2016/02/17 のログ
■ラウル・ゲレロ > 「へえ、どうしてもここを通りてえのかい。」
ほほう、こいつは驚いたと内心、少し感心しながら声を発して。
何故なら、この島の『日本人』の大半は、
小柄とはいえ異様な風体をしたラウルを見るなり、
目を伏せて近寄らないようにするといった反応が大変だったからだ。
それがどうだ、こんな少女が自分に対しまっすぐに視線を投げかけている。
「そうだなァ、これから一発……といきてえところだが
おめえさんみたいな『ちっこい』のは趣味じゃあねえし……。
そうさな、一つゲームといこうか。」
普段であれば、ここで荒事を起こしても不思議ではなかったが、
少女の態度に面白さを感じ、ポケットから『Royal Ace』とロゴが打たれた箱を取り出すと、
そこから一枚のトランプを抜き出す。男の身なりとは180度異なり、箔押しなどがなされた
高価なカードであることをうかがわせる逸品だ。
……と、男はそれをふいに空中へと投げる。すると、どういう理屈か
カードは男の顔の前、空中で静止して。
「さて、こいつのスートを当ててみな。あたりゃあ、ここを通してやるよ。」
■風間理音 > 「ちっこい…?」
無視されるか、追い払われる辺りが関の山だろうと思っていただけに、
彼の反応は意外なもので。
一瞬、明らかに胸元へ視線が映ったことに気付き、少し笑みが引きつる。
腕を組もうとして、隠せることが逆効果になると思い、すぐに降ろすと。
「スート…?マークのこと?もうちょっと日本人に優しい言葉選んでよねー」
ぶつくさと文句を言いながらも、思いも寄らぬ展開に、どこか楽しげ。
顎に手を当て、少し思案する素振りを見せると。
「…ジョーカー。どう、当たってるっしょ?」
言いながら身を乗り出し、人懐こく笑って見せる。
完全な当てずっぽうではあるが、妙に自身ありげに。
■ラウル・ゲレロ > 男が捻る様に、指を回すと空中でカードが半回転。
卑屈な笑みを浮かべた、道化師の図柄が露わになる。
「ティーン!名も知らぬジャパニーズガール、ポイント1点!」
楽し気にくつくつと喉を鳴らして、笑うと
カードをポケットへ引っ込めて。
「こいつは参ったね、ギャンブルは強いつもりだが
今回は嬢ちゃんに運が味方したようだ。とはいえ、
運命の女神フォルトゥナというには少々発育が足りねえが。」
近くの木箱にどっかと腰を下ろし、理音が通れるように場所を開けると、
脇の生ごみの山の中からめざとく、少しだけ中身が残った酒瓶を見つけ、
それを口に含み。
「……これだけじゃあなんだな、サービスしてやろう。
クラックか、スペシャルK。両方それなりに質はいいもんだ。
ほしけりゃくれてやるよ。」
■風間理音 > 「ほーらやっぱり。あたしの勘も捨てたもんじゃないってことかな?」
賭けに勝つというのは、大なり小なり快感が伴うもの。
その例に違わず、ちょっとした達成感から得意げになっていると。
再び身体のことを言われ、ムッとして頬を膨らまし、
「でかくてムチムチなら良いってもんじゃ無いの。
大事なのはテクだよテク。一発ヤってみる?」
賭けに勝って上機嫌なせいか、ケラケラと楽しげに笑う。
そして、彼が道を開けたことを確認すると、木箱から身体を離して。
「…遠慮しとく。おじさんの客になるの、目に見えてるし。
誰かに売ってあたしのところに通われても困るし。
キメても面白くなさそうだし。あたしはこれで十分」
彼の提案を断わり、口の中のアメを舌に乗せ、口を開いて見せる。
ポケットの中から、袋に小分けされた同じ種類のアメも取り出して同時に見せて笑うと。
「おじさんこそ、あたしの身体の魅力に気付いたらいつでもヤりに来なよ。
外人のあそこがどんなか、興味もあるし」
あながち冗談でもないのか、物怖じせずに近付くと、彼の肩をポンポン、と2回、軽く叩いた。
■ラウル・ゲレロ > 「ヘッ、言うねえ。しかしまあ、あと3年、いや5年たってからまた来いやな。
今のオメーとヤるぐらいならその飴舐めてたほうがまだましさな。」
飲みほした酒瓶を勢いよく、路地の向こうへと放り投げる。
綺麗な放物線を描いて飛んだ瓶は砕けた石畳にぶつかりガシャン、と音を立てて砕けた。
「しかし、オメー。キモが座っとるなあ。
この辺で俺を見た日本人連中は皆、タマをなくしちまった見てえに
下向いちまうのによォ。」
酒瓶を見つけたことに気を良くしたのか、話をしながら
さらにごみの山を漁るも、ねばねばと糸を引くチキンの食べかすにあたり
さすがにこりゃあねえやな、とそれを放り投げ。
「名前、オメーなんてんだ。俺はラウル・ゲレロってんだがよ。」
■風間理音 > 「ちぇっ。そうはっきり言われるとなんかムカつく」
言葉とは裏腹に、さして怒った様子はなく。
瓶が砕ける音が思っていたよりも大きく、ピクン、と身を震わせると、
「んー、なんとなく分かるんだよね。
同類かな、って。いわゆるはぐれ者。
無意味に騒ぎ起こすようにも見えないし」
彼のどこを見てそう判断したのかは分からないが、自信だけはたっぷり。
「…ゴミ漁りは、しないけど」
その姿に軽く引き、思わず一歩、後ずさり。
それでも、すぐに気を取り直すと、
「あたし?あたしは理音。風間理音だよ。
――こんなとこで売って儲かってんの?」
ずけずけと無遠慮な質問を投げ掛けながら、なんとも子供っぽい、無邪気な好奇心を露わに彼を見つめた。
■ラウル・ゲレロ > 「いーや、全然。『上』は東アジアでも商売をしたいだかなんとかいって
俺をここに送り込んだが、メキシコ、コロンビア、エクアドル。
そのあたりと比べりゃ屁みたいなもんさ。」
実際、中南米を拠点とするカルテルの総収入はすさまじく
もっとも有名な『麻薬王』であったメデジン・カルテルのトップ
パブロ・エスコバルなどはフォーブス誌に世界で7番目の大富豪として取り上げられたことすらある。
そんな、カルテルがわざわざ自分の勢力圏から離れた
常世島へとこの男を送り込んだのは、なんらかの意図があるのだろう。
「しかし、その年ではぐれ者たあ荒んでるねえ……。
俺もお前さんぐらいの年にゃあ、無頼無宿の生活だったから人のこたあ言えねえが、
日本人ってのは裕福なんじゃあねえのかい。それとも、下はこんなもんなのかね。」
■風間理音 > 「へー、おじさんそっちの方の人なんだ。
南米ってやつ?
異世界から来たやつとかも買うの?」
正直、欧米人の違いなど、白人、黒人くらいしか見分けがつかない。
顔立ちに違いはあるようだけど、自分の目から見ればどれも同じようなもの。
素直に関心しながら、興味本位の質問を繰り返し。
「ま、多感なお年頃ってやつ?
金があったって、勝手な理由で人殺すやつもいるくらいだし。
…あたしは気持ちよければそれでいいや、って感じで、
こんなんなってるだけだけど」
そんなことを言いながら、ふと路地の曲がり角を見やると。
なかなか集会場所に来ない自分を不審に思ったのか、様子を見に来た仲間の姿が見えて。
何やらトラブルに巻き込まれていると勘違いしたのか、焦りの色を浮かべていた。
「――さて、あたし、そろそろ行くね。なーんかめんどくさいことになっちゃいそうだし」
そう言って、増援を呼んでいる仲間の方を指差し、苦笑いを浮かべる。
新しいアメを口に放り込むと、ヒラヒラと手を振って、
「ばいばーい。結構面白かったよ」
そう言い残し、面倒事が起きる前に事情を説明しようと、早足で仲間の下へと向かうのだった。
ご案内:「路地裏」から風間理音さんが去りました。
■ラウル・ゲレロ > 「あァ、俺はアルゼンチンの出だよ。En Unión y Libertad!
自由ってのは素晴らしいねェ。俺のような悪党にとってはこの世は最高だ。」
まるで、愛国者であるとでもいうように
自身の左胸に握った拳を当てて。
「異世界からきたよーわからんのも一部は捌いとるみたいだあね。
俺は見たことないけどドラゴンのアレとかな。ま、俺はそういうのは手を出さん。
……ふーむ、なるほどそういうのも自由だわな。俺も常に『自由』を求めて選択はしてきたつもりだ。
流れ流れて、こんなんなっとるわけだが。」
そこで、理音が仲間を静止すべく自分の元を離れ去っていく。
その様子を、興味深げに見つめていたラウルであったが、あくびをひとつかくと。
「俺もそろそろ行くか。……あァ、あと5年やっこさんが年くってりゃあなあ。」
ぽつり、と独り言を漏らしぼりぼりと頭を掻きながらその場を去るのだった。
ご案内:「路地裏」からラウル・ゲレロさんが去りました。