2018/05/26 のログ
■レイチェル > 「……言っとくが、今のオレは簡単には堕ちねぇぜ」
ちらつく首筋から目を背けるレイチェル。
脳裏に過るのは、六道の現れた紫色の夢。
それを振り払うかのように首を横に振れば。
首筋の下に流れる血を感じる。血に狂う獣の本能に抗う為に、
獣と堕ちぬ為に、レイチェルは強く拳を握り締めた。
そうして今度はしっかりと、真正面からその顔を見るのであった。
「一回や二回で駄目だったとしても、だ。
それなら何度だって表を歩いてみればいい。
最初は眩しいかもしれねぇが、オレがサポートしてやる。
オレだって元々は暗い世界で生きてた人間だが、今はこうやって
風紀委員としての居場所を得て生きることができてんだ。
残念なことなんてあるかよ。ここはお前の帰る場所じゃねぇ。
あっちじゃ、生まれ変わろうとしてるお前を受け入れる奴らが待ってんだぜ。
さぁ、帰るぜ六道 凛。立ち止まるのは終わりにしようじゃねぇか」
そう言って、レイチェルは彼に近寄って、手を差し伸べる。
じっと、その顔を見据えて。
■六道 凛 >
「そう――」
無機質につぶやくその声が、儚げに揺らめいて。
すんっと、鼻につく鉄の香りが少しだけ懐かしかった。
――懐かしいなんて。ずいぶんと遠くへ来ちゃったもんだ
「なに? 告白? ずっとそばに居てくれるの?」
クスクスと、誂うように演じる。ピエロのように。
過去のような、大舞台ではないけれど――
「そうだね、じゃあ一生側に居てくれるなら考えとくよ。もう、”捨てられる”のはゴメンだからね。もう二回も経験したんだし」
さて、でも帰るとは……
「――ボク、もう家無いけど。ドコに帰るんだい?」
■レイチェル > 「誰が告白なんてするかよ! お前が表の世界で生きられるようになるまで
保護観察するのがオレの仕事ってだけだ。……ま、仕事でなくても今のお前を
放っておくわけにはいかねぇけどな」
笑うピエロを前にして、レイチェルはむっとした表情で腰に手をやった後、
小さくため息をついた。
「きょ、極端なんだよ、お前っ!
一生側に居るのは……ああ、えっと……流石に無理だぜ。
だが勘違いするんじゃねぇぜ。保護観察が終わったからって捨てたりもしねぇ。
出来る限りのサポートはしていくつもりだぜ。
その時はまぁ……同じ風紀委員として、な」
半歩身を引くレイチェルだったが、すぐに冷静さを取り戻した。
そうして、続く言葉を述べれば深く頷いて六道を見やった。
「……そうだな。風紀の部屋を使うのはどうだ? まだ空きはあると思うぜ。
ま、他の風紀の奴らと近い場所で過ごすことになるが……」
■六道 凛 >
「何、真に受けてるんです? 冗談に決まってます」
くぁっと欠伸をして。
「考えるのも馬鹿らしいですしね。うん、そろそろいい感じに”馴染んで”きました」
口調が、落ち着いてきて。ようやく、いろいろと元通り。
―― 適度な距離なら、近寄られないほうがマシ。無くならなくて済む
「――まぁ、気が向いたらいつでもどうぞ? 慰み者になる準備はいつでもできてますから」
ぱさり、フードを避けて。素顔を晒せば。
ふわりとラベンダーの香りが鼻について。どことなく色気を感じさせ。
「――襲われたりしません? 大丈夫かな? 無意識に、シちゃうかも?」
■レイチェル > 「ちっ、そうかよ。そりゃあ、安心だ……ったく、お前と話してると本当に疲れるぜ」
肩を竦めるレイチェル。
間違いなく、彼女にとって一番苦手とするタイプの相手が目の前に居るのである。
すっかりペースに呑まれてしまっていたレイチェルは、再び首を横に振る。
なんとか手を差し伸べてやりたい気持ちはある。あるのだが、伸ばした手が掴むのは
霧ばかり、といったところだ。
「誰が慰み者になんてするかよ。お前を襲うなんてこともねーって!
ったく……笑えない冗談はそろそろおしまいにしようじゃねぇか」
そう言ってレイチェルは六道の横を通り過ぎ、裏路地から離れるように少しばかり歩を進めて
足を止めた。
■六道 凛 >
「そうですかね? ほら、貴女はそうでも風紀員の男たちは違うかもしれないじゃないですか――……」
ぺろっと下を出して。
後ろをついていくように歩いていく――
「誰かと同室なんて、ムラムラして襲われるなんて。創作物ではよくあるでしょ?」
――とんっと。背中にぶつかる。
「突然立ち止まって、どうした――」
■レイチェル > 「風紀委員がそんなことするとは思いたくねぇが……」
無論、あり得ない話では無い。風紀委員という肩書を背負った者全員の善性を信じるほど
レイチェルも純粋ではない。それに、相手はこの六道である。絶対に襲われない、という保証は何処にもない。
「……なら、やっぱり改めて上に頼んで……」
そんなことを考えながら、レイチェルの拳は未だ握り締められたままだった。
身体が熱い。火照っている。彼女自身認めたくないことではあるが、六道の首筋を見せびらかす挑発は、彼女に対して効果的であったようだ。
気づけば呼吸が、荒くなっている。貴子から血を貰ったのは、1周間以上前の話になる。
そんなことを思い出しながら。足を止めたレイチェルの身体はふらついて。
■六道 凛 >
「あぁ、もう、だからちゃんと隠せっていってるじゃないですか」
やれやれと、肩を竦めて。
その細い腕で、受け止め――るなんてこと、出来るわけがない。
もともと”肉体”の筋力なんて縁がないものだ。そのまま――
――押し倒されて。
「あぁ、もう。ほら。我慢するから、体に悪い――吸ってしまって、楽になったらどうですか?」
どさりと地面の下に身体を潜り込ませて、衝撃を彼女に伝えないように――なんて器用な真似、出来るわけがない。
だからこれは”偶然”だ
「――ほら、今のは事故のようなものですよ。倒れた拍子に、つい、歯が当たってしまった。それだけ。フラフラされると、ボクも迷惑ですから。速くいつもどおりになってもらいませんと」
外堀が埋もれて、断る理由もなくなっていって――
「――どうぞ?」
鎖骨が、覗く
■レイチェル > 甘い言葉がかけられ、外堀が埋められていく。
本能に抗える者などそうは居ない。そしてこの六道という男は、本能をくすぐることに
おいて、彼女に対し遺憾なくその才能を発揮しているようにも思えた。
結局、吸血鬼の血を引く者は獣に堕ちるしかないというのか。
上手く立てなくなった状態の身体でも、レイチェルの拳は握り締められたままだ。
とくんとくんと、六道の皮膚の下を通る血の流れが、全て透けて見えるような感覚を覚える。
身体がどんどん熱くなっていく。狂ったように、昂ぶっていく。
その一方で、彼女の持つ確かな理性が本能を押し止めようと強い意志で抗っている。
「オレは――」
レイチェルは、握り締めた拳を――
………
……
…
ご案内:「路地裏」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「路地裏」から六道 凛さんが去りました。