2016/08/30 のログ
ご案内:「路地裏」にエアルイさんが現れました。
エアルイ > 「…………」

埃っぽく、足元がじゃりじゃりする。

道が大きくはなく、見通しがよくない。

漂う匂いは鼻について、胸がむかむかとして気持ちが悪い。


「…………グ瑠ゥ……」


――気持ちが悪い。違う。
わからない、気持ちがわからない。

路地裏に転がっている大きな銀のボックス缶に腰をおろし、小さく息をつく。
揺れる尻尾が壁に擦れておさまりが悪いが、どうしようとも思えない。


――自分は、どうしたというのか。

手に結びつけたふたつの飾り――
銀のネックレスと、小さな馬の形をしたキーホルダーをじっと見て、息をひとつ。

ため息をつくたび、マントから覗く褐色の肌から、
そこに走る亀裂に似たあざから黄色の炎が漏れ揺れる

ご案内:「路地裏」に白椿さんが現れました。
エアルイ > わからないことは気持ちが良くない。
気持ちが良くない――気持ちがよくない。
何がどうとも言えない。そのことが酷く――


「…………」


もやもやとした気持ちをぶつけるかのように、
路地裏に転がっていた別の缶に尾を振り下ろす。

幸運な缶は腰掛になる程度で済まされた。

不運な缶は長大な尾によって叩き潰され、
黄色の軌跡を追うように跳ね上がり……床に落ちて派手な音を立てる。


「…………」


ごくごく普通の『八つ当たり』
常ならしないであろうそれをして――
しかし、それに気づけないほどに、
頭の中で正体のわからない炎が燃える。

白椿 > 「……ふむ」

いつものように路地裏を、なにか面白いものでもないかと探しておれば
金属の音のする方から、明らかに異形の怪我人。

まあ、珍しい珍しくないという意味では珍しくもない。
怪我人はよくいるし、異形の者も異界の者も少なくない。
ただ、3つ全部合わさる状態で表に出てくるとなると、そこそこ珍しい。
じっとしていられない理由があるのか、宿なしなのか、単に帰りつけないのかは分からないが。

ともあれ、面白い状況であることは確かである。
一般的にコレを面白い、というかどうかは別として、狐にとっては。

エアルイ > 「…………」

もう何度繰り返したかもわからないため息をつき。
もう何度繰り返したかもわからない動作を繰り返しかけて――

「……?」

そこで、初めてその気配に気がついた。
視線を上げ、黄色のソレをゆっくりと向けて。

――――見慣れない影がそこにいた。
白い髪に、茶色の肌。そして――そこから伸びる尾と耳。

この世界の人間は、そういうものを持ってないと聞いた――
ということは、この女の人もどこか違う場所から来たのだろう。

手に結びついたキーホルダーがふたつ、腕の動きにつられて軽い音を鳴らした

ご案内:「路地裏」に三谷 彰さんが現れました。
三谷 彰 >  もうすぐ夏休みも終わる。こういう時期と言うのは犯罪行為などもおきやすい。
 だからこそこうして違反学生などが集まりやすい路地裏を警備するという案が出た。
 そしてその人物の一人として抜擢されたのが彼だったというわけだ。
 理由はふたつひとつは目の関係。そしてもうひとつは絡まれるからだ。
 既に何人かに絡まれたのであろう薄汚れた制服と口を縛らずにいつでも取り出せる形にもたれている棒の袋を背負い歩いていると大きな音がする。
 そちらへ向かってみると2人の異邦人。一人は1度も見たことが無い。そしてもう一人は……知っているどころか安全かどうか気になっていた人物だ。
 安心半分と大きな音がした以上話しかけないといけないという疲れ半分からはぁと思わず溜息をするとその2人に近寄る。

「なにかデカイ音がしたが大丈夫か」

 声をかけると同時に周囲を見る。おそらくあの尻尾で叩き潰されたであろう缶が落ちておりおそらくはそれでさっきの音が鳴ったのだろう。
 反対側の白い服を着た人は……たぶん見ているだけだとは思うが。

白椿 > 「さて。コレは手を出したものか出さないものか」

明らかに、あまり落ち着いていない雰囲気の相手を見下ろしつつ、どうしたものかと。
どう、と言っても、どうちょっかいをかけようか、という話だが。

面白そうなものが目の前にあるのだから、手を出さない選択肢はないし
もし手を出さないというなら、それは見て楽しむためにそうするだけで。
つまりは、やることはやるのだ。

「そこな御仁。どうも大変な様子だの。まあそれがどれだけ良いか悪いかは知らぬところであるのだけど」

目の前の竜人を見つつ、他の声には特に興味もなく少々スルーする感じで

エアルイ > 「…………グルルルルルルル」

こちらを見つめてくる瞳
――自分と同じ黄色いものだったことに、今更気づいたが――
その中に宿る光に、無意識のうちに唸り声が漏れる。

こちらに対して『何か』をしようとする
『誰か』から感じるチリチリさせる気持ち。
普段なら気にもならないそれが妙に気に障って……

尾で地面を強く叩いて、音を鳴らして威嚇を



しようとしたのだけど、適当に振り下ろした尾が路地裏に転がっていた別の缶を跳ね上げ、
それが自分の頭に当って軽くて間の抜けた音を立てた。


痛くはない。

痛くなんかない。

絶対に痛くなんてない。 

でも苛々する。苛々はさらに募る。


「…………」

ジロリ、と黄色い視線を向ける。

こちらに声をかけながら近づいてくる影に、僅かに覚えがある――
あまり覚えてはいないけれど、いつか、山で出会った人間だったろうか。

三谷 彰 > 「……まぁ問題は無さそうか」

 どっちも反応が無いということは少なくとも喧嘩だとかの類ではないのだろう。そういうものなら今頃巻き添えを受けているかもっと騒がしいはずだ。
 なにか前に出会った少女の様子が変だから見ていたであろうもうひとりの少女に聞きたかったのだが……さっきの口ぶりを見るとおそらく彼女もまだ見つけたばかりといった感じなのだろう。

「とりあえずその威嚇みたいな目やめようぜ怖いからよ」

 ハハハと笑いながら視線を向けてくる竜人の少女に語りかけると視線を狐耳をした少女へと移した。
 来たばかりなのは100も承知だが少なくとも今来たばかりの自分よりは詳しいだろう。

「どういう状況なのか聞いても良いか?」

 無駄かもしれないと思いながらもそう語りかけた。
 聞きながらも周囲への警戒は怠らない。
 自分からすれば完全なアウェーであり一人ならともかく他の人を自分の喧嘩に巻き込むわけにも行かないからだ。

白椿 > 「さて。どうする手もあるが」

遊んでもいいし遊ばなくてもいいが、遊ばない手はない
何をどうしても良いのだが、怪我人相手に火遊びには少々風情がないだろうか。

となれば、とりあえずは挨拶程度か。

「ふむ……少々、涙目相手に悪戯は趣が欠けるといったところかえ、しょうのない。
なら、こう四方山話でも聞かせていただけると面白いところであるのだが。
見返りは……まあどれだけ楽しませてくれるか次第であるかの」

竜人にはクスクスと微笑しつつ、外野には軽い牽制。
まあ遊び相手になるなら誰でもよいのであるが、あの腕章相手もそれはそれで面白い。
もっとも、怪我人を巻き込む故に、この場での荒事は不向き。
なら、次の手である。

「よろしくない。
その腕章があれば何でも通ってしまう、仕切って良いという態度そのものが良くないであろ。
そのつもりはなかろ、とも思うが、権力はついうっかり自分の感覚を惑わすので」

聞いても良いか、と言うのは部外者が突然言う話でもない。
表情や態度から察するに知己なのかもしれないが、ここでその話にも触れず
突然に事情を要求する、というのは職務としての態度故か。

ともあれ、なればこそ、まずは否定から入って見るのもよし。
大したことなど知らぬが、それだけに知ったことではない。
なら、こちらも遊びに付き合ってもらうだけのこと。

エアルイ > 「???」

白い女性の告げる言葉に、エアルイの首がかくんと横に傾げられる。

異邦人としてエアルイがこの世界を訪れた際、最初に教わったのが
最低限の意思疎通手段……例えば言葉や、ジェスチャーの類……である。
が、あまり座学が得意ではないエアルイの成績はいまひとつであり……その理解力も、成績に比例した低空飛行を続けていた。
ギリギリで墜落しないのは仮にも空を飛ぶドラゴンだからであろうか。

ともあれ、エアルイにとって白椿の雅な言葉遣いは
少々理解が難しいものであり……
なんとか理解できる部分から話を汲み取り、考えた結果。

「ヨモヤマが何かは、しらないぞ? 
 お前は、楽しいことがほしいのか?」

半分近くも理解できていないにしては、
奇跡的に会話のキャッチボールを投げ返すことが出来た。
国語の先生が見たら涙を流しかねない奇跡ではあったが。


「…………???」

その一方で、やってきた男子生徒に向けられた言葉は……
その内容を把握しようとして、仕切れない。
まるで煙に巻かれるように、その意味するところをつかみきることができないでいる。

幸か不幸か、その煙にまかれたことで苛立ちの炎が小さくなってはいたが

三谷 彰 >  和服の少女に言われ確かにその通りだと思う。かなり失礼な事をやってしまったかもしれない。
 素直にその非を認め頭を下げた。

「その通りだな。すまない、いくらなんでも急すぎたな、不快にさせて悪かった」

 一切の偽り無く謝罪をする。といっても信じてもらえるかは人次第かもしれないが。
 そのまま下げていても話が進まないので顔を上げる。

「前にこいつと少しあってな。気にしてたのもあって焦っちまった。仕切るとかそういうつもりは無かったんだが……そう取られてもしかたねぇよな」

 制服から腕章を外し向き直る。風紀委員とは関係が無いという彼なりの意思表示なのだろう。

「んであんたは……まぁ特に変って訳じゃないみたいか。元気そうでなによりだよ」

 前の暴走を目にしている身としてはあの状態に近くなったのかと少し考えていたのだがどうにもやり取りを見ると杞憂だったようだ。虫の居所が悪かったとかそういうことなのかもしれない。
 といってもさっきの状態もあるから確証が取れるまですぐに離れるわけにも行かなかったのだが。
 それにこんな危険地帯にこの2人を置いていくというのもどうにもはばかられる行動だ。

白椿 > 「善い。このような状態になったあれこれを語ってもらえれば、それで。
そちらも、面白みがないとはいえ……まあ善い」

竜人の方もまあ、この状態。
もう片方も風紀としての対応ではない、となれば、からかう理由も減る。
無いわけではないが、行動には応じるべきというのもまた一つ大事なところで。

「詳しくは知らぬが、まあ、見るからに怪我人が怪我で不承不承彷徨っておる、というところかえ。
ろくに身を休ませる軒下もないというように思えるの」

このような状態で外をほっつき歩く理由も普通はない。
元気そうで、という表現があったが、どう見ても元気そうでもない。
以前を知らぬゆえに訳あってのことかもしれないが、怪我人を前に元気そうというのも不思議なもの。
もしかするとこの様子でも無事な方に入る目にあったのかもしれないが。

エアルイ > 「こうなった、理由?」

その言葉に、今度は首を反対にかくん。
どうしてこうなったのか。どうして苛々していたのか。

その理由を考えてみるなら
――自分にも、その気持ちがそうかははっきりしないのだけど

「わからなくなった、から?」

そういうことになるのだろうか。

「わかってたことが、言われてからわからなくなった。
 それで、頭の中がザワザワする。
 しっぽがさむくて、背中をひっかかれるみたいな気持ちになる」

言葉にならない気持ちを、それでもたどたどしく言葉に連ねて並べていく。
目の前に掲げて見るのは、無事な腕にかけられた二つのキーホルダー。

ぶつかって軽く揺れる二つの形が、
わからないことを忘れないようにと伝えてくる。


「んあ。元気だぞ?
 お前も、怪我大丈夫か? たくさん食べてるか?」

呼びかけに応じて、尾をゆらりと大きく揺らした。
先ほどまでとは違い、随分と落ち着いてきているのがわかるだろう――
もっとも、落ち着いてはいても落ち着きとは縁の遠い性分ではあるのだが

三谷 彰 > 「軒下が……か」

 顎に手をやり少し考える。確かに軒下。この場合家になるのだろうが、家があればこんな風に彷徨ってはいないだろう。
 だからと言って男子寮住みの彼が家を提供できるわけも無いので家に来るかなどと容易には言えない。

「話してくれてありがとうな。面白みはどうしょうもねぇけどな」

 自分で気がつけていなかった点までを気がついてくれたのは素直にありがたく思い礼を述べた。

 そして竜人の少女が腕を気にかけてくれるのであれば少しだけ笑い。

「ああ、もう俺の怪我は治った。腕の良い魔法使いが治してくれてな」

 軽く左の袖を捲くり見せる。怪我の跡くらいはあっても怪我自体は完全に消滅しているだろう。

ご案内:「路地裏」にエアルイさんが現れました。
白椿 > 「しょうのない。わかるものなど無いであろ。
物事はどれも新しい物事で、それをたまたま経験したことのある例に当てはめておるだけのこと。
その通りに行くかどうかなぞ知ったことでもない。
知った気になって、詳しく知らぬままであるのに新しいことを覚えぬより良い」

なにが原因かは知らぬが、なにかあったらしい。
まあ、それはそれで構わぬのだが、分かると思っている方が、本来はおかしい。

実際は、すべての物事は個別に知らぬもので、新しい事象である。
経験則で似た類型から物事を当てはめて分析対処するだけであって、基本的に完璧など無い。
ゆえに、知った気でいることはあっても、真の意味でわかっていることはない。

わかっているつもりになっていたことがそうでなかった事実が明確になっただけのことで。

それは、知った気でいるより悪いことでもない。

「……ふむ、怪我か。治せるアテがあるではないが、まあ何とかなるやもしれぬ」

ダリウスのところに連れて行けば何らかの対応くらいはしてもらえるだろう。
まあ、家の問題までどうにかなるかどうかは定かではないのだが、それはそれとして
異世界の異能使いであれば、基本的に対応そのものまで断る理由は薄いだろう。

……もっとも、ここでその選択肢が浮かぶこと自体、ダリウスからの意識下への指定による
ものなのだが。
とはいえ、それで安全に問題があるものでもない以上、選択肢として否定する理由もない。

エアルイ > 「わからないことが、たくさんある。
わかってるけど、わからないのが、ほんとう……???」

言の葉を呑み込もうとして、しかし呑み込みきれずに
頭がぐらぐらと揺れる。

わかっていたことが、分からないことが、わかる。
分かっていないのを、分かったつもりになって、分かるのは……
目の前の白い女の人は悪いと、そういう。

じゃあ、分かっていることは、本当はわかっていない嘘になって……


「お、ぐ、るるる……??」


ぐるぐると回る思考が頭を空転させ、その熱が息吹く様な黄色い炎になり、
マントの隙間からゆらゆらと零れる。
それが暴力的なそれではなく、混乱によるものなのは……表情が何よりも雄弁に語るだろうか。

「ーーんう。びょーいんでも、あまりわからなかったぞ?
カサブタ? て言ってた」

混乱する頭を冷やすように、呟きに反応する。
一度病院に診察に訪れた際
……担当した医師はそれはそれは苦労したというのは置いておくが……
その全容は分からないまでも、それが一番近いと診断したらしい。
尤も、細かな説明は分からないまま、肝心の本人が聞き流してしまっていたわけだが。

「怪我ないのはいいことだぞ! まほーはすごいな! 強いな!」
三谷の腕の様子をみて、にぱっと笑みを浮かべる。
尾をはたはたと揺らす様をみるに、機嫌がよいらしい……
ある程度は、山でのできごとの記憶と、恩を感じているようだ

三谷 彰 > 「まぁつまりはあれだ。今までわかってた事ももしかしたら違うことであたらしく覚えなおす機会ができた、それは違うまま放置しておくよりも良い事だ。とかそういう意味だと思うぞ」

 そういう意味であってるよなと和服の少女に視線を向けながら言ったことを何となく噛み砕く。
 自分もあまり頭がいいほうではないため完璧に噛み砕く事は出来なかったがたぶんはそういった意味であっているはずだ。
 ちがっていたとしたら……大人しく訂正されて笑われておこう。
 病院へ行ったという言葉には少し安心を覚えるがかさぶたと聞くと目が少し丸くなり。

「それかさぶただったのか……それならそのうちはがれて治るんじゃないか。怪我なんてそんなもんだし」

 かさぶたと言われたならたぶんその通りだ。
 場合によっては跡が残る事くらいはあるだろうが少なくともかさぶた自体はその内剥がれてなくなるはずだ。
 竜人の少女の機嫌はむしろ良いのだろう、尻尾がそんな感じだ。ひとまずは安心だろうか。

白椿 > 「……ふむ」

良く言えば素直で純。
悪く言えば愚鈍で感情的。

となれば、説明が必要。

「いつもの飯はいつもの飯。いつもの知っておる味がする飯であろ。
されど、知らないところで食べる飯は知らぬ飯だし、同じ材料でも人によって味が違う。
隠し味や調理法も千差万別。
親の作る料理と名人の作る料理と恋人の作る料理は、同じ料理でも違う味がするものぞ。
時に、つまらぬ食べ慣れた味でも旨く感じるかもしれぬし、まずい料理でも旨くなるかもしれぬ。
さて、それはわかっていると言って本当に良いかえ?」

歩く、ということすら様々な歩法があり、それを理解したといえるわけではない。
たまたま生活上で困らないだけのこと。
日々慣れた物事ですらわからぬのに、己が分かる範囲など知れたもの。

「ま、知る機会があるというのは良いことであろ」

知らないままでいたほうが良い、という者もいるが、知る知らないで言えば知ったほうが良い。
知ることは、判断する機会が出来ることである。
判断する資格を奪っておいて、知らない方が良い、というのは傲慢ではなかろか。

エアルイ > 「ん、ん……」

考える、考える。

同じ食べられるものでも、同じじゃない。
肉はみんな違うし、魚はみんな違う。
味も違うし、形も歯応えも匂いも違うもの。

同じと思っても違うもの。

「……ん、分かってる、たべものとは、ちがう。
わかってるのは、たべたことあるたべものだ。
つぎにたべるものは、ちがう、たべるものになる、ぞ」

わかってることが、わからないこと。
わかっているつもりで、わからないでいること。

自分が知ってたはずたべもののことも……違うたべものだった。
しってたことが、しらないことだった。

「むずかしい……ぞ」

頭はまだくらくらする。
でも、少しだけ、わからなかったモヤモヤが、少なくなった気がする。

そう思いながら目の前の白い女の人を見つめて……そして、首をかしげた。
じいい……と、黄色い瞳がその姿を見据え続ける。


「どくんどくんしてたのなくなった! いたくなった! だいじょーぶだ!」

三谷の言葉に、ゴツゴツした棒の様になっている腕を軽く振る。
そう、医師の診断ではこのゴツゴツした物体は、
カサブタが最も近いものであると判断されたーー

折れねじ曲がり、切断するまでもなくちぎれかけた腕が、
硬質のカサブタに似た何かに包まれて元通りに蘇生される。

それが当然なのか、あるいは分からないのか。
その異質さにエアルイ本人は、最後まで気づかなかったのだが。

三谷 彰 > 「あぁ……」

 改めて説明されて何となく合点がいく。

「あんた例え話上手いな。俺でも何となくわかったぞ、確かにそれならわかっているとはいえねぇよな。まだ全部の人が作った料理食ってるわけじゃないんだしさ」

 素直に思ったことを呟く。
 自分の言ったことはまぁまったく見当違いではないのかもしれないがあまりその通りとも言い切れなかったようだ。
 素直にうんうん頷いてしまっていた。

「痛くなったのに大丈夫って言っていいのかそれ!?」

 竜人の少女が呟いた大丈夫だの発言の前に聞こえた不穏な一言に思わずツッコミを入れてしまった。
 まぁ本当に危ない状況では痛みを感じなくなる事も多いのでそう考えると大丈夫なのかもしれないが……痛いの時点で何らかの以上なのではないだろうか?

「ま、まぁ……なんか異常が起こったらもう一回病院いっとけよちゃんと」

 自分は医学知識が無いからなんともいえないので当たり前のことを進める。
 今現在で血が出ているというのであれば魔法で治すことも可能なのだが。

白椿 > 「まあ、気にしすぎるのもまたよろしくない。
そもそも気にしてしまうと疲れてしまう故、ちょっとした違いであればあまり気にせずとも構わぬ。
すると、別のことを考えられるであろ?
もし考えたいのであれば、空いた時間にでもすれば良い」

リソースは有限だ。
時間も、行動も、考えも。

なら、わからないことを無理に分かる必要もなく、分かる範囲だけにとどめておくのが便利で良い。
わからぬことを考えるのは、実際にそれほど意味は無い。
テストの解けない問題を考えるぐらいには。

「褒めても何も出ぬぞ。我はそなたに説明したわけでもなし。
聞く姿勢は悪いことではないが、説明を求めておいて大した説明もないというのは気が利かぬの」

彼からは「前に少しあった」という以外には何も聞いてない。
まあ詳しく話す話でもないのかもしれないにしろ、こういった形での対応は、
風紀に限らず、人に何かをさせることに慣れている者の癖ではないかとも思う。

三谷 彰 > 「ん?」

 大した説明が無いといわれ顎に手を置き少し考える。
 そしてああと思い出したように。

「悪い悪い、何事も無く話進めてったから興味ねぇのかと思ったぞ」

 おそらくは彼女が聞きたがっていたのは自分が竜人の少女と何があったのかの部分だろう。というより自分の話の中で和服の少女が他に興味をひきそうな場面が他に見当たらなかった。
 だが別に聞かれもしなかったから興味が無いと判断した。
 相手が興味が無い事をベラベラと語るのも色々とおかしな話だと思っていたからいわなかっただけなのだが。

「前に山で魔物に襲われてたのを助けたんだよ、まぁ結局最後は俺も助けられてたから俺が恩人とかこいつが恩人とかそういう関係じゃねぇけどさ」

 情けないとか笑うなよそのときには左手の骨見えてたんだからなと顔を少し顰めながら付け加えた。
 さっき少し捲った腕の傷跡を見ていたのならその言葉は噓ではないだろうしそれくらい大きな傷跡だったこともわかるかもしれない。

エアルイ > まさに、言われた通りであった。
考えても分からないで、考えすぎていらいらしてしまう。
ずっとしていたからこそ、頭の火が収まらないでいた。

「ん、ん。分かった……ぞ
えーと……あーと……なまえ、しらないけど、頭、いいんだな!」

頷き……名前を言おうとして……しかし、それが出てこない。
聞いていないから当然ではあるのだが、それでも言いたいことに繋げてみせたは、
純粋さ故か性格の故か。
もっとも、強引すぎるその文法には赤点がつくだろうが。

「……?」

そして……腰かけていた缶から身を上げると、白椿にゆっくりと近づいていく。
そのまますぐ近くに……手を伸ばせば触れられそうな距離に近づくと、改めて見つめてくるだろう。
頭一つ分は背が低いために、みて、正確には見上げる形にはなるだろうが




「ケガはいたいぞ? いたくなったらケガで、いたくないのはちがうのだ。 けがなら、治るぞ!」
一定以上破壊されれば、痛覚が麻痺して痛みすら感じなくなる。
そして、治ってきたなら痛覚もまた感じられる。
本能的に理解しているのか、単にそういうものと思っているのか。
すさまじく乱暴ではあるが、エアルイなりの自己診断……らしい。
病院という言葉に、尾が僅かに跳ねるような揺らぎを見せたが……
こくりと、本人は頷くだろう。

白椿 > 「そちらの関係なぞ知らぬでな。
知り合いかどうか、味方かどうかも詳しくわからぬ。
遠巻きに怪我をするような戦闘を見ていただけの、敵に近い関係ということもあるであろ。
部外者の我がおるから争いにならぬという関係かもしれぬ。
そなた、立場上は敵も多いのであろ? 察せぬと余計な争いで死ぬるぞ」

男の様子に、大丈夫かこいつ、という態度を堂々としながら好き放題語る狐。
言葉の内容の割には口調は軽いので、あからさまにからかっている様子ではある。

「白椿の狐をやっておる。竜人の」

名を問われれば、白椿と名乗り、近づいてくる様子に何ぞ?と思うものの
特に気にするわけでもなく好きにさせて。

三谷 彰 > 「いってぇ所つくな。確かに敵多いぜほれみろよこれ、この辺りの通り歩くだけでこれだ」

 制服を示し軽く苦笑する。
 腕章などで見たことあるのならわかるかもしれないがここに来た時から既にその制服は何度か争った跡があるというか薄汚れたイメージを放っている。
 
「まぁ次から気をつけるように肝に銘じておくよ」

 おそらくは口調からからかいであるとの意図は感じているが言っていることに間違いが無いのも事実。故にちゃんと聞き遂げる。
 といってもこちらも口が軽いのでこんな言い方になってしまっているが。
 竜人の少女の言葉には少しだけ唸り。

「まぁその通りではあるんだが。でも痛いってことは少なくともまだ問題があるってことだしな、でも病院は嫌いらしいし気持ちわかるから本当に危なくなったら、な」

 相手の反応をみて病院が嫌いだと判断し少し笑いながらそういった。
 自分も必要なら行くが極力世話になりたくない場所ではある。
 名前を聞いてふと自分もまだ名乗っていなかった事を思い出す。

「って、そういえば俺も名前はまだ言ってなかったな。三谷彰だ」

エアルイ > 「白椿、白椿、だな! エアルイだぞ!」

こくこくと頷きつつ、狐? と腰から伸びる尻尾を見。
そして頭上で揺れる耳を見。首を、かくん。

何事かを考えるように首を傾げて……
おもむろに手を伸ばすと、着物から伸びる白椿の手を取ろうとするだろう。
片腕しか使えないために動きはぎこちないので、
手を避けるのは非常に容易いだろうが。


「しょう、だな! エアルイだぞ!
んー……わかった、ぞ。びょーいんも、だいじだ」
三谷の言葉にこくこくと頷く。
病院が苦手というよりも、病院であったあるできことが刺のように刺さっているのだが……
それは、未だ本人もうまく理解できていないため、口にすることはないだろうが。

白椿 > 「む、エアルイとやら……何用ぞ?」

何をしたいのかよくわからない。
ので、危害を加えるつもりはなかろうが、念のため、手を許す前に問う。
別に触れることで何かするでもなさそうだが、そこまで気易い訳でもない。

「三谷か。その様では余計に荒事が増えるのではないかえ?
まあそういうのが好きならそれも構わぬと思うが、意図せぬ諍いは面倒ゆえ、の」

この様子だと考えがあることなのに感情的に思われたり、理由があることなのに
気分に思われたりするのではなかろか。
まあ本人がそれで構わないなら良いが、それはそれで面倒事が増えるだけで
おそらくこの手のタイプは、そういった意図しない面倒は比較的嫌うのではないかと推し量るも
別にそこまで面倒見てやる必要もないので適当に濁しておく。
察するなら良し、そうでないならきっとそれはそれで気に入っているのであろ。

エアルイ > 「る」
声を掛けられれば、動きがぴたりと止まり……
僅かにバランスをくずしかけて軽く尾が揺らめく。

「ん、んー……気になる?」

問われた本人も、首を傾げている。

そもそもは、自分と近い髪と肌の色に対する興味なのだろう。
そして、その中に小さな……
『分かっているつもりで分からないこと』を考えたがゆえに感じた、
ほんの小さな違和感にが含まれているのだが……

あまりにも小さいそれには、まだ気づけていないようだ。

三谷 彰 > 「ん? そうか?」

 荒事が増えるといわれ考えるもどうなんだろうなと少し考えてしまう。
 今までの流れ的に意図せず気分を損ねるとかそういう意味なのだろうかと少し彼女の考えとは違う方向に理解してしまい。

「あぁ、まぁそうだなたしかに意図しないのはめんどくせぇや。今度からは気をつけるよ」

 と何故か会話としては成立するのである。

「てかあんたも気をつけろよさっきみたいに初対面でいきなりからかうと場合によってはそれこそ荒事になるぞ」

 とさっき軽い口調で言われた事を思い出し意趣返しというのも変だがからかうような口調で言い返しておいた。
 まぁたぶん今までの会話を考えるにたぶん向こうも向こうで性分なのだから変わるとは思っていないし別にそれはそれで面白いとも思っているのだが。

白椿 > 「ふむ。まあ言葉に出来ないこともあるでな
気になるなら触れるが良い」

理由なく何かされるのはともかく、理由があるならやぶさかでもない。
手を差し出してやり、面白そうに好きにさせる。

「それこそ、そのつもりでやっておるのだから問題ないであろ?
問題なのは知らずにそうなることであって、知っておるなら調節もできるでの」

返してくる三谷の言を面白そうに聞きつつ、それでは足りぬであろ、とばかりに容赦なくからかう。
最初から避けるチャンスもないのと、避けるかどうか決められるのは大きく違う。
そもそも、避け具合やぶつかり具合まで楽しむ狐としては、どこまで迷惑をかけるかを
決めるのが面白いところで。

そういう意味では、三谷は面白いように引っかかる可能性があるのだが、それはそれで
かかりやすすぎて面白みに欠ける、というところでもある。

エアルイ > 「ん、ん。ありがとうだ!」

にかーっと笑うと、差し出された手指に自分の手を添え、
ふにふにと探るように、あるいは確かめるように触れていく。
片手でしか触れられない為にやはりその動きはぎこちないが……
自分と似た肌の色を見てか、何処となく嬉しそうにも見えるだろうか。
尾の方は楽しげに揺れていたので、こちらは分かりやすいだろう。

「…………ん、ん」

しかし、やはり何かが分からない。
片手であることを差し引いてもやはり手ではよく分からない。

「な、な、白椿」

だからといって


「舐めていいか?」


そう聞くのは如何であろうか

三谷 彰 > 「お前は確信犯かよ」

 軽くおでこを掻く。
 まぁ性分だとは思っていたがまさかの天然ではなく確信犯だった。
 まぁそれなら相手を選んでやっているのだろうし安全なのだろう。
 と思ったらいきなりとてつもない事を言い出したエアルイを見て目を丸くする。

「あんたはいきなり何をいってるんだ!?」

 今までいろんな奴を見てきたがいきなり舐めさせろと同性に言い出した奴は初めてだった。
 変質者が女性風紀委員に言い寄るパターンなら何度か見た事はあるが……

「俺少し飲み物買ってくるな。たぶんそんな長い間じゃねぇから大丈夫だとは思うがなんかあったら呼べよ」

 そういって壁から背中を離すと買い物へと向かっていく。このあたりにも飲み物を買う場所くらいはあるだろう。
 少ししたら帰ってきてまた会話に参加しただろう。

ご案内:「路地裏」から三谷 彰さんが去りました。
白椿 > 「今更何を。誰とて火遊びは楽しいに決まっておるであろ」

三谷に対し、くすくすと目を細める。
とても狐である。

「……む。舐める、か」
どうしようか、と思う。
基本的に、からかうのは得意であるが、好意にはあまり強くないのだ。
悪気がないのがわかるだけに少々ためらうが結局断れない。

「ふむ。あまり変な真似をしないならな。
それと、代わりになるものを何か差し出すが良いぞ」

等価交換。

エアルイ > 「なめるだから、なめるだぞ?」

三谷と白椿の言葉に首を傾げ、んえーと口から舌を出す。
純粋に口の中の方が刺激に鋭敏であり、また味覚なども使えるという獣じみた判断基準なのだが、
他の意味がわからないのは色々と悪いかもしれない。教育的に。

「対価、対価……ぞ?
んぅ……たのしいことが好きって、言ってた。
たのしい、もの……?」

むむう……と唸り、首を捻る。
受けた恩には、対価を。
代わりとなるものならば、相手が望むものを。

しかし……それがなにかが、分からない。
喜ぶものは、楽しいものだという……では、楽しいものとは?

白椿 > 「無い頭を捻っても良い考えなぞ出たりせぬぞ」
考えたうえでの思いつきなどというもののほとんどはまやかしである。
基本的にはすでにあるものの総合であり、それが試行錯誤の上で整理された結果である。
ゆえに無いところから出るわけでもなければ、降って湧いたりすることもない。
自力で調べた結果の再構築であり、それは漠然と考えるというわけではなく、様々な仮定と推論
調査と研究によるものだ。
それが近視眼的に陥ってる部分が解消され、ある時、ひらめいたと感じるだけである。

まあ、どちらにせよ、知らぬものは出てきたりはしない。

エアルイ > 「んるぅ」

思考をやんわりと止める言葉に、うんうんと響いていた唸りが止まる。
無い頭、について考えるほどの頭の余裕は無いためか、
深く考えはしなかったようだが……

「んー、分からない、ぞ。
なめるのと同じこと、あるか? 出来ることするぞ」

直球で、知っている相手に聞く。
ある意味間違ってはいないだろうが、
この場合は色々問題がある発言ではあるだろう

白椿 > 「……なら、相応の何かを貰うなり何なりするかの。
まあ結果次第とも言うが、それはそれで」
狐は、基本的に異能の調査等を無意識に行う。
そのため、本人の自意識とは別にそうしたことを望む傾向があり、それは必要に応じて適度に行われる。
もっとも、そうした調査に関してはダリウスと直接に関わりのある形での行為を避ける部分があるので、
本人の体に関わるものを持ち帰る、というところにとどまることが多い。
まあ関係性によってはその限りではないかもしれないが。

エアルイ > 「ん、わかったぞ!」

こくこくと頷くと、持っていた手を口許まで運び……
手のひらに唇を寄せると、小さな唇から伸びた舌でぺろりと舐めあげた。
掌から、指先へ。つうー……肌の上を舌が進み、口に収まる。

そのまま、口をもごもごとさせていたが……
やがて、何か納得したかのように尾をゆらゆらと揺らめかせた。

「ん、ん。ありがとう、だぞ!
対価は、ちゃんとするぞ」

手をゆっくりと離すと、ふんす、と気合いをいれるように胸を張った

白椿 > 「まあ、それはそれで。
そうさの……なにかしら、体の一部を貰えるとありがたいかの」

まあ、本人だとわかるものであれば基本的になんでも良いのだが。
それを解析するのは狐ではない。
特に重要である部分である必要もない。
言うなれば髪の毛一本からでも手がかりにはなる。

それはそれとして、何を納得言ったかはよくわからないが、それはそれで。

エアルイ > 「からだ?」

告げられた内容に首を傾げつつも、それが望みなら是非もない。

しばらく、確かめるように自分の体を触っていたが……
やがて尾の先端に手指をかけると力を込め、
先端を覆っていた鱗を一枚、軽い音を鳴らしながら引き剥がした。

「からだ、これで大丈夫か?」

ゆらゆらと尾を揺らしながら、つまんだ白い鱗を差し出してくる。


因みに、舐めた結果は『分からない』であった。
何かは分からないが、今は、それが分からないことが分かった。
それで満足したようであった

白椿 > 「うむ、それでよい。ありがたく頂戴しよう」

鱗には案外様々な情報が入っている。
それがあるとなれば相応に調査ができるであろう。

もっとも、狐としては特にそこに拘る理由もない
事情としてたまたまそうなっただけなので

一方、自身の素性については知ることも出来ない。
そういう狐として設定されているためであるが、素性を広めないtめという意味合いが強い。

エアルイ > 「ありがとう、だ!」

にへりと笑みを浮かべて尾を揺らすと、
三谷が戻るまでの間、とりとめもないことを話しているだろうか。

ご案内:「路地裏」からエアルイさんが去りました。
白椿 > 「うむ。まあ、そういうところだな」

基本的に、目的も果たしてしまった以上、特にこれといって必要なこともない。
相応に面倒も見るような形で、色々話して聞かせてやったりした。

ご案内:「路地裏」から白椿さんが去りました。