2018/01/11 のログ
ご案内:「路地裏」に遼河 桜さんが現れました。
遼河 桜 >  
「はぁい、いつもありがとうねっ♡」

落第外、その薄暗い路地裏に似つかわしくない声
その発した主もまた似つかわしくない…モノクロ基調のカジュアルコーデに身を包んだ可憐な少女の姿

明らかに二級学生とわかる数名を相手に何やら物品と金銭のやりとりをしていた

ご案内:「路地裏」に龍宮 鋼さんが現れました。
龍宮 鋼 >  
おい。

(路地裏の曲がり角から声を掛ける。
 女の子一人に不良数名と言う組み合わせは、この街でよくある組み合わせ、と言うわけではない。
 それでもやっていることはよくあることだ。
 こんなところで金と引き換えに手に入れるブツなど見なくたってわかる。)

テメェら何やってる。

(怒りを隠そうともしない声。
 ポケットに手を突っ込んだまま距離を詰める。)

遼河 桜 >  
「…?」

かけられた声に振り返る
黒い服装に、薄暗い中でも目立つ銀色の髪

かけられた言葉の内容はどこか粗野な印象を感じさせて、
同時にそn雰囲気から、不良数名は桜よりも前に出る

彼らにとっては桜は客
取引の邪魔をされて困るのは自分達である、当然の選択であった

そんな中、桜は一歩後ろへ引き、手渡されていた小さな包みをすっと服の胸元へと忍ばせ隠す

龍宮 鋼 >  
あぁ、そうか、つまりテメェ――

(歩きながらポケットから手を抜いた。
 構えもせず、やや足を速めてどんどん近付き、)

――全員叩きのめしゃあいいんだな。

(爆発的に加速する。
 不良たちへの距離を一瞬でゼロにする砲弾のような加速。
 その勢いのままに、とりあえず自身から見て一番右に立っていた男の顔面を思いっきりブッ叩くべく拳を放つ。)

遼河 桜 >  
まず一人、男子生徒が飛ぶ
壁に激突し気を失った生徒はそのまま項垂れ、
一瞬呆気にとられた後───

残った二級学生2人は少女に向け食いかかる
どこまでも三下じみた怒号をあげ、どこまでも素人じみた体捌きで

それを後ろから見ていた桜は、更に一歩後ろへと下がる
最初の一撃で飛んだ生徒を見れば、所詮売人の末端である不良達に勝ち目がないことなど見えているのだ

龍宮 鋼 >  
うぜェ!

(残った二人のうち、一人には腹へ強烈なボディーブローを叩き込み、一人目と同じようにぶっ飛ばした。
 もう一人は顔面を鷲掴みにし、万力のような力で締め上げながら押さえ付ける。
 頭蓋骨が割れそうな痛みに、不良は悲鳴を上げて膝をついた。)

――んでテメェも逃げてんじゃねーぞオラァ!!

(そのまま振りかぶり、不良を彼女――だと思っている――へと投げ飛ばす。
 何もしなければそのまま気を失った不良がぶつかって押し倒される形になるだろう。)

遼河 桜 >  
すぅ、はぁ、と深呼吸
あ、また一人飛んだ
なんて思いつつも準備は完了

「あっ、ありがとうございますっ!
 この人達にしつこく絡まれてて───」

あのままだったらどうなってたことかー、なんて
有り体に続けようとしていたら男がすっ飛んできた

「ひゃああ!?」

慌ててしゃがみ込む、男子生徒は哀れゴミ捨て場に突っ込んでいた

龍宮 鋼 >  
何がありがとうございますだ。
こんなトコでこんな奴ら相手にニコニコしてるようなヤツがまともな奴の訳ァねぇだろうが、あァ?

(ここは落第街の路地裏なのだ。
 絡まれているなら表通りだろうし、ここまで連れ込んでまだグダグダやってるような甘い連中などここにはいない。
 途中に転がっている不良の腹を蹴り飛ばし――不良はまた壁に叩き付けられた――、近付いていく。)

どうせろくでもねぇクスリかなんか買ってたんだろうがよ。
弱いモノイジメは趣味じゃねーからよ、大人しく私ゃ見逃してやる。

(見降ろし、左手を突き出す。)

遼河 桜 >  
「え…?サクラ、何のことだか……」

怯えたような、困惑したような表情を見せる少女
しゃがんだ姿勢から立ち上がりはしたものの、一歩、また一歩、後ろへと後ずさる

「な、何か勘違いしてますよ?きっと…」

言いつつ、視線を配る
二級学生達は全員気をやってしまっているようだった
いや、気がついていてもあれだけ強打されていたらまともには動けないだろう

───役に立たない連中である

龍宮 鋼 >  
――。
そうか、俺の勘違いか。

(勘違いだ、と言う言葉を聞いて急に笑顔になる。
 ニコニコと笑いながらその左手を伸ばし、肩をポンと叩こうと。)

いやァ悪かったなァ怖がらせちまってよォ。
最近物騒でよォ、俺らもピリピリしてんだ。
まァなんだ、詫びの代わりに――

(先ほどまでのドスの利いた声ではない、やけにフレンドリーな声。
 ニコニコしたままぽんぽんと肩を叩き、)

――テメェも死んどけ。

(振りかぶり、右拳を全力で放つ。
 とはいえ声や顔の変化にすぐ気が付けば、充分避けられるタイミングである。
 避けられなければ鼻血が出る程度では済まない威力ではあるが。)

遼河 桜 >  
「そうそう、勘違い───」

振り被られる右拳
少女?の眼が細まって、小さく聞こえる、舌打ちの音

次の瞬間、右拳が振り抜かれるよりも疾く
龍宮鋼の視界を覆ったのは少女の頭部であった

接近距離(クロスレンジ)においての屈指の不意打ち、ヘッドバッドを選択したのは
少女?が喧嘩慣れしているという証明に他ならなかった

龍宮 鋼 >  
(放たれた拳が顔面を捉えるよりも早く、その頭部が動いた。
 人間の身体でもっとも硬く重い部位の一つが自身の鼻っ柱を捉え、)

オーケー、死にてぇらしいな。

(――ない。
 軽く顎を引き、こちらも額で迎え撃った。
 半分ではあるが龍の血を引く自身の身体は人間よりも丈夫だ。
 こちらもそれなりに衝撃は受けたが、向こうは岩か何かに頭突きをかましたような衝撃が返ってきているだろう。
 至近距離にある彼女の瞳を、爬虫類のような赤い瞳でギロリと睨みつける。)

遼河 桜 >  
「(い…ッ~~~~~)」

声には出さなかった
しかし少女?にしてみれば不意打ちを読まれた上に、効果が0と言って良い
すなわち…相手とは格が違う

赤い瞳、相対する翠の瞳は、微笑む頬の動きに合わせて三日月に歪む

「ば~~~~かっ♡」

プシュッ…
少女?の顔が離れたと同時に、後ろ手に隠していた何かを鋼の顔に向けて、吹き付ける

催涙スプレー?
否、それは単なる香水であった
しかしそれでも眼に入れば視界を奪い、同時に嗅覚すらも奪う

それが鋼に効いたのかどうかも確認しないまま、少女は転身し背中を向け駆け出した

「誰かぁ~助けてえ!!殺されちゃうよおっ♪」

そんな、大声を張り上げながら

龍宮 鋼 >  
!?

(予想外の奇襲に目を細め距離を取る。
 催涙スプレーか、と一瞬考えたが刺激も何もない。
 目を刺すような痛みも何もなく、代わりに甘ったるい匂い。)

――く、のガキ――ッ!!

(香水。
 そう気付いて一瞬呆けている間に、彼女は逃げていく。
 張り上げる大声と言い、コケにされたことに気付いて頭に血が上る。
 全力で地面を蹴り、途中で転がっている不良を彼女へ向けて蹴り飛ばし、更に追う。)

ぶっ殺す!!!

(すっとぶ不良と並走しながらあっという間に射程に捉え、地面を思い切り踏み抜いて。
 極大の質量を載せた破壊的な威力を持った拳を、空を飛ぶ不良越しに思い切り叩き付けようと振りぬく。)

遼河 桜 >  
「♡」

振り抜いた先、少女?が消える
いや、ビルとビルとの隙間、そこへと逃げ込んでいた
薄暗い路地裏、こういった細い隙間などいくらもあるのだ

───そして少女?は更に何度か声を張り上げて…
その先、少し開けた場所へと出る頃には騒ぎを聞きつけたであろう、
落第外の掃き溜めに溜まりに溜まった二級学生たちがずらずらと現れはじめていた

「私ぃ、今恐ぁい女に追われてるの…。
 助けてくれたら、みんなにたくさん、お礼しちゃうよぉ…♡」

口元に浮かべるのは妖艶なる魔性の歪み

揃いも揃ったり不良少年十数名の視線は、一斉に隙間を抜けてきた鋼へと向かう

龍宮 鋼 >  
(空を飛んでいた不良の腰が不自然にへし折れる。
 ベキバキと言う嫌な音を立てて不良は更に加速し、地面を転がっていった。
 そしてうまく逃げる彼女を追いかけて行った先。)

――おーおー。
よくもまぁこれだけザコばっか集めたもんだ。
けどな。

(不良十数名を前に少しクールダウン。
 拳をゴキゴキ鳴らしながら猛烈な速度で踏み込み、)

――この龍宮鋼を相手にすんなら、この十倍連れてきやがれ!!

(ハンマーのような右フックで数名の不良を纏めて殴り飛ばす。
 マンガかアニメのように大量の不良たちを薙ぎ払っていく。)

遼河 桜 >  
「はぁーあ、ぺっぺっ。んもー、蜘蛛の巣ぅ……」

鋼が不良達を相手に大立ち回りを演じているさなか、
手鏡を取り出して髪を整えたりと、乱れた身嗜みを憂うサクラ

サクラの甘言に踊らされた二級学生達は僅かな異能すらも駆使して彼女を襲う
そして騒ぎに遅れてやって来る不良達も、その状況を見れば真っ先に鋼へと向かっていく
力の差がいくらあってもさすがに疲れを見せるだろうと、そうすればこの複雑に入り組んだ路地裏、逃げることは難しくない
そこまでが、サクラの用意した逃げ道である

「派手に暴れて目立ってお疲れ様~、ばぁ~~~かっ♡って感じ、死ねよスベタ♪」

手鏡をバッグに仕舞って、立ち回る鋼を遠巻き眺めながらぺろんっと小さな舌を出してみせる

龍宮 鋼 >  
――ハ。

(不良たちをなぎ倒し続けるさなかに、笑う。
 彼女の逃げる手際に感心したのではなく。
 これほど見事に彼女に騙される不良共のアホさ加減に呆れたのでもなく。)

おせぇよ、バーカ。

(騒ぎを聞きつけて集まってきた不良たちの間で乱闘が起き始めたからだ。
 彼らはむしろ自身と彼女の間にいる二級学生たちを退かすように立ち回り、自身のことを姐さんどうぞ!などと促す。)

――さーて、誰が、なんだって?

(彼らは鋼の両翼。
 龍宮鋼率いる、落第街のヴィジランテ。
 乱闘を背後に、こめかみから僅かに血を流しながら彼女を追いかける。)

遼河 桜 >  
「……あれ?」

見据える先、まるでモーセの十戒のラストシーンのように不良達の波が二つに割れる
同士討ち…ではない、あの女の仲間がこの落第街に混じっていたいたのだ

「…冗談じゃない、ってね」

こうなれば一目散である
細い路地、入り組んだ迷路のような路地裏を右へ左へ───

十度も曲がり角を抜けた先、廃ビルと廃ビルの間でようやく息を吐く

「はぁー……今日は災難~…むかつく!あの女!」

げしっ、と足元に捨てられていた雑誌を踏みにじる

龍宮 鋼 >  
待ちやがれ!

(追いかける。
 平地ならばこちらの方が速いのだが、うまく小さい体を利用して右へ左へと抜けていく。
 しばらく追いかけているうちに、見失ってしまったが、)

よォ。
また会ったな。

(彼女の悪態が聞こえた。
 そちらの方に移動していけば、雑誌を踏みつけている彼女の姿。
 ゆっくり、一歩ずつ歩を進める。)

遼河 桜 >  
「…しっつこぉい。
 ねぇねぇ、しつこい女は嫌われるって、知らないのぉ…?」

相対し、じりじりと後ずさる
相手が一歩詰めれば一歩、また一歩詰めればまた一歩

「しょうがないなぁ…降参してあげるよ。
 コレを渡せばいいんでしょ?はぁ……」

言いつつ、ごそごそと服のポケットを弄る

龍宮 鋼 >  
それが信条でな。

(構わずすたすたと歩いていく。
 が、彼女がポケットに手を突っ込めば動きを止めて。)

――勘違いしてんな、テメェ。

(ブン、と腕を振る。
 何かが空気を切り裂いて飛び、彼女の頬をかすめて後ろの壁に突き刺さる。
 振り返れば、コンクリートの壁に半分ほど埋まった、鋼色の鱗のような甲殻のようなものが見えるだろう。)

ンなもんはもうどうでもいいんだ。
テメェは、この俺が、ぶちのめす。

(遠い間合いで腰を低く落とし、構える。
 我流の、中国拳法のような構え。)

遼河 桜 >  
「っ…」

ポケットを探る動きのままに硬直する
そしてそんな宣言を受ければ、上目遣いに顔をあげて…

「え?なんで?ぶちのめしても何もいいコトないよ?
 あっ、じゃあほら、お金あげるよ、今はそんなにもってないんだけど───」

わたわたと少し慌てる様子で財布を取り出し、
中から学生の持ち金とは思えないほどのお札を取り出し、差し向ける

「ね?キミ強いみたいだし、これで仲良くしてくれると嬉しいな♡」

龍宮 鋼 >  
――ハァ。

(ため息。
 先ほどまでの怒りも消え失せ、失望と嫌悪の色を目に宿して。)

どうしようもねーな。

(構えすら解き、ザシザシとつま先で地面を蹴って。)

――救えねーよ、テメェは。

(ダン、と地面を蹴る。
 力技でゼロからマックスまで加速させた身体ごと、拳を彼女の腹へと走らせた。)

遼河 桜 >  
「え───」

それは少女?が何かの反応を見せるよりも早く、
柔らかい腹へと深々と突き刺さった

手元から離れたお金がはらはらと舞い落ちる中、
サクラもまたお腹を抱えるような姿勢で崩折れる

「あ゛う゛───ぇ゛ッ……な、な゛んで、ェ……。
 サクラ…な、何もぉ…じでない…のにぃ……ッひどいぃぃ…ひどい、よぉ…ッ」

蹲ったまま、呻くような、か細い声をあげる

龍宮 鋼 >  
(腹に突き刺さる己の拳。
 その感触だけで、別に鍛えたわけではない普通の人間だとわかる。)

あぁ、そうだな、テメェは別に何もしちゃいねぇ。

(蹲った彼女の首を右手でひっつかみ、ぐいと片手だけで持ち上げる。
 そのまま自分の目線の少し上まで持ち上げて、自身の顔の横へ左拳を構える。)

テメェはただ、ケンカ売る相手を間違えただけだ。
――あばよ。

(そのまま右手を離し、同時に左手を顔面へ向けて放つ。)

遼河 桜 >  
「──!?
 ま、待って、やだ、やめっ…顔はだ───」

言葉の終わりを待つこともなく、鈍い音が路地裏に響く

ずる、と廃ビルの打ちっぱなしを背に、顔を伏せたままへたり込む

言葉を発するでもなく、何かをするでもなく
もしかしたら気を失っているのかもしれないが───

龍宮 鋼 >  
(ビ、と左腕を払う。
 左拳に僅かに付いた血が地面にパタタ、と落ちた。
 彼女の方へと近づいて、もう一度首を掴む。
 反応がなければ先ほどのように持ち上げて、)

――オイ、生きてるか。

(問いかけた。)

遼河 桜 >  
「………ひどい、ひどいよ───」

整った顔を歪めるようにして腫れ上がった頬
鼻孔と、口内を切ったのであろう血が細い顎を伝う

どこか呆然としたような虚ろな翠の眼は既に鋼の顔を見てもいなかった

ただ掴み、持ち上げられるままの人形のように

ご案内:「路地裏」に楊柳一見さんが現れました。
龍宮 鋼 >  
(その姿を見て、目を細める。
 右手を離し、ドサリと彼女の身体を地面に落として。)

――。

(そのまま背を向けた。)

楊柳一見 > 一般的に、可憐な少女(仮)をネックハンギング・ツリーに
持ち込んでる剣呑な人物を目の当たりにした場合、取る行動と言うのは――

「オーイそこの殺人鬼っぽいのー」

間違ってもそんなたわけた声を投げる事ではないのだが。
少なくとも状況は悪化しなかったらしい。
落とされた少女(仮)を認めるや、無頓着な足取りでそちらへズカズカ近付いていく。
目立った武装など何もない。無警戒が服でも着ているかのように。

遼河 桜 >  
「───!」

翠の瞳に小さな光が灯る
それは、第三者の声が聞こえたからに他ならない

「助けて!!殺される───!!」

現れた人影に向けて、そう泣き叫んだ

龍宮 鋼 >  
――あ?

(乱入者に視線を向ける。
 妙に普通っぽい見た目をしているが、知っている。
 ここでは、そういうやつこそヤバイ。)

……途端に元気になりやがって。

(先ほどまで死んだ目をしていたくせに、他のだ誰かが来れば急に元気になった。
 しかしその叫びを止めようとはしない――と言うより。
 既に彼女に対する執着も興味も消え失せていた。)

楊柳一見 > 「お、生きてるね。善哉善哉――つっても……あーあーあー」

上がる助けを呼ぶ声に、うんうん頷くも、それも苦い顔に取って代わられる。
血やら涙やら腫れぼったいのやらで、えらい事になってる少女(仮)の顔を見ればむべなるかな。

「かーわいそうに。どれどれ」

毒づきはしても止めはしない下手人をいいことに、少女(仮)の傍に片膝ついて、
何やらポケットから探り当てた薬包紙を一つ、そっと彼女(?)へと握らせる。

「中身。軽めになめて、痛いとこにパッパとつけとき。しみるけど」

中にあるのは――砂。もっともただの砂利ではない。
怪我した時の為にとっといた、土砂加持用の清め砂だ。
即効とはいかないが、後に引く傷は残すまい。

「――で、だ」

立ち直って、下手人の方を見る。
感情の読めない、胡乱な目つきのまま。

「さっきさ、あそこでもワチャワチャやってたみたいだけど――」

指差すのは、宣告二人が追いかけっこに興じていた路地。
今は静かだ。――そう、二流学生も、ヴィジランテも、どちらのいらえも、ない。

「姐さん、ってどっち?」

首を傾げて、そんな問い。

遼河 桜 >  
受け渡された砂を疑問に思いつつも、良心から出た行動であるだろうと
それでも僅かな疑いをもってほんのすこしだけを傷へと言われたとおりにすれば

「ひうっ…」

染みたのか、小さな悲鳴をあげて───

「わ、私。歓楽街からこっちに来ちゃって、迷っちゃって…
 そしたら、不良達の喧嘩に巻き込まれて───」

嘘八百、つらつらと出てくる身勝手な方便
ただしそれを告げる表情は恐怖に震え、涙を流し、暴行を受けたその証拠を宿していた

龍宮 鋼 >  
(乱入者が少女を治療しているのを視界から追い出し、ポケットから取り出したタバコに火を付ける。
 何やら少女の方が適当をブッこいているが聞こえるが、どうでもいい。
 そういう扱いは慣れているのだから。)

あ?
あぁ……。

(恐らくは自分のことだろう。
 少女が呼んだ連中は、別に従えているとかそういう風ではなかったから。
 そう答えようとして、向こうが静かになっているのに気が付いた。)

答える前に一つ聞かせろ。
――テメェ、アイツらになんかしたか。

(爬虫類の瞳を、乱入者へぶつける。
 手を出していたらただでは済まさない、と言う意思を視線に乗せて。)

楊柳一見 > 「あれま。運がなかった――や、まだいい方か。次からは気ィ付けんといかんよ?」

女の声音は軽い。
裏界隈のいざこざに巻き込まれ、五体満足と言うだけで幸運だ。
それを知ってか知らずか。そも、どうでもいいのか。

「――さ、歩けるうちに少ぅし離れとき」

蛇――否、昔語りのドラゴンにも匹敵する眼力をひしひし受けつつも、
少女(仮)へと、安全な所へ避難するよう促すジェスチャー。
それを一しきり終えてから、

「えっとねえ。アタシさ、好きなんだよね。塩おにぎり」

即答もせず、筋道のぶっ飛んだ話を兇眼の主へ返す。それも朗らかな笑みに乗せて。

「で、散歩しながらパクついてたワケよ。そこへこう、雪崩を打って来られたモンだからさあ――わやになっちゃって」

ドバーっと地面にブチまけました、と拙いパントマイム。

「だからまあ、つい、こう……ね?」

無雑作な缶蹴りにでも興じるような蹴り。
物理則として、届くはずがないのだ。それは。
しかし、現にその蹴りの軌道をなぞるように生じた真空の刃が、ねめつける相手を襲う。

「ま、死んじゃおらんよ。多分」

けらけら笑いと不似合いに、唸る兇風が肉迫する――!

遼河 桜 >  
こくん、と頷いて、わたわたと少し慌てた様子で離れる
───どころではない、この場から一目散に逃げてゆく

「(あー助かった、やってらんねぇよ、クソ女が)」

まだ熱をもって痛む頬を撫でながら、二人に背を向け走ってゆく
一寸もすれば少女の姿は複雑な路地裏に紛れ消えてしまうだろう───

龍宮 鋼 >  
(逃げていく少女は気にも留めない。
 そもそももう落とし前は付けたのだ。
 彼女との一件はこれで終わり。
 それよりも。)

そうかい。
そりゃあ――

(彼女の言葉に答えを返そうとしたところで、彼女の脚が動く。
 同時に、風がこちらへ飛ばされ、)

――ッ、!

(ズバンと、身体が切り裂かれた。
 ぼたぼたと血を流しながらも、倒れない。)

ハ、ぁ……そいつァ、ウチのモンが、悪かったな。

(タバコの煙を吐き出し、距離を詰める。
 途中、短くなったタバコを投げ捨て、拳を握り固めて。)

アイツらの責任ァ、俺が受けた。
――なら、アイツらの落とし前は、誰が受ける?

(間合いまで近付き、ニ、と笑って。
 鋼のように固めた拳を、彼女の顔面へ。)

楊柳一見 > 「おっ、元気ね」

結構な健脚で離れ行く少女(仮)の姿を目の端に留め、
帰り大丈夫かなあ、とも少しばかり案じもしたが、目下の問題は別にある。
ちなみに先の言葉は眼前の女に向けてでもある。
軽めとは言え、風圧の斬撃を真っ向受けて怯みもしないとは。

「おっ――もしろい事言うねえアンタ」

渺と迫る砲塔にも似た拳を、横合いへ身を投げ出すようにしてかわす。
頬にわずか亀裂じみた擦過傷が走った辺り、まともに喰らいたくもないもんだ。
転倒必然の体勢から、捲く風の勢いを鎧って更に回転。
狂い独楽の如く宙へと舞い上がる。

「まるで時代遅れの任侠さんみたいな事言いくさる。
 アタシゃお楽しみをフイにされた被害者よ?
 だからここは――」

転回の激しさが更に跳ね上がる。
周りの砂石ごと荒ぶる風をも勢力圏に取り込んで――

「アンタが堪忍して下さいって泣き叫ぶシーンじゃん!」

喝破。
同時に振り薙がれた腕の流線を辿り、小さくも鋭く疾る竜巻が、
数条の錐の如くに眼下の女を狙い撃つ!

龍宮 鋼 >  
だからソイツァ詫びただろうが!

(背中から鋼色の翼と尻尾を飛び出させて。
 その翼で、自身の身をすっぽりと覆う。
 鋼の殻に閉じこもり、砂粒混じりの竜巻をやり過ごす。)

オォぁア!!

(血を蹴ると同時に尻尾で地面を叩き、弾丸のように爆ぜた。
 吹きすさぶ嵐のような風をものともせず、一直線に彼女に向って突き進み、)

だから大人しく一発殴られてくれやァ!!

(翼の殻から、鋼に覆われた右手を伸ばす。
 殴るためではなく、掴むために。
 その首をがっしりと掴もうと、矢のように突き出した。)

楊柳一見 > 「ギョーカイ風に言えば――誠意が足らんのじゃワリャア!!」

お国風にドスを利かせた売り言葉を投げ、その変成に僅か目を瞠る。

「龍かワイバーンか知らんが、そんなん混じった奴のステゴロなんざ受けるかボケェ!
 首が千切れ飛ぶわッ!!」

それを仮定するなら、先の少女(仮)に対するあれこれも、
手心は加えていたんだろうか。
まあそれをこちらにも期待するほどおめでたかないが。

「――っぶな…!」

紙一重で避けた魔手の痕とばかり、首筋にまた生傷が増える。
洩れる血の筋を指に掬い取り、相手から目を逸らさぬまま、
ビルの屋上へぽおんと撥ねるように退避。
半端な風圧では通じない。
かと言って、己の動きに応じて発する風の能力を、
あの超接近型――それも弾丸張りのスピード持ちだ――と思しい女の近くで十全振るえるか。
否だ。ここからは絡め手で行かねば。

「一者摧壊部、二者野干部、三者一牙部、四者龍象部――」

血糊の付いた指先で、屋上外縁部へと朱色の呪言を走らせる――。

遼河 桜 >  
───そんな二人の激戦が続く路地を後にしたサクラ

「(ようやく大通り近くかよ…)」

小さくぼやき、乱れる呼吸の中駆け足を続ける
その足音に、断続的にノイズが交じる

ビリッ、びり、びり

薄布を裂くような音

ポケットの中で握りしめていた小さなナイフ
それで自分の服にあちこち切れ目を入れ、少しずつ少しずつ、破いていく

大通り、歓楽街付近まで出れば、警邏の風紀委員がうろついている
何度も通った場所である、それくらいは知っている───

龍宮 鋼 >  
(突進を避けられ、その勢いのままビルの壁へと両手両足を突き刺して。
 ビルの屋上へと逃げる彼女を追って、自身もそちらへ跳躍。)

――ガ、っ、そが……!

(四足で屋上へ着地し、膝を折る。
 先ほど斬られた怪我はすでに血が止まっていて、破れた服の下から鋼色が見えるだろう。)

グ、あ――が、にげ……ッ!

(もがく。
 いつの間にか手足の鋼色がその付け根まで伸びていた。
 闇の中でギラリと光る右目の周りにも、鋼色。)