2018/05/25 のログ
ご案内:「路地裏」にレイチェルさんが現れました。
■レイチェル > 薄汚れた路地裏には不似合いな、煌めく金髪を靡かせながら。
眼帯の風紀委員は一人、路地裏を歩いていた。
その風貌だけで凄まじい存在感を放っていて当然である筈だが、
不思議とその色は希薄で――儚げですらある。道端に咲いた小さな花の如く。
彼女にとって、見回りは本当に久々だ。
大きな戦いを幾度か乗り越えた彼女だが、
ようやく『ただの風紀委員』に戻りつつあるといったところである。
思えば、路地裏の見回りから全てが始まった。
一連の事件に関わったのもこの路地裏からだ。
そんなことを懐かしみながら、今日だけは。
今日だけは、以前と同じようにこの路地裏を歩いてみようと思ったのであった。
月明かりを受けて、一歩、また一歩と静かに歩を進める。
今日の路地裏は穏やかな風が吹くのみで――とても、静かだ。
見回りがてらの散歩には、丁度いい。
ご案内:「路地裏」に六道 凛さんが現れました。
■六道 凛 > 見つめる路地裏は、境界だ。
壁ができた、隔たりある、踏み込むことを”もう、許されない”線引。聖域――……
その線の手前で。制服の上に来たパーカーで顔を隠しながら。
ソレは、ただ、立っていた。
壁により掛かるでもなく。道の中央で……ぼーっと……
あぁ、女々しい。なんて女々しい。でも仕方がない。
進めもしない、ひきもしない。寄る辺のない。もう”誰にも必要とされない”
そんな生活を初めて、幾日か。
もう、戻ってしまったほうがいかに楽可――
もはや、それは儚げどころか。蜃気楼のようで――
それは、”識ってる”彼女にはどう見えるのだろうか
■レイチェル > 路地裏の境目。
光と闇。生と死、秩序と混乱。
その狭間。
境界線の向こう側――夜の底から舞い戻った金の女が、靴音静かにするりと現れた。
灯の下に照らし出された眼はじっと、目と鼻の先に居る男を見つめている。
一瞬その視線は男の足元に落ちたが、すぐに彼の顔へと戻り。
「ひでぇ顔してんな。帰り道の分からなくなった子供みてぇな――」
そう言って金の女――レイチェルは、小さな肩を竦めて見せた。
「――まったく、ひでぇ面だよ。まぁ、無理もねぇが……」
小さくため息をついて、一度歩いてきた道を振り返るレイチェル。
そうして再び男の顔に視線をやれば、苦い顔をして見せる。
■六道 凛 >
「なんだ、いたんだ」
ぼやく。静かに顔を上げれば”塗りつぶす”。
感情は無く、いつもの彼。美術屋。
少しずつ綻びていたものは、しかりと、修正して。
「気のせいでしょ? そっちのほうが、ひどい顔、してるけど?」
パーカーを深くかぶり直して。
「――そんな顔、するなにか、あった?」
■レイチェル > 「気の所為なら良いんだけどよ」
気の所為では、と問われれば。本当にそうだったのかと思い込まされてしまう。
それほどまでに――かぶったフードと共に――彼の感情はすっかり分からなくなってしまったのである。
しかし彼女は、今までの彼のことを識っている。
垣間見えた感情が気の所為などではないことは、掴めていた。
ただ、口からはそんな言葉を放り投げるのみ。
なんとも不器用なキャッチボールであった。
もっともそれは、二人の距離を表すものであるのかもしれない。
「……別に、オレの方は何もねぇさ。いつも通りだぜ」
何かが脳裏を過ったのか、やはり苦い顔をするレイチェル。
いとも簡単に感情を覆い隠してしまう凛とは、対照的である。
何となく顔を直視し辛いような、そんな様子だ。
■六道 凛 >
「なんでもないって言うならさ。もっと上手く隠しなよ」
――ふと、手癖で。頬に手を伸ばす。
払いのけられなければ、輪郭をなぞり、首をなぞり――
まるで、その仕草は恋人のよう。
「なんだったら。その表情。消してあげようか? そういうの、得意だよ?」
なんて微笑えば。その微笑みは、紫色。
艶やかな色が、灯り。今を過去で塗りたくる。
「あぁ、でももっとこっち、来てくれないと。ボク、そっちに入れないから」
■レイチェル > 指に、撫でられる白い頬。なぞられるすらっとした輪郭。そして触れられる、生命の脈動を確かに感じる細い首筋。
それは本当に、甘い時間を過ごす恋人のようで。
並の女であれば、すぐに陥落しかねないような、魅惑の手付き。
レイチェルもまた、彼の美しい目に吸い込まれるように――
「っ……! そういうの、やめろって言っただろうが」
首筋を撫で始めた辺りで、その手を払い除けた。
気を抜けば雰囲気と妖しげな色に飲み込まれそうになる。
「表情を消す? 得意? 冗談きついぜ。
まっとうに生きようとする人間のやることじゃねぇな。
こっちに入れない、とは言うが……お前の心の方は、やっぱりまだこっち側に
あるんじゃねぇか? ……なぁ、六道 凛」
名前は、ゆっくりと呼ぶ。
目の前の相手に対し、そして自分自身に対しても、事実を確かめるように。
■六道 凛 >
「じゃあ、そういう仕草、やめてよ。職業病なんだから」
にぃっと嘲笑う。
くすり、微笑めばわざと首筋をちらつかせるようにして――
「そう? 快楽で、一時忘れることは誰でもすることでしょ? 元々、男娼だったんだから。一回や二回で、そっちに戻れるなら、それはそれで良かったんだけどね」
くるり、背を向け。パーカーの紐を弄る。
「その名前の時点で、そっちに行けないし、いないよ。ほんと、残念だけどね」