2015/10/29 のログ
ご案内:「路地裏」にナナミさんが現れました。
ご案内:「路地裏」からナナミさんが去りました。
ご案内:「路地裏」にナナミさんが現れました。
ナナミ > 祭囃子が遠く聞こえる落第街、路地裏

久し振りに“こっち用”の服装に着替えてナナミはぶらぶらと歩いている。
顔のほとんどを覆うパーカーの付いた長袖の上着に、オーバーサイズのカーゴパンツ。
少しすえた臭いのするゴミ箱の横を抜けて、一際狭くなった路地裏を見回した。

この辺りは今まで来た事のない通りだった。

「……ん、っと。てことは……結構遠くまで来たのか。」

頭の中に落第街の地図を思い浮かべる。
居候生活を始めてから幾度となく散歩がてらこの街に足を運んだが、いまひとつ全貌を掴むには至れていない。

ナナミ > 「……なん、つーか。
 来る度にちょっとした通りや建物の位置が変わってる気がすんだよな……。」

真新しい、とはとても呼べそうにない汚れたコンクリートの壁をフード越しに睨みつけながら独りごちた。
だからと言って壁が動くとは思えないし、音も無く出現し、音も無く消えるとも思えない。
……大方、この街の住人が勝手に創造したり破壊したりしているのだろう。
そういう能力を持った破落戸が居たとしても、まあ何らおかしい話ではない。

「……そういうトコ、だしな。」

溜息混じりに吐き棄てる様に呟いて
ナナミは転がる空き缶に足を取られないよう気を付けながら路地を進んでいく

ご案内:「路地裏」にマクアさんが現れました。
ナナミ > 少し進むと、道幅が広くなった。
今迄顔を上げても両脇の壁がこちらを圧し潰さんと聳え立っているばかりで
とても夜空を眺める事など出来たものでも無かったので反射的に顔を上げる。

「……そういや、お月見とかってのもあったっけなあ。」

数週間前に学校で耳にしたのを思い出して、ぽつりとつぶやいた。
十五夜は、とうに過ぎてしまっている。
これから月見をするには月はあまりにも欠け過ぎていて、そして風情もまるで無い場所過ぎた。

マクア > (この路地裏には似つかわしくない恰好の少女が歩いている。年齢は10歳ぐらいだろうか
その雰囲気からもう少しうえに見えるかもしれない。髪は闇に溶け込むような黒色で肩の長さまで伸びている。
黄金の輝き持つ瞳は見るものの欲望を掻き立てる。着ている服も仕立てが良くこのあたりではそうそう見られない質ものだった。)

「久しぶりにきてみたけど迷っちゃったわね…。」

(誰かいれば道を聞いてみることも出来るのだけど、誰とも出会わない。
昔はもう少しこのあたりも賑わっていたと思うのだけど。
時代の流れと移り変わりを感じる。十年の時は長い……。)

「とりあえず歩いてたら知ってる場所に出るかもしれないわよね…。」


(少女はそういうと歩き始めるしばらく歩けばナナミがいる道にでた。人を見つけた喜びでただでさえ
輝いてるその瞳をなおのこと輝かせて少女はナナミに近づいていくだろう。)

ナナミ > 「……お?」

不意な足音と、こちらへと近付いてくる人影に足を止める。
接近してくるのは、薄汚れた路地裏に似つかわしくないと思える少女の姿だった。
一瞬、自分の目を疑ったが、つい先刻自分が呟いた言葉を思い出して、一つ息を吐く。

この島は、そういう島で。この街は、その中でも特別何が起きても不思議じゃない場所だ。
幼い少女の姿を取っているだけで、若しやすると超常の類かもしれない。
ナナミはこの春から、そんな存在を何人も見てきている。

用心するに越したことは無いだろう、と。

マクア > (目の前の相手はは明らかに自分を警戒している。そうだ、それが正常だ。こんな場所で出会った見知らぬ相手だ
それは、警戒するだろう。つまりあれは正常な人間だ。
久しぶりに見たマトモな人間を前に少し遊びたい気持ちが出てくる。)

「どうしたの君?お姉さんはあやしいものじゃないわ。ただ散歩してるだけの善良な悪魔。」

(悪魔、特に隠すこともせずそれを告げる。ニヤニヤと口元にはいやらしい笑みを浮かべて動かずに言葉を続ける。)

「君みたいな子がこんなところに一人でいたらあぶないわよ。お姉さんが家まで送ってあげようか?」

(明らかにナナミより年下に見える少女は自らをお姉さんと呼ぶ。そのチグハグさが人外のものである気配を強める。)

ナナミ > 「お姉さん……?」

怪訝そうな声音と共に、僅かに首を傾げる。
どう見ても自分より5つか6つは歳が下に見える相手が、自身を「お姉さん」と称している。
……怪しいところではある、が。単にませた子供という線も消えないのがこの島の、この街の不条理さでもある。

「そりゃァお互い様ってもんだろ?
 それに、どっからどー見てもお姉サン、にゃあ見えねえよなあ。」

はぁ、と溜息と共に肩を竦めて。
用心するに越したことは無いとはいえ、だからと言って無暗に臆する事もない。
相手が人外であろうと、まあ、それも“慣れっこ”ではある。

マクア > 「あら、お姉さんそんなに若く見えるかしら?多分あなたよりは年上だと思うわよ。でも年下に送ってもらうのも悪くないわね。」

(ニヤニヤとした笑みを崩さずに答える。実際は何歳なのだろう。ケーキが蝋燭に覆われて見えなくなって以降年齢を気にしたことない悪魔は適当に答える。
100、200は過ぎていたと思うけれど。目の前の少年よりは年上だろう。)

「それにしても君、あまり驚かないのね。最近の子はみんなこんな感じなの?お姉さん悲しくなるわ。」

(手で目元を拭って泣くまねをしながら言う。昔は少し話しただけで相手から冷や汗がだらだら流れ顔面は蒼白しまいには倒れたりしていたのに
力が制限されているからそこまでいかないにしても。「うわー!悪魔だー!逃げろー!」とか言って逃げてくれたら可愛かったのに。)

ナナミ > 「若ェ、っつーか……幼い?
 まあこんな場所じゃァ見た目が幾つに見えようが関係無ぇだろ?
 本当に見た目通りの歳だってんなら、まあ無事じゃすまねえだろうし?」

見た目からの実年齢の推測なんて無駄な事をする気は無い。
しかし、相手が年上である事を仄めかしてくるのであれば、まあ礼儀として言い返すくらいの事はする。
顔の大半はフードに覆われて見えないが、唯一覗く口元が薄く笑みを浮かべた。

「驚くも何も、ガキにいちいち驚いてたら身が持たねェっつーの。
 ……まあ、そりゃ冗談で。実際ンとこは、割と人じゃない相手には慣れてるもんで。」

ひょい、と軽く肩を竦めてからおどける様に首を傾げてみせた。

マクア > 「やっぱり、この姿じゃ怖さが足りないのかしら…。お姉さん昔はもっとセクシーでグラマラスな悪魔だったのよ。本当よ!」

(自分の胸のあたりに手をやりながら悲しそうに呟いた。せめて昔のボンキュッボンなスーパーボディだったら
こんなに舐められなかったのに…。何か手段を考えなければならない。)

「慣れてるかー確かに昔より人じゃないのの気配も増えてるものね。面倒くさい。」

(ガキと言われても特に表情を変えなかったが人じゃないのに慣れてると聞いた時明らかに嫌そうな顔をして
 最後の言葉は小さく吐き捨てるように言った。)

「じゃあ、最近のナウなヤングの間では何が怖いの?お姉さんに教えて?」

ナナミ > 「はいはい。」

何だか精一杯な主張をしている少女へとおざなりな相槌を贈る。
別に嘗めて掛かってる訳ではないが、慣れとは恐ろしいもので、
たとえどんな姿で声を掛けられようと、それで恐れ戦くという事は無いだろうとナナミは思えた。
というか、悪魔なんだ、と何を問うわけでも無く自分から正体を明かす少女を見て内心で思う。
……やっぱり、用心こそすれど恐れるに足りず。

「面倒臭いって……何だィアンタ、昔のこの島の事知ってんのか?」

へぇ、と感心したように声を上げて。
それからふと、考える様に視線を下げた。怖い物ねェ、と呟いてから。

「あー、んー、考えちゃみたけどよ。
 生憎と怖い物なんてなァそう簡単に思いつかねェな。
 強いて言えばそうだな、もうすぐ来るだろう試験の事くらいかね。」

飽く迄学生なもんで、と三日月の様に口を歪ませて笑う。
その一方で頭の中では少女からの問い掛けの意味を解析する。
怖い物。もし素直に答えれば、それがその場に現れるというのだろうか。
だとしたら、古典落語の様に真逆の答えでもぶつけてみようか、と考えて。
少しだけ注意深く、目の前の“自称”悪魔の少女を観察する。

マクア > 「ええ、10年くらい前ならお姉さん知ってるけどそれより最近のことは全然しらないのよ。」

(面倒臭いには触れずに答える。今から10年から11年前その一年間についてはある程度知識が
ある。それこそ図書室で調べれば簡単に見つかるレベルの知識だが。)

「あら、テストの心配だなんてこんな所に来てるのに案外真面目ねキミ。真面目な子は好きよ。」

(そうだ、いつの世も生徒が恐れるのは試験に恋愛、人間関係、アイデンティティ。学生なんてこんなものだ。
その答えにクスクスと笑いながら言う。)

「例えば、試験で自分の努力がすべて報われず赤点なんて嫌よね。自分だけじゃなく友達に手伝ってもらってまで
悪い結果だなんて顔もあわせられなくなるんじゃないかしら?」

(悪魔の話す言葉の後ろに音が聞こえてくる気がする。カリカリ、カリカリ、鉛筆やシャーペンが必死に問題を埋める音と
よく似ている。試験を受けているときに聞こえる音に)

ナナミ > 「ふーん……。」

この期に及んでまだお姉さんを自称する少女にはツッコミを入れる気すら起きず。
適当に流しながら指折り数えてみる。10年前というと、この島に学校が出来てから……何年くらいだろう。

「真面目って程じゃァねェかな。」

上着のポケットに手を突っ込んで、ケロッとした顔で俄かに聞こえてきた音へと耳を澄ます。
なるほど、こういう事になるのか、と胸中で一人納得した。素直に答えなくて正解だったな、と内心溜息を吐く。

「努力ってほど努力はしてねーけどねェ。
 前期は普段の寝不足が祟ってか、どーも授業中は居眠りの連発だったけど、最近はそうでもねェし。
 これで赤点取ったら、流石に顔見せ出来ないどころか真面目に検査を勧められちまわァ。」

ニヤニヤ、と不敵な笑みを浮かべる口元だけを晒しながら。
一歩、と少女へと近付いた。

マクア > 「じゃあ小真面目ね。お姉さんコマジメな子も好きよ。」

(別に不真面目でも不良でも堅物もどんな人間でも好きだというこの悪魔には関係ないのだが)

「授業真面目に聞くようになったのは偉いわね。お姉さん花丸あげちゃう!」

(そう言って一枚の紙切れに真っ赤なペンでぐるぐると花丸を書いて一歩近づいてきた少年に
更に近づき手渡そうとする。それは様々な科目の問題が記された。テスト用紙。ギリギリで合格に届かない点数。問題をみればナナミが
解ける問題のみ正しい答えが書かれており。解けない問題には素っ頓狂な答えが書き込まれている。
名前の欄が空白のそのテストに書かれた文字の正しい答えの筆跡はナナミのものと同じであることは
気を付けて見ればすぐ気が付くかもしれない。)

「本物のテストでは頑張ってね。」

(ナナミが見せる口元よりも更に大きく、裂けそうなほどに口を三日月の形にゆがませた悪魔が渡そうとする
あきらかに実態のあるそれは赤点にも関わらず馬鹿にするように大きな花丸とよくできましたの文字が躍っている)

ナナミ > 「小真面目ねェ……」

何だかバカにされたような気がする、と白々しく呟いて手渡された紙を受け取って一瞥する。
ははん、と小さく鼻を鳴らす様に笑って。

「そんじゃまァ、ご褒美くれたお礼に俺からも良い事教えたげよっかなァ。
 ……人の恐怖心を煽りたいなら、もっと相手をよく知らないとダメだぜェ?

 嘘八百並べ立てるような悪い奴だってこの島にゃごまんと居るだろうしさ。
 ちゃんと見抜けねェと“おねーさん”言い様に利用されちゃうかもよ?」

ケヒヒ、と笑みを零しながら手に持っていた紙をはらりと手放した。
はらはらと宙を舞ったそれは、静かに地面へと落ちて。

「ま、小真面目な俺は? オネーサンが可哀想だと思って付き合って上げたわけで。
 半分、ってとこだけど。まあ確かにテストは怖いが、怖いよりも面倒さの方が勝っててねェ。
 悪い点を取るという結果よりも、その為に机に拘束されてる方が怖いと思う性質よ、俺。」

マクア > 「えー嘘ついてたのーお姉さん騙されちゃったわー。悲しくって泣いちゃいそうよー。」

(白々しく言う。表情は今まで浮かべていたものよりも柔らかい、騙されたことを怒る様子もない。)

「確かにそうよね。お姉さんあなたのこと全然知らないもの。そんな人が何が怖いかなんて分からないわよねー。」

(うんうんと頷きながら話を聞く。確かにこの子の言う通りだ人が怖いと感じることなんてそれぞれ違う。
昔の話にも饅頭が怖いっていう男の話もあったぐらいだ。)

「確かに縛られるのは面倒よね。お姉さんもテストよりそっちが怖いかな。」

(まるで親に何かを説明する子供を見るようなそんな表情を浮かべて。話を続ける。。)

「テストよりは机が怖いのね。じゃあ、君が本当に一番怖いものって自分で分かる?
本当にそれが自分にとって一番怖いかって分かる?考えないようにしてるだけでもっと怖いことがあるんじゃない?
テストが怖い人がいるのも時間の拘束が嫌なひとがいるのもそれが間接的に自分が一番隠したい部分に触れそうになってるからじゃない?」

ナナミ > 「まあまあ、そりゃァお互い様って事で良いじゃねェの。」

ナナミは全く悪びれた様子も無く肩を竦め、それから大きく背伸びをした。
それから少しばかり、再び考える様に首を傾げて。

「んー……本当に一番怖いものねえ。

 そうだなァ……“わからないこと”かな。
 はてさて、何がわからないことが怖いのかは、聡明なオネーサンの発想と閃きにお任せしちまおうかな。」

悪魔よりも悪魔らしく、人を食ったような笑みを浮かべ。
それからおもむろに空いた片手を差し出した。

「俺、ナナミ。また会った時はよろしくねェ、オネーサン?」

マクア > 「わからないことね…。確かに人は分からないものを怖がるわよね。」

(自分とは違うものや知らないこと。人はそれがあることを恐れる。先の見えない暗闇を怖がるように。
でも、あの言い方はそんな単純なものではないだろう。もう少し考えてみよう。)

「うーん分からないわ…。ナナミ君。君割と意地悪よね。」

(悪魔というよりも天使のような慈愛に満ちた表情を浮かべて。
差し出されたその手を取る。)

「私はマクアとでも呼んで。悪魔のマクアって覚えやすいでしょ?今度会うときまでに頑張ってナナミ君の
怖いもの見つけておくわ。」

(自嘲気味に名前を告げる、フードの少年に別れを告げ一本の路地へと入っていった。)

ご案内:「路地裏」からマクアさんが去りました。
ナナミ > 「ケヒヒッ。」

意地悪、と言われれば愉しそうに口角を釣り上げる。
否定はしない、自分でも意地の悪い事は自覚しているし、半ば意図的なものでもある。
だがそれは飽く迄この場所に合わせた態度であり、半分は演技だと思っている。

……いつの間にかその境があやふやになっている気も、しないでもないが。

「マクア、ね。まァ、覚えといてやるよっ。
 精々頑張って怖い物見つけてくれよなー。」

愉快そうに笑いながら、去り行く背へとひらひら手を振って。
その姿が角に消えれば、ナナミもぶらぶらと、それまで同様、路地を進んでいくだった。

ご案内:「路地裏」からナナミさんが去りました。