2015/06/29 のログ
ご案内:「スラム」に東郷月新さんが現れました。
東郷月新 > 先日は危うい所だった。
まったく、単独行動だと取れる戦術が限られてしょうがない。
何とかしなくてはいけないのだが、さて、どうするか。

「――とりあえず、地形把握を再開しますか」

東郷には大きな目的が出来たが、それを即座に実行する事は出来ない。
何せ、ロストサインはもうないのだ。
事はゆっくり進めるしかないだろう。

東郷月新 > スラムをぶらぶらと歩く。
相変わらずたくましい連中だ。
先日破壊が行われたというのに、もう再建が始まっている。
人間、どこでも暮らせるという事か。

「ご苦労な事ですなぁ」

流石に東郷を見て襲ってくるような奴は居ない。
二本差しは技や異能を持っている事が多い為、相手にされないのだ。

東郷月新 > とはいえ昨日の今日だ。
ロストサインのマスターが二人現れた。
そのせいで警備も厳重になっている事だろう。
あまり人斬りなどは慎まなくては。

「――どうしますかなぁ」

さしあたって東郷に必要なもの。
三大欲求を満たす為のもの。
寝床、飯、女といったところか。
女は無くてもいいが、あるに越した事もない。

東郷月新 > 寝床と言っても、ただ眠れれば良いわけでもない。
やはり最低限、風呂と布団くらいはついていて欲しい。
返り血を浴びる事も多いし、服も洗いたい。
となるとホテル暮らしになるが――

「足がつくのは勘弁ですなぁ」

ままならない。
財布の中身も、しばらくは安泰だが裕福というわけではない。

ご案内:「スラム」に湖城惣一さんが現れました。
ご案内:「スラム」に”マネキン”さんが現れました。
ご案内:「スラム」にリグナツァさんが現れました。
湖城惣一 >  握りこぶし大の握り飯を摘みながら歩く男が一人。
和装ベースであろう服装に、腹を晒したまま。
そのさらされた肌には美しい真一文字の傷が刻まれている。
 名を、湖城惣一。
 竹刀袋を引っさげながら、握り飯を咀嚼する。
 巡回……というほどでもないが、一応は風紀・公安に属するものとして時折こうしてスラムに足を運んでいた。

”マネキン” > 【”マネキン”はスラムでいつもどおりのダンボール箱に座り、商売をしている。
とはいえ人が妙に増えてきた。ややフードを深めに被る。気にしなければそのまま物陰に去るかもしれない。】

…また面倒ごとか。先日の機械人形といい、どうなっている。

【握り飯片手に歩く男の様子を伺い、小声でそう呟いた。】

リグナツァ > すとん、と虚空から魔術師と犬が降り立った。
「…お前も随分贅沢だなアルヴァーン。このリグナツァが主人でなければ
、島一つ縄張りにするなどそこいらの犬には出来まいよ」

周囲を睥睨すれば……なるべく転移事故の起こらぬよう、人通りの皆無に近い通りに印をつけて居たはずだが、なぜだか人数が居る。

「……なんだ?祝祭日でもあるのか?」
「食事でも振る舞われねば、このような掃き溜めに人も集まるまいが。」
疑問を遠慮なく口に出す。足元で犬が首を掻いた。

東郷月新 > 達人同士は惹かれ合うのかどうか。
その男を見た時、剣士の血が疼いた。

――今はまだ、騒ぎを起こさない方がいい。
冷静な部分はそう警告する。
だが、剣士であり人斬りである東郷にとって、これは避けようのない事かもしれない。

握り飯を食らう少年の行く手を阻むように。
東郷はふわり、と現れた。

「――――」

湖城惣一 > 「…………む」
 ――元々。目の前で大きなトラブルが起きなければどうでもいい。
目の前で取引が成されようと、暴動が起きようと。
それが落第街に属するものらの小競り合い程度で済むならいちいち手を出すつもりもなかった。
 唐突に現れた身なりの良い異邦人。気配を潜めるフードの男。指名手配犯。
いずれも、彼にとって"積極的に刀を抜く"事態ではない。
 ――だが。
 目の前の剣士は、明らかに。
「君、どいてもらえないか」
 尋ねてから、握り飯を口の中に放り込む。
たっぷりと咀嚼しながらも、竹刀袋は肩から降ろされている。
羽織に仕込んだ短刀が、彼の胸に冷たい感触を伝えていた。

東郷月新 > 食事を無駄にしないのは良い事だ。
だから東郷は待った。
――自分も、団子でも食べれば良かったかと少し後悔したが。

「――ただどくだけでは、つまらないですなぁ」

ゆっくりと。
二刀を抜き、構える。
間違いない、あれは達人の目だ。
――あの女剣士と戦った時以来に、面白いものが斬れそうだ。

”マネキン” > 【”マネキン”は他のスラムの住人と同じように、無言で不穏な気配に商品をまとめかたづける様子を見せる。
雑多なアクセサリーや怪しげな食品を箱に放り込みながら、顔をそちらには向けないように。
ただ視線がそちらに向いていないのかどうかは、わからない。】

ご案内:「スラム」に鬼道椿さんが現れました。
リグナツァ > 「…ふむ?あまり温厚な祝祭日でもないらしいな。」
目の前で、帯刀した人物が、帯刀した人物の道を塞いでいる…
明らかに剣呑極まりない雰囲気を肌であじわいながら、リグナツァは歯を見せて笑った。

フイと目線を外すと近場に有ったダンボールを叩き、ホコリを払いつつ強度を確かめてから、どかりと腰を下ろした。

「……ますます面白くなるようだな。華もあって観客を楽しませる気遣いがある。場末にしては…良い闘技場の素質がある。」

鬼道椿 > 見知った男の顔を見つけて目を輝かせる
また出会えた!
今日は良い日だ…と嬉しそうに駆け寄ろうとして足を止める

「ふむん…」
口惜しそうに対峙する二人の男を見た
先を越されたか…

湖城惣一 >  血が、薫る。物質的なそれではない。
目の前の男の所作、その気配は明らかに血風をまとった"それ"だ。
 男は待っている。こちらの隙を突くこともなく、泰然とした動き。
それはつまり――。
「なるほど」
 竹刀袋を解き放つ。そこから覗き見えるのは一振りの脇差し。
あらゆる怪異を切り捨ててきた、ただの刀。
名刀ではない。霊刀ですらない。だが、それでも――一切を切り捨て、余りある。
「手を抜ける相手ではなさそうだ」
 ――羽織から短刀を抜き放ち、腹に当てる。
路地裏に潜むかの"暴力"とは別種の気配。穏当に済むはずもない。

 ひと、ふた、み、よ、いつ、むゆ、なな、や、ここのたり。

 ず……と、短刀が湖城の腹を切り裂いた。

 漏れ出る白光は神力の光。彼を意識の淵へと沈めるその助け。
持って十分。たった十分で彼岸の向こうへ渡るその代わり。
万物を切り捨てる"神域"へと至る。

「来い」

 細く、弓のように引き絞られた瞳が東郷を見据える。

東郷月新 > なるほど、代償を払った肉体強化。
それならば、おそらく長期戦に持ち込めば有利だろう。
あの手の強化は効果時間が短い事が多い。
ましてや腹を切っているのだ、血が流れ動きも鈍るだろう。

「――くく」

否。
そんな戦術理論はクソ喰らえだ。
――これは、人斬りとしての矜持だ。
一撃で、一切合切決めてくれる。

東郷は地を蹴り、低い姿勢から二刀でもって湖城に斬りかかる。
脇差は地から擦り上げるように斬り上げ、太刀は袈裟斬りに。まるで重さなどないかのように。

”マネキン” > (観客が増えてきたな。よそでやって欲しいものだ。
遊び場じゃァないんだぞ。…手を出して逃げるか?)

【新たな来客の様子になるべく視界に入らぬよう、潜む。
打つ手を少々迷いつつ、そばに座る身なりのいい…?人物に顔を向けた。】

…魔術師の類か、何をしている。異邦人街はあっちだぞ。>リグナツァ

鬼道椿 > 不満げな顔からして一転にぃっと笑う
どう言う思考に至ればあんな発想に至るのだろうか
私の家系も頭が可笑しい部類に入るがあれは狂人の領域だ
正気ではない、あの男は腹を掻っ捌いてまで殺したいものがいたのか
それとも単純な力への渇望がそうさせたのか

「そそるなぁ…」

ちろりと舌なめずりをした
その代償と引き換えにどれだけの領域に達したのか
東郷への愛憎が一瞬傾くほど好奇心を擽られた

リグナツァ > 「何だあの男」
布袋か何かで得物を隠していた方の男が、更に隠していた短刀を取り出して腹を切ったことはまったくもってリグナツァの理解の範疇外に有った。
アルヴァーンが首を振るが、あいにく主人の疑問を晴らす助けにはならない。

腰を下ろしたダンボールの横、別の観客が声を…いや、先ほど箱に物を詰めていたところを思えば、
「……何だ、売り子の類か?何をと言われれば貴様の商売と同じだ、市民の権利として、こうして観戦しているのだろうが」
「それに、異邦人街ならもう回った後だ。さして事もなく、民の暮らしぶりも平和そのものだった」
言いつつも、視線を剣士二人から逸らすことはない。横に座る者が何を逡巡しているか、全く思いつく様子もなさそうだ。

湖城惣一 >  沈む。沈む。沈む。
 男の前に敵は居ない。男の生涯に敵は居ない。
 ただただ、己が"神域"へと至るのみ。
 強いも弱いもただ置き去って、ただ一人深淵に挑む。
 こちらを眺める剣鬼の女も。戦いを見て無聊を慰めようとする男も。こちらに厭気を振りまくフードの男も。一切合切等価値だ。
 否。目の前の男がロストサインであろうと。命知らずのチンピラであろうとも。
それすらも"等価値"に置いて、ただ男は剣を抜く――。

「衆生一切切り捨て仕る」

 対手は二刀。地を這い飛び上がる蛇の如き太刀筋。
踊るように振るわれた袈裟断ち。

 受けることはない。受けて無様を見るものなどいくらでもいる。
男の技は"身体強化"ではない。ただ、己を意識の淵に沈める儀式――。

 すり抜けるように。相手の抜刀を見て。
その横に踏み込むように身体をも沈み込ませた。

「抜いたな」

 ――戦う大義名分は果たされた。
竹刀袋から抜き放たれた脇差しを抜き払い、東郷の脇腹を撫で斬りにしようと刃が迫る。

東郷月新 > 嗚呼、油断した。
肉体強化などではない。
これは――!

東郷のわき腹から血が噴き出る。
幸い、軽く斬られた程度だ。
だが、こちらの二刀は悉く避けられた。
なるほど――!

「神降ろし――否、神へ至る儀式!
その簡略化としての切腹?
ははは、狂っておりますなぁ!」

自分の事を棚に上げてのたまう。
結構。神ならば斬るのにも張り合いがある。

東郷は再び地を蹴る。
ただ無心に斬り、薙ぎ、抉り、打ち上げる。
心ゆくまで斬り合いを楽しもうと、湖城へと迫る。

”マネキン” > (あれも狂人、こちらも狂人。なるほど、落第街にふさわしい。
そうなれあちらの女生徒も同類か。月新がまともに見えるくらいだ。)

【女生徒の嬉々とする様子に状況を推測しつつ、足を運びリグナツァの陰に立つ。
殺気や危害を加える気配は無い。】

市民の権利?ここでそんなものは守られない。
身なりがよければ獲物になるだけだぞ。善意の忠告だったのだが…な。

【リグナツァには厭きれた様子で、視線を剣撃重ね合わせる二人へ向ける。】

湖城惣一 >  そこに意味は無い。そこに感慨はない。
抱えていく意識はただひとつ。"神域へと至る"。
 手段は目的だ。目的は手段だ。
剣を極めるために剣を振り、剣を振るために剣を極める。
 敵などいらない。ただ己が高みへと、否、深みへと至るための業。

 それがただ、何かを斬るのに適しているだけのこと――。

「狂っているか」

 そうかもしれないな。そうつぶやく彼の瞳はどこまでも真っ直ぐだ。
ただ淡々と、無表情に。まるで他者に関心を向けようとしない。
狂気の瞳か。虚無の瞳か。それとも止水の瞳か。
それは見るものによって姿を変える。

 楽しませるつもりはない。楽しむつもりはない。

 ただ、沈み、沈み。純粋なだけの剣を振る。

 ぶつけ合わせず、紙一重で。時に肉を割かれながら。死の淵に迫りながら。
顔色ひとつ変えることなく、最短、最速の剣を繰り出していく。
"殺意"も"敵意"も――何もない。相手を打倒しようとする意志すら無い剣は最早それだけで無拍子と化す。

東郷月新 > なんと恐ろしい。
戦いながら、否、戦う前からこの剛剣を見切っている。

東郷の剣はその圧倒的な破壊力で相手の剣ごと叩き斬る剛剣である。
もしこれを受ければ、それだけで衝撃と重さでダメージを受ける。
それが分かっているのか、相手は受けない。多少の傷は与えているが、避け続けている。
そう、避けさせない為の二刀であるのに。
まるで水の如き動き。この相手は明鏡止水に至っているのか――!

「――――!」

徐々に東郷の傷が増えていく。
脇差ひとつで東郷の二刀と同じ――否、僅かに勝るほどの実力を発揮している。
なんと素晴らしい。まさに神域の剣だ。

「だが――お上品にすぎますなぁ!」

そう、東郷の剣は人斬りの剣。
手段は選ばない。

東郷は異能を解除し、全重さをかけ――地を抉る。
その衝撃と抉れた地面を湖城にぶつける為に。

鬼道椿 > 東郷のわき腹から吹き上がる赤い飛沫に顔を惚けさせる
ああ、あんなにも…鮮やかに!
狡い、あのしなやかに鍛え抜かれた肉は私が切り裂きたかったのに!
なぞるように肉を裂き、その刃先から伝わる骨の感触にどれだけ思いを馳せただろうか
そしてあの腹を裂いた男の斬撃!消えかかる蝋燭が一層力強く燃え上がるように
魂を焦がして到達した領域があんなにも美しい剣筋を描くとは
ああ、そこへ至るためだけの純粋な剣…

「欲しい…」

ぶるりと身を震わせる体の芯から熱くなるのが分かる
今からでもあの二人の間に割って入って存分に斬り合いたい…
己の醜い殺気を辺り一面にぶちまけて
狂い咲きたい…

けどそんな無粋なことは許されない
あんなにも楽しそうな場に横槍を入れるだなんて私ならそんなことされて許せるだろうか
―否

「欲しい…欲しい…」

熱で溶けてしまいそうな体をぎゅっと抱きしめる
ここに居てはいけない、これ以上は毒だ見るな
けど見ていたい、自分とは真逆の無我の剣を

リグナツァ > 「ほぉ…打ち合わぬのか、いや一剣で…まして間合いで劣るものがするはずもないか」
組んだ足に肘をつき、その上に顎を乗せ。
絶望的に隙だらけの姿勢で、観客となったリグナツァは二人を見ている。
「いや、しかし…かつて帝国で竈神の巫女に舌戦を挑んだ男が居たが、あれを思い出すな。
お互いの目線は交錯さえしておらず、まるで意味のある決定を成し得る議論でさえ無かったが、ただ同じ言葉を語っているというだけで舌戦は成立していた」
「……そうだな、あれは美しかった。」

「市民の権利というのはな、売り子よ」
「当然のように自らの義務を過ごした後、暴力から悦楽を感じる権利を言うのだ」
後ろに立たれれば、ますます持ってそちらを振り向く意味は無い。せいぜいは庇護をかけてやろうとでも思うだけだろう。例えば、飛び散る地面の破片から極彩のヴェールで庇うだとか。
「今こうして、市民の権利は何よりも守られているだろう?あれを見よ、あの観客も正に悦楽を感じているではないか。」

”マネキン” > (馬鹿ばかりか。議論でなければただの騒音だろうに。
相互に出血が激しい。あれではそのうち失血でお互い動けなくなるだろうが…。
体力では月新に分がありそうだが…ハラキリもそれを前提とした訓練、もしくは改造をしているだろう。どう天秤を揺らす?)

【極彩のヴェールを一瞥し、感謝などとする様子は無く。
懐に手を入れる。】

(この座る男も戦う力はあるというわけか。)

湖城惣一 >  なるほど、確かに彼の剣は上品だ。ただ剣のみに特化した技巧。
剣を毀され無手で戦うことになっただけで、男の"深度"は大きく落ちることだろう。
 
 東郷の重心が動くのを見やりながら、湖城の身体が深く、沈んだ。
いつの間にか羽織が空を舞い、それをやおら掴み振り回す。
 "厄払い"の祈祷を捧げたそれは、巻き上げられた破片を防ぎ、そのままの勢いで東郷の眼前へ。

 対手は二刀の剣、こちらの領域へ迫ろうとする剣の修羅。
飛礫を切り払う手もあったが、限られた一刀をそれに使うのは危険に感じた。

 手段を選ばぬ外法の剣。なるほど、実に上等だ。
だがそこは――あらゆる怪異を切り伏せてきた湖城惣一にとっての"必死の領域"。

 沈む、沈む。この深度では目の前の男を斬り捨てるには不足に過ぎる。
伯仲では勝てない。ならば、挑める領域はまだあるはずだ。

 湖城の背中に"術法"が輝いた。死に果てるその瞬間まで。
あらゆる"災難"を払い、己の動きを保証する。
"神域"へ至る彼の剣。失血・貧血などという障害は存在しない。

 腹から溢れる神力が増えるたび、男の意識の深度は深まっていく――!

東郷月新 > 羽織でこちらの攻撃を利用!
なんと、これは一本取られた。

東郷は眼前に迫る破片にの塊に蹴りを入れる。
この男の前で片手を使うのはあまりに危険。
が、おかげで片足にもダメージが来た。

目の前の男の速度はさらに上がっていく。
まるで何かに至ろうとするかのように。
その動きは静かに、そして激しくなっていく。
無拍子――否、既にその動きを形容する如何なる言葉も存在しないだろう。

「ちっ――!」

さらに鋭さを増す相手の剣を、スラムの壁を叩き壊す事で防ぐ。
地の利はまだこちらにあるが、相手はそれを凌駕する領域へと至ろうとしている。
ならば――

「――ッ!」

鞘を地面に突き刺し、それを足場に飛ぶ。
そして上から勢いをつけ、異能を解除し全ての重さを叩き付ける。
この距離からこの勢い、この重さ、避けても衝撃でただでは済むまい――!

リグナツァ > 「む……術理か?」
つまり端から、ある意味では一定の奉納舞踏であり、あれは取捨選択とはまた違う位置にあるのかも知れぬ。
二刀の男のスタイルが収斂の果てにあるものであるのとはまた逆に。

とはいえ。
「理のある行動、見目にも派手だが…少々ただの観客には酷だろうな」
客席からの人気は二分されるだろうと考えながら、視界を遮ることさえ無いヴェールが詠唱も呪文もなくリグナツァの周囲に揺れる。
天蓋の奥でその一撃に、その瞬間に備えた。

(懐に手を入れた"マネキン"の足に、白い…肉球のついた足が載せられる)
(犬はその顔を見上げている)

湖城惣一 >  こぼれ落ちていく。こぼれ落ちていく。
 削れぬ意識。揺るがぬ動き。
ただ、湖城の身体から命だけが綺麗にこぼれ落ちていく。

 一合ずつ、欠けていく己の命を知る。
 必死の剣。それは対手にとってでもあり湖城という男の日常だ。

 だからこそ。湖城という男はただ深く沈み、戦場を俯瞰していた。
――体幹。重心。その動き。恐らく相手は軽重を操る異能に違いない。

 同じく剣を究めんとする修羅の放った最大の一矢。
避けても受けてもただでは済まぬ。

 ――だからこそ。己の身体をくれてやる。

 沈み続けた男が、ただ一度、息を吐いた。
最速。最短。あらゆる"意"を伴わぬ深淵の刃筋。狙って描く、"点"の軌道。

 落ちゆく男に左半身をくれてやる覚悟で、ただ、最良の突きを繰り出した。

 狙うは鳩尾から心の臓。東郷がそのまま斬り伏せるならば。
それを良しとしながら致命の一撃を貰い受ける。

”マネキン” > 【湖城の背に輝いたものに注意を向ける。
”マネキン”には理解はできないが、気配が変わった様子は分かる。】

あの背中に何かを仕込んでいるか。術理?となれば、魔術の類。阻害すれば有効打になりそうだな。
…ん?犬…良識担当とでもいうつもりか。ただの犬ではないな。魔術師…使い魔か。非科学的な。

【犬の足を乗せたまま、懐から拳銃を取り出す。安っぽく質の悪いリボルバー。
斬り合う二人に向ける様子は無く、そのままだらりとただ握っている。】

…安心しろ。私は撃たんぞ。…そこの魔術師、『クラッカー』を知っているかね?

【無知さに賭けて、少々余興をと声をかけた。犬にとめられなければ…だが。】>リグナツァ

鬼道椿 > 澱みとろけかけた理性の欠片を繋ぎ二人の戦いを見守る
死に迫る湖城の剣技は東郷を上回っている
しかしあとどれだけ湖城が立っていられるだろうか
失血のリスクすらどこか遠い彼方へ追いやったとしてもそれは無限ではない
湖城は神ではないのだ

この域にまで行くとあとはもう詰将棋だ
一手しくじればそれですべてが決まる
地形を生かし闘う東郷がどれだけ湖城を自分の理に乗せることができるか
次の一手で決まるか―

東郷月新 > 「――ッチィ!」

あの男め、一切臆せず半身を犠牲にこちらを仕留めに来るか!
ならばこれだ。

東郷は太刀から手を離し、それを下に向けて蹴る事で己の軌道を変える。
本来太刀を手放すなど自殺行為だが、こちらは二刀、まだ一刀ある。
もちろん、完全には避けきれない。湖城の一撃は東郷の肩を深く抉る。
同時に轟音と共に、あまりにも重い東郷の刀が地面に突き刺さり、衝撃が巻き起こる。