2017/03/11 のログ
ご案内:「スラム」にラクリモサさんが現れました。
■ラクリモサ > 「ひー……ふー……みー……よー
うわぁやる気ないなぁ。もっとこうガッとすればいいのに」
路地裏に小さなため息が響く。
人気のない場所に少々不釣り合いな姿があった。
今日はカッターシャツとスカートを身に着けているが
少し息苦しかったのか胸元は少し開けてある。
白衣は比較的新しく、ほとんど汚れは見られない。
「うわぁ……身分証とかあるよ。ルーキーかな?
見つかったらどうする気だったんだろ」
皮の長財布の中を改め、のんびりとした口調で呆れた声を響かせる。
先ほどまでそれを所持していた売人の姿は……今はもうない。
あるのは彼が持っていたアタッシュケースと
それを握っていた手首から先だけで……
その手首をも拾い上げられ、興味なさげに投げ捨てると
ぞぶりと音を立て影の中へと沈んでいった。
「まぁいっか。お薬は手に入ったし。
この量捌く気ならもっと気合い入れて売らないとだよね。
のんびり持って歩いてるとカモられるだけじゃないか」
アタッシュケースの上に座り込み一人くすくすと笑い声を響かせる。
中身は改める必要はない。先ほど裏路地に彼女を引っ張り込みながら
嬉しそうに中身を見せてくれたのだから。
まさかそれがヒトとしての最期の行動になるとは予想もしていなかっただろう。
「お薬作るにも材料はあるに越した事は無いよね
純度は……ああ、大したことないけど精製すれば問題ないっと」
よいしょと腰かけていたアタッシュケースから降り
触れることなくふわりと浮かせる。
指紋等は付けないに越した事は無い。もっとも付いていた所で大した問題ではないけれど。
「通報してお届けかなぁ。
一応せーぎのみかたの関所を通しとかないとだもんねぇ
そういうお約束だし。ああめんどくさいなぁ」
そのまま持って帰って遊べればいいのにとおもいながらゆっくりと歩きだす。
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 昨夜の白い暗殺者の少女との邂逅から日も明けて。足音一つ立てずにスラムの路地裏を歩く。
スラムや落第街を中心に”無貌”の通り名で殺し屋として活動している以上、細かな道筋も把握済みだ。
勿論、生き物のように日ごとに道が変わったりする事もあるが、それは大した問題ではなく。
「………?」
フと足を止める。丁度、十字路のような路地裏へと差し掛かった時だ。
前方に何やら人の姿が伺える。路地裏の暗さはさして問題にならない。
仮面の奥からその様子を眺める。あちらの進行方向に此方が居る。このまま歩けば丁度すれ違う形になりそうだ。
「………。」
無言のまま、ゆるりと矢張り足音一つ立てずに歩みを再開する。
白衣…研究者か何かだろうか?珍しいようで案外そういう輩もここには多い。
大抵がマッドサイエンティスト等の頭のネジがぶっ飛んだ者達ばかりだが。
■ラクリモサ > 「どうせ風紀が回収した後横流しして何処かに流通されるんだから
だったら直接回収すればいいのに。
小悪党は面倒な事が好きだなぁ」
もっともこの依頼は彼女自身に依頼されたものではない。
彼女は知られている以上に沢山の名前を使い分けていて、
更にこれは全く別の依頼者に依頼された内容を
ダミーネームで文字通り横から攫って行ったものだ。
「ふふー。遅すぎるんだよねぇ
鮮度が命だよぉ。こういうのはねぇ」
何も知らない依頼者は今頃依頼する荒事担当に
今回の依頼の背景説明をしている事だろう。
まさか既に仕事が終わっているとは知りもせずに。
「お仕事御苦労様ぁ」
まぁ頼まれた側からすれば仕事を受けたと思ったら
既に終わっていてしかも報酬は振り込まれるのだから
頭をひねれど気にしないだろう。多分。
そんな事を考えながら上機嫌に歩き始める。
「せーんろはつづくーよー。どーこいーくーのー♪」
前方に何やら姿を確認するが
そもそもこの辺りで誰かに会おうと彼女は特に気にしなかった。
個性的ともいえる格好の相手の横をまるで白昼の大通りを歩むがごとく
のんびりふらふらといつもの調子で通り過ぎていく。
■百鬼 > 一方で、こちらも特にその相手に極力何かを思うでも注視する事も無い。
黙々とした足取りは変わらず、音一つ立てず空気一つ揺らさない。
ただでさえ、気配等も仮面や黒衣で希薄にしているのでまるで幽霊か死神が通り掛っただけの如く。
フと、すれ違う間際にアタッシュケースの方を一瞥する。フと気付いた。
「……そのケース、”二重底”になっている。本命はそちらだろう」
まるで独り言のように、仮面の奥で性別不明のくぐもった声色。だがギリギリ相手には聞こえるだろうか?
中身は大体予想が付く…金、銃火器、そして麻薬。そのいずれかだ。
そして、仕事柄この手のアタッシュケースには大抵仕掛けがあるのも知っている。
例えば、麻薬ならば中身の粗悪品とは一線を画す上質なモノが仕込まれていたりもする。
そのまま通り過ぎはするが、一度足を止めてゆるり、と首だけをそちらに向けた。
■ラクリモサ > 「ビスケットを叩くとビスケットが粉々♪
お爺さんは言いました。次はお前がこうなる番だ……」
もはや意味不明の独り言をつぶやきながら
幽鬼のような相手の横を通り過ぎる。
同業というには静かすぎるので大方始末屋か何かだろうと思うが
今の彼女は切りかかられでもしない限り特にお腹が減ってもいなかった。
「まったくもー。〇び太君はぁ」
運の無いルーキーだったが欲目を出すとこうなるのは自明の理だ。
ルーキーが売りさばいた場合、警察や風紀委員に足が付き
そのルートを利用している他の売人にとっては都合が悪い。
その為迂闊な同業者を殺して奪い"確実な流通"をさせるのも
売人にとってはよくある行動の一つで、
なおかつ競争相手も減り実入りも実に良いために美味しいカモでもある。
お上りさんが手を出せば闇に食われるのは当たり前なのだ。特にこの島では。
実際このお薬は搬送途中に"記録ミスからの行方不明"になり
まわりまわって彼女のもとにたどり着くことになっている。
その為には馬鹿に回収される前に確実に風紀委員に"回収"させる必要があった。
「んー?そうなの?ありがとう?
まぁ拾っただけなんだけど……
届けた先にはそう伝えておくよ
それで、ボクは君にどこかで会ったことあったかな?」
すれ違った誰かの声を耳にし、ふと立ち止まる。
中身に関しては改めすらしていなかったのである意味面倒が省けた。
そちらも風紀には見つけて貰わなければならないのだから。
■百鬼 > そもそも、殺し屋としての正式な依頼…または、依頼人の裏切りによる報復以外で殺しは基本しない。
理由は幾つかあるが…単純な話、至極面倒なのだ。殺しに思う事は全く無い。
…が、遺体の始末や痕跡の消去など余計な手間を増やしてしまう。
万が一、風紀や公安に嗅ぎ付けられたら拍車を掛けて面倒な事にしかならない。
足を止めたまま、白い仮面越しにジッ…と相手を眺める。
”この肉体の記憶に該当する人物が居るかどうか”をザッと検索しながら。
「……拾った、か。……さあ、君に覚えが無いのなら初対面だろう」
拾った、という言葉を鵜呑みにする事は無いが、別にこちらに害がある訳でもないので追求はしない。
そもそも、麻薬の類だとしても興味は無い…違法薬物、アレな薬などは星の数ほどここでは巡っている。
彼女からの問いかけに、淡々とした何時もの調子でそう答える。
白衣を纏っているとすれば、研究者…”この肉体の持ち主”の関係者か?と、思ったが分からない。
検索する限りは引っ掛からない…互いにすれ違った事が以前にもあったかどうか、という所だろうか。
「………。」
フと、視線を彼女から逸らす。仮面は彼女の後ろへと向けられる。
その先は十字路のようになっているが、その物陰から複数の人影が。
(……単なる物盗りか、彼女に恨みでもある輩か……それとも私か)
ともあれ、無言でその白衣の女性に黒い革手袋で覆われた右手で後ろを指差し「何か来たぞ」というジェスチャーを。
■ラクリモサ > 「あ、そだ。
この辺りに美味しい角煮まんじゅうの名店があるんだった」
唐突に思い出す。
それと同時に風紀委員のところまで歩いていくのが至極面倒になってきた。
優先順位的には美味しいものの方がかなり高い。
丁度いいし目の前のこのヒト?に届けるのを頼んでしまおうかと
至極迷惑な事を考え始める。
「ああ、ごめんね。
ボクは顔を覚えるのが苦手なんだ。
だからあった事がある相手にも毎回こう確認してるんだよ
知り合いじゃないならわざわざ親切にどうも、かな?」
彼女にはそもそもヒトの個体判別が難しい。
記録自体は出来るけれど顔の造形等を区別できないために
記録と一致するか否かも判断できなかった。
そのせいかよく文句を言われるが……之ばかりはどうしようもなかった。
「んぁー?」
指示された方向に顔を向けると何やら何人かの姿が見える。
多分人だろう。誰か認識できないから。
とりあえず知り合いでは多分ないはずだ。
こんな場所で彼女に声をかけたら大体数日後には行方不明だ。
「キミの知り合い?」
きょとんと近くに立つ人物に話しかける。
物取りにしろ恨みにしろ、どちらにせよイキモノ程度の認識しかしていなかった
■百鬼 > 「………その店なら、本日は定休日の筈だが」
淡々とした様子で、マイペースを通り越している白衣の女性の呟きにそう突っ込みを入れる。
なぜ、この仮面がそれを知っているのかはさて置き。
無論、報酬があるなら届け物くらいは引き受けるだろう。勿論タダでならやらないが。
「……まぁ、こちらも素顔を他者に晒した事が無いから仕方ないだろう。
仮に君がこちらに覚えがあるとしても、”今は”分からない筈だ」
貌の造詣そのものが不明なのだから、面識があっても尚更に印象には残らないだろう。
そもそも、あちらの方がこちらを覚えている価値があるかどうかも謎なのだ。
もし、記憶に該当するとすれば最低でも10年以上前となってしまう。
「……さぁ。仕事柄、恨まれる事も日常茶飯事だが……君は、どうでもいい相手をいちいち覚えたりするか?」
と、彼女の顔が覚えるのが苦手という先の発言を踏まえた上で淡々と肩をすくめてみせる。
実際、その辺りの雑魚や烏合の衆をいちいち覚えてなどいない。
物陰から現れた人物は思い思いの武器や銃火器を持っている…ご大層な事だ。
こちらを狙っているのか、目の前の白衣の女性を狙っているのかは分からないが。
(……面倒だな…この女性に押し付けるか?)
と、平然とそんな事を考える。実際、この場で無力な者がフラフラしているのは”おかしい”。
仕事以外の荒事は至極面倒だと避ける傾向がある仮面は半ば本気でそうしようかと思ったが。
「………やれやれ」
足音一つ立てずに方向転換。白衣の女性の横を通り過ぎてから足を止めて有象無象の輩と対峙する。
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■ラクリモサ > 「皆さんどこかでお会いしたことありましたっけ?
あ、角煮まんじゅうの美味しいお店なら2ブロックとなりだよ?
え?休み!?マジで!?うっそぉ……」
状況を理解していないのかとすら思えてしまうようなそんな表情で
マイペース過ぎる会話を連ねる。
「せっかくここまで来たのにぃ……なんという事でしょう
え、マジ?ちょっと本気で落ち込んでるんだけど」
誰かが見ていたら違うそうじゃない状況を見ろと
突っ込んだに間違いない程目に見えてがっかりしていた。
「さらば私の角煮まんじゅう……
んやぁ?どうでも良い事は忘れるようにしてるからね
ぜんっぜん覚えてない。むしろ大事な事も忘れてる。
ぶっちゃけ今日も服ちゃんと来てるのは奇跡に近い」
酷い内容をカミングアウトしながらなぜか胸を張る。
実際先日はTシャツだけだったため危ない人と間違われかけた。
酷い話だと思うけれどそもそも実際に危ない人なのは間違いない。
「あ、ちょっと苦しいこれ……サイズまでは奇跡は起こらなかった…
もっとこう過ごしやすい世界にならないかなぁ
あ、でも露出狂はNG。視覚的暴力だから」
本気でどうでもいいのだろう。現れた人影の装備にすら気を払っていない。
少なくとも恨み関係はないだろう。
恨むような余裕を過去の自分が与えるわけがない。
彼女の裏の顔を認識した時点でそれは既に手遅れなのだから。
感染性の恐怖は誰も逃がしはしない。
「しかも何だか荒事の予感?
ああもう、ボクは一介の学生なのにどうしよー……。
か弱い学生なんだから適当に見逃してくれないかな?かな?
あとでイイコトあるかもしれないよ?」
実に間の抜けた笑顔でそちらに言葉を投げかける。
さり気なくゆっくりと下がり立ち位置を入れ替える辺り
守ってもらう気満々である。
知り合いではないと数秒前に言われたばかりだというのに
実にいい笑顔だった。
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「……定休日くらいは把握しておいた方がいいと思うが。……まぁ、君はそういうのもあっさり忘れていそうだが」
既に仮面の中ではそういう認識らしい。彼女に比べたら聊かマシだが、この仮面もマイペースではある。
「……更にそこから1ブロック先に別の店舗がある。そちらも味は良いらしいのでそちらにしたらどうだ?」
と、露骨に状況無視してガッカリしている白衣の女性に淡々とそう付け加える。
有象無象が何やら殺気立っているが、正直連中のあれこれを気にしてもしょうがない。
「……物忘れが激しい、というレベルではないな…慢性的な記憶障害なのではないか?
……流石に、全裸でうろつき回ることは無いと思いたいが」
仮面の奥で小さく嘆息を零す。呆れたというよりある意味で感心する。
露出今日はNGとのたまっているが、それが本当かどうかも疑わしい。…と、いうかどうでもいい。
「……過ごし易い世界、というのは己の捉え方次第でどうとでもなるだろう。
”外”の世界は更に面倒だと聞いているが」
この島はまだ緩い方なのだと仮面は思っている。まぁ、それはさて置くとして。
対峙した有象無象、ちゃっかりいい笑顔でこちらの後ろに陣取る白衣の女性を一瞥して。
「――荒事にもならん」
淡々と言い捨てながら、無造作に右手を一振り。変化は一瞬。
まず、連中が持っていた銃火器や刃物が全て風化して粉々になっていく。
唖然とする有象無象。今度は一振りした右手をグッと緩くこぶしに変えて。
「………運が良ければまぁ生きているだろう」
ぼそり、と呟けば拳にしていた右手をパッと開く。
その瞬間、唐突に有象無象が爆発で吹っ飛ばされたかのように散り散りにお空へと舞い上がる。
そのまま、あちらこちらで悲鳴を上げて落下していくのを一瞥もしないで振り返り。
「………済んだぞ」
かよわい、とか言っていた気がするが勿論信用していない。
本当にか弱い相手は、そもそも堂々とスラムに居たりしない。
居たとしてもそれ相応の理由が確実に存在するからだ。
ともあれ、有象無象は片付けたが。
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■ラクリモサ > 似たようなことを考える同業者だろうか?
仮にそうなら恐らく目的はこの辺りで無警戒に歩いている
アタッシュケースを持った学生風の未成年のはずで……
「あ、思いっきり狙いはボクですかそうですか」
彼らの視線を確認しぽんと手を打つ。
改めて考えると思いっきり条件該当者そのままだった。
とすれば勘違いだがまぁ情報を攪乱して曖昧にしたのは
彼女張本人なのである意味因果応報かもしれない。
「でも、まいっか。お休みなら仕方ないし
今営業してる美味しい店の方が大事。うん
というか方角が迷子なので案内してください。西ってどっちだ」
方角すらちょっと頭から飛んでいた。
太陽ってどっちに沈むんだっけ?ここは北半球だったはずだけど
……そもそも北半球って何だっけ?
こんな事を考えているがこれでも真面目に第一線の研究者だったりもする。
「あ、外?あーうん。らしいねぇ?
ボクも確か外にいた気がする。覚えてないけど」
余りにマイペース過ぎる二人にアクションを起こそうとする集団に
目すら向けず、ふわふわとした印象のまま話し続ける。
それと同時に一歩だけ追加で下がる。
そうして巻き起こる惨事に、眉一つ動かさず呑気に喜んで見せた。
「わーぉ。助けて貰っちゃった。親切な人っているものだね!
これもボクの日ごろの行いが良いからだね。そうに違いない」
目の前で起こった出来事がまるで無かったかのように何事もない表情で続けた。
吹き飛んだ何かについては既に半分"忘れて"いて
「お礼に何かした方が良い?
さっきのお店に連れてってくれたら奢るとか……
あ、別に揉むとかでも平気だよ?」
此処はスラムなのだけれどまるで広場のような朗らかさで
ふわふわとした笑顔を向けた。
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「………面倒だ」
口癖になりつつある一言をぼそり、と呟きながら仮面を人知れず嘆息を零す。
有象無象の視線を何気なく観察していたが、どう見てもこちらより白衣の女性を狙っていた。
もっとも、それも吹き飛ばしてしまったからどうでもいいのだけれど。
「……方角くらいは把握しておけ……と、言いたいがまぁいい」
馬鹿と天才は紙一重、と言うらしいが彼女もその類だろうか?
ただ、見た目どおりの惚けた女性という認識は捨てている。
第一印象でイメージを固定してしまうと足元を掬われるのは当然の事だ。
「……もうちょっと覚えている事を増やしても無駄にはならないと思うが」
仮面も記憶が曖昧な面は一部あるので人の事は言えないが、彼女のソレは極端なレベルだ。
ある意味で”面白い”女性ではある。不謹慎ではあるがそういう感想を抱き。
「……親切でもなく偶々だ。こちらにとばっちりが来るのは分かりきっていたから対処しただけだ
……そもそも、日頃の行いと自分から言い出すのにロクなのは居ないと思うが」
有象無象を片付ければ、マイペース全快な白衣の女性にそう切り返す。
ただ、第三者から見れば彼女だけでなくこの仮面もある意味でマイペース。
決して似た者同士ではないが、むしろ一週回って若干噛み合っていた。ボケとツッコミの如く。
「………名前は?」
ふわふわした笑顔にそう問いかける。礼についてはそもそも仮面は最初から必要ないと思っている。
どうせ別れれば、あちらは多分こちらを忘却するかもしれないがこちらは名前と顔くらいは記憶しておこうと。
「……あと、店の案内程度は引き受けてもいい」
■ラクリモサ > 「こういう時は大丈夫?揉む?って言えって誰か言ってたのを
唐突に思い出した。深い意味はないと思う多分」
多分この場で最も思い出さなくていい忠告を思い出しながら
数秒後には綺麗さっぱり忘れる。
吹き飛んだ相手ももう顔も覚えていない。
事件自体無かったことになっていた。
実際何度も心療内科への受診を進められているし
脳外科へも通う事を進められている
「名前……なんだっけ?
あ、思い出した。宵町彼方だったと思う多分。
自分の名前って誕生日と同じでどうしても覚えられないんだよね
みんなどうやって覚えてるんだろ」
どうでも良い事に小首を傾げる。
もはや人として大事な事を忘れている分
それ以上はもう思いっきり忘れていた。
「碌でもないのはまぁ言いっこなしですよぉ。
今に始まったことでなし」
ある意味馬の合うコントのような会話をしつつ全く逆方向へと
歩き始める。店は全く別の方向だったりもする。
「んじゃ美味しいものをたべにいこー」
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「……確かにスタイルは良いのは否定しないが、そう簡単にそれに釣られる輩も――…まぁ居るだろうな」
彼女の言葉に、なんとも言えない間を少し置いてからそう答えるだろう。
スラムや落第街ではレイプも日常茶飯事だ。彼女程のスタイルならホイホイ釣られる輩もゴロゴロ居そうだ。
――その後でどうなっても、それは自己責任でしかないが。
仮面も仮面で、既に吹っ飛ばした有象無象は記憶から消していた。
彼女と違い、素で忘れたというより意図的にどうでもいいと忘却したという感じではあるが。
「……カナタ、か。また何処か遠くに行きそうな名前だな。
…それは私には答え辛いな。名前は兎も角、誕生日など覚えては居ない。」
百鬼という名前がそもそも便宜上のもので、自身に誕生日という概念がそもそも無い。
それはそうとして、一応はその名前は記憶しておく事にしよう。こちらも「百鬼」と名乗っておく。
…まぁ、確実にこの白衣の女性は忘れるだろう。顔すら仮面で隠れているから尚更だ。
「……そうだな。それにロクでもないという点では私も同じようなものだ」
彼女の能天気な切り返しに、それもそうだという感じでゆっくりと頷く。
そして、歩き始めた白衣の女性の肩を問答無用で軽く掴もうと。
そして、そのままクルンと方向転換させる。
「……いきなり方角を間違うな。…私の後に付いて来い」
やれやれ、とばかりに白衣の女性…カナタにそう告げて先導していこうと。
気紛れで関わりはしたが、この出会いが些細な事か後で意味を持つのか。
それは何ともいえないし分からない。ともあれ、店への案内はきっちりするだろう。
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■ラクリモサ > 「これでも10人中8人は魅了される容姿の持ち主だしねぇ
ああ、襲われたことは何度か?
毎回逃げてるけど!か弱い女学生だからね
美味しい店がこの辺りにあるのはこまりものだよねぇ」
実際半分は本気だったりする。
彼女だって面倒事は関り会いたくない。
「だよねぇ。いつも言われる。
つなぎとめておかないと何処かに行っちゃいそうって。
そんなにふわふわして見えるのかなぁ?」
一瞬素の表情が顔を出す。
迷子の子供のような、行き場を無くしたような表情。
「誕生日って本当毎日誕生日だもん
命日だって毎日命日じゃない」
何方も同じだと思う。死ぬことも良きる事もどちらも等しい現象で
変わりないと思っていた。
産まれた事を祝うなら、死ぬことも祝えばいいのに。
「あれ?違う方向だった?
やー。失敗失敗。
こういう時に鼻が利けば便利だよねぇ」
仮面の方が覚えやすい。
人の顔の方が覚えにくいのだから。
「んじゃいこっか。百鬼?クン」
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > 「……まぁ、そういう事にしておこう」
彼女の言葉は完全に本気に取る訳にはいかない。取捨選択が面倒だが話半分程度が丁度いい。
そもそも、仮面としては彼女がか弱いとは全く思っていないのだ。
むしろ、襲う側の方が”命知らず”だろうと思ってしまう。
殺し屋という職業柄、言葉には出し難いがそういう直感は異様に鋭い。
もっとも、余計な面倒ごとはご免被りたい、という点はこの二人は完全に同じ見解だろう。
「……縛り付ける、とまでは行かないが君は君を繋ぎ止めてくれる”何か”が必要だとは思う。
……放っておけば、それこそ風の吹くように何処かに飛ばされてしまいそうだ。
……まぁ、余計な一言だったな。それこそ”忘れてくれ”。」
淡々とした口調ではあるが、何処か今までのノホホンとしたそれとは違った白衣の女性の表情。
迷子のような、寂しげな、一言では言い表せないものが滲み出ているように見えて。
だから、自然と口をついて出た言葉は仮面自身でも意外ではあった。
だから、彼女にさっさと今の発言は忘れるように勤める。
「……私には誕生も命日もさして”意味が無い”からな…そこは何とも言えない」
誕生したのは何時だ?そして死ぬのは何時だ?そんなの分からないし興味が無いし意味が無い。
誰かに祝われたいとも思わないし、自身で祝う気持ちも無いのだから。
そういう意味では、仮面は誕生にも死にも平等だ。仮に祝うなら今を祝え、と。
「……やれやれ、これも奇縁というものか。…では行くぞカナタ」
小さく嘆息を零せば、それでも歩調などはカナタに合わせて店まで案内するだろう。
その後、奢ってもらったかどうかはまた別の話である。
■ラクリモサ > 「あはは、そういう事でお願いね
ボクもだけど多少ミステリアスな方が燃えるでしょ?
秘密は大事だよ秘密はぁ」
自分と同じくこの痩身の彼は決して表通りを歩く人物ではない
その程度はきっとこの通りを歩くものならだれにでもわかる事だろう。
此処は良くも悪くも弱さを許さない。
弱いものは直ぐにその吐息を絶たれることになる。
……少し前のアタッシュケースの主のように。
それでもなおこの場に立っているという事は
幸運を含めろくでもないものであることは保証されている。
「ああ、平気だよ。
覚えていたくても忘れてしまうからね。
ボクはそういう生き物だから」
忘却は救いとヒトはいう。
なら忘れる事を忘れたら、怪物はヒトに戻れるのだろうか。
いや……と笑顔の裏にどろりとしたものが零れる
壊れてしまったものは、汚れてしまったものは
……知ってしまったものは、なかった頃には戻れない。
「まぁそんなロマンチックな話もあっていいと思うけどねぇ」
それは一瞬。本当に瞬きにも満たない感情の変化は
きっと注視でもしなければ見逃してしまう様なもの。
それでも別に伝わっても気にしない。どうせ忘れてしまうのだから。
「はぃはーぃ。
美味しい物に出会った良縁にかんぱーぃやっほぅ
あ、アルコールは見逃してもらえると嬉しいな?」
そんなふわふわとした言葉を発しながら
ゆっくりと路地に消えていく。
浮かべたアタッシュケースはいつの間にか影も形もなく
まるで真っ黒なしずくのようなものが地面に一瞬波打ったあとは
そこに誰も、何もいなかったように風が吹き抜けただけだった。
ご案内:「スラム」からラクリモサさんが去りました。
ご案内:「スラム」から百鬼さんが去りました。