2017/03/18 のログ
■百鬼 > こちらに興味を惹かれたのか、身包み剥がされた死体を放り投げてこちらの足元…バラック小屋の元まで歩いてくる少年。
それを、仮面越しに淡々と見下ろしていたが。
「……正確には仮面だが。……この方が”色々と”都合が良いからだ」
淡々としているが、それでも律儀にポツリポツリと答えていく。
適当に相手していれば彼の方が飽きるだろう。しかしまぁ、
(……目付きだけなら、この世の地獄でも見て来たような佇まいだな…)
フと声に出さずそんな事を仮面は思う。もっとも、この世の地獄など…此処には幾らでも転がっているが。
土足でズカズカと己の領域に押し入られようが、それを軽く受け流すかのような佇まい。
こういう相手にも慣れているのだろう。内心では面倒臭いと思いつつ、律儀に受け答えはしている。
…これはこれで、少しは退屈を紛らわす行為にはなるのだろうか。
■陽太 > 「つごう…顔みられたくねーの?ぶさいくだから?」
相手の答えを反復し、でも納得できないのかしつこく質問を重ねる。
だが、ちょっと考えて。
「なんか声だすのつかれたし、ちかくにいくな!」
と、陽太は器用に転がったゴミ箱や壁から突き出た菅に足を掛けてひょいひょいと屋根に上がり。
近くに駆け寄ると、改めて相手を見上げて無邪気に笑う。
「なんかアニメでみたあくやくみたいだな、おっさん!」
おっさんかは定かでは無いのに勝手にそういい放つ。
■百鬼 > 「……さて、な」
勿論違うのだが。しつこく質問されてもそれはそれ。軽くはぐらかして受け流してしまう。
…が、矢張り少年的には見上げながらの会話は疲れるらしい。
存外とその場にある物などを利用して器用にこちらの方まで登ってくる。
(……この調子で野たれ死なずに成長すれば、まぁ”そこそこ”…という所か)
まだ少年ではあるが…身のこなしの筋そのものは悪くない。もっとも、この先を生き残れなければそれも無駄になるだろうが。
近くに駆け寄ってきた少年を仮面越しに一瞥しつつ。
「……悪役、ではないが”悪人”ではあるだろうな…。」
殺し屋をやっている時点で正義も何も無い。もっとも悪人だろうが何だろうが。
仮面はそんな事に拘泥はしないし、正直それはどうでもいい事なのだ。
――まぁ、流石におっさんではないのだが。
■陽太 > 「ふーん?」
答えてくれなかったのには、少し不満げな陽太。我が儘坊主である。
だが、こっちを見てくれたのには嬉しそうに笑ってから、
“悪人”という言葉に何故か不服そうに尋ねる。
「あくにん…。なんで?
おっさん、普通にはなしてくれてんじゃん。やさしいよ!
おれのほうがよっぽどあくにんだよ」
普通に会話してくれるこの人は優しい。力を抜いて他人と話すのは、陽太にとって久しぶりだった。
だからこの人は優しく見える。酷く安直な感想だった。
…この人が悪人なら、自分は何だというのだろう?
■百鬼 > 不満そうな少年の態度にも全く動じない。変わらぬ淡々とした物腰のままであり、我侭坊主の態度など何処吹く風、とばかりのそれ。
少年が嬉しそうに笑っているが、ただ言葉を交わした程度で嬉しいものだろうか?
少年の言葉に、僅かに小首を傾げるようにして仮面越しに眺め。
「……別に会話できない相手ばかりでもないだろう……ここでは珍しいかもしれないが」
言葉を交わす以前の問題だ。少しでもスキを見せれば即座に死ぬ状況が日常茶飯事。
暢気に言葉を交わす相手など、居たとしてもそれは少数派になるのだろう。
自身を悪人と称する少年を眺めてから、緩く肩をすくめる。
少年が悪人ならば他の悪人は極悪という事になる。
彼ももしかしたら何か抱えている事情などあるのかもしれないが、それは仮面には関係ない事だ。
「………君のようなのは、悪人というより悪童だな…」
仮面の視点からみれば、そこらの平和な世界の悪ガキと彼は全く同じようなものだ。
一端に悪人と称したいのなら、もっと色々とやらかす事だ…とは口には出さないが。
そもそも、仮面は情で動くのを嫌う。ビジネスライクや利害の一致など、そちらの方がシンプルで分かり易いからだ。
■陽太 > 「そーなのか?
おれ、あそこのうらのほうに住んでんだけどさ、誰にはなしかけても包丁むけてきて!」
ほんと怖かったんだよなー、と言いながら指差すのは
…人肉売買が盛んな事で有名なスラムでも奥の通りだった。そりゃそうだ。
通りの外では、基本陽太は元気そうな人を選んで話しかけている。
…主にスラムに出入りするヤクザなどに。何で生きてこられたのだろう。
「あくどう?なんだそれ?」
あくまで世間知らずでしかない子供でしかない陽太の純粋な疑問。
「でも、おれわるいやつだぞ?
ともだちもいっぱい殺したし、
…姉ちゃんも、殺したし、おれ、すっげぇわるいんだぞ?
けんきゅーいんの人達だって、おれはすごくわるいやつだって、ずっと言ってた」
何故か笑顔のまま、そう矢継ぎ早に呟く。
■百鬼 > 「………そんな調子でよく今までここで生き残ってこれたものだ」
微かに呆れたように仮面の奥でそう呟く。悪運が強いのか…もしくは”理由がある”のか。
冷静に考えれば、この少年にはつまりそこらの有象無象が返り討ちにでも遭う何かがあるのだろう。
(……魔術…ではないな…異能の類か…)
「……要するに、悪ガキという事だ。…意味は分かるな?」
表情や態度がコロコロ変わる少年とは真逆で、仮面は全く態度が変化しない。
多少、呆れたりはするが露骨な感情の変化というものがあまり無かった。
「……そうか。それで?”それだけ”で悪人…と?それはただの殺人鬼だろう…単なる人殺し、それだけだ」
淡々とした物腰のままそう言い切る。少年にあっただろう、絶望や苦悩など知った事ではないとばかりに。
彼は少し勘違いしているようだが、会話を交わしているとはいえ別に仮面は優しいという訳でもない。
「……それに、研究員……と、いう事は魔術か異能か…何かの力を君は持っているということか」
その力がおそらく暴走したのだろう、と彼から詳しい事は聞いていないがそう推測して行く。
研究員、暴走…どちらも覚えが”有り過ぎる”のだ、仮面にとっては。
ご案内:「スラム」に陽太さんが現れました。
■陽太 > 「おれ運はいいから!うん!」
弾けるような笑顔で、そう宣う。
…まぁ勿論他にも理由が無くは無いけど、
それは陽太にとっては苦痛なので見ないふりをする事にした。
「…つまりわるいガキってことだな!ありがとおっさん!」
…礼は言ったが、おっさん呼ばわりは止めなかった。
「へ…?
さつじんきはわるいやつじゃねぇの?
人ごろしも、わるいやつだろ?よくわかんねぇ」
本当に理解できないというような、きょとんした顔。
いかなる理由があろうが、人を殺したら悪い奴でしかないのでは?という無邪気で単純な結論。
だが、陽太にとって“悪い奴”は“悪い奴”でしかなく、必ずしも憎んだりさげすんだりする相手では無いのだが。
「………もってるよ。でも、いらないんだよこんなの」
相手から問われた言葉には、急に雰囲気を豹変させて無表情で答える。
陽太にとって、自分の異能が最も憎いものである事は不変の事実なのだ。
■百鬼 > 「……そうか、だったらせいぜいその”悪運”を大事にするといい」
つまり、ソレを失えば先ほどの死体のように少年がなるだけ…それだけの事だ。
スラムはそれこそ弱肉強食が絶対のルール…何も持たない者が運だけで生き残れる程甘くは無いのだから。
「………一応、ナキリという名があるのだがな」
おっさん発言されても別にどうでもいいのだが、連呼されるのもそれはそれで煩わしい。
なので、名前を一応名乗っておく…どちらにしろ本名ではないのだから。
「……そもそも、殺しに良いも悪いも無い。殺すのと殺されるのが居るだけだ」
殺しが悪いと言い切らない。だからといって殺しが素晴らしいとは勿論思わない。
仮面にとって殺しはただの仕事でしかなく、良し悪し以前に何も感じないのだから。
「……手っ取り早い方法がある。今すぐ死ねば解放される。…まぁ、私には関係の無い事だが」
淡々と非情な解決策を述べる。無論、この少年の様子からして力を憎めど自殺するには至らないと見ている。
(……逆だな。この類の憎悪は自身を”食い潰す”。力に飲まれて発狂するか…奇跡的に克服するか)
どのみち、何らかの結論を彼は出さないといけないだろう。力は力だ。方向性が無ければただの無秩序なモノに過ぎない。
■陽太 > 「あくうん…うん、分かった、大事にするな!」
勿論言葉に込められた意味には気付かず、陽太は素直に頷く。
「へぇ、ナキリっていうのか!おれは陽太な!たいようの陽と太いの太!」
よろしく!とノリにまかせて自己紹介。
合ってるのか合ってないのかの名前だと相手が思うかは分からないが、何故か自慢げに胸をそらす陽太。自分は気に入っているらしい。
「…?ナキリってみょうに殺しをみたようにいうよな~…。
もしかして、殺し屋とか!?」
…もしかしなくてもそうなのだが、冗談まかせのように身を乗り出す。
■百鬼 > 悪運…少年が憎んでいる力、という事には矢張り気付いていないらしい。
まぁ、見た目相応の年齢のようだから気付け、というのも無理な話だろう。
どのみち、ここで生き抜く為には彼は自身が憎んで嫌悪する力を使い続けなければいけない。
やがて、そのジレンマに気付いた時に少年は何を思うのだろうか。
「……陽太か。…一応覚えておこう」
緩く頷く。そもそも、記憶力は悪くないので忘れるに忘れられないのだが。
「………その通りだが?」
淡々とした調子でそう返す。冗談でも本気でもどちらでもいい。あっさりと肯定する。
別に少年は標的でも無いので、図星だからといっても害する事は無い。
もし、万が一彼を殺す依頼が来れば、一瞬で首を刎ねるなりして容赦なく殺すだろう。
殺しに関しては本当に仕事と割り切っているのだ。例外もゼロではないが極小でしかない。
…実際は、仕事以外で殺しは面倒臭いからなるべくしない、というシンプルな動機だが。
「……さて、そろそろ私は行くが君はどうする?」
例の準備もある。そろそろ戻っておこうかと思いゆるり、と改めて少年に仮面越しの顔を向ける。
■陽太 > 「いちおうってなんだよ…!ひでぇなぁ!」
…なんて言いつつも、でへへと笑う陽太。
冷たい印象だったが、やっぱり優しい人だ。かなり嬉しい。
「え……まじか!ナキリって殺し屋だったんだな!わるいやつじゃん!」
普通の人じゃない事はさすがに分かってたが、流石に驚愕する陽太。
ただのホラだったのだが。
そして、どうやらナキリは去るらしい。
露骨に残念そうな顔で「えーっ」と駄々をこねかけるも、大人しく屋根に座って。
「おれはもうちょっとここにいる!
…あ、あとなナキリ。さっき今しんだららくになるって言ったじゃん」
___振り返った陽太は、やっぱり明るい笑顔だった。
「おれは、らくになっちゃだめなんだとおもう!
姉ちゃんはいきなり殺されたのに、おれがしあわせになるなんて絶対ダメだもん」
ご案内:「スラム」に百鬼さんが現れました。
■百鬼 > (……やれやれ、完全に良い人扱いだなこれは)
溜息を内心で零す。とはいえ、スラムで多少なりとも平和的に話せる輩はまぁ、珍しい部類だろう。
仮面としては、別に仕事の標的でなければ基本的に会話くらいは最低限はするスタンスだ。
――よっぽど面倒臭い相手でなければ、だが。少年はむしろマシな方だろう。
「……覚えるだけマシと思ってほしいものだな」
淡々とそう切り返す。あと、殺し屋に良いも悪いも無い。ただのクズだろう。
勿論、子供の駄々に付き合うほどにお人よしでもなかった。…既に優しい人認定されてしまっているが。
「……そうか、せいぜい身包み剥がされない程度にしておけ」
ずっとここに留まっていたらある意味で目立つだろう。仮面はそもそも気配とかを普通に殺せるので問題は無いが。
「―――そうか、じゃあ苦しい道を進むといい。何を選んでどう生きるのかは君次第だ」
去り際に聞こえた少年の言葉に、一度緩く振り向いて仮面越しに淡々と口にする。
それが少年なりのケジメみたいなものならば、特に自分から言う事は何も無い。
そして、そのまま前に顔を戻せば、足音ひとつ立てず静かに闇の中に消えて行くだろう。
■陽太 > 「へへ、わすれんなよ!」
素直じゃないなぁ、とナキリの言葉は天然じみたスルースキルで見逃す陽太。
にやにやと浮かぶ笑みは、間違い無く嬉しさから来るものだろう。
「だいじょうぶだ!あぶなくなったら逃げる!」
輝くような笑顔を浮かべてぐっと拳を握る。目は濁っているが。
「……うん、またな」
ナキリは、下手な慰めをしないから好きだ。そう感じる陽太。声はさっきよりずっと静かで、別人のように聞こえたかもしれない。
彼が去った後、陽太は大きな白い月を眺める。
…月を見ると、いつも今も昔も、何物にも代えがたい姉を思い出す。
「姉ちゃん」
___…今も昔も、陽太には自分が殺してしまった姉しかいない。
ナキリの忠告を忘れたかのように、陽太は闇のように純粋な瞳で暫く月を眺めていた。
ご案内:「スラム」から百鬼さんが去りました。
ご案内:「スラム」から陽太さんが去りました。