの欲求を持って、ここに来てる。
あぁ……

「人間は、食べ物だよ、この世で一番美味しい」

にっこりと微笑んだ、黒髪をなびかせて。

「そういう意味じゃ、そこのなにかと一緒だね」

くすくすと笑いながら、あぁなんていい日だと思う。
あと、もう一時間続けて食事ができる。

「こんばんは、綺麗なお姉さん、今みんなでデートしてたんだ。
お姉さんも”食べ愛―デート―”しない?」

なんて、サメのように笑って女は口にした。

照山紅葉 > 「ンだよ、ドカ食い女かよ…お陰様で絶好調だぜェ……
 俺の事が忘れられなくて来ちまったかァ…へへへへ!」

ボリボリと乱杭歯で錠剤を噛みしだきながら
くの字に中折れしたソードオフにシェルを詰め込み、返事をする

「イェー……俺達の町ァー…俺達が守るぜェー…
 スナック感覚で人が死んでちゃ成り立たねぇー…
 あいつ等に判らせてやらぁー……」
すっこんでろ
とでも言うかのように、親指を下にした
公安は気に入らない、だがこのアンダー住民を
ゴミをゴミのように扱う人間も、また許してはおけない。

異形の影 > 《――――》

【怪異はあるのかわからない目を、地上に戻す。
 そしてまた、あるのかわからない頭をもって、思考する。
 ……目の前の女は知っているぞ、と。
 何度か路地裏で見かけたその姿に、影は笑い声を消す。
 最初の女は『獲物にできる』と判断した。上から現れた男は、以前見た際に『獲物ではない』と判断した。
 しかしこの白い女は――まだどちらなのか決めかねている】

《キ――ッ》

【だからこそまず、白い女が目を離した瞬間に、地面の中へと体を染みこませる。
 この怪異は元々奇襲によって狩りを行う。
 まずは品定めをせねばならない。
 妨害がなければそのまま地面の中に沈み込み、周囲に飛散した破片を通じて、様子を観察し始める事だろう】

クロノス > 次に、ビルの上の女のほうに目を向ける。

「人間は食べ物と言う、美味しいと言う、
 という事は貴女はまだ狂っていないようだ。
 戻れるうちに、早めにその『趣味』はやめる事をお薦めしますよ、
 監視番号364。」

帽子の鍔を握りながら、彼女を見上げる。

「本物の人喰鬼は、そもそも人間を食べ物と定義しなくとも、
 もっと言うのなら、進んで食べなくとも食べますからね。当然のように。」

『当然、美味しいとも不味いとも思いません。』
そう肩をすくめる。

「デートのお誘いはお断りしましょう、
 私は別に趣味で人を食べるわけではありませんからね。」

照山紅葉 > 「テメェー等ァ……なごんでんじゃねぇー…
 まとめてヴァルハラへ送ってやるぜェ…
 へへへへへへハハハハハハァ!」

臓腑の底から笑うように甲高い声が響き
スッ…と両手を翳した
すると、男の袖から、背中から、あるいはマンホールから、排水溝から。
あらゆる穴から、コールタールのようなヘドロが噴出する

それは、黒い液状流動エネルギーであり
廃棄された異能力エネルギーの塊になったものだ
全方位、この場に居る全ての生物へ向け
伸びきったゴムが収縮するかのようなスピードで伸びる
当たれば、蜘蛛の巣のようにへばりついて、四肢を拘束しようとするだろう

唯一、地面へ解けた異形の影には、べちゃ、と音を立てて地面に阻まれるだろうが

クロノス > 目の前の怪異が地面に溶けて行くのを細めで見つつ、
男の言葉に返事を返す。

「ええ、確かにそのインパクトのある顔は、
 一度みたら忘れられるものではありませんね。」

流れてくるコールタールを見ると、やれやれと首をふり、
壁を走って彼の居る屋上まで駆け上がる。
彼女を追うように壁にコールタールの触手が突き刺さり、べちゃりと嫌な音を立てた。

コールタール自体を防ごうとしても無意味ならば、
出所を―――叩く。

「刃杭生成ッ!!」

手にした鎌を杭に変えると、男に向けて投擲する。
鋭い黒鉄の杭が、風を切って男に迫る。

道鉄 > 「……狂ってはないだろうね。”ズレ”てるだけだよ。オレは
体も、心も……なに、俺のこと知ってんの?」

おや、びっくりというようにキョトンっとした。
翡翠の瞳が揺らぐ。

「わざわざ、ちゅーいしてくれてありがと、おねーさん。綺麗な優しいおねーさんは嫌いじゃないよ?」

迫ってきたヘドロを見る。
殴ったら負け、逃げるのも不可能。
だから……

「……破壊(たべる)」

重みが増す。一日一時間。24時、深夜0時を以て。リセット。
つまり――

   もう一時間。制約を壊す権利を有する。

「……さぁ、”殺戮時間―ディナータイム―”だ」

すぅっと、息を吸って駆ける、最低限を避けて。
迫るものは、異能を以て”破壊する”。
全てを……”喰う”……それが《暴食》

衝撃波。効率よくコンパクトに足を奮って旋風を産んで。
それで”道を作りながら”はしっていく。

「我は、鬼、喰うが鬼! なればその罪に従い、その贖罪を繰り返すっ」

クロノス > 此方に駆けてくる鬼を横目に映す。

「いえ、知りませんよ。
 直前の問答でそう思っただけです。」

帽子の鍔を握ると、口元を歪めた。

「忠告ついでに、それを『食べる』のはお薦めしませんよ。
 ―――この世で一番食べてはダメなモノのようですから、ソレは。」

照山紅葉 > 「おォ……?」
気持ちよく全方位への攻撃を放つ
だが当然、アクションを起こせば目立つ、出る杭とは言わないが
相応の返答はあるだろう

帰ってきたのは杭だ、これは見た事がある
不意の反撃だ、咄嗟にソードオフショットガンを向け

ギィ――――……ン……
甲高い金属音が鳴り響いた
ソードオフショットガンの銃身に命中し、弾き飛ばされた音だ
トリガーに引っ掛けていた人指し指があらぬ方向へ曲がっている

「おォい…痛ぇじゃねーかァ…ブチ込む時はブチ込むって言ってくれよ…へへへ…」
ごぎり……嫌な音をさせながら、指の骨を元に戻している
だが握ったり開いたりはできない、外れたのは戻したが、その時に折れたのだろう

「御託の多い奴は面倒くせぇー……」
横目で睨むのは、暴食の鬼と名乗る異形だ

指の折れた手を翳せば、質量攻撃めいて
進路上の壁から生えるダクトより
濁流のようにヘドロが押し寄せ、頭から飲み込もうとするだろう
包まれれば、膠のようにへばり付いて拘束し、ギリギリと蛇のように締め上げるか

道鉄 > 「……え、そうなんだ。ゲハハハハ、勘違い。
ラブコールに気づいてくれたと勘違いしちゃったじゃん
お腹壊さないように気を付けまーすっ」

白い女にも”寄り添いすぎず”、男に迫る。
コマのように、縛られた両腕を使わず足を振り回し
ただただ”蹴っていく”。
普通じゃありえない衝撃音を数十数百と鳴らしながら、
汚泥を”相殺”していく。それが限度だ。

「……でっか。いやいや、俺も落第街の住人なんだから
少しくらい手抜きしてくれてもいいじゃん」

このままでは無理と判断……
――バキンっ
手錠が壊れて、自由になった”両手”

「ゲハハハハハハハハ!!!!!」

アギトを広げるように手を開き……

「……一時間じゃ、これも足りないなぁ」

無理と判断して、そのまま空気を”殴り”
衝撃を以て”その範囲から”逃れんと試みる。

「一時、撤退?」

クロノス > 「それを言うのなら、貴方もこれからゲロを吐きます。
 ―――とくらい言ってからあの汚物を吐き出してください。
 不意打ちはお互い様ですよ。」

帽子の鍔を掴み、やれやれと首を振る。

「そもそも、私の目的はあの『得体の知れない何か』です。
 貴方にもそちらの貴女にも用はありません。
 ―――もっとも、邪魔するというのなら纏めてお相手しますが。」

片手に改めて鎌を生成しつつ、その場の2人を見る。

照山紅葉 > 「なんだテメェー…野次りに着たのかァ…
 仕事するならしてくれよォ…えぇ?大事な領地だろォ…」
高みで見物するクロノスにぼやきながら

「テメェーはぁー……お仲間かァー…
でもよぉー…仲間食い合う奴はぁー、いらねぇー……」
折れていない左手で抜いたのは、八寸ほどのハンティングナイフだ
どうやら飛び道具で殺すには足りないらしい
だからといって殴る蹴るでどうにかなりそうにも、とても見えなかったが

「俺が食い殺してやるぜェー……」
建物の間隔を飛び越え、道鉄へ飛び掛った
ベキ……と屋根を踏みしめれば、蜘蛛の巣状にヒビが入り
その勢いで飛び掛る
振りかざすのは武骨なハンティングナイフだ
肩口めがけ、飛び込むように切り裂きにいく

クロノス > 「野次りに来たわけではありません、
 真面目に仕事をしに来たんですよ。今日は。」

髪の毛を払うと、瞳を伏せる。

「そちらのお嬢さんも、貴方も、少なくとも人間です。
 ある程度は分別があり、襲うべき人間を弁えている。」

帽子を被りなおし、あたりを探る。
情報によれば、あの生き物の戦法は不意打ちだ。

「ですが、あのよく分からない不定形の生き物は違う。
 種として人を襲い、分別無く食い尽くす正真正銘の『人類の敵』です。
 それを『討伐』しに来るのは、公安委員として何の違和感もないでしょう。」

改めて戦いをはじめた2人を横目に見て、
『そちらはまぁ、勝手にやっててください。』とため息をつくと、
自身は『異形の影』の気配を探る。

道鉄 > 退却? ない話だ。制約が切れる。なにより食べれない。
ならどうするか、やり合うか、妥協するかだが目の前の男は止まりそうもない。

「男に食われる趣味はないよ、ホモじゃないから。オレ」

こっちに飛んできた、つまりはあの白い女はこちらが目的ではなかったということだ。
あぁなんて残念、目の前のものも食べたら良くないと言われた
ので、食べれない。
結局ディーナータイムにありつけたのに。
何も”食べれない”ことにため息一つ。

「あの異形なら、あっついから気をつけてね。綺麗なおねーさん」

つぶやきながら、目の前のそれをどうするか考える。
能力がわからない以上、なにかをされるのだけは嫌だった。
故に……

――耐える

すべての神経をそこだけに集中して、反撃など考えず
避けることだけを考えた。
肩口に迫ったものをしゃがんでよけんと試みる。

異形の影 > 《――――》

【白い女の言葉を、怪異はハッキリと聞いていた。
 このTNT爆薬によって荒らされた場所には、怪異の破片がそこかしこに散らばっている。
 それらは全てが、離れていても繫がっており、同一の意思を、思考を、感覚を持っている。
 だから白い女の言葉は聞き逃さなかった。

 そして判断する。
 この女は敵である、と。

 だが、そこで即座に仕掛けられるほど、怪異の知性は幼くなかった。
 今日までの日数、少なくない人間を捕食し、今しがた十分すぎるほどのエネルギーを奪い取った。
 そうして着実に『進化』していった怪異は、地面の中を泳ぎ、逃げるに適した距離を保つ。
 仕掛けるならば破片を使えばいい。これだけ力を得た今、もう、戻らなくとも困らない破片である。
 白い女を破片により監視したまま、怪異は地中を泳ぐ。

 気配を探ろうとすれば、周囲一帯に気配が飛び散っているのがわかるだろう。
 そして、そのどれもが少なからず動いている。
 そのうちで一つ、地面の中まで探れるほど勘がいいのなら。
 地中1mほどの位置をゆっくり移動し、離れていく気配を感じ取れるだろう】

クロノス > 「―――あの変態が考え無しに荒らすから、
 仕事がやりにくくなったじゃないですか。」

TNT爆薬によって散った影の気配は、そこかしこに散らばっていた。
ならばどうするかといえば、全方位攻撃、あるいは……。

『仕掛けてくるのを待つ。』

あの『異形の影』が正しく人類の敵だと言うのなら、
自分自身も餌として有効のはずだ。

異形の影を『釣り上げる』べく、無防備に見えるように首を傾げ、
ゆっくりとその散らばった気配の内の一つに向けて歩き出した。

照山紅葉 > 「違反切符切る以外の仕事が出来たのかぁ?
 へへへへ!だったら見せてみろよ…子猫ちゃーん……」
クロノスにくい、と先程まで影が居た場所に顎をしゃくって見せる
あっちはお前がやれ、という指図だ、最も、そんなのは自分が指示するまでもないようだが


「うるせぇー…祭りだァ…腹減ってんだろォ……
 男だの女だの…染色体が一画違うだけでよォー…んな小っせえこだわりはー…
 捨てようぜぇー…」

飛び込む、ビルの上に陣取る道鉄の肩口に鉈めいたナイフをめり込ませようと
振りかぶり、振り抜いた、銀色の軌道を描きナイフは一閃する

しかし

「おっと………」
がく……と力が空振る感触、外したのだろう
勢いを付けすぎたせいか、このままだと頭から落ちる…

「っぶね…ンだよ…意外とォー…身軽じゃねぇーか…お前ェ…」
UFOキャッチャーのように横から伸びる暗黒触手に体をキャッチされ
逆さまで空中で制動をかけながら、男のような女のような、その鬼の異形を睨んだ

道鉄 > 「小さくないっての、生殖行動はちゃんと異性としたいの
わかる?」

ゆっくりとくるくる回って、違うビルに飛び移る。

「そーだよ、腹減ってるよ? こだわらない食事なんてまっぴらだよ、ゴメンだ」

うんざりしたように、首を振って。一息。
さて、こまった。食うものがないならここにいてもしょうがないが……

「でも久々のディナータイムだしなぁ。おジャンにされたのは良くないよなぁ」

こきんっと指を鳴らして。

「……”食い散らす”」

平手を一つ。思いっきり振り落とした。
その長い細腕には、300kgを超える質量が詰まっている。
ただの平手だが……ビルごとその場を”破壊”する異能がある。
それを放って、地面に降りることにしよう。

「ゲハハハハハアッハハハハハハ!!!!」

そうこれは”ただの八つ当たりで”、周りの被害も関係ない
ただの我欲だ

異形の影 > 【なるほど、誘われている。
 白い女の行動には不自然さがある。
 こんな場所、このような状況で……あんな無防備さをみせる人間が、何度も路地裏を行き来できるはずがない。
 だからこそ怪異は、十二分に成熟した知性を、思考力を持って考える。
 そして結論は――】

《…………》

【白い女が向かった破片の一つ。
 ソレが地面を蹴って撥ねる。どこかを目指すように。
 その先……ソレとは別の位置へ。地上にあった他の気配が集まり始めた。
 そして集まった破片は、徐々に大きなまとまりとなり、ゆっくりと持ち上がる。
 1mほどの高さになったソレは白い女を見て……】

《キ、ギギ――ッ》

【金属音のような笑い声を上げた】

クロノス > 『なるほど、誘われている。』
跳ねる破片を見て、彼女はそう考える。
この謎の生命体は、自分が誘われている事を理解した上で、
さらにそれを逆手に取り、私を誘い出そうとしている。

『ええ、釣りは、相手がしっかり食いつくまでは
 引き上げてはダメなんですよ。』

破片が跳ねれば、彼女はあえてそれを『追いかける。』

「―――逃がしません!!!」

そう叫びながら、鎌を振りかぶりその破片目掛けて振り下ろす。

そう、彼女は愚かにもその破片を追いかけ、
背後の気配にも不気味な声にも気がつかずに、
目の前のソレに攻撃したように見える。

―――じわり、と、彼女の『影』が揺らいだ。

照山紅葉 > 「お前が面倒くせぇーってのはわかったぜぇー……」
見た目女のようにしか見えないが、男は異性ではないという
思考を放棄したようにそう断定する、コイツは面倒だ
元々会話が成立するとは思えない相手だ、だから力で潰しに来たのだ

「俺はマズそうってかぁー?まぁ腐ってっからなァー」
隣のビルへと飛び移った道鉄の行く末を見る
本当に身軽な奴だ自分はビルを一つ飛び移るだけでも目一杯

「うわ……ありゃ無理だわ……」
そして、となりのビルが粉砕倒壊されようとしているのを見る
確かに自分は腹が立っていたが、それは損得の発生しない段階の話だ
あんなもん食らったら死んでしまう

「ここはあの女に任せっかぁ……ヒーローっぽく出てきたもんなァ…」
怖いな…今なお粉塵を撒いて倒壊するビルと
愉快そうに飛び降りる道鉄を見て、ぞっとしない笑みを浮かべる

良い案がある、そうだ、見なかった事にしよう
後はあの女が、きっと上手くやってくれる

異形の影 > 《ギギッ》

【その破片を追いかける姿に目掛け、地上に現れた影は棘を伸ばす。
 それは鋭く早く、そして触れたものを高熱で融解させる性質を持つ。
 撥ねる破片とは反対方向。かといって近づくわけでもなく、その棘を矢のように伸ばして仕掛ける。
 距離にすれば3mほどだろう。細く伸びた棘が無防備に見える背中へと迫る。

 ビルの倒壊する音が聞えたが、ソレはもはやどうでもいいことだった】

道鉄 > 「でも、落第街が大切なのはわかったよ、だから……ここでもう喰うのは辞めるさ」

スタッと地面に飛び降りれば、反応に遅れたように地面が数メートル沈んだ。
まるで隕石でも落ちてきたかのように。

「だから次は表にする。それならいいでしょ、”落第街の英雄―ダークヒーロー―”」

そう、がらがら崩れるビルを見ながら鮫のように笑いつつ

「もうすぐ一時間だ。だけど止まれないから、ちょっと見物だけして帰ろうかな」

クロノス > 背後に迫る気配に、ニヤリ、と口元を歪めた。

「―――残念でしたね。」

揺らぐ『影』に、その棘の影が重なった瞬間、
彼女の『影』が棘目掛けて『手』を伸ばす。

その手は棘に絡みつけば、その棘の動きを止め、
さらに、何も対応しなければそれを伝って本体にまで絡みつくだろう。

照山紅葉 > 「あァー…そうかァ?随分もの判りが良いじゃねェーか…」

思ったよりも理知的な返答に拍子抜けしたように頬を指でかく
ズキン、と痛みが走った、そういえば指折れてたわ、今思い出したかのようだ

「あァー…何だそうかァ…表でやるかァ……
それなら構やしねぇよ、止める理由は無ぇー…
 あァくすぐってぇ呼び方するんじゃねぇーよ…面倒臭ェー…」

ビルの欄干に肘を載せ、下に居る道鉄に話を通す
それはまるで緊張感が失われた、世間話のような調子だ

「さてェ…後はあの女と変な生き物…
 ダブルノックアウトでもしてくれりゃあ…ヘヘヘ、万々歳だ」
折り紙のような白い紙に、ケミカルな香りのする葉っぱをパラパラと落とし
巻き込むように包んでタバコ状にあつらえたジョイントを口にしながら
眼下でやりあうクロノスの方へと視線を移すと

野球観戦のようにその戦いを覗いている

異形の影 > 《キ――?》

【伸ばした棘が止められる。
 それに一瞬、不思議そうな音を発した。
 しかし『影』が辿ってくるよりも早く、棘が形を崩し、液体となって地面に落ちる。
 残った部分は直ぐに棘を放った元の影へと戻った】

《キキッ》

【影はまた哂いながら、引き戻すと同時に先程と同様の棘を二本作り、今度は左右斜め上から、弧を描くように伸ばしていく】

クロノス > 「ふむ、なるほど厄介な。」
帽子の鍔を掴んで向き直ると、しゅるしゅると影が戻っていく。

捕らえた一部は影に巻き取られ、
真っ黒な塊のようになってその場に転がった。

「―――<<闇を従えし者>>ッ」

その影は再び手の形になって二つの棘に向けて伸びる。
その影は棘に触れれば先ほどと同じように捕らえようと動き、
恐らくは、また液体になって回避されるのだろう。

『これでは埒があきませんね。』

2人の戦闘が終わり、観戦している様子を横目に眺めつつ

『ちょっとくらい手伝ってくれてもいいんじゃないですかね。』
―――と内心悪態をついた。

道鉄 > 「こだわりが大事なんだよ。マナーが必要でしょ」

本能と理性は大事だ。
本能的すぎればそれは死を招き
理性的すぎればそれは本能の飼い殺しになってしまう

「そ。それなら、もうやり合う理由は無しだろ?
それに、”ごめんなさい”、だ。睡眠妨害、悪かったね」

そう告げて、ゲハハと笑いながら、とんっとまた蹴った。

「白いおねーさん、お困り? あれに狙われてたの
 オレなんだけど、手伝ったらお話だけでも聞かせてくれたりする? ”先輩”」

白いものの隣に折たち静かに告げた。
歳は、道鉄の方が上、だが……あえて先輩と読んだその意味は……

異形の影 > 《ギッ》

【短く音を発する。ソレは驚いたような音。
 影に巻き取られた部分が戻ってこない、動かない。
 さて、これはどういうことだ。一瞬の内に考える】

《ギギッ》

【考えて、二本の棘を、さらに『分割』する。
 伸ばされた『影の手』を避けるようにしつつ、半ばから四本に増えた棘……もはや針のような太さのソレで、影を操る女を貫こうと試みる】

クロノス > 「別に困ってはいませんが、協力は歓迎しますよ。監視番号364。」

口元に笑みを浮かべ、彼女に笑いかけるが、
お話を聞かせてくれといわれれば首を傾げる。

「童話の絵本を読み聞かせる年齢には見えませんがね。」

そう話している間に影と棘の攻防は続き、
やがて棘は針となって彼女に向けて襲い掛かる。

「―――ッ!!!」

その針は影をすり抜けると、彼女に突き刺さった。

異形の影 > 《キギギッ!》

【こちらの影は、愉快そうに金属音を立てる。
 針が刺さった手ごたえが、しっかりとあったのだ。

 針が刺さった場所、接触している部分に通常なら凄まじい熱を感じられるだろう。
 触れた物を、獲物を融解させる超高熱は、極細い針状になっても効果を発揮する。
 とはいえ、いかんせん細い。熱が冷めていくような事こそないが、一度に融解させられる面積が狭いのだ】

照山紅葉 > 「あァ良いぜ、気にするなよ、仲間じゃねぇーかぁ…」
背中に背負った、人一人入りそうな棺桶を下ろすと
高純度違法薬物を乾燥させた葉っぱを包んだジョイントの先に火を付け
反対側を咥えて吸い込み、煙を吐きながら親指と人差し指で丸を作る

さっきまで斬り合っていたとは思えないフランクな返答だ
元々争いが起きるのは利害が一致しない時だけ
反省してると言えるのだから、食われたチンピラより余程素直なモンだ

「あーあー…ありゃ死んだかァ?」
3対1が卑怯
などといった紳士淑女協定は持ち合わせていない
だが、何事か事情があり、絡みに行った道鉄を見ると
さして自分が出て行くのも何か面倒を感じる
様子を見るべきか、とレッドトップをふかしながら他人事のように見下ろそう

旗色は、どうやら良くないようだが

道鉄 > 「とぼけられた。……それとも素? 意地悪だね、アンタ」

はぁっとため息、あと10分ちょっと。
しかし、おそらく自分の能力じゃ勝てないだろう。
白い女がどうかは知らないが。

「何すればいい? ”ご飯”たべる?」

刺さったのを見て、一息。
フォローに回る能力ではないが……
まぁ……

「指示しろよな。連携なんてできないんだからさ」

クロノス > 「~~~~~~~~~ッ!!!!」

自分の身体の内側から焼き尽くされるような高熱に、
声にならない絶叫を上げ、針を引き抜くべく素早く後ろに下がる。

「まったく、本当に厄介ですね。」

穴が開き、融解した服を忌々しげに眺めると、
帽子の鍔を掴んで、道鉄に向けて声をかける。

「そうですね、時間稼ぎを頼みます。
 時間さえあれば、アレを『殺せる』魔術が撃てますから。」

そう言うと道鉄の後ろに隠れて鎌を構え、
魔術を発動する為に瞳を細め、『異形の影』に狙いをつける。

道鉄 > 「はぁいっ」

良い子の返事をして、思いっきり地面に手のひらを叩きつける。

「お前の狙いは俺だろうが? 
せっかくのディナータイムぐちゃぐちゃにしやがってからに。
食べれなそうだけど、食べてあげるよ」

暴力の矛先が、その影に向く。
ただひたすらの往復ビンタをそこから放ち続ける。
再生するのは知ってる。だが、殴り続けて原型をとどめ無ければという結論だ。
ビルを倒壊させるほどの”平手打ち”
それを一心不乱に、異形へと打ち続けた。

「10分が限界だから、早めにね?」

照山紅葉 > 「おぉいミオー…見てるかァー…
 面白ェー事になってるぜェー……」

コツコツと中指で
地面に下ろした棺桶を叩く
だが、当然棺桶の中身からは応答ナシだ

へへへ……とくぐもった笑いを浮かべると
また眼下を眺めていた
丁度その後、暗黒触手が弾かれたソードオフショットガンを拾い上げ戻ってきた
指に引っ掛け、それを摘んでクルクルと手元で回す

「さて……俺も行くかぁ?公安に借り作ンのは面白そうだなァ
 でもカタァ付きそうだ…
 ふぁ……寝るのがいいか…」

異形の影 > 《ギッ》

【僅かに不満げな音を出した影の針は、引き抜かれた一瞬後にただの液体に戻る。
 体の中で切り離すつもりだったのだが、少し遅れたようだった。

 液体に戻った破片は、元の影に向かって地面を這うように戻っていく】

《ギ――――?》

【再び白い女に向けて棘を伸ばそうとしていた影は、横からの乱入にそのまま殴られる。
 殴られたままに、影は飛沫を上げ飛散するが、影を打ち据える手の平は、接触が一瞬だとしても確実に焼かれていくだろう。
 その深度は繰り返される度に深まっていくはずだ。
 そして飛び散った破片。それらもやはり高熱を持つ。
 飛沫に触れれば、その部分もまた焼かれていく事だろう。

 しかし、抵抗という抵抗はない。
 形を崩されるたびに元に戻ろうとはするが、それだけだ】

道鉄 > ――あっつ……

顔を歪める、綺麗な顔がゆがんで
緑が見えにくくなる。
それでもひたすらに殴る殴る。

手のひらの皮が焼けた、肉が焼けた。。
爛れた匂いがする……
でも、まだ続けられる。異常な筋肉の密度が
その”厚み”がその行為を可能としていた。

――後で直してくれんのかな……?

そんなことを考えながら、ひたすらに殴り続ける

クロノス >  
―――呪文を唱える。
辺りに、尋常ではない気配が満ちて行く。

クロノス >   
           『―――序文《A preamble》』

『―――偉大なる父《Ouranos》すら殺すクロノス《Kronos》の鎌よ。』

          『―――叛逆者の大鎌よ。』
         
       『―――我は叛逆を成さんとするもの。』
       
         『―――その意思を継ぐもの。』

     『―――その鎌は我が右手に宿りて、叛逆を成さん。』


―――彼女の右手に、漆黒の鎌が現れる。

異形の影 > 【影はただ殴られる。
 殴られ、形を崩し、元に戻ろうとする。
 力を感じても、白い女のほうへ何かを出来るわけでもなく、ただ殴られる】

《キ――ギ――》

【だが、殴っている人間にはわかるかもしれない。
 時折漏れる金属音が、哂っているように聞えるのが】

クロノス > 目を伏せ、次の呪文を唱える。
 
           『―――破文《A break》』
 
『―――天と地を裂き、時間を生み出したクロノス《Xronos》の鎌よ。』

          『―――時の大鎌よ。』
     
     『―――我は新たな秩序を成さんとするもの。』

        『―――その時を待ち望む者。』       

     『―――その鎌は我が左手に顕りて、秩序を成さん。』


―――彼女の左手に、純白の鎌が現れる。

クロノス >  
 
彼女から迸る魔力が、辺りに満ちる。
鮮紅の瞳を魔力に輝かせ―――。

―――彼女は、目の前のその異形に向け、『終わり』を読み上げる

道鉄 > 「……哂ってる?」

考えた、ほんの少し、考えて。

「白いおねーさん。笑ってるから、まだ、なんかあるかも?
”気をつけて打ってね”?」

とりあえず、言うだけ言っておく。
仮説はあるが、真実かどうかわからない。

「熱量を喰うとか? ありえそー……げはは、こわ……」

でも――

「許容量超えれば問題ないのか」

なんて、大声で笑いながら
ゲハはははと特徴的な大笑いをしながら、

ただ任せられた仕事をするだけだ

照山紅葉 > 「終わるかなァ…まー…あっちの影もただじゃ消えねぇだろうなァ…」
短くなった紙巻きタバコを口の中に放り込み
もぐもぐと飲み込むと棺桶を背負う

「俺は…見てるだけってのも…ヒマだしなァ…」
欄干を乗り越え、ビルから飛び降りる

クロノス > 「気をつけて打てるほど器用な魔術じゃありませんよ。」
帽子の鍔を掴むと、やれやれと首を振る。

「まぁ、ダメだったらその時はその時ということで。」
苦笑いしつつ、彼女は詠唱を続ける。

異形の影 > 【殴られる影はやはり、抵抗らしい抵抗は見せない。
 ただ、自身を殴る手を焼きつつ、繰り返し、愉快そうに哂うだけだ】

クロノス > 小さく息を吸い込むと、彼女は再び瞑目する。最後の一文を、読み上げるために。

        『―――終文《Epilogue》』
 
    『―――万物を引き裂くクロノス《CXronos》の鎌よ』
 
   『―――征服され得ぬアダマス《adamantine》の鎌よ。』

    『―――双つの鎌を寄る辺に、今ここに顕現せよ。』

      『―――我が名はクロノス《CXronos》』
         
    『―――『叛逆《Kronos》』の『時《Cronos》』を告げる者ッ!!』


―――背に時を司る『翼』が現れる。
   ―――二色の鎌を持った両手を胸の前で合わせる。それは神に祈るように。
      ―――二本が解《ほど》け、絡まりあい、彼女の目の前に現れるのは黄金の鎌。
         ――――『万物を引き裂くアダマンの鎌』


神器を握り、その身は『神』へと変ずる。

クロノス >  
その黄金の鎌を構える、
―――それを振う時を、見極める為に。

異形の影 > 《ギ――》

【感じ取った気配。
 それはまさしく、神の、神格の気配、力。その一端。
 自身と同質であり、異質であるその力。
 それを構えられて尚、影は哂う。

 それがお前の力か、と。
 それがお前の切り札か、と。

 影は哂う。殴られ、形を崩されるがままに哂う。
 哂い続けて――その一撃を待つ】

道鉄 > 「おわった?」

ならもうお役はゴメンだ。

「ついでだから……」

両の手で思いっきり挟み込み用に押しつぶして
影を1点に集中させてから
思いっきり後ろに跳んだ。

「バトンタッチ……」

そのまま身を大の字に投げ出して

照山紅葉 > 「オーライオーラーイ……」
ドッ……と周囲をグルリと取り巻く排水溝から
膨大なヘドロが吹き上がる

「何やんのか知んねーけどよォー……
 あんまり町ブッ壊すんじゃねーぞォー…」

ヘドロのタワーは周囲を防壁めいて展開し
強固な網となって一帯を封鎖するように取り囲み始めた

2重、3重…こんな事に意味があるのかはわからないが
どちらにしろ、という奴だ
周辺が荒野になるのは、色々と拙い

クロノス > 『万物を切り裂くアダマスの鎌』
『万物』を切り裂くならば、『何を』切り裂くかは術者の自由だ。
勿論、以前使った時のように、単純な斬撃として放つ事もできる、
でもそれだけならば、それは『万物』を斬る鎌ではない。

―――けして、そうは呼ばれない。

彼女は、その紅い瞳をその『生物』に向ける。
その『命』を、切り裂くために。

準備が整った事を確認すると、彼女はしっかりと地面を踏みしめる。

クロノス >  
 
          「  全てを『追放』せよ  」

            ク ロ ノ ス ・ ク ロ ス
       「  『万物を切り裂くアダマスの鎌』ッッ!!!!!」



彼女の背の翼が開く、
   彼女の瞳が魔力の放出に鮮紅に輝く。
         辺りに、魔力の雪が舞い踊る。
               彼女がその鎌を、振った。


 
                    ―――そして、全ては『停止』する。



停止した世界を駆けるのは光、万物を引き裂く光。
時すら切裂いた光は、射程という概念すら持たずに『0秒』で目標に到達する。

その鎌の名の通り、『万物を切裂く』為に。

異形の影 > 《キ、ギ、ギ――――……》

【切り裂かれる瞬間、影は理解し、尚哂う。
 この女は獲物ではなく敵だと、天敵であると理解し、尚哂う。
 そして最後まで哂い続け、抵抗も見せぬまま。

 『命』という概念を切り裂かれた。

 そして影は――力を失い、びしゃり、と。
 音を立てて地に落ちる。
 それから間も無く。飛び散った飛沫や、切り離した破片と共に。
 蒸発するように消えてなくなるだろう。
 後に残るとすれば、耳障りな金属音の残滓と……塊になって転がる残骸だけだった】

クロノス > 異形の影を消し去った魔力の残滓は、周囲を取り囲んでいたヘドロを破壊する。
1重、2重、とヘドロを破壊し、そして3重目にヒビを入れて魔力の放出は止まった。
その壁がなければ、付近のビルをいくつか薙ぎ払っていただろう。

黄金の鎌は消え、彼女の背の翼も消える。
後に残っているのは、空中に舞っている雪のような魔力の残滓だけだ。

「びっくりするほどあっけないですね。
 ―――何かしてくるかと思ったんですが。」

帽子の鍔を握って残骸を一瞥すると、瞳を伏せる。

「討伐任務完了です、協力に感謝します、監視番号364、262。
 公安委員会から感謝状を進呈いたしましょう。」

クックと笑って口元を歪めた。

照山紅葉 > 全て終わったのだろうか
もう戦闘する理由はなく、一番悪意のあった生き物も霧散している

「おい。」
「おいドカ食い女。」
万物を斬る斬撃が通り過ぎたその先を見据えながら歩いていく
冗談みたいな一撃だ
やっぱりとんでもないものを持っていた

だけど
「感謝状を進呈いたしましょう。」
アゴをしゃくって似てないモノマネ

「じゃねぇよ!建物が3棟ぐらいスッパリ行ってんだろォーが
 加減しろったろォ脳筋がよォー!」
落ちていた薄っぺらいタブロイド誌をくるくると丸めて
その頭を引っぱたこうとする

道鉄 > 「……感謝状とか、腹の足しにもならない……」

むくりと体だけ起こして、身体特徴の長かった腕……だったものを見た。

もはや、手として機能するのは難しそうだ。
焼けすぎて、黒ずんでしまっている。
あれだけ綺麗な腕だったというのに。

「……はぁ……どうすっかな、これ」

つぶやきながら、”やってきたふたり”に目をやり
叩かれた姿を見て、ぶっと吹き出して笑った。

「ゲハハハハハ……なに、漫才? めおとってつけたほうがよかった?」

鮮やかな流れに、余計な一言。

「感謝状なんていらないから、腕とおねーさんの話がおれは聞きたいよ、なんて」

動かねいのかそれとも、うごかないのか……

クロノス > 「いたッ!!」
素直にタブロイド誌に叩かれ、情け無い声を漏らす

「いきなり何をするんですか、
 叩くならせめてもう少し綺麗な物にしてください。」

『この帽子お気に入りなんですよ?』と帽子を手で払い、かぶり直すと、
いつものように鍔を握って正した。

「まったく、これだからすぐに手が出る落第街の野蛮人は。」
やれやれと首を振る

「実際あなたのお陰で被害は最小限で済んだんですからいいでしょう。
 それに、手加減できるならしてます。
 出来ないから全力で撃ってるんじゃありませんか。」
『バカですか貴方は』と睨みつける。

クロノス > 視線を彼女の腕にうつすと、申し訳なさそうに瞳を伏せる。
「無茶をさせてしまって申し訳ありませんでした。
 ……腕については、腕のいい医者を探しておきましょう。」

帽子の鍔を掴み、彼女の瞳を覗き込むと、にっこりと笑みを零した。

「それが貴女の望みなら、報酬は正当に払われるべきだと考えます、
 お話が聞きたいのならなんでも聞いてくださって構いませんよ。」

クロノス > 『それにしても、本当に「死んだ」のでしょうか。』

ふと、異形の影の残骸に視線を動かす。
あれほどのしぶとさを誇った生き物が、
いくら『万物を引き裂くアダマスの鎌』を喰らったから
といってあっさりと死ぬとは考えにくい。

『考えすぎですかね。』

そう考えて、残骸から視線を逸らすと、
自分の服にあけられた穴を手で撫でる。

―――本当に厄介な敵だった。
おそらく、あれは成長するタイプの怪異だ。
『今の段階』で倒せたのは幸運だった、と思うしかない。

道鉄 > 「……おねーさん、なんでそんな顔してんの?」

馬鹿なの? っていうように笑った。
すごく癪の触る笑い方で。

「こんな島なんだから治るでしょ。じゃなきゃ、義肢でもつければいいよ
どうするかを考えてただけ。でもさっきのタイミングは替えがきかなかったでしょ?
だからごめんなさいなんていらないの。感謝したその笑顔だけでいいんだよ」

よっこらせっと立ち上がる。
さっきまでは歩けば地面が割れていたのに、今ではそれの見る影もない。

「じゃあ、デート成立ってことで。日を改めて、誘うよ”先輩”」

――二時間あるときでよかったとこぼしつつ。

「お兄さんも、お疲れ様。げはは、あんなことできるなら
オレなんてホントはひとひねりだったんじゃないの?
あー、こわ。腕はこんなんだから近寄らんとこ」

なんてつぶやいて

照山紅葉 > 「見ろおめぇー……
 あっちからあっちは…まぁ土地の権利書はもってねぇーけど…
 カナダ人が細々と立てた闇金ビルでよォー
 明日も明後日も知らねぇ人間を不幸にする仕事があってよォー」

それが見ろよ、と綺麗に大黒柱が抉られ、エッフェル塔のようになった
小汚い建物を示す、多分数時間後には倒壊するだろう、儚い音を立てている

「良い子ちゃんは融通が効かねぇーから困るぜェー……
 お役所仕事って奴かよォ…えェ?」
あーあー…と向こう側まで行った惨状の跡を
右手を庇にして見る、ここまでの被害は…
いや、よく考えればいつも大体コレぐらいの被害は出てるな…
業の深い町だ。
よく考えれば最初にダイナマイト放り投げたのは自分だったのだが
それはもう記憶の彼方である

「バカだからこんな所に堕ちてんだろォーが…気ィ済んだかよ
 オラ、帰って報告書でも書いてろォ…」
シッシ!と、犬でも追い払うような手つきで追い立てる

クロノス > 「いえ、私のせいで痛い目にあったのなら
 申し訳ない事をしたと思っただけです。」
帽子の鍔を握り、正す。

「デートの約束をした覚えはありませんが、
 お話ならいつでもしますから、どうぞご自由に。
 ただ、私にはあまり時間がありませんから、お早めに。」

彼女に手を挙げ、別れの挨拶をして、
『―――ありがとう。』一言だけそう言って、彼女に笑顔を向ける。

「これで満足でしょう、気をつけて帰宅してください。監視番号364。」

クロノス > 『ふむ』と、エッフェル塔のようになった建物を眺める。

「ついでに人を不幸にする建物が
 無くなったならむしろ良かったじゃありませんか。」

そう言って彼女はむしろ誇らしげに口元に笑みを浮かべる。
彼の瞳を覗き込むと、彼のおでこを突きながら、言葉を繋ぐ。

「―――言われなくとも、しっかりと報告書は書きますよ。
 貴方も、気をつけて帰宅してください、監視番号262。」

『ありがとうございました。』と小さく礼をすると、踵を返す。
鉄底の音を立て、マントをはためかせて、
彼に言われた通りに報告書を書くべく、その場を立ち去った。

ご案内:「路地裏」からクロノスさんが去りました。
道鉄 > 「……やれやれ、食の足しにもならなかったけど目の保養にはなったかな」

うんうんっと頷いて。

「監視番号364もいいけど、監視じゃないときは道鉄(タオイェン)って呼んでくれるとテンション上がるよ」

両手をブラーンってしたまま、フラフラしつつ。

「バイバイ」

ゆっくり落第街の奥に進んでいった。
ぐぅっと音を鳴らしながら……


「お腹すいたァ……」

ご案内:「路地裏」から道鉄さんが去りました。
照山紅葉 > 「金を返さねぇー奴はよォー、人じゃねぇーんだよなぁー…
 ヒトだけど人じゃねェーンだ、わかるかぁ、世の摂理がよォ」
「わっかんねぇだろうなぁー、俺もわかんねェ」
やれやれ、とショットガンを肩に担いだ
空はすっかり明け空だ

「帰るかァー…じゃあなァー…」
道鉄、クロノス
それぞれバラバラに帰っていくのを見れば
自分はまた別の道へ帰っていく
後には、何も残らなかったと思う
そう、異形の影の跡以外は

ご案内:「路地裏」から照山紅葉さんが去りました。
異形の影 >  
【……その誰もが居なくなった路地裏。
 人気がなくなり数刻経った頃だろうか。
 再び物陰から、じわりと黒い色が滲み出る】

《キ、キキ――く、くキ――、は、キはは――》

【金属質な音に混じり、人の声が――少女とも、少年とも、青年とも、老人とも、赤子とも判断がつかない声が響く。
 誰もが消えた路地裏の一角で、再び浮かび上がったその怪異は、只管に愉快そうに笑い声を上げる】

《おもシろイ――キキ――なんテ、ユかイな――キィッ》

【笑いながら、その形は徐々に頭を作り、腕を作り、胴を作り、脚を作る。
 そして、象ったばかりの腕を広げ、笑う】

《こノマちハ――キキキッ――すバラしイ、きょうキキッ、ミチてイる――!!》

【怪異は笑う。
 怪異は哂う。
 ただただ、生れ落ちた事に感謝と憎悪を篭めて嗤う。
 そうして、影は『人』を象って――】

《キッ――コれかラハ、ユっくリト、たノシもう――キキッ》

【また物陰へと、地面へと。染みこむ様に消えていった】

ご案内:「路地裏」から異形の影さんが去りました。
ご案内:「路地裏」にウェインライトさんが現れました。
ウェインライト > 既に明るく太陽の輝く午前九時。
その恩恵の無き場所にそれは居た。

燃え盛るような金の髪/融かすような赤い瞳/蕩けさすような美貌

違法的な改築増築を繰り返した果ての暗闇で、赤い双眸が瞬いていた。

ウェインライト > 「ここもずいぶん変わったものだね」

自分の居ない間に、学園はずいぶんと変わったようだ。
人も。建物も。その有り様さえも。

定命の世界は、ただの瞬きの間に変わってしまうようにすら映る。
ただただ儚く映っていたが、こうしてみるとなかなかどうして面白い。

「この僕の美しさに引け目を感じるのかもしれないが、
ここにはシャイが多すぎるな」

治安の悪い場所だと聞いていたのに、誰も声をかけてはこないし近寄りすらしない。

臆病なのか恥ずかしがり屋なのか。もっと美に積極的になるべきだ。

いや、シャイだからこそこんな暗がりの中でも生活するのだろうけど。

ウェインライト > 「こほん。……しかし」

口元を抑えながら咳払い。
上を仰いでため息一つ。

「この埃と湿気はなんとかならないものかな」

美観について、この場所の在り方についてはとやかく言うまい。
それを良しとする人間が居る以上、何かしらの美点があるのだろう。

理解はできずとも受け入れはしよう。

しかし。

「ごほっごほっ、この、げほっ、踏み入れるだけで舞い散る埃は」

「なんとかなら」

ウェインライト > 「へっくちーん!」
ウェインライト > くしゃみと共に、魂まで飛んでいった。
さらばウェインライト、暗闇に死す。

#死因・大気汚染?

ウェインライト > 倒れ伏す身体/つもりゆく埃

ほんの僅かに射す光が、まるで雪のようにきらめいていた――。

ご案内:「路地裏」からウェインライトさんが去りました。
ご案内:「路地裏」にカエラムさんが現れました。
カエラム > いつものように見回りを行う、巨大な影。
いつも見かける不良学生に軽く会釈をしてみると、咥えていたタバコをぽろりと落とす。

しまった、とうに慣れたものだと思っていたのだが……

カエラム > 島にはこの姿を受け入れてくれる者も多いが、そうでない者とて少なくはない。
当たり前のようにそこにいられる空間があると、そのあたりの感覚が麻痺してしまうことが多々ある。
今回がその一例だ。

固まってしまった不良学生のもとを、そそくさと離れていく。
ただでさえ治安の悪い場所なのだ。これ以上驚かせると発狂してしまう恐れがある。
その内慣れてくれることを祈るばかりだ。

カエラム > 「よっ」

道を塞ぐフェンスがあれば、ひとっとびで乗り越える。
身体能力は生前よりも大幅に劣化しているものの、これくらいのことならば容易い。

着地した時の地響きで、すぐ横にあったゴミ袋の山が崩れてしまう。
死神はそれを綺麗に整えると、再び歩き出す。

カエラム > 歩いている内に出てきたのは、いつか自分が『自己強化の能力暴走<オーバー・ロード>』を介錯したオープンスペース。
彼の魂の欠片は赤い薔薇の種子となって、今も自分を助けてくれている。

現世の人間は太古の語を忘れ去っているが、魂の乖離が顕著になってくると根源的な意識で通じさせることができる。
それが判明したのも、あの時の出来事からなのだ。

ギロチンの大水晶と違って、自分の七水晶は魂の居心地がよくなるようチューニングしてある。
それはまさに、擬似的な『天国』と言っても差し支えない。

カエラム > オープンスペースの端に座り込み、少しだけ休憩する。
傷付きもせず朽ちもしない身体ではあるが、痛みや疲れといったものは感じられる。
眠たくだってなるし、あまりにもショックな出来事があるとめまいもする。
深呼吸をするように換気をして、建物の間から見える星空に思いを馳せる。
スラムタワーの頂上ほどではないが、ここからだと中々綺麗に見えるのだ。

カエラム > 「……くー…」

星を見上げているうちに、不覚にもうとうとし始めていた死神。
ついに寝息を立て始めると、フードを被った頭が深くうなだれる。
座り込んでもまだ150cmほどの高さがある巨体は、路地裏のオープンスペースに投げ出される。

カエラム > しばらくすると、死神は目を覚ました。

「―――LuX.」
『―――育む』

左眼窩からカモミールの花を咲かせると、身体が変化していく。
巨大なカラスとなった死神は、路地裏から飛び去っていくのであった。

ご案内:「路地裏」からカエラムさんが去りました。