2015/08/22 のログ
畝傍 > 「うん……こわいんだ。ボクのしってるボク……トモダチのしってるボクじゃ、なくなっちゃうかもしれないって、おもってる」
今はまだ表立って活動してはいないものの、畝傍の中には『千代田』を名乗る別人格も生じはじめている。
畝傍は自らの内なる狂気を恐れていた。そしてそれ故に、自らを保つための闘いを続けているのだった。
「つかわないで、いること……」
それができるとは、はっきりと言えなかった。
もし再び、親友に危害を加える存在が現れた時、
自身がこの異能を行使せざるを得ない状況に置かれない保証はない。
――しかし。未だ完全には狂いきっていない自分を、
記憶していてくれるであろう人物の事は、はっきりと認識していた。
「……うん。いるよ。シーシュアン……ぼくの、だいじなトモダチ。いちばん、すきなヒト」
先程までの暗い表情から一転、微笑みを見せ、
常世島を訪れてからの畝傍に出来た初めての親友――石蒜の名を、蓋盛に告げる。

蓋盛 椎月 > 記憶、正気、そのいずれも、失うことは個人の死に等しい。
それでもそれを使う、というのは。

「銃は撃たないのが一番なはずなんだけどね。やれやれ」

満足気に笑む。
もう九十度身を回転させる。完全にそっぽを向いた。

「教師の立場から言えば、あんまり撃ってほしくないものだけど。
 きみをそんな笑顔にさせる子のために戦うのであるなら……
 誰も邪魔できない、尊いことだよ、きっと。
 きみは友達のために……友達は、きみのためにある。
 そうやって微笑んでいられるうちは、なんとかなるものさ」

芝居がかって、両腕を広げる。
そうしてそのまま歩みだし、表通りのほうへと消えていく。

「じゃあ、また、学校で会おう」

ご案内:「路地裏」から蓋盛 椎月さんが去りました。
畝傍 > 「なんとか、なる……?」
なんとかなる。蓋盛の言葉の一部、それを反復する。
実際に『なんとかなる』のかどうかは定かではない。
しかしその言葉は、畝傍が心の片隅に抱き続けていた不安を、少しばかり和らげた。
「じゃあね、センセー」
去りゆく蓋盛に、畝傍は笑顔で手を振った。そしてしばしの間を置いたのち、
彼女とは少し異なる道のりを歩き、帰路へつかんとする。

畝傍 > ――路地裏を去りゆく二人から、遠く離れた場所。
その地面に突き刺さっていたのは――ロブスターめいた甲殻類のハサミである!
サイバネティクス化措置が施されたハサミだけが銃撃により本体から切り離され、この場に残されていたのだ。
そして、ハサミはそれだけが未だ命を保っているかのように、不気味に開閉を繰り返していたが――?

ご案内:「路地裏」から畝傍さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に薄野ツヅラさんが現れました。
薄野ツヅラ > ───、息を切らす。
深夜の落第街の裏路地を、動かない右脚を引きずって速く、早く。

錯乱と困惑に包まれたまま、ただひたすらに迫る重い足音に怯えてより暗い路地へ路地へと逃げていく。
襲い来る現実から目を背けるように。ただひたすらに目を逸らして。
見なかった振りをするために。悪い夢が早く醒めるように。

「──……お願いだからッ、来ないでよう………ッ」

路地の青いポリバケツにの影に隠れて座り込む。
小柄な体躯を普段以上に、小さく小さく丸めて、頭を抱えて。
手には落第街の橙の灯りを反射して照り返す濁って淀んだ銀のリボルバー。

薄野ツヅラ > 時は遡っておおよそ日付が変わる少し前。
いつも通り、とくに何もイレギュラーなく落第街の大通りに存在するコンビニに足を運んだその帰り。
ただ缶コーヒーが切れたから。
普段飲んでいるメーカーの新商品が発表されたから。
そんなどうでもない理由でコンビニに足を運んだその帰り道で。

日常は非日常へと変化する。
レギュラーはイレギュラーへと変貌した。

公安委員会の仕事で"上司"と共に落第街に足を運ぶことは最近、
────二級学生の一斉引上げの後処理以降、そこそこに増えていた。
男の影に身を隠して安全だ、なんて思っていたのは全く以て見当違いで。
落第街で赤ジャージなんてクソほど目立つ服装の自分が気付かれていない筈もなくて。
喧嘩っ早い"彼"の傍をちょろちょろしているのを見られていない訳なんてなくて。

───、落第街においては当然且つ当たり前の事象が今自分に振りかかることなんて。
これっぽっちも想定していなくて。

薄野ツヅラ >  

───、人の恨みを買うのがこんなに簡単だなんて、これっぽっちも思っていなくて。


異能に自分が頼りきりだったことも露呈してしまって。
その異能が、自分自身を定義する何よりも大きな存在だ、ということも。


……気が付いてしまって。