2017/03/17 のログ
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
百鬼 > ――今夜はどうやら依頼の類は無いらしい。だが、今夜も何処かで誰かが誰かを殺している。
スラムに有り触れた雑多で歪でボロボロの建物の群れ。バラック小屋の屋根の上に静かに佇む人影。

「………。」

例の報復は明後日に行うようだ…特に異論は無い。依頼のブッキングが重なるのはあちらもこちらも困る。
白い仮面できっちり覆われた顔をフと眼下に向ける。暴力、強姦、裏取引、人買い、薬の売買…後は打ち捨てられた死体。

掃き溜めの中の掃き溜め。島の負の部分のほとんどが凝縮されたような場所だ。
だからこそ、自分のように裏で生きる者にとっては非常に都合が良い訳だが。

百鬼 > しかしまぁ、ノイズが少々酷い。私的に下らない昔日の残滓の後始末などするものではない。
そもそも、これはこの体が持つ記憶の名残で、私自身とは関係が無い。

(―――…と、言い切れれば多少は楽でもあろうが…)

バラックの屋根に立ったまま、仮面の奥で静かな吐息を零す。
今の所、代わりは無いのだからもう暫くはこのままで行くしかないのが面倒ではあるが。

「……こういう時に、依頼が無いのが退屈でならないな」

これといって趣味や嗜好は無い。何度かあれこれ試してみたがどれも長続きした事が無いからだ。
……おそらく、自分は飽き性なのだろう。長続きしているのは、せいぜいこの殺し屋という仕事くらいだ。

ご案内:「スラム」に陽太さんが現れました。
陽太 > そんな打ち捨てられた死体の傍に近寄る、小さな小さな人陰。
そのままその人陰はしゃがみこんで、その死体が纏っているボロ布を引っ張って脱がせ始めた。
…死体が打ち捨てられる事は日常なスラムでは同じく日常的に起こる、身剥ぎ。

「あー!ダメだ、こいつなんももってねぇ!」

その人陰は、やけに明るい声を上げる。
夜目が効くなら、ほんの小さな少年だと分かるだろうか。

百鬼 > 「………。」

陰鬱としたスラムで、少々場違いな程に明るい声が耳に飛び込んできた。
仮面越しに、ゆらりとそちらへ顔を向ける。…身剥ぎ…死体漁りか。特に珍しくも無い。
ありふれた日常の一コマだ…少なくとも、スラムとはそういう場所でもあるのだから。

(……子供か。特に珍しくも無い……嗚呼、場違いな程度には”明るい”ようだが)

淡々と、その少年をバラックの屋根の上から眺めている。夜目に関しては今更だ。
完全な暗闇でも難なく対処できなければ、それこそ殺し屋廃業しなければならない。

陽太 > 「……」

くるり、と急に何かを感じて振り返り、陽太は暗い空を見上げた。

…あぁ、なにかいる。

引きずりこまれそうな闇色の濁った瞳をそのままに、満面の笑みを浮かべて。
「おーい!なにしてんだー?!」

…そう、よく通る大声で声を掛けてみる。 

百鬼 > 「………。」

くるり、とこちらに急に振り返る少年。気配は消していたし、黒い外套の気配遮断も滞りが無い。
…単純に勘が鋭いと見るべきか。スラムで生き抜くのに勘が鋭いというのは悪くない。
若干、殺し屋としての視点から淡々とそう分析していたのだが、満面の笑みと呼びかけには暫し沈黙を返し。

「………特に何も。」

仮面でくぐもって男とも女とも判別し難い声色がギリギリそちらへと届くだろうか。
実際、特に何かをしていた訳ではないのだから嘘でも誤魔化しでもない。

…もっとも、少年を見れば明るい声や態度とは対照的にやたらと濁った目付きをしている。
矛盾しているとも言えるが、まぁそういう輩もここには幾らでも居るだろう、と。
淡々と仮面越しにバラックの屋根の上から彼を見下ろしているだろう。

お世辞にも社交的とは言い難いのもあり、仮面の方から少年に積極的に話題を振る様子は無い。

陽太 > 純粋に興味をかられた陽太は、死体を放り投げててくてくと屋根の下に近付いて見上げる。

「おめん…?」

何だか凄くあやしいが、陽太はさして警戒しない。
…なんとなく、無闇に人に危害を加えないような感じが相手からしたのか。
正しくは仮面、のようだが顔が見えないその相手を不思議そうにじっと見つめ。

「なぁなぁ、なんでおめんしてるの?顔見られんのはずかしいの?」

と遠慮無く質問に質問を重ねる。
子供らしくズカズカと人の領域に無断で入ってくる。
相変わらずその目には、一筋の光も差していないが。