2015/09/15 のログ
■迦具楽 >
「――ふうん、中々じゃない」
【苦無の投擲に、その精確さをしっかりと認識すれば、支柱を再変換し吸収。
そして右手を前に突き出し】
「あら、気の利いた事をしてくれるのね。
――じゃあ、頂きます」
【英霊と分身が吐き出した炎。
それが全て、吸い込まれるように迦具楽へと向かって――何事もなかったかのように消滅する。
炎と熱の全てを自身のエネルギーとして吸収したのだ。
その影響か、周囲の気温が一時的に、真冬のように冷えるだろう】
「――あら、ごめんなさい」
【そして、自分を守ろうとしたのだろうか。
展開された白い炎すら諸共に、吸収してしまう。
その性質が何であれ、分解し、吸収する――熱や炎は全て、迦具楽にとってただのエネルギー源だ。
けれど、その質は、エネルギーへの変換効率にとても大きく関わる】
「お詫びとお礼に、”お返し”するわね」
【突き出した右手、その人差し指を中心に景色がゆがむ。
生み出されるのは、超高温の熱。
路地裏を薙ぐように振るわれた右手から、赤い閃光を伴う熱光線が照射された】
「――ちゃんと避けてね」
【にこり、と。
無邪気に笑いながら、振るわれた右手から。
コンクリート壁を蒸発させ線を描き、熱光線が迫る】
■『シーフ』 > その時シインに異変が起きた。
白き焔に包まれたかと思うと、そいつが姿を現した。
その姿からは、“龍人”という言葉を連想する。
周囲を溶かそうともしない炎が薄暗いこの場所に光を齎す。
「なにかねぇ……あれは。
厄介そうなものが出てきてしまったよ」
『シーフ』の口より放たれた火炎は、迦具楽へと向かっていく。
だが次の瞬間、火炎は跡かたもなく消滅していた。
吸収されたのだろうと推測できる。
夏も終わり秋になろうとしている季節。
だが、今この空間は冬のように凍えてしまう。
「うぅ~さっぶ~。
火遁の術を防ぐとは、嫌になっちゃうねぇ、全く」
吸収したのは火遁の術だけではなかった。
燃やす意思を見せない龍人の白炎が迦具楽に展開される。
だがそれをも迦具楽が吸収しようとしていた。
「なんて奴だよ。
炎はまず無駄って事かねぇ」
五人の『シーフ』は一斉に、やれやれと言いたげに肩を竦める。
そう呑気にしている場合でもない。
迦具楽の突きだした右手の人差指から赤の閃光が放たれる。
温度が上昇したところをみるに、あれは熱だ。
「ちょ、それ、やばいって」
『シーフ』は急いで印を結ぶ。
「水遁の術!」
五人の『シーフ』の口から大量の水が放たれるも、文字通り焼け石に水である。
水は一瞬にして、コンクリートをも溶かす熱光線に蒸発された。
そのまま、五人の分身と本体は燃え上がり、灰となっていくのが分かるだろう。
その燃え盛る炎からは悲鳴すらも聞こえてこない。
■シイン > 「…構わないさ。」
別に結果として、英雄シーフの攻撃で害がなかったのだ。
それならば何も問題はない。
問題として。
自らの炎が吸収されてくこと。それをを見逃さなかった。
あれの性質は呑み込む。そして力を持ちすぎれば自身の破滅へと導く炎。
まだ自身が弱ってた時で良かった。
下手に吸収されてしまえば、迦具楽自身の身体が保たないだろう。
英雄シーフと自分の炎を吸収した迦具楽。
その彼女の右手から放たれたのは超高温の光線。
この景色が歪むほどの熱。
喰らえばひとたまりもない。逆に呑み込めるならば別だが。
それに対応しようと英雄シーフは"水遁"と。
シーフというより忍者だろうか?そんなことを悠長に考えながら。
熱光線によりシーフは貫かれ、水をも当然と蒸発させて、残ったのは灰だけ。
「――酷いものだな、何も残らない。」
そんな独り言。高踵が鳴らす特有の音を鳴らしながら、熱光線により出来てしまったであろう道を平然と進み。
灰となったシーフの元へ進むだろう。
■迦具楽 >
「……あれ?
もう終わり、なのかしら」
【確かに、殺すつもりで放ちはしたが……それにしてはあっけない。
火遁だとか、忍者のようなことを言っていたから、容易に避けてくると思ったのだけれど】
「――あっけなさ過ぎるとは、思わない?」
【その灰へ近づいていく黒衣の男とは対照的に、その場から動かず、警戒する。
convert
――《変換》――
相手の武器はナイフや暗器、そして奇妙な術。
そして、欺くためなら死んだフリくらいなら平気でやってのけるだろう。
それに備えるよう、自身の体、皮膚を硬質化させる。
その強度は鋼のように】
■『シーフ』 > ──変わり身の術。
それは攻撃をあたかも食らってくたばったのだと敵を欺き油断させて、動揺を誘う。
その隙を華麗につき、逃亡するなり、効率良く暗殺するなりする。
灰となったのは『シーフ』ではなく、変わり身となった何かであった。
そして変わり身を使った瞬間に『シーフ』は静かに気配を遮断する。
こうすれば、どう見ても『シーフ』は死んだようにしか見えない。
灰なのだから、一見死体ではないと気付き辛い事も都合が良い。
迦具楽の熱光線は、『シーフ』にとってはまさに相手の意表をつくのに都合の良い攻撃であった。
それは迦具楽とシインの背後。
闇より現れし二人の『シーフ』(分身混み)が音も気配もなく接近する。
そして宝具『アサシン・ダガー』で二人の首筋を鮮やかに、そして静かに斬ろうとしていた。
──確実に殺す事ができるこのタイミングを狙っていたと言わんばかりに。
■シイン > 白き翼を畳みつつ、しゃがみ込んで灰に触れる。
特に異常もない灰だ。
「まぁ、呆気なさはあるな。」
迦具楽に対して此方は無防備。
ただ黒衣の姿には戻らずに、白き焔は纏ったままに。
彼女の言葉に同意の意思を見せながら、こんなに呆気無く終わるのかと。
首を傾げながら灰に触れたままに。
そして背後に忍び寄ってるシーフ。
以前の機械の身体なら平然と気付いていただろう。
一つの音とて聞き逃さずに、生体の反応を逃さずに。
だが今の彼は龍。まだ"臭い"を覚えてすらいなかったのだ。
彼が気付けないままに、気づかれないままに。
首筋を斬り裂くこと"は"可能だろう。
もっとも、彼の身体が焔で構成されており。
斬った所で炎に刃物を通すのと同じこと、つまり意味がないのだが。
■迦具楽 >
「――――ッ」
【その接近は、確かに音も、気配もなかった。
けれど――その”匂い”だけは、迦具楽の嗅覚に引っかかった。
しかしそれも、なれない匂いを追い続けるにはかつてに比べて退化している。
気づけたのは、刃が迫る直前】
「――ああ」
【――やっぱりだ。
と、迦具楽は哂い、その刃は硬質化した肌とぶつかり金属音を上げる。
刃は僅かに肌へと食い込み、”血液のようなもの”を滲ませた、が。
この距離なら、問答も無用だ】
Creation
――《創造》――
【迦具楽のわき腹から、黒い”腕”が生える。
少女のものより、一回り以上太く、大きな腕。
そしてその腕は、分身か本体か――『シーフ』へと掴み掛かる】
■『シーフ』 > まず一人目の『シーフ』。
宝具『アサシン・ダガー』の刃がシインの首筋へと迫る。
シインの方は『シーフ』に気付いていないようだ。
つまり、不意打ち“自体”は、完全に成功していた。
龍人を殺す絶好のチャンスだったが、『シーフ』は最後まで油断しない。
そして、龍人の首筋を切り裂く事にも成功した。
成功したのは、ここまでだ。
首筋を切れば確実に人は死ぬ。
『シーフ』にはよく分かっている事である。
──だがその身体が焔で出来ていたら?
火を切っても、何も起きない。
ここまで事を上手く運びながら、龍人を暗殺する事にのみは失敗したのだ。
その様子に『シーフ』は驚き、後ずさる。
二人目の『シーフ』。
完全に隙をついた、などと侮ってはいない。
切る直線、迦具楽のわき腹に妙な反応を感じ、ダガーをぴたりと止める。
やばい……。
このままでは、むしろこちらが攻撃されてしまうだろうか。
『シーフ』は冷静に判断し、この場での暗殺を中止。
後方に大きく跳ぶ事で距離をとる。
英霊『シーフ』が警戒していた通り、迦具楽の脇腹からは黒く巨大な腕が生え、『シーフ』を掴みかからんとしていた。
不意打ちをやめて一旦後ろに下がった事が幸いし、掴みかかろうとしている腕から回避する事はできるだろう。
「…………」
二人の『シーフ』は無言で宝具『アサシン・ダガー』を構え直す。
一人は焔で構成されて、斬るのは不可能。
一人はなんらかの察知能力があり、不意打ち困難。
この二人を殺す手段なんて、あるのかねぇ。
■シイン > 大胆にも堂々と灰に触れてたのは、自身に絶対の生き残れる自信ががあったが故に。
一見して無防備だろう、実際そうだ。
誰が見ても無防備な姿。それは絶好の的でしかない。
事実として抵抗もされずに簡単に斬られたのだから。
首筋から吹き出たのは血液ではなく、白き炎。
構成された炎が漏れ出ただけ。それだけ。
ゆっくりと立ち上がる。
その姿は悠々自適にも見えるだろう。
斬られたことに目立った反応すらせずに、真っ直ぐと白炎に反しての真紅の瞳。
その瞳は"シーフ"を見据えている。
「覚えたぞ。お前の匂いを。」
宣告。もう逃がさない。その意が込められた宣告だ。
自分から後退り、暗殺を失敗に終えた英雄に向けて宣告をする。
「選べ。炎に呑まれて死ぬか。力任せに引き千切られて死ぬか。」
表情すら焔に隠されてる為に、どんな表情を浮かべているのか判断はできないだろう。
だが恐らく、彼は笑みを見せながら告げただろう。
確実に追い詰めるように、一歩一歩と歩み。後退るシーフへと問いかける。
その一方で彼女の方にも視線を送る、見た限りでは向こうにもシーフが居たようだが、どうやら無事だったらしい。
何事もなければそれでいい。
■迦具楽 >
「――キキ……っと」
【――避けられた。
確実なカウンターだと思っていたが、それを避けられれば。
――なるほど実に用心深く、”美味そう”な魂だ。
と、つい吊り上げた口元から金属音を発してしまい、慌てて手で押さえた。
黒い腕は、瞬時に分解、そして再吸収された】
「……さて、どうやって食べようかしら」
【確か雇い主は、完全に姿を消す方法を持っていると言っていた。
この”英霊”の『魂の匂い』。それは覚えたが――それすら消せる相手だとしたら追うのは困難だろう。
そして、連続の大掛かりな《創造》。
途中で炎を吸収したとはいえ、これを何度も繰り返すのは危険か。
奥の手は幾つも備えてあるが――やたらと切っていい手札じゃない】
「あら、物騒ねおじさん。
けどそれ、英”霊”よ。アナタは霊すらも千切れるのかしら?」
【とりあえず、やはり無事だったらしい黒衣を煽っておこう。
まあ、こんな安い挑発に乗ってくれる相手ではないだろうが。
変わりに殺してくれるのならそれでも構わない。
それを最低限、見届けられれば十分なのだ。
しかし念のため。
逃走の挙動を見逃さないよう、神経は尖らせておこう、と。
英霊の動きを、人間離れした化生の視覚と嗅覚で、見張って】
■『シーフ』 > 「困ったねぇ。
臭いを覚えられちゃぁ、隠れ辛くなるよ」
言葉通り、困ったという風に自分の後頭部に手を置く。
「君が僕を殺すって?
そう簡単に出来るかねぇ?
僕に選ばせてくれるなら、炎に呑まれる方を選択するよ。
さすがに、体を引きちぎられるのは嫌だからねぇ」
炎を扱ってくれた方が、また変わり身などで騙しやすいのでそう提案する。
一歩ずつ歩み寄るシインに対し、『シーフ』は同じペースで一歩ずつ後退していく。
「どうやっても僕は食べられないよ。
君に食べられて終わるのは簡便だからねぇ」
そうは言っても、先程の不意打ちが防がれたとなると、やはり『シーフ』にとってはやばい状況なのは変わりない。
「二人とも殺したいんだけどねぇ……。
もうこれ使っちゃうねぇ」
ニタァと怪しく笑いながら、二人の『シーフ』は姿を消した。
宝具『アサシン・ダガー』の効力は自分の姿を消す事だ。
実体はあるので、攻撃を当てる事自体は可能。
逆に言えば、見えなくなった『シーフ』も攻撃ができるという事でもある。
気配遮断も併用、こうする事で気配にも気付かれ辛くなる。
龍人は臭いを覚えたと言っている。
微かな臭いというものは、消し辛いものだ。
この対策は、『シーフ』の臭いを分散させる事で対策してみる。
『シーフ』は見えない姿で影分身の術を使用。
見えない分身が九人に増えた。
本体と分身の計十人が手裏剣を構える。
手裏剣を投げる方向はシインや迦具楽ではない。
周囲の建物の窓ガラスだ。
そちらに目を引きつけようという魂胆である。
■シイン > 「――ならそうだな。シーフ。
お前は千切って殺すことにしよう。
殺そうとしたんだ。殺される覚悟ぐらい…出来てるだろう?」
ん?と傾げる首。
決して一気に詰め寄ろうとはせずに、一歩。また一歩と。
寄りつつ挑発じみた言葉に対して。
「霊とか関係ないさ。それに、やってみないとわからない。そうだろう?」
何事もやらなければ始まらないし、自ら動かないならば停滞してるだけ。
どうせダメだとしても、自ら動いてダメだった方が良いものだ。
そうやって会話を交えながらに追い詰めていく最中。
突如にして眼の前から姿を消すシーフ。
進んでた歩は立ち止まり、辺りを見渡す。
かなり薄いが同じ臭いが"いくつも"増えた。
姿を消しながら分身をしたか。或いは自分の臭いを拡散させたか。
そしてこう考えている間に建物の窓ガラスが割れる。
飛び込んで逃げたか、いや違う。
"まだこの場に居る"
舌打ちを一つ。隠れてコソコソと面倒なのが腹に立つ。
迦具楽の方へ顔を向かせて一つの提案をする。
もちろん、シーフが聞いてることを想定しつつ。
「迦具楽と言ったか。
君は私の炎を取り込めるのだろう?」
再確認。それが一番今は大事だからだ。
■迦具楽 >
「――へえ、本当に消えるのね」
【そして、ご丁寧に分身を混ぜて匂いもわかれた。
一々綺麗に、対処してくれるものだ。
だとしたら、こちらも一つくらい、手札を切るしかないもしれない。
――まあそれも、この黒衣次第だが】
「ええ、炎と言うものならどんなものであっても。
私にとってはただの、エネルギーに過ぎないわ」
【――ああ、なるほど。
その言葉に、何てこと無いと、笑顔を返し。
自分の仕事は終わりみたいだと、伸びを一つ、して見せた】
■『シーフ』 > あっちゃぁ、千切って殺す方を選ぶあまのじゃくだったかぁ。
どう殺すかは相手が選ぶものだし、元々こちらに選択する権利なんてないのは分かるが。
『アサシン・ダガー』の効力で姿を消し、自分のスキルで気配を消し、そして臭いを分散させるために分身した。
そして、建物の窓ガラスを割って、そちらに視線を向かわせる。
いわゆる、金遁の術だ。
その間に十人の内、六人がシインへと迫っていく。
白炎……龍人が扱っているのは、普通の炎ではないように見える。
だが一度は試しておいてもいいだろう。
炎が苦手とするもの、それはずばり水である。
その常識が、はたして白炎にも通用するだろうか?
窓ガラスが割れた箇所とは逆方向に、六人の分身が陣取る。
そして六人は手早く印を結んだ。
「水遁の術……」
それは、何もない空間から大量の水が噴き出しているように見えるだろう。
その大量の水が津波のようにして、シインを飲み込もうとしていた。
■シイン > 「なら問題はない。だけど取り込みすぎないでくれ。
自分を滅ぼしたくなければ、私も早く終えるように努力はしよう。
あとは、そうだな。耐えられたら酒でも奢ってやろう。」
冗談を交えさせながらに、笑顔を見てから信頼を寄せる。
彼女なら平気だろう。ダメならダメで、その時は責任でも取ることにしようと。
会話は終えて、龍は吠えた。轟き轟音を鳴らす。
耳を劈かんばかりの轟音。
纏う白炎は業火のように燃え盛り、されども熱は一切持たない炎。
自分を飲み込もうと、水など無かった箇所から津波が襲いかかろうと。
知ったことではないと。轟音を撒き散らす中で、地面に拳を叩きつける。
拳が突き立てられた路。罅が幾つもの枝に分かれのように各方面に罅割れ進む。
そこで動きは止まった。そして津波に飲まれた。
呆気もないほどに、抵抗もなく。飲まれる。
一秒、二秒。そんな水に飲まれてから秒数を数える暇もなくして。
罅が進み、枝となって罅割れた地面から白い炎が噴き上がる。
火山の噴火の如く勢いで。
全てを呑み込む勢いで。
白き炎は地面だけでなく、水や地面に放置されてたゴミやら財布。
灰に建物と、視界に映る全てを呑み込もうと大きく噴き上がるだろう。
まるで意思を持つ白きその炎は、決して呑み込んだとしても建物を燃やさずに。呑まずに。
敵対するものだけを、呑み干さんと動くだろう。
逃げなければ、当然呑まれる。
対象はシーフ。その一人なのだから。
"引き千切る?アレは嘘だ。望み通り、呑まれて死ね"
そんな声が聴こえるかもしれない。
■迦具楽 >
「――わぁお」
【何でも平気、そういったがアレは嘘だ。
熱を持たない白い炎は、”生ける炎”の性質を継いでいても、胃もたれを起こしそうな代物だった。
――まあ、それならそれで】
「食べられる分だけ、もらうとするわ」
【水だろうと津波だろうと、関係ない。
押し寄せる津波には、自身の周囲に黒い球形の膜を《創造》。
そして、吹き上がる炎は、膜に触れる端から《変換》し、吸収できるだけのエネルギーを内に通していく。
なるほどこれは、確かに身を守らないとどうにもならなかっただろう。
幕は炎に飲み込まれるだろうが、その度に再度創り直す。
なにせエネルギーは幾らでもある。
取り込みすぎれば、確かに自分も飲み込まれかねないが――ただ《変換》するだけならなんでもない】
「――まったく、これだから力まかせの”トカゲ”は」
【冷や汗を流しながらも、哂い。
変換したエネルギーで膜の表面に無数の瞳を作り、最後まで丸い膜の中で見届けることにした】
■『シーフ』 > 龍人が咆哮し、轟音が辺りに響き渡る。
大量の水が津波のように襲いかかろうとしている中で、気にせず地面を拳に叩きつけていた。
そこからいくつものひびが入る。
何が起きるのかと六人の『シーフ』は額から汗を滲ませる。
ひびが入った地面に、六人の『シーフ』は態勢を崩しかけるもなんとか耐えた。
何が起きるのかと警戒していたのとは裏腹に、シインはあっさりと津波に飲まれてしまった。
あれ程の咆哮をならしながら、こうも呆気なくと思い、六人の『シーフ』は、「あれ?」とでも言いたげに首を傾げる。
しかし次の瞬間、ひび割れた地面から白炎が噴き出したのだ。
その白炎は、何もかもを巻き込もうとしていた。
何もかも飲み込もうとするその白炎に『シーフ』は再び驚愕した。
やっべ……。
──引き千切る?アレは嘘だ。望み通り、呑まれて死ね。
そんな声がシインから聞こえたような気がした。
まずシインの傍にいた六人の『シーフ』は抵抗する暇もなく、白炎に呑まれていく。
その六人は『アサシン・ダガー』の効力も消え、白炎に消えていくのがはっきりと見えるだろう。
残り四人の『シーフ』は四方にばらばらに距離をとっていき、白炎から逃れようとする。
四人はそれぞれ屋根に上っての逃亡を試みているのだ。
だが一人、また一人と白炎に呑まれ犠牲になっていく。
ついに『シーフ』は最後の一人、本体だけとなってしまった。
姿が見えない相手にはどう対応するか。
──簡単な話だ。敵が見えないのなら、辺り一帯を消し炭にすればいい。
それはいつしかの『ウィザード』の言葉だった。
それと同じ理屈で、完全にやられてしまったのだ。
……逃げ切れるか?
見えないままの『シーフ』は屋根から屋根に跳び、白炎から逃げてこの場はひとまず退散しようと試みる。
■シイン > 津波の流れには、地面に強引に突き刺した拳。
それを錨のような代わりとして耐えて、噴き上げた白炎により呑み込んで耐えていた。
暫くして、粗方だが飲み終えれば、火山の如き噴火は終えて、地面から拳を引き抜く。
呑み込めたのは…
一つ。二つ。三つ。四つ。五つ。六つ。七つ。八つ。九つ。
まだ―足りない。
一つ、本体が足りていない。
消えてるなら鼻にこびり付いた"臭い"が消えてるはずなのだから。
初めての中規模の力の行使の影響か。角は消え、尾も消えてしまった。
流石に調整をしながらだと負担も大きかった。
ふと、視線を移す。
丸い膜が視野に入った。彼女はこの中だろう。なんせ"臭い"が違う。
耐え切れてたらしい、後で謝らなければ、と。
若干ながらふらつきながらも、未だに絶えない焔を纏いながら、臭いの元へ。
空へと翼を羽ばたかせて、屋上が見渡せるように飛び上がるだろう。
特に姿を消してないのならば見つけられるだろうか。
その姿を。
■迦具楽 >
「……逃げられたわね」
【膜の表面に、数百の瞳を生み出して、白焔が吹き上がる光景を眺めていたが。
”匂い”が一つ、遠ざかっていく。
膜を分解し再吸収――不可――破棄。
膜をその場で塵にすると、地面を蹴って屋上へと飛び上がる。
”匂い”がする方向へ目をやるが、姿は見えないまま。
もう一度熱線でなぎ払っても良いが――黒衣のように、融通が利く技じゃない】
「――アナタ、追える?」
【自分は追えないこともなかったが、また分身だなんだと使われては、それごと片付けるには周囲の被害が尋常ではなくなるだろう。
さすがに、幽霊とはいえ風紀の手伝いという手前。
それをするわけにもいかない】
recording save
――《記録》――《保存》――
【その”匂い”と”能力”は確実に《記憶》して。
迦具楽は追跡を諦めるように、肩を竦めて両手を挙げた】
■『シーフ』 > 『シーフ』は未だ、宝具『アサシン・ダガー』の能力により透明化している。
普通の目で姿を追うのはまず無理だろう。
声や足音も潜めており、音を立てないようにもしている。
まだ臭いを辿った方が手っ取り早いかもしれない。
このまま落第街の大通りに出ようという勢いで屋根から屋根へ。
空を見て、飛行するシインの姿を確認すると、一旦屋根から地上に飛び降りて再び路地裏に着地。
そのままマンホールを開けて下水道に逃げようとする。
「ここからだと、悪臭に紛れて逃げやすいんだよねぇ。
臭いというのは、他の臭いを混ざって分かり辛くなる感覚だからねぇ」
あらゆる隠れる手段をしる『シーフ』だ。
敵の特性も考えて、逃げる手段などいくつも用意している。
『シーフ』は躊躇する事なく下水に飛びこむ。
下水を被る事で、さらに臭いを分からなくさせるのだ。
後は、龍人がどう行動してくるか、その対応をするのみ。
■シイン > 「……これ以上は、無駄か。」
いくら人が少ない時間とはいえ表舞台まで飛び出ては"秩序"を守り切れない。
案の定とも言えるが姿が見えないこともあり、臭いを追えば一応は追えるだろう。
だが、それでも脚の速さでは恐らく敵わない。
本来なら諦めるなど選択の視野に無かったのだが、今回は別の関係者も居る。
負傷してるか、どうか。気になるという点もあるのだ。
"今回だけ"は諦めて、清く地に降り立つだろう。
彼女がまだ居るであろう。殺害された者が居た場所に。
ご案内:「路地裏」から『シーフ』さんが去りました。
■迦具楽 >
「……おつかれさま、おじさん」
【肩を竦めた状態で、降りてくる黒衣を迎えれば。
『惜しかったわね』と、一応、労う意図で言葉をかける】
「んー、運よく見つけられたけど、始末できず、かあ。
……なんて報告しようかしら」
【まあ適当に、使った術や能力、隠蔽や逃走に長けた技術。
”魂の匂い”……なんて情報は、必要ないか。
そのあたりをまとめて教えれば……どうやって伝えよう】
「――まあいっか。
それじゃ、私も帰ろうかしら」
【そう言って、立ち去ろうと背中を向ける】
■シイン > 地面に降り立つ頃には焔は儚むも消えていき、現れた当初の黒衣の姿を見せる。
最初と違うのは角も翼も尾も全て消えていることだろう。
「……そちらこそお疲れ様だ。炎の件はすまない。」
まずは労いの言葉に、それに対しての謝罪。そして軽く頭を下げる。
相手側はどうやら報告するのに悩んでるらしい。
それは此方も同じなのだが、どうやってこのことを報告すれば良いものか。
死体も既に無く、水に流されたか熱光線に溶かされたか。
どうしたものか。
「帰るか、それならまた会えた時にでも"なにか奢ろう"
それと私の名前は。バロム。バロム・ベルフォーゼ・シインだ。」
おじさんではない、と。背中を向けら彼女に言ってから、自身もまた背を向けて空家へと帰路に着く。
ご案内:「路地裏」からシインさんが去りました。
■迦具楽 >
「いいえー。
私のほうは、消耗した分たぁっぷりご馳走してもらったから満足よ」
【実際のところ、戦闘前より充実しているくらいだ。
適度に受け流すのには少々神経を使ったが、収支は大幅にプラスだった。
今なら自分を、二人くらいなら作れるだろうか。
そして、そのまま去ろうとするが――】
「――はーい、しっかり覚えたわ、バロム。
次ぎ会ったときは、しっかりと”奢ってもらう”わね」
【その言葉、覚えたぞ。
と、ばかりにしっかりと《記録》し、確認し。
迦具楽も、最近手に入ったばかりの寝床――異邦人街の一角へと帰っていく。
きっと次に出会ったとき。黒衣の彼は後悔することになるかもしれない。
この少女は、見かけによらず、底なしの大食らいなのだから】
ご案内:「路地裏」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に迦具土正道さんが現れました。
■迦具土正道 > 【肩を怒らせ、風紀が道を行く】
【風紀の文字の躍る腕章を腕に、名もない路の裏を風を斬るようにして男は進む】
【目的地が或る訳では無い】
【只そうして自らの姿を、風紀の存在を誇示することに意味があった】
【此処では風紀の名は余り歓迎されない】
【煙たがるような視線も何処吹く風か、男は道を大股で進む】
■迦具土正道 > 【治安の悪い場所は、必然清潔とは程遠い】
【割れ窓理論という使い古された言葉が脳裏に浮かぶ】
【地面に打ち捨てられていた火の吐いた煙草を硬い靴裏で踏み潰し、吸い殻を拾い上げた】
【一つずつ拾っていれば、其れだけで日が暮れる】
【其れを生業としても稼業と成せる程度には、此の場所は付臭に満ちている】
【人の匂いだ】
【其れも、酸い】
【人間の業の染み付いた匂いが、アスファルトに、或いは地面に染み込んでいる】
【人の脂の匂いなのか血の匂いなのかは定かではないが、其れが酷く鼻を突く】
【人間の営みが漂白されぬまま垂れ流しに成っているような匂いが、視界を揺さぶる】
■迦具土正道 > 好き好んでこんな場所に住み、在る事自体が、
清廉や正鵠から遠ざける要因と成るのだろうな。
腐敗した果実は更なる腐敗を呼ぶ。水が低きに流れる様にな。
【汚れ一つ無き暗色のシャツの襟に指を入れ、言葉を唾棄する】
【掃き溜めの様な其の環境は秩序の権化にとっては正視に耐えかねる場所だ】
【此処に於いて燻った火種が、争いを持ち込むべきではない場所へと持ち込まれる可能性は、けして零ではない】
【悪貨が良貨を駆逐するように、悪しき秩序は正しき秩序に爪痕を残す】
【風紀の中には二級学生を扱う部署も在る】
【一定の基準を元に昇格を《認可》し、その権利を回復させる審査権を持ち合わせて居る】
【つまり、公的に彼らの存在は認められていると云うことだ】
【其れが何より意識を煮え繰り返させる】
……低きに流れた泥濘の溜まりを、湖と呼ぶが如き愚策だ。
ご案内:「路地裏」に平岡ユキヱさんが現れました。
■平岡ユキヱ > 「珍しいな…こんな処で同志と会うとは」
がチャ、と黒いプロテクタの擦れる音。
路地の一つから深紅の風紀制服に身をまとった、金髪のハデハデな女が現れる。
迦具土を見て確か姿だけは知っている、先輩だったかと思い出し、ぴし、と敬礼。
「巡回お疲れ様です! こちらは以上ありません!
…。…成果もないですけど」
スカなり。と苦笑い。
■迦具土正道 > 【溜息と共に零した言葉を拾い上げるかの如き登場に、視線を上げる】
成程。悪漢の実入りが少ない訳だ。
【派手な身なり、存在ごと金色に目立つ少女が《見回り》の先客とあっては】
【風紀の腕章付きの己に絡んでくる者は少ないことも道理、と納得する】
【表情に笑み一つ載せず吐息だけで笑声を零して男】
【現れたユキヱに同じように敬礼を返した】
何もないことが成果だ。誇って良いと私は考える、がな。
正しく風紀の権能が機能している証左とも云えるだろう。
……キミは警備課か?
【言葉が少しだけ、不審に砕ける。男にも相手の風貌に見覚えは無かった】
■平岡ユキヱ > 「申し遅れました。一年の平岡ユキヱと申します。
所属は風紀特務部、特別攻撃課挺身隊…所謂マルトクという奴です」
生徒手帳を掲示し、紛れもなく正真正銘本物であるこを示す。
「今は毛先が光ってますが…あー、まあ。イメチェンです!
他者に実害はありません!」
わはは、と、物々しい服装とは裏腹に快活に笑い飛ばす。
「自称英霊たちのテロ活動だの、誘拐犯…洲崎の件もあってこの辺に拠点の一つでもないかと捜索中でありました。」
ご案内:「路地裏」に薙さんが現れました。
■薙 > 路地裏の物陰から二人の様子を伺う人物が一人
私的に落第街へ警邏に来てみたら既に先輩と思しき者が巡回していた
やはり、落第街の見回りは数人で…というのは形式上の話であるらしい
とはいえ新入りの自分がそんなことをやったのがバレると正直色々と面倒だろう
こっそりと息を殺して、様子を見る
ご案内:「路地裏」に白椿さんが現れました。
■迦具土正道 > マルトクか。
警備課・警備班・迦具土正道だ。
【同じように生徒手帳を向け、すぐ仕舞う】
【異能犯罪にこそ向けて《理不尽》に作られたその課の名前に、更なる納得が湧く】
【成る程上も完全に無能の腰抜けばかりではないという事らしい】
【事、異能に関する事件の多発している現在、対異能戦力であるマルトクを】
【路地裏で《遊ばせて》置く事はこれ見よがしな警備課が足を伸ばすよりも余程《効果的》だ】
【何重かの意味で派手な《外見》をしている彼女ならば、尚更に二乗が付く】
巡回苦労。此方の本業、感謝こそすれ労える立場では無いがな。
【光る毛先は気に成ったが、特別攻撃課が赦すので在れば、警備課が口を挟む必要は無い】
【イメチェンで有るならば何れは《戻る》のだろう、と糞真面目に思考した】
先のテロについてマルトクも動くか。
……誘拐犯については刑事課だけではなくマルトクまで動く事態になっているのか。
誰から聞いても頭の痛い話だ。
昨今、マルトクが必要に成る様な異能絡みの事件が増え過ぎて居る。風紀が、乱れているとしか言い様が無い。
【渋面越しに云う。声を抑えても居ないので近くに伺う者が居れば丸聞こえな声量だ】
■白椿 > ……ふむ。
今宵は少しは楽しめそうであるの?
(いつもと少し雰囲気の違う気の漂う落第街。
なれば今宵は楽しめそうである、と狐は予想している。
良い風が吹くといいのだが、さて、どうなることやら。
もっとも狐は見た目がだいぶ派手なだけで、何か特に目立って物事をする、というわけでもない
そのあからさまに目立つ扇情的な姿で路地裏を歩くだけである。
ただし、この格好で路地裏を歩けること自体、普通でない、といえばそうだろう)
■薙 > 誘拐事件、テロ、資料に連ねられた事柄に合致する単語がちらほらと聞こえてくる
「(男のほうは…迦具土正道。刑事課の機動隊隊長でしたか)」
一部役職を持つ風紀委員については、委員会に迎え入れられた段階で情報を確認している
それなりに名の通った、いわば有名人である
女性の方に視線を移す
こちらも名簿で見覚えがある。同じ特別攻撃課に属する生徒だ
「(平岡ユキヱ…という名前だったかな)」
頭のなかの情報と照らし合わせながら、物陰から観察を続ける
■平岡ユキヱ > 「見つけ次第に撃滅せよという任務でありましたが。残念至極に尽きます。
…。やー、この辺の調査はー…あんまり特攻課も得意じゃないってゆーかー?
ていうか異能だ魔術だ異世界だでムリムリかたつむりです。
出てきたやつを直接叩いたほうが早いっすねー」
と軽やかにお手上げ侍のポーズ。どういう態勢なのかは各自の妄想に委ねたい。
「まあ、この島は特に異邦人だの何だのが集中していますから。
それ絡みのよからぬ輩も…?」
何か違和感を感じたのか。薙の辺りをかなり大雑把にだがちらりと振り返る。
目は…合わないであろうが、そこをいぶかしむよりも、白椿の方に注意がそれるだろうか。
「でかい…」
ナンダアノデッカイモノ…と一部を注視しながらふと我に返る。
「迦具土センパイ、不審者です」
捕まえますか? と白椿を指さしながら訪ねた。
■白椿 > (向こうの気がこちらに向けば、意味ありげな微笑を浮かべる。)
ふふ……。
(特に何をするでもない、だが、明らかになにか誘うような素振り。
狐には特に何があるというわけでもないが、無視もできない。
何なら何か起こしても良い。
そういう目と、目が合うかもしれない。
何もなければそういうあからさまに妖しい流し目を送りつつ、何事もないように
嘲笑うかのように通り過ぎていくだろうが……さて。)
■迦具土正道 > カタツムリか。
【其れは余り芳しく無いと、渋面の溝を深くする】
【懊悩が表情に現れ、風紀が陥っている現状を憂えた】
無理も無いだろう、特に此処は風紀を司る者が歩き難い場所だ。
風紀公安に協力的な悪人と云う希少種が存在していてくれるのならば、話が早いが、そうも行くまい。
【最も、協力的であろうが情報が得られさえすれば例外なく執行の対象には成るが】
【ユキヱに声を掛けられ、視線と指の先を追う】
……遊女か。此処ではさして珍しくも無い、が。
待て。……時間を考えろ。場所が何処であろうが著しく風紀を乱す姿は慎め。
【言いながら白椿に近づき、静止を求める為に肩に手を伸ばす】
■薙 > 「………」
平岡ユキヱの視線がこちらに向いたのを悟り、わずかに身を潜める
こちらの存在に気づいた、というよりは直感的な何かだろう
すぐに意識は路地を歩いてきた遊女のような狐に向けられている
二人の意識は狐に向いている
であれば、と可能な限り音を立てずに少しずつ集団との距離を縮めていく
言葉のよく聞こえる範囲へ
他愛のない問答だとしても入手できる情報が多いことに損はない
■平岡ユキヱ > 「遊女て…江戸時代か何かッスか?」
迦具土の言い回しにキョトンとしながらも、彼が手を伸ばすさまをただ眺めて。
「…。…っ?」
というかよくよく考えたら、あの褐色おっぱい色々妙だぞ、と違和感を感じる。
この辺の有象無象とは明らかに違う振る舞い。敵ならば攻撃してくるだけだろう、
そうでないなら逃げるだけだ…。でではただ微笑む彼女は?
「…」
無言で、たださり気無くだが腰に下げた刃体加速装置に左手をかける。
肝心の柄を抜く右はまだだ。軽率にすぎる。が、若干ぴりりとした空気に変わるだろう。
■白椿 > ……手を出しましたえ?
(妖艶、というしかないような笑み。
あからさまに「我が意を得たり」そういう顔だ。
その肩を掴んだはずの手は空を切り、地面が回転する感覚に襲われるだろう。
実際に何が起こったわけでもない、ただ、平衡感覚が一瞬で狂うようなそういう。
頼りになるのは己の体幹のみ。
だが。
当の狐は、何も手出しをしていないように思える。
傍から見て、勝手に何故かバランスを崩したように見えるだろう
狐は笑みを向けるだけである)
乱暴な言葉をかけ、命令口調で女性の肩をつかむのは暴漢のやることであろ?
どんな用向きであれ、暴漢からは身を守らねばなりませぬ故。
(狐の意図は知れない。
ただ、ただならないことだけは分かる)
■平岡ユキヱ > 「公務執行妨害…」
警告イチ。重心を落とす。
迦具土を手助けすることはしなかった。というよりも、それは失礼にあたる。
相手が『化狐』なら、いま化かしてしまったのは『鬼』である。
『人』の自分が気を遣うなど、傲慢がすぎるというものだ。
「警告する。貴様は風紀の公務を妨害した。あらゆる魔術、異能および
それに準ずる武装を解いて投降せよ」
正体は把握せぬが、白椿の起こした現象によってユキヱの『幻想変換炉』に火が入る。
毛先の青い光が、マッチからライター程にまで強くじりじりと煌めき出す。
■迦具土正道 > 【空を切る】
【慣用句通りに掴もうとした手が虚空を握った】
【迦具土正道と云う生き方は常態で体幹や平衡感覚が狂う様な生き方をして居ない】
【故に其れが何らかの異能に依って引き起こされた《異常》で有り、《異常》には対処せねばならなかった】
―――。
【平衡感覚が狂った状態で、平衡感覚が狂った侭、一歩で姿勢を戻した】
【壁に着地するような、矛盾した感覚に載らなければならず、感覚に吐き気が生じる】
【ユキヱの言葉を背中に聞きながら、真横と云う真上に居るような相手に向けて、生徒手帳を向ける】
……重ねて警告する。貴様は風紀の公務を妨害した。
あらゆる魔術、異能。およびそれに準ずる武装を解いて投降を行え。
私が行ったのは暴漢の所作では無い。秩序の守り手としての任意の聴取だ。
【せり上がる吐き気に顔を歪めながら白椿に向けて云う】
■薙 > 「!」
ユキヱの手の動きに注視する
纏う空気に若干の差異を感じる…なるほど
「(意識は向けていなくとも、おそらく感じたのであろう何かしらの違和感…。
その疑念を拭いきれるまでは最低限の警戒姿勢を解かない…さすが、ですね)」
そう、さすがだ
今ここで、ほんの僅かでも殺気を向ければ即座に対応することだろう
………対応できるのかな?マルトクの先輩方なら
うず、と何かが湧き上がるのを感じる。それはほんの僅かな殺気となって、まるで染みた雨水のように漏れだしたかもしれない
───と、事態が動いた
「(鬼の機動隊隊長、相手が丸腰とはいえ少し無防備でしたね)」
もっとも、それを補って余りある実力あっての行動だろう
さて、風紀委員
その中でもおそらく実力者の力が見れるかもしれない
■白椿 > ふむ……乱暴に女性の肩をつかむことを正当と?
なれば、その線引はどこまでか。
突き飛ばすまで? 傷つけるまで? 痛めつけて殺すまで?
もし違うというのであれば、先に謝るのはそちらであろ?
我には其方らが公務かどうか、公僕かどうかの判断が尽きませなんだ故。
いきなり名乗りも告げず、格好で差別した挙句、命令口調で我の肩を乱暴に掴もうとしたのは何処の何方の所作であろ?
ようく考えるが良い。
……それともそんなに面子が大事かや?
それに、我が何もせずとも何かしたのであろ?
故に我は相応の振る舞いをしたまでぞ、ひよっ子。
権力があったとしてそれを振りかざす前にやることがあるのではないかえ?
(相変わらずの微笑。
まるで悪いのはそっちだと言わんばかりの言葉。
実際、狐は目立つ格好で歩いていただけであり、それ以上でもそれ以下でもない。
故に従う理由もない。)
……もっとも、今ので転ばないとは善き哉。
鍛錬の賜であろ、褒めてつかわす。
■迦具土正道 > 詭弁だな。聞く必要はない。
貴様の主目的が嘲弄で在る以上、其れに正論を持って臨む理由が無い。
礼を欠く行いには礼を欠いた返礼が存在する。其れは非道理ではなく道理だ。
風紀の腕章、制服を持ってして、公僕で在ると判断がつかなかったとは言わせん。
故に。此の嘲弄、風紀という機関其の物への反抗で在ると見做す。
己の風紀と云う正義の名の下に。
二度三度は言葉を重ねぬ。
――投降しろ。
貴様が嘲弄したのは迦具土正道と云う名の己という小さき存在に非ず。
此の島の正義の一端、秩序其の物。
私個人の面子などどうなっても構わん。
――貴様が後ろ足で砂を掛けた此の島の条理の為に、言葉を撤回しろ。女。
【ミシリと】
【拳が己の掌の肉を握りしめる音が聞こえる】
【秩序を守る者としての赫怒と、盲目的なまでの正義への信仰が】
【狂った平衡感覚に依る不快感を超越して、微笑に向けて怒りを言葉に載せた】
【体躯が盛り上がり、次に続く言葉に依っては無事では済まさないという覚悟が警告として放たれる】
【もはやユキヱの方は振り返らず、視界には白椿のみしか写って居ない】
ご案内:「路地裏」に猫谷凛さんが現れました。
■平岡ユキヱ > 「…いかん」
しばしの静寂。加速装置の柄に添えた右手を離し、
待って下さい! と迦具土を制しながら。白椿に向かい。
「…ひとつ、前提条件を訂正させていただく。
『乱暴に』という慣用句は不適当なり。」
今あなたのどこに傷がついているのか? と結果から指摘する。
「二つ。公務か判断がつかぬといったが。私はこの通りわざわざ目立つ服であるし、
警備課の迦具土であっても腕章をちゃんと付けている。この意味がわからずとはいわせないぞ?」
一つ一つ、なるたけ丁寧に問われた以上は言葉でもって返す。
それが礼儀であるし、風紀の仕事だろうとユキヱ個人は考えていた。
最後に…と、咳払い。
「お前は手を出したな? とほほ笑んだ。
…それについては弁明していただこうか」
■猫谷凛 > (いい所に出くわしたにゃぁ♪)
路地を覗きながらニタリと笑う
静かに携帯で先の一団を撮影し始める
声は拾えないがそれで十分
(ほーら、もっとやるにゃぁ♪)
風紀委員の横暴
そんなタイトルを思い浮かべ構成を作る
憎き風紀を睨みながら事の経緯を見守る
■薙 > 「………」
ふぅ、と小さな溜息が出る
丁度離れた位置で身を隠していたとは言っても、こうも次々と
「仕方ないですね」
小さく呟くと音もなく、路地を覗く猫谷凛の元へと一気に駆けつける
薄暗い路地裏で、鈍く光る白刃を抜き放ち、突きつけた
「盗み撮りはいけませんよ」
■猫谷凛 > 「……ん…?」
よくわからない
撮り始めて数分もしない間に目の前には刀の刃
「…ふーん…脅迫とは、風紀のやる事とは思えませんにゃぁ♪」
不敵に笑いツンと刀を指さす
「やっぱり風紀なんてただの暴力集団にゃ。
こんなのが平和の維持なんて聞いて呆れるにゃぁ♪」
■白椿 > 詭弁であらば礼を失しても手順を無くしても横暴を通しても良いと?
手順を通さぬものが法を語るとは笑止千万。
随分と独善的であるのだの?
そう言って弱き者を殺すのであるかえ?
暴力で言を捻じ伏せるのがこの島のやり方かや?
つまり、相手の素性を確認できないモノがついうっかり肩がぶつかったりした程度で
牢獄送りかえ?
随分と横暴があったものであるの。
……言うたであろ。
権力があったとしてそれを振りかざす前にやることがあるのではないかえ?
(偉丈夫に向かって、堂々たるこの態度。
明らかに不服従であり、また、詭弁であろうとも筋は通している
つまり厄介な類だ)
……ふむ。
其方は少しは話せるようであるの、善き哉。
それで二人組というのも頷けるの。
まず乱暴という言葉であるが、そのような偉丈夫に無造作に肩を掴まれるのを嫌がらない女性が
何処におるのかや?
たまたま、何の偶然か運良く掴まれなかったのであって、あのような態度では手の跡が残ったのでないかえ?
ふむ、傍から見ていただけあって能く判断しておるの。
其方、その偉丈夫をしっかりと補佐してやるが良いぞ。
……何か出会いがあれば良いと考えていたのは確かであるの。
故に誘うような会釈をしていたのも事実であろうの。
であるが、其方らが公僕というのは端的に言って知らぬ。
今そう言われて初めて知ったことであるからの。
さらに公僕の格好をしているから必ず公僕と言われてもそんなことはむしろ詭弁であろ。
その服が特権とでも思うておるのかの?
この治安であろ、悪徳公僕や偽物、俗物など、いくらおってもおかしくなくはないかえ?
服を着ているから名乗りもなく公僕、というのは理由にならぬしそれこそ詭弁であろ。
そも、名乗りもなく、己がそう認められて当然であるかのような振る舞い
横暴と言わずなんとする。
さらに己の非を詫びず、己の要求だけを押し通す独善。
それすなわち暴力であろ。
公僕であったとしてその確認も取れぬ我が魅力的な二人を見て、刺激的な出会いを求めぬ訳がなかろ?
……其方がもう少し頭が回らぬのであれば、詭弁と評された故、まだ引き伸ばしても良いのであるが?
(くすくすと微笑みつつ、公僕とはつまらぬの。と漏らす。
魅力的な出会いを望んでいたのが狐であり、そのためならなんでもするのが狐である。
ただ話の分からない公僕はたちが悪い。
たちが悪い公僕であればそれはそれで楽しむのであるが、厄介なことに話しの分かりそうな奴が居る。
それに、そもそも狐は学校関係のことは端的に言ってだいぶ疎い。まだこの街で数日である。
故に風紀を目にするのはこれが初めてでありその制服を知らない。
そしてだいぶ挑発的ではあるが言い分には筋は通っている
故にやはり厄介である)
■薙 > 「盗撮行為が犯罪ということはご存知で?」
にこりと微笑みを返す
「犯罪者に心配してもらうことではありませんね。
貴方達のような者が消えてなくなれば結果として平和は維持されます、ご安心を」
どよりと濁った黒い瞳が目の前の少女を見つめ、
そのまま、光煌めく白刃を横に薙ぎ払う
回避運動を行わなければ、間違いなく斬って捨てる深さだ
■猫谷凛 > 「ひっ…」
咄嗟に一歩下がる
だが完全に避ける事もできず
腕に小さくない斬り傷が
「い、痛……痛い……」
傷口を抑え目に涙を滲ませる
腕をつたい指先からポタポタと地面に血滴る
■薙 > 「痛い、ですか?でも心は痛みませんね。
先ほどの言葉、風紀委員に何やらただならぬ恨みでもあるご様子」
刃についた血をぺろりと舐め、一歩距離を詰める
「と、いうことは殺しても構わない悪です」
光すら吸い込むような黒い眼差しが凛を見下ろす
■猫谷凛 > 「ひぅ……」
言葉が出てこない
黒い、暗い、薄気味悪い瞳…
「貴方…なんなの……」
恐怖で動けない凛とは裏腹に、頭に被った帽子が少女へとびかかる
バランスボールが跳ねるような動きで少女の腕に向かって跳ねる
■平岡ユキヱ > 「弱き者を痛めつけるのは本懐にあらず」
そう毅然といいはって、異能の気配そのものも収める。
「この島にとって有害なものを取り締まり、排除するのが我ら風紀の役目だ。
必要とあれば理不尽も暴力も振るう。そういうものよ」
白椿をまっすぐに見ながら、迦具土が今にも飛びさないかとハラハラしながら言う。
「迦具土センパイ、行きましょう。どうにも初手を誤りました。ここは退くが大義です!」
「どこのこどいつかは知らぬが、斬るなッッッ!!」
薙の、というよりは猫谷の気配にただならぬ気配に気がついたのか、路地の方に叫ぶ。
既に手に余る案件だというのに、もう一つ。
やれるか? 否、やるのだと心の中で気合を入れなおす。
■迦具土正道 > 【曲がらぬ信念が、足を一歩前に踏み出させる】
――為らば暴力で構わん。
どの方向から見ても暴力に見えぬ事を意識して正義など為せぬ。
貴様の其れは只の他人を馬鹿にする為の《正論》に見せかけた詭弁だ。
己がけして傷つけ得ぬ物だと云う特権を利用した、只の娯楽に過ぎん。
――筋が通っているように、見えるだけだ。
其れだけの言葉を弄して公僕と蔑み、
正義を嘲弄する己を都合よく力なき婦女子と定義する、其れが詭弁で無く何だと云うのだ。
貴様は己の正論で公の権力を弄し、躍る人影を見て遊びたいだけだろう。
握圧という暴を仕掛けて来たのが此方で有ると云う貴様の言い分を聞く為らば、
其れに対して異能に依る過剰な防衛を行ったと云うのが此方の言い分だ。
平岡。構わん。
職務を《放棄》しろ。キミには其の権利が在る。
此れは《警備課》の――其して迦具土正道の問題だ。
此れ以降は私が独断で行う。其の後正義が何方に在るかを判断し、キミが私に与える処罰を決めろ。
済まんが、こうなっては赦せぬ。
己自身が如何ではなく、此れを赦せば《風紀》と云う此の島の《秩序》が成立しない。
此の島の根底に在る《正義》が揺らぐ。私は其れだけは、けして赦すわけには行かない。
【白椿に言葉を吐き捨てる】
個人の行動への文句が言いたいのであればいくらでも付き合う。
貴様への行為が個人として非礼に値すると云うのならば詫びもしよう。
だが、貴様の行為は風紀と云う立場に於いて赦す事は出来ない。
此れが貴様が此の行為を不敬で有ると判断しようが、私が風紀で有れば百回が百回、千回在れば千回繰り返す行為だ。
故に、撤回しろ。そして投降しろ。今ならまだどうとでも成る。
――貴様が揺るがしているのは私や平岡の有り方ではない。この島の正義の根底だ。
【器用には生きられぬ赫怒の怒りを込めた双眸が白椿を見据える】
■白椿 > ……ふむ、それはひとまずさておき。
ところで良いのかえ?
向こうで事が起きておるようなのであるが。
(狐が言うのは2人の後ろ。
つまり、猫屋と薙である
どう見ても事件である)
■迦具土正道 > ………。
【白椿の言葉に、一瞬其の示唆する方向に視線を向ける】
■薙 > 「悪を挫き弱きを守る、風紀委員ですけど?」
くすっと笑い
特に意表をつかれた様子もなく跳びかかっていた帽子を鞘で打ち払った
魔導生物、というやつだろうか、しかしただ飛びかかる程度なら、障害にはならない
「………それは先輩命令ですか?
盗撮されていましたよ。先輩方の一部始終。
いいように編集され風紀委員の失墜を狙う者かもしれません。
生かしておいたところで益はなさそうですが」
響き渡る叫び声にくるりと振り返り、淡々と、饒舌に口から言葉を吐き出していく
その姿、その腕には紛れも無い風紀委員の腕章がつけられている
■平岡ユキヱ > 「チクショー! この褐色おっぱい! 場を散々引っ掻き回してー!」
前門の怒れる先輩、後門の正体不明事件。ユキヱさん泣きてえよ!
飛び出させまいと迦具土に押されるように、背でガードしながら。
「…いいように編集するのか!?」
薙ではなく、猫谷の方に叫ぶ。
かなり必死の形相で、今すぐにと。
「答えろぉぉぉ!! そこの悲鳴を上げていたの、風紀の失墜が目的かぁぁぁ!!?」
■猫谷凛 > ベチン、と鞘に殴打され地面に落ちる
何かを小さく唸っている様だが…
「ギーちゃん!」
地面に落ちたそれに駆け寄り、拾う
抱きしめけがはないかと心配そうにギーと呼んだそれを見つめ
「…もう、許さない…風紀委員なんて全員地獄に落ちればいいにゃぁ!」
ただの暴言を放つ。今までは軽く恨んでいた
程度だが今回は明確に敵意を持って
ちょうどそれはユキヱの叫びに応えるようなタイミングで
■迦具土正道 > ………。
【合点。と長い長い呼気を零す】
【急速に冷える頭の芯を振る事で思考に向け、薙を見た】
【頭の中で白椿の存在と猫谷の存在が線で繋がる】
……其う云う事か。
成程な。……最初から其れが目的だったと云う事か。
実入りが少ないと思っていたが、よもや暴力ではなく其う云った形での攻撃とは恐れ入る。
……相対する相手の頭が回る様になったと思えば、余計に頭痛がする話だが。
【《其う云う》話か、と呆れた様に溜息を吐いた】
■白椿 > 二人して我と談笑しておるだけで、特に問題はないのではないかえ?
それに、この偉丈夫が勝手に躓いて転んだだけであろ?
そのことに関して多少行き違いがあった故、軽い雑談を交えて質問を受けておっただけのこと。
やましいことなどないと思うがの。
それと、取り敢えず我が見ておる限り、そちらの娘は思い切り深く踏み込んで切りつけておったの。
(アレだけ押し問答をしていたのがウソのように、あっさりと「談笑」と言い切る狐。
手のひら返しもいいところである。
まあコレはコレで面白い案件であるので、様子見に入ったのかもしれない)
■薙 > 「地獄に落ちるのは貴女なんですけど」
一歩、一歩
猫谷凛へと歩みを進める
「貴女と繋がりのある者がいたところで、
貴女を捉え尋問する手間を考えると…貴女の死体と遺品から得られる情報のほうが有用かもしれませんしね」
言っているのだ
殺しても何も問題はない、と
■平岡ユキヱ > 「是非もなし…!」
バオッ、と青白い閃光と闘気が気流のように吹き荒れる。
『幻想変換炉・臨界突破(ブレイクスルー)』。周囲の些末な殺気まるごとを飲み込んで、
何もかもを吹き飛ばすかのような青白い炎が少女から漏れ始めた。
稲妻のような勢いで駆け出すと、猫谷を庇うように薙と対峙する。
奇しくも特攻課の同期が対峙するという皮肉。
「彼女はすでに悲鳴を上げている! これ以上の暴力を振るうな!」