2015/08/10 のログ
■焔誼迦具楽 >
「――あら、ここに来て焦ったのかしら」
【瓦礫の下、『時間切れ』で流体から人間の身体に再構築される。
ひどい重量に押しつぶされながら、銃弾となった極小の『分身』を解して蒼穹の様子を垣間見た。
確かに冷気を持って熱を冷ますのは常套手段といえるだろう。
けれど、何のために熱を集束させたのか、だ。
『副産物』である周囲の熱気に圧され、気づかれなかったのだろうか。
瓦礫を貫通し、路地を駆け抜けていく窮極の熱量は、確かに撒き散らす熱気を削り取られていく。
しかし周囲がいかに冷えようと――集束された黒点は、止まらない。
超熱量の『点』を迎え撃つのなら、『面』でなく同じ『点』か『線』で迎撃するべきだったのだ。
そう、すべてを瞬時に凍りつかせるほどの対極、窮極の負の熱量でないのなら。
さらに、距離を離し続けようとしたのはより悪手だったろう。
迦具楽の乗せた魔術は『加速』。『距離が広がれば広がるほど』弾丸は速度を増し続けるのだ。
弾丸は直線で逃げる限り、蒼穹を確実に打ち抜くだろう。
いや、もし曲がろうとすれば、亜光速にも迫る弾丸が瞬時にその身体を捉えることだろう。
それは冷気で米粒大かそれ以下にまで消耗するかもしれないが、それでも。
欠片でさえ着弾すれば、人の身体を蒸発させることなどたやすい】
「ああ、痛い。
――ふふ。痛みわけで引き分けね」
【身体を瓦礫につぶされ、苦痛に眉を顰めながら笑う。
弾丸が蒼穹に届いたのを見届け、熱を人間大に制限し解き放った。
路地に人影を覆うように炎が上がったのは、ほんの一瞬だっただろう。
だがそれでも、皮と血肉を蒸発させるには十分すぎる熱量だった】
■蒼穹 > やって…くれる。
(愚策。正面衝突を好むが故の愚策。
案の定結果は最悪だった。愚策に愚策が重なって。
その熱の弾は己を打ち据えた。
炎ではなく熱。広範囲攻撃ではなく、一点集中。
背を向けていたのが失策だったか。
それとも馬鹿正直に真正面から対極属性をぶつけたのが間違いだったか。
破壊を好み過ぎるのは頂けなかったと言う事だろう。
防御魔法を使えばよかったと、この辺りで認識するがまあもう遅い。
粒の様な弾丸が己を掠めて消えれば。右腹部から煙が上がった。
肉も皮も血も焼けて気化し、骨が危うく見えかねない状況。)
…ううん。こりゃあまずいなぁ。やれやれ、やってくれたね。本当に。
愚策だったって言い訳はナシかな。
今度からもうちょっと頭を使うのと、手加減しない事を念頭に置かないとなぁ。
さぁ、どうだろう。キミの勝ちでいいんじゃない?
ただねぇ、あんまり面白くはなかったかな。もうちょっと余裕で行けると思ったんだけど。
まさか引き分けって笑いながら言われちゃったら…ねぇ。
(して、もう敵意もなさそうだと知れば溜息を吐きながら呆れ目ジト目で瓦礫の方へと歩き出す。)
で?ここで回復魔法とか使っちゃうとキミの御機嫌を損ねるかな?
あとほら、戦利品だよ。受け取りな。
(半焼のポケットをまさぐれば瓦礫の下の彼女にメロン味の飴玉を投げつけて、様子を伺う。
化け物なんだし大して潰されたっていたくもなさそうだろうが。
出てこないなら蹴り飛ばしてやろうかな。と、余計なお世話を考えながら。)
■焔誼迦具楽 >
「あら思ったよりも元気なのね。
もう少し燃やせると思ったのだけど」
【やはり喧嘩を売る相手を間違えたのだろう。
いや、ある意味で大正解ではあったのだが、自嘲くらいは浮かぶ。
しかしまさか、わざわざ戻ってくるとは思わなかったのか、瓦礫の下で気配を感じ取れば、弾丸を打ち出した際に吹き飛んだのだろう瓦礫の隙間から蒼穹を見上げた】
「引き分けよ。
私がアナタに勝てた要素なんて、最後くらいしかなかったじゃない。
私は面白かったわよ、最高にすっきりした気分だもの。
ありがと、通りすがりの破壊者さん」
【飴玉が投げつけられれば一応視線を向けるが――両手足共に埋まっていればどうしようもない。
とにかく『時間切れ』なのだ。まだ暫くは流体になる事も、身体を変形させることも出来やしない。
そして初の最大熱量の発揮。
行動に大きな支障こそないものの、瓦礫を押しのけるほどの力は発揮できそうに無い。
一時的だが、見た目相応の能力にすっかり落ち込んでしまったらしい】
「回復魔法もいいけれど、出来れば助け出してもらえないかしら。
このまま埋まっててもいいけど、さすがに痛いし苦しいし」
【笑って見せるが、腕も足も胴体も押しつぶされてるように思う。
ソレくらいには全身が圧迫されて痛みを発している。
瓦礫の隙間を縫うように、無理やり身体を構成されたのだ。
足が曲がったらいけない方向に曲がっているのは、さすがにわかったが、わかっても何一つ嬉しくはなかった】
■蒼穹 > 残念ながら。
生憎体は大体特別製でね。そん所そこらの人間よりは頑丈だよ。
まぁ…耐熱方面にはどうしようもなかったみたいだけどね。
(スカスカになった右腹部に手を入れながら苦笑い。
蔵の穴から顔を出すかのような少女に視線を落としながら実演すれば、
しゃがみ込んで。)
ふーん、そう。
面白くないなぁ。鬱憤ってのはプラスマイナスゼロかね。
キミの鬱憤を引き受けたみたいだよ。
ふん、どういたしまして。あと破壊者じゃなくて蒼穹《ソラ》だよ。
(三角座りしながら、割と半怒りとも取れる様な少しピリピリした態度にて対応。
押し潰された中から出ている顔に己の視線を向ける「まぁ当然名前くらい名乗るよね?」とでもいうかのような。)
いらないの?それ。
(それとは、袋に包まれた飴玉。拾い上げて、彼女の顔の前でぶら下げる。緑色に黄色でメロンと書かれている。)
あっはは、まぁそう言わないでよって。
取り敢えず回復したいじゃん?
破壊魔法・第七十七術式「損傷消滅―リバーシブルブレイク―」
(その笑いは、作り笑いか何かだろうか。それとも純粋な笑いだろうか。
痛いし苦しいと言った言葉を片手で静止しながら、もう片手を損傷部に当てて回復魔法を行使。
回復なのに破壊なのは御愛嬌。ダメージや損傷や欠損を壊して回復すると言った、
破壊神としては逃れられない枷でもある。少なくとも、見かけ上は、元通り。
今の戦いでどれだけダメージを受けて、どれだけ回復したのかなど本人も知らない。
服が焦げたのだけが表に見える。)
さて、名前も知らない化け物ちゃん。知ってるかい?
世の中には頼みかたってものと、駆け引きってものがあるんだよ?
(さて、体の修復が思うようにいけば三角座りから立ち上がって。
にやりと、結構な悪戯心に、天然自然の嗜虐心が僅かに混じった笑みを向けて見下ろす。
といっても、わーわーと騒ぐなら言葉通り助け出そうとは思う所存だが。
散々鬱憤をぶつけられたのだし、これくらいやっても罰は当たるまい。
いや、まぁ天罰を下す神様側に位置しているからそもそも罰など恐れないのだが。)
■焔誼迦具楽 >
「あら、それは悪いことをしたかしら。
私は迦具楽よ、蒼穹。
ごめんなさい、謝るからあまり意地悪しないで欲しいのだけど」
【と、しょげたように眉を顰める。
飴食べたい。すごい食べたい】
「……助けてください、お願いします」
【むう、と拗ねたように頬を膨らませてみるものの。
今の主導権はどうしたって蒼穹側にあるのだ。
そしてこんな事で面倒な駆け引きなんてやってられない。
とにかくさっさと助けて欲しいのだ。それと飴欲しい】
■蒼穹 > はいはい、カグラちゃんね。
…覚えておくね。
ふーん。聡明だね。結構だよ。
(謝るなら、それでまぁ、良いか。
存外あっさりと頷いて。)
ああ…はいはい、分かった分かった。
仕方ないなあ………うーん。
(願わくば、もう少し蹂躙してやりたかったのだが…やっぱり駄目だろうか。
流石に大人げないだろうか。
折角主導権を握ったのだし、このままリリースも惜しいだろうか。
反抗的な表情はより己を煽るも、こう、既に屈服した感じがする。
如何しようかと腕組みしては、まだ助けることもせず。悩ましそうに見下ろし続ける。
いやでも、最初御友達云々の話をしたし。)
どうよ、駆け引きの方は。
(足で空を切りつつパワーアピールしながら。頼み方もも駆け引きも求める腐りきった破壊神の図。)
■焔誼迦具楽 >
「……蒼穹、アナタって随分意地悪なのね。
アナタみたいなヒトが風紀だなんて、世も末かしら」
【人を食う怪異が何を言うか、だが。
さすがに拗ねるし、唇もとがる。
欲求や感情には素直なほうなのだ。つまり子供である】
「――要求くらいは聞いてあげる。
今の私に出来ることなんて、限られてるけど」
【駆け引きは放棄である。
子供は自分の欲求が満たされると、とたんに色々放り投げる部分がある。
憂さ晴らしという目的がすっきりと果たされた以上、そのお礼と考えれば多少の要求くらいは呑んでもいいと思う次第だ】
■蒼穹 > 私は風紀だけど、真面目にやらない勢なんでね。
それに正義なんてくそッ喰らえって思ってるから、意地悪で結構だよ。
あっはは、テロリストたった二人に攻め入られるような警察組織。
端から世は末、世紀末だよ。
(あまり、その組織に思い入れはない。給料と情報を得れて、そこそこ良い地位だからというのに他ならない。
また、風紀委員の制服は着ない。無理矢理刑事課に属しているが果たして。言ってしまえば大分異端。
これで偽造ではなく正規の委員であるから本当に世も末なのかもしれない。)
あれれー。可愛いね。さっきのとは比べ物にならないくらい。
感情っていうのは、ある。…それは察したよ?
(笑い、愉悦、拗ね、苦悩…そう言った表情が、先頭の際も何度か見えた。
それは己も同じことだが、最初に言った様に、話が出来ても通じない存在ではない。
要は、融通の利かない殺戮兵器みたいな奴ではないことも察した。)
聞いて"あげる"、ねぇ。ほうほう、あくまで上から来ちゃう?
状況は分かってるかな?このまま時空の狭間に飲み込んであげても良いんだけど。
(何とも卑怯である。主導権を握った途端ニヤニヤと見下ろしながらまだ助けずに、
それどころか言葉に難癖を付けながらメロン味の飴玉の袋をふらふらと振った。
果たして時空の狭間に飲み込む、の目的語は先程名前を知った目の前の怪異《カグラ》に向けたものか、
メロン味の飴玉に向けたものか。どちらにしても褒められた行為ではない。)
■焔誼迦具楽 >
「あはは、ほんとに世紀末ね」
【先日聞いた風紀本部襲撃の噂だが――まさかたった二人にやられたことだとは。
主戦力が誰もいないとかそんな間抜けな状況だったのだろうか】
「感情くらいあるわよ。
意地悪なお姉さんに意地悪されて拗ねたくなるくらいには」
【出来るならそっぽを向いてやりたいところだけれど、顔を動かすのも難しい状況なため、全力で赤い視線を向けてにらんでやろう。
いやそれで状況はまったく好転するわけがないのだけど】
「……喜んで話を聞かせていただきますので、どうか助けてください」
【飴玉を】
■蒼穹 > でしょ?笑えるよね。
でももっと笑えることにその内の一人が私の知り合いで御友達なの。
んで、もっといえばその御友達の恋人も私の御友達なわけよ。
いやー、世間は狭いね。ま、私は応戦してないから知らないけど。
(サボリを悪びれずにカミングアウトしていくスタイル。
どちらかといえば、風紀委員よりも、御友達の方が心配である。)
ふーん。
いやぁ、怖い怖い。そんなに睨まないでほしいなあ。
感情があるなら、感情をぶっ壊すことも出来るんだけど、ま、それはいいとして。
(どんなに恐ろしい視線でも、どんなに怖い視線でも、
それは首輪の付いたライオンの様なものだ。全く怖がっている素振りは見せない。
といって、首輪の付いてないライオンを恐れるかと言えばそうでもないのだがそこは御愛嬌。)
ほう。素直になったね。
…はぁ、んじゃ、特別だよ?仕方ないなあ。本当に。
(言いつつ、裂蹴を瓦礫に放った。
乱暴だと言われそうだけれど、助けてあげただけ感謝して欲しいものだと心の中で先手。)
…そんなに欲しいのかい?
(飴玉に、どうにも執着的な何かを感じた。)
■焔誼迦具楽 >
「あらら、随分複雑な人間関係なのね」
【テロリストの友人だなんて大変だろうな、と思ったのもつかの間。
テロリストより目の前の蒼穹のほうがよっぽど危険な気がした】
「……ありがとう。
――でも、お願いだから、冗談でもそんな事言わないで」
【助けられれば素直に礼を言う。けれど。
感情すら壊せるという発言に、迦具楽は身が竦むほどの恐怖を感じた。
その声はこれまでになくおびえたような、切実な声音だっただろう。
迦具楽にとって感情は――たとえ偽物だったとしても――自分が自分であるために必要な、自分自身のものだと唯一思えるものなのだ】
「…………」
【欲しいのかといわれれば頷くが、先ほどと違って弱弱しい――何も知らない第三者が見ればだが、消えてしまいそうな儚さを感じ取ったかもしれない】
■蒼穹 > 複雑っていうか…まぁ、複雑なんだろうけどさ。
何?友達多いカグラちゃんは複雑じゃない友人関係を築いてるってわけかい?
羨ましいねえ、このこのー♪
(冗談半分な笑みを浮かべながら。彼女の交友関係は知らないが。)
ん、どういたしまして。
あー…あっはは、あんまりこういうの好きじゃないかな。ごめんごめん。
大丈夫大丈夫。…その…ええっと。ま、滅多にそんなことしないから。
(急に、今までの振る舞いが崩れたのを察した。
あまりジョークとして面白いものでなかったのは否めない。
もし、彼女でなかったにしても少なからず恐怖の様なものは感じたろう。
ただ、今までの振る舞いや言葉を考えるからに、とりわけ一層恐れているのが分かった。
目はふいふいと泳いで、如何しようかと暫し考えるも、落ち着きなよと言わんばかりに手を上下。)
…ああもう!ほーら!
ったく、さっきニコニコしながら私を襲って来た威勢はどこいった!
(飴の袋を剥いて。「ほら」と、半ば強引にも見える様な形で彼女の口に飴玉を押しやろう。
急に、何が起こったのか。人が変わった様な、そんな気さえする。
小さく、微かなその仕草には、もう悪戯心も嗜虐心も沸きはしない。
元気がなくなった彼女の代わりに、だろうか。ともすれば、元気づける様な、そんな声掛けをして。)
■焔誼迦具楽 >
「せいぜい、友達が友達に告白したくらいかしら」
【それもまた別の意味で複雑なのだが、さらにその友達が蒼穹の友人でもある特殊な女難の相の少年だったりもして、実は非常に複雑なのだが】
「……ん、むう」
【怯えて身を竦めていれば、飴玉を押し付けられる。
目を丸くしながらもそのまま口の中に押し込まれれば、口に広がるのは甘いメロン味。
それにどこか安堵したように力を抜くと、そのまま瓦礫の上にへたり込んだ】
「うん、ごめん。
ちょっと怖かっただけだから。
ありがと、蒼穹」
【あはは、と笑っては見せるが、やはり力ない。
だというのも――もしも、もしもだ。
今さっき、自分が瓦礫に埋まっている時、抵抗の手段がなかったときに。
そんな事をされていたらと思えば、死ぬことよりもよっぽど恐ろしかったのだ。
自分が自分のまま死ねるのなら、それは受け入れられる。
けれど――自分が、今この『迦具楽』という人格が壊れてしまうのだけは。
それだけはダメだった。
この偶発的に生れ落ちただけの怪異が縋る、唯一のものを壊されるのだけは……】
■蒼穹 > 熱いね。どいつもこいつもイチャイチャと。
やれやれ、意地悪な風紀のお姉さんには縁がないから余計熱い。
(聞くのは浮いた話ばかり。皆青春していて楽しそうだと思う反面、恋人なんか持ったら苦労するだろうとも思う。
さて、彼女と己は共通の友人を持っているがお互いそれは知り得ない。)
…。
(真っ青な瞳を向けながら、その様相を見遣る。
よっぽど、怖がらせてしまったのだと。
こちらの軽口にも反応できないくらいには。
黙ったまま、この汚い壊れ切った地面にへたり込むくらいには。)
どう、いたしまして。
(あまり、余計な事を言うんじゃなかったのかもしれない。
いつもの調子で、ただ落第街だからといって物騒な言葉をつらつら並べたらこうなる。
といって、己はある種被害者なのだし幾等でも言い訳出来るのだろうけれど。
見るからに作り笑い、乾いた笑い。誤魔化す様な笑顔。触れれば崩れ去るほどに脆い笑顔。
先述した儚いと言う言葉がきっと似合うだろう。
知り合いの、小さなその姿も相俟って。化け物でも子供で、少女で、感情のある生命であると思わされる。
ちょっと怖かっただけ、と言うけれど。きっとそれは、先の御遊戯の時には一切見せなかった表情であり、感情なのだろう。
だからといって、己は今、言葉を掛けることも、何かをする事はしないし、する気にもなれないし、出来ない。)
さて、と。この状況で駆け引きなんか持ち掛けちゃアンフェアかな。
貸し一つって事で。
■焔誼迦具楽 >
「うん、一つ借り、ね」
【頷いて、見上げるが。
赤い瞳にはソレまでの苛立ちも、勢いもなく、ただ怯えが、少なくない恐怖が映っていただろう。
目の前の相手が嫌いなわけじゃない。
むしろ、この短時間のやり取りで好感すら抱いたのだ。
けれど――それとこれは、まったく別種の感情だ】
「本当に、ごめんなさい。
八つ当たりなんかしちゃって」
【これはきっと、その分の罰なのだろう。
行いに対する報い。ああ確かに――足し引きはゼロだ】
「ごめんなさいついでに、一つお願いしたいんだけど。
……私のこと、黙っていてほしいの」
【理の通らない願い事だとはわかっているが。
それでも、頼まないわけには行かなかった。
不真面目とはいえ、相手は風紀委員なのだ。
報告され、討伐され――確かにただの死なら受け入れられるが。
それでもまだ、もっと、生きていたいのだ】
■蒼穹 > おっけ、覚えておいて。
(いつまで怖がっているのだろうか。
あからさまに口数が減った。睨んでいたあの時が遠い昔の事に思わされるほどに。
先程まで元気づけようとしていたが、こちらまで言葉数が減った。)
いや、もういいよ。
こちらこそその…まぁ、悪かったね。
(調子が狂う。とはまさにこの事だろう。
冗談を言っても作り笑い。笑っても作り笑い。
事がが通じると思った矢先にこれだ。
もう少し言葉を選んだら御友達にでもなれたろうか。)
…あー、はいはい。
どうせ言う気もないからその辺は大丈夫。
"死にたくない"って―――"生きたい"から殺すって、その気持ちはイヤという程分かるからね。
それは、感情と生命が持つ必然性だし。なぁに、大丈夫さ。私に害がなきゃ何もしないから。
…そんなに怯える事はない、から。
(まるで、薄紙を剥がしたかのように。
一皮むけば、その中には、化け物以前に生命としての、ごく普通な脆い一面が垣間見えた。)
■焔誼迦具楽 >
「……ありがとう。
あはは、意地悪なだけじゃないのね」
【飴玉を口の中で転がしながら。
蒼穹の言葉を聞けば、また少し安心したか。
ようやく軽口がこぼれた】
「この借りは、いずれちゃんと返すから。
……だからまた、ね」
【そう『次』があると言葉にすれば、怯えていた割にはしっかりと立ち上がる。
まあ足元が不安定なこともあり、少々ふらつきはしたが。
そして立ち上がればゆっくりとその場を離れようとするだろう】
■蒼穹 > 意地悪なのは否定しないけど、ちょっとそれは酷いって思うね。
…ん、じゃ。また。
うん、ちゃんと次に会ったら、返してよね。
それじゃーね。
(去って行く彼女を見送りつつ、己もようやく帰路につく。)
ああ、散々だったけど…まぁ、ちょっと楽しめたし…良かったかなぁ。
…あ、そうだ。…はぁ、職務、まーた一つバツ印つくね。
(退けた瓦礫の下にでもあったろう、最初に投げ捨てた風紀委員の腕章の切れ端を見つければ溜息。
拾い上げるも、それを持ち去る事はなく。やれやれと肩を竦めて、暫し。それから投げおろした。
怪異の一つでも報告すれば、給料は上がるだろうが、約束してしまった手前、そんな気分にもなれない。
さて、彼女にどういった風に借りを返してもらおうかと、とりとめもなく考えながら。
自分でぶち壊した荒れ果てた路地と、自分でぶち壊した廃ビルの残骸を踏み拉いて。
日陰から日向へ、非日常から日常の境界を踏み越えよう。)
■焔誼迦具楽 >
「――蒼穹、か」
【路地を歩き、そして路地裏から離れながら。
青い瞳を思い出すと、楽しかったという思いと共に……やはり恐怖も思い出してしまうが。
それでもまた、もう一度会いたいという気持ちに偽りはなく、口実があったのは幸いか】
「って、今はソレよりもか」
【そう、引きずって怖がってる場合じゃない。
今の自分は下手をすれば見た目相応程度の力しかないのだ。
目立った怪我こそないものの、身体の節々は圧迫された分の痛みを訴えている。
しばらくすれば力は多少戻るだろうが――今日くらいは安全な場所で休むべきだろう】
「まさかこんな早く使わせてもらうなんて思わなかったけど……」
【丁度いい。遠慮なく高級マンションの一室を使わせてもらうとしよう。
まだ形状変化も出来ないが――まあ、きっとマンションに着くころには侵入できるくらいにはなっているだろう。
そんな風にすこしだけ楽観しながら。落第街を後にするのだった】
ご案内:「路地裏」から焔誼迦具楽さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から蒼穹さんが去りました。
ご案内:「路地裏」にシインさんが現れました。
■シイン > 薄暗い路地裏。
複雑に絡まった鎖のような道を奥へ奥へ進む。
進んだ先を逸れて、誰も住まない家と呼ぶには烏滸がましいが『お借り』して、一時の休息。
休息という自分には意味のない行動は好かない。
が、暫し行動は控えた方が良いだろう、判断は間違えてないはずだ。
室内に入って乱雑に置かれている椅子に座り込む。
捨てられた家か、こんな場所だ。夜逃げなりしたのだろう。
それ以前に掃除すらされてなかったようで、害獣や害虫の住処となっている。
こんな所からはさっさと出るに限るが、用を終えてからだ。
昨日の名も知らぬ襲撃者は言った。
"貴方の居場所を知る術も、得ました"
恐らく私の身体に埋め込められた異形の剣のことだろう。
つまり私の行動は全て風紀委員共に把握されてるということ。
「もう八方塞りか。」
■シイン > 腹立たしい、同時に優秀さに呆れる。
同じ場所に留まっているのは危険過ぎる。
いつ襲われても可笑しくないのだから。
"二人"までなら対応はできるが昨夜の異能持ちのような者が"三人"現れては面倒だ。
死にはしないが、捕らえられては無意味なのだから。
恐らく私の情報は、これで開示されたも当然だ。
不死性か異常なまでの再生力か、戦っても無駄なら捕えるように方針転換もされる。
まともな者なら、そう指示を出すはずだ。
少なくとも、私ならそうする。
■シイン > 「用を済ませよう。」
その手に持つは自分の"右腕"それも二つ。
再生しても、勝手に消滅はせずに、その場に残り続ける。
証拠を消しても、今更無駄かもしれないが、出来る限りの事はしよう。
幸いに、自分から離れた部位は非常に脆くなっている。
人間と変わらないぐらいに、いとも簡単に壊れてしまうのだ。
その腕を両手で万力に挟まれた如く、丸めた紙のようにグシャグシャにするのだ。
手に収まる程度の大きさになれば、簡易ライターで燃やす。
あとは灰になれば、外に放り投げて風に任せるだけ。
はて、これから何本の腕に脚が犠牲になるのか。
考えただけでも頭が痛くなるものだ。
■シイン > 銃の整備も終えれば、各ホルスターに収納する。
胴の前と背後に二つずつ、弾丸の補給に、全てを完了する。
昨夜は使用しなかったが対異能者用弾丸は全部で五発。
コレだけは放つことがないことを祈るしかない。
今夜は無事に過ごせるか、否、目的を達するまで逃げてみせよう。
もし風紀の者に会ったらどうするか。
"一人"なら撃退。"二人"は逃走か撃退。"三人"以上なら即座に逃走。
それを心に刻み込む。
「もう暫くは…待機してよう。」
夜と呼ぶにはまだ早い。日が沈み次第行動開始だ。
ご案内:「路地裏」からシインさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に焔誼迦具楽さんが現れました。
■焔誼迦具楽 >
【――体が重い。
日が暮れだした路地裏に戻ってくれば、適当な場所で壁に寄りかかりながら腰を下ろした。
まるで水中にいるかのようだ。
それでも常人に比べれば幾分マシな運動能力はあるのだろうが】
「……はしゃぎすぎたかなあ」
【昨日の蒼穹との邂逅、そして戦闘。
全力を出したおかげですっかりエネルギーを消耗していた。
戦闘前に比べれば半分……もう少し削れただろうか。
これまで一月以上蓄え続けたエネルギーが半分以下だ。
明らかにはしゃぎすぎだろう】
■焔誼迦具楽 >
「しばらくは用心しないと」
【昨晩は知人の部屋でゆっくり休み、ここまでの道中で『補給』もしたからある程度の回復はしたのだけれど。
――完全な流体化:不可
――一部流体化:短時間のみ可
――変質精製:可能
ほとんどの能力が使えなくなっていた。
いや、流体化も可能なのだけど……制御がおぼつかない。
最悪の場合、迦具楽の意思にかかわらず暴走し、自壊しかねなかった。
幸いなのは魔術は問題なく扱えることと、炎の召喚と、ある程度の熱操作が出来ること。
とはいえ熱操作は鉄を溶かす程度で、炎も細かく操るのは難しい。
暫くは大人しく、自衛に専念していたほうが良さそうだ。
――それなら路地裏を出ろ、という感じではあるけれど。
他に行く宛てなんてないのだから、仕方が無い】
ご案内:「路地裏」に紅葉 椛さんが現れました。
■紅葉 椛 > 路地裏にチキンの香りを漂わせながら歩く黄衣の少女。
「ふんふーん♪
やっぱり仕事の後に食べるご飯は格別だよねー」
誰に言うわけでもなく呟きながら歩く。
簡単な仕事を終え、たまたま近くにあったフライドチキンの店でそれなりの数のチキンを買い、歩きながら食べているのだ。
お世辞にも行儀がいいとは言えないが、空腹なのだから仕様がない。
またひとつ食べ終わり、箱の中へと骨を放り込む。
■焔誼迦具楽 >
「――――!?」
【どこからともなく漂う香り。
――これは チキンの かほりだ!
ただでさえエネルギーが足りないところに、この香りは強烈!
だがしかし『ころしてでもうばいとる!』わけには行かない。
今は自分から仕掛けるような無駄は出来ないのである】
「……ぐ、ぐぬぬ」
【そんな迦具楽の葛藤を無視するかのように、どういうわけか近づいてくるおいしそうな香り。
そしてついでに、食べてる人もかなり『美味そう』な相手である。
これはやばい。空腹だというのに視線の先で美味しそうなものを『美味しそうな』人物が食している。
なんの拷問だろうか。ああ逃げ出したい。
いやでも、せめて匂いだけでも……いやいやいや。
きっと歩いてくる少女は、そんな迦具楽の葛藤なんて知る由もないのだ。
そして少女は迦具楽の――とても羨ましそうに、恨めしそうにチキン(と持ち主)を見つめる少女の姿を視界に入れることになる。
そして――その顔、容姿にはどこか見覚えがあることだろう】
■紅葉 椛 > 「あと3つかー……もうちょっと買ってもよかったかな」
残念そうに箱の中を見る。
散乱した骨の中に、とても美味しそうなチキンが三つ。
無駄に仕事に手こずったせいで、朝からまともなものを食べていなかった。
故にこれだけでは足りない。
帰りに何か他の物でも買おうかな、そんなことを思いながら歩いていると、こちらを睨む少女がそこに。
何故か恨めしそうに見られているが、何かしただろうか。
思い当たることがない悪意に困惑していると、ふと頭の隅に何かがひっかかる。
この容貌、どこかで見たはずだ。
そう、暇な時でいいからと無理やり頼まれた依頼。
ボコボコにされたから代わりに殴っておいてくれという情けない内容の依頼だったが、受けてしまったのだからここで果たしておこう。
にこりと微笑みながら、迦具楽へと近づく。
「私が、何かしたかな?」
まずは警戒されないように、貼り付けた笑顔で。
■焔誼迦具楽 >
「う、……別に」
【何かしたかといわれれば、今絶賛されている最中なのだが。
この人物に悪意があるわけじゃない。
ああでも今はさすがに、近づかないで欲しい。
なんてことだろう。食欲を我慢するのがこんなに苦しいことだとは。
――いやまとう。
さっきこの人物はあと三つといった。
それはつまりまだ残っている?
そして近づいてきた。
これはつまり、もらってもいいということなのでは?】
「……ねえ、そのチキン、一つもらえない、かしら」
【なにかとても、卑しい頼みごとをしている気がしたが。
食欲に支配されつつ頭でまともな思考なぞできるわけもなく。
わずかに涙ぐみながら、懇願するような視線で相手を見上げるのだった】
■紅葉 椛 > ああ、なるほど。お腹が空いているのか。
そんなところにチキンの匂いを漂わせては睨まれるのも理解出来る。
そして、チキンをもらえないかという依頼が目の前の少女からやってきた。
なるほど、これは好都合かもしれない。
殴るという依頼の料金とチキン一つの値段では、圧倒的に依頼の料金の方が高い。
できるとは思わないが、一応聞いてみるだけ聞いてみることにした。
「いいけど、その代わりに一発だけ殴らせてもらえない?
なんかよくわかんないけど、お姉さんに恨みを持ってる人が殴ってきてくれーって頼んできてさ」
これで穏便に済めば楽なんだけど。
そう口内で呟き、返答を待つ。
■焔誼迦具楽 >
「えっ」
【なんだろう、今随分と奇妙なことを言われた気がする。
きょとん、と。いや呆然として数秒ほど相手の顔を見上げていたが】
「……嫌よ。
どうして私が殴られないといけないのかしら」
【それも見ず知らずの初対面の相手に。
なるほど恨みなら確かに、割と頻繁に煩い連中を蹴散らしてはいたから買っているかもしれないが。
――おそらく殴るというのは、比喩の内だろう。
この路地裏でそれなりの取引をするような連中が、ただ殴ってこいなんて依頼をするわけないのだ。
……いや、本当に殴られるだけでいいのなら。迷わずYESと即答したのだけど。
さすがにチキン一つとじゃあ、色々つりあわない。
軽く不信感のある視線を向けて、様子を伺う。
不自然じゃない程度の警戒心を見せつつ、ゆっくりと立ち上がった】
■紅葉 椛 > 「いやほら、よくわかんないけど恨みを買ってるらしいし」
やはりダメだったか。
同年代くらいの男から受けた、報酬は一諭吉で女を殴ってこいという依頼は然程やる気がなかった。
男なら自分の拳でやり返すべき。そう思っているからである。何かの漫画でもそんな感じのことを書いていた……気がする。
しかし、なし崩しでも受けてしまった以上、一発でも殴っておかなければ信用問題になってしまう。
なんとかして一発を入れる。そう考え、次の策に出た。
「まぁ冗談は置いといて、はい。
ほしいんでしょ? 帰りに追加で買うから1つくらいならいいよ」
箱からチキンを1つ取り出し、差し出す。
受け取って気が緩んだ瞬間に一撃、という作戦だ。
■焔誼迦具楽 >
「……まあ、多少覚えくらいはあるけど」
【あの組織か、あっちのグループか……。
まさか取引をしていたプロでなく、それに乗っかっただけの素人の方が依頼しているとは思いも付かない。
ただまあ、問答無用で襲われるわけじゃなさそうなのは幸運か】
「冗談にしてはちょっと物騒じゃない?
――まあもらえるのならもらうけど」
【もちろん冗談だとは思っていないが。
くれるというのなら断る理由なんかないのだ。
いや、自衛を考えればどう考えたところで断るべきなのだが。
でも、でもだ。ほら、毒とか薬とか効かないし。
一応視線だけは相手から離さず、ゆっくりと手を伸ばし、チキンを受け取る。
が、すぐには食べない。
相手を伺いながら我慢を続ける。……辛い。
今すぐ食べたいところだが、逃げ出すのも難しい位置関係。
なんてこった、どうして壁際になんて座ってしまったんだろう。チキン食べたい】
■紅葉 椛 > 「やっぱり見た目で喧嘩売って来る人が多いんだろうねー。
異能とか魔術があるのを知らないわけでもないだろうに」
相手がチキンを受け取った───しかし、すぐに食べない。
先程までの会話で警戒をさせてしまったのだろうか。
それならば些か面倒かもしれない。
警戒されているのなら、食べ始めたところを狙おう。
腹部を狙うつもりだったが食事中に腹部を殴られるのは流石につらいだろう。
向こう脛、つまり弁慶の泣き所を蹴ることにしよう。
弁慶ですら泣いたと言われている場所だ。依頼の達成としては十二分の苦痛を与えられるだろう。
そのために、まずは食べさせるところから。
「食べないの?
すごい美味しいのに」
箱から、残っているチキンの片方を取り出し、食べる。
とても美味しそうに、笑顔で。
■焔誼迦具楽 >
「そうなのかしらね。
あんまり煩いから片手間に片付けちゃうのだけど」
【むしろドチラかといえば自分から喧嘩を売ってるのは、こここではとりあえず関係ないのでおいておく。
相手の様子を伺っていれば、なるほどやはりこちらがチキンを食べる瞬間を狙っているようだ。
念のため皮膚を変質させておこう。
刃物や銃弾なら何とかなる程度の釼に……見た目はバレないように人肌のまま。
さて――後はどうする?】
「……食べたいのだけど、さすがにじっと見られてると食べにくいわ。
もう少し離れてもらえないかしら」
【目の前で食べられるチキンを無意識に目で追いつつ、苦言を呈す。
彼我の距離はかなり近い。
この要求は至極全うであり、不自然なものではないだろう。
――などと思ったのだが。
視線は相手が食べているチキンへと、無意識に奪われたままだ。
要するに隙だらけ、である】
■紅葉 椛 > 「へー、お姉さん強いんだね」
なるほど、それなりに強力な異能や魔術の類いを持っているのだろう。
そんなことを考えつつ、チキンを食べ進める。
噛む度に肉汁が溢れ、肉を食べているという実感を強烈に与えてくる。
渡したのは惜しかったかもしれない。
そう思い、相手の方を見遣ると、こちらのチキンに目を奪われている。
隙だらけのこの状況。
やるなら───今だ。
「ああ、ごめんごめん。
すぐに下がるよ」
そう言って背を向ける。
瞬間、脛へ向かって蹴りを放った。
■焔誼迦具楽 >
「まあたぶん……?」
【強さを比較する趣味はないが、それなりに強いとは思っている。
まあ強さなんて相対的なものでしかないのだが。
なんて思っていれば相手が背を向けようとし――】
「――あ」
【ガツン、と。
少々鈍いが小気味のいい音が響いた。
――まさか本当に殴……じゃない、蹴ってくるなんて。
皮膚を硬質化させていたのは幸いか。それとも不幸か。
おそらく金属の塊を蹴ったような感覚が伝わったことだろう。
予想外の感覚に、痛みか痺れか。少なくとも驚いてはくれる事だろう。
そうして少しでも隙が出来れば、横っ飛びに壁際を離れ路の上で正面から対峙する形になるか】
■紅葉 椛 > 予想外の衝撃。
脛を蹴ったはずなのだが、何かを仕込んでいたのだろうか。
若しくは、異能や魔術で先に防御をされていたか。
そこまで強く蹴っていなかったのが幸いし、それほどの痺れは返ってこない。
「あっれ、おかしいな……
まぁいいや、こんなもんでしょ」
一応だが、依頼は完了。
これで払いをバックレようものならこの蹴りが依頼主の顔にぶち込まれるだけだ。
そうしている内にチキンを食べ終わる。
骨を箱に入れると、残りは一つ。
これは後で食べることにしよう。
そんなことを考えながら正面へと移動した少女の方を見る。
■焔誼迦具楽 >
「……あれ、おしまい?」
【『こんなもんでしょ』と、切り上げる様子の相手を見れば。
そこでようやく、本当に殴る(or蹴る)だけの依頼だったのではと思い至る。
いやまさか、とは、思うのだが】
「……ねえアナタ、一体どんな依頼されたの?」
【さすがに警戒も――というか、空気そのものが気づけば随分とゆるい。
訊ねながらチキンをかじれば、なにこれ美味い。
歯を立てれば肉汁が染み出し、肉そのものも弾力があるのに容易に噛み切れる。
口腔から鼻腔へと昇る香りはその味をいっそう引き立て、喉を通り胃へ落ちれば名残惜しさすら感じた。
ああ、もっと食べたい】
■紅葉 椛 > 「え? いやだから殴らせてとしか言ってないし」
どんな内容だと思っていたのか。
流石に殺しの依頼ならば蹴る前にナイフを取り出している。
拉致等は殺しより面倒なため請け負ってすらいない。
「言ってなかったっけ。
ボコボコにされたから代わりに殴っといてくれって依頼」
目の前の少女がチキンを齧る。
幸せそうな表情を見て、渡したのを一層後悔する。
最後の一つ、今食べようか。いや、まだ我慢。
■焔誼迦具楽 >
「……あ、うん。
アナタも大変ね」
【そんな依頼すら受けさせられてしまうのか。
控えめに見てもこの相手はプロだというのに。
ほんの少し同情しつつ、チキンを二口目。
ああどうしよう、もっと食べたくなってくる。
よし、買いに行こう】
「まあ蹴られただけでチキンもらえたし、私としては幸運だったかしら。
……それじゃあね、お姉さん。
私はもっと食べたくなったから、お買い物に行くとするわ」
【特に痛くも苦しくも労力もなく食べ物を得られたのだ。まったく幸運である。
そうして軽い調子で言葉を残し、機嫌よさそうに路地を歩いて行った。
――ともかくこれが初遭遇。
今回は『偶々』くだらない依頼だったかもしれないが。
これが何時、本気の依頼になるかは知れない。
彼女が言った様に迦具楽は恨みを、少なからず買っているのだから】
■紅葉 椛 > 「まぁ割はいいんだけどね。
最近はくだらない依頼も増えて面倒だよ……」
ため息をひとつ漏らす。
猫探しなどは昔からやっていたため面倒ではないが、落し物を探すだのなんだのというとんでもなく面倒な依頼や、今回のようなくだらない依頼が来るようになってしまった。
それなりに名が売れてくれたのなら嬉しいが、もっと楽に稼げる依頼か、やりがいのある依頼をしてほしい。
マンションの解体以外で。
「ああうん、じゃあね。
このチキンのお店は───」
それなりに詳細な位置を教え、見送る。
今回はくだらない、実にくだらない依頼だったが、少女の言動から察するに、命を狙われるようなことがあるのだろう。
次の依頼が今回のように平和な依頼とは限らない。
硬質化の能力を持っているのかもしれない。そう頭に刻み込み、その場を去った。
ご案内:「路地裏」から焔誼迦具楽さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から紅葉 椛さんが去りました。