2017/08/07 のログ
ご案内:「スラム」に神代 理央さんが現れました。
神代 理央 > スラム街の一角、比較的清掃が行き届き、車の往来も辛うじて可能な車道には、黒煙を吐き出しながら燃え上がる高級車が一台。原形を留めない程に撃ち抜かれた人間だったモノと人ならざる者の死体が数体。バラックを踏み潰して周囲を睥睨する金属の異形が数体。それを眺めて深い溜息を吐き出す少年の姿が一つ。

「……襲ってくるなら、せめて車から下ろしてから身包み剥ぐとか、何なら車も売っぱらおうとか、そういう発想には至らなかったのか?帰りのタクシーなぞ、此処に来るわけないよなあ…」

午前中は優等生として教師に媚を売り、夜になれば歓楽街で己に近付く大人達の相手を繰り返す日々。
そんな何時もの夜。送迎用のハイヤーに襲いかかったゴブリンだかオークだか良く分からない連中は、あろうことかいきなり炎の魔法をぶちかましてくれた。襲撃者を挽肉にしたは良いが、帰りの足は運転手もろとも絶賛バーベキュー中。
此処から学生街まで歩いて帰るのか、とげんなりしたように再び溜息を吐き出した。

神代 理央 > 「…愚痴を言っても仕方が無い。服が汚れなかったことだけでも良しとしよ――」

何時迄も薄汚いスラムで黄昏れている訳にもいかず、護衛代わりの異形と共に大通りを歩き始めようとした瞬間、乾いた発砲音と甲高い金属音が通りに響き渡る。
少年の視線の先には、今更ながら応援に駆けつけたらしい賊の集団が映る。異形の陰に身を隠しつつ、その表情はみるみる不機嫌そうに歪んでいくだろう。

「…帰りの足を奪っただけでは飽き足らず、彼我の戦力差も考慮せずに襲いかかってくるとはなぁ。実に、実に不愉快な連中だよ。全く」

既に戦闘状態に入った異形達の間から、更に湧き出る様に己の下僕たる火砲の塊を召喚していく。
その数が襲いかかってきた賊と同数になったのと、月明かりに鈍く輝く金属の異様さに気付いた賊達が足を止めたのはほぼ同じタイミングだった。

「蹂躙しろ」

そして、轟音と共に砲弾の雨霰が男達に降り注いだ。

ご案内:「スラム」にHMT-15さんが現れました。
HMT-15 > スラム街を駆ける一体のロボット。
その速度から察するにどうやら緊急事態のようだ。

「間もなく音の発生源へ到達。
テロリストの存在を想定。」

そもそも任されていた任務は普通のパトロールであったが
異常な砲撃音に反応し警戒態勢に移行していた。

そして背部に彼の全長程の大きなガトリング砲を
背負った状態でまるでスライドするかのように
高速で現場へと殴り込む。

神代 理央 > 最初の掃射で既に目的は達成していた。
続く砲撃は生き残りの掃討と半ば憂さ晴らしのつもりであったが―


「…装甲車…いや、多脚戦車か?流石にスラム街の賊が所有しているとは思えんが…」

突如瓦礫と砲煙と火炎に包まれたスラム街に現れた機体に訝しげな表情を浮かべつつ、異形による砲撃を停止させる。
視界の不良により、ガトリング砲を装備したその機体が、先日カフェで一時を共にしたHMTだと気付く事は無いが、敵か味方かの判断がつかぬまま高級兵装である装甲兵器を破壊する事には流石に躊躇いを覚えたからだ。

HMT-15 > ロボットの視界に飛び込んだのは
炎上する高級車と見るも無残な様々な死体、
そして何よりも見覚えのある少年と
火砲を備えた異様な金属の塊。

「警告する。直ちに武装を解除せよ。
さもなくば攻撃する。」

まるで何かの放送のように単調なセリフを
低音の機械音声で発する。
このロボットにとっても目の前の少年は
見覚えがあるはずだがそれに関しての
反応は見せていない。

神代 理央 > 「応じよう。此方としても、不要な戦闘は好ましくないからな。…しかしその前に、そちらの所属を明らかにすべきではないかね?一体どの様な権限で生徒に対して正当防衛に必要な武装の解除を命じるのか、具体的な根拠を示して頂きたい」

風紀委員会か公安委員会の機体だろうか。
暴れすぎた自覚はあったが、流石にテロリスト扱いされるのは不味い。
―と、頭の中で算盤を叩きながら先ずは両手を上げて敵意の無い事を示す。
尤も、異形への攻撃命令に動作は必要無い為、自身のホールドアップには何も意味が無い。
もし眼前の機体が敵性物体であれば、砲弾を撃ち込むまで。とはいえ、その可能性は大分低いだろうと検討はつけていたが―

HMT-15 > 少年が武装解除に応じたため
ロボットの背部にあるガトリング砲の
スピンアップが停止する。

「対象の武装解除を確認。
ボクは風紀委員会、特別攻撃課のHMT-15。
現場の状況を見るにオマエが
車両を襲撃した後に殺傷行為に及んだと
判断した。」

このロボットは来た時に広がっていた光景を
もとに結論をはじきだす。

神代 理央 > 「HMT-15……?…ああ、成る程。あれほど高性能なAIを持つHMTを学園が放置している訳はないと思っていたが、風紀委員会の所属だったとはな」

機体に目を向ける余裕と、彼が名乗った機種名の二つは、以前カフェテリアで時間を共にしたHMTが眼前に存在する機体であると容易に思い出させた。
となれば、風紀委員会所属というのも真実だろう。違法組織がHMTを所有出来る訳もなし。

「状況から判断すれば全くもって君の言う通りだが、此方は被害者だ。其処の車両に元々乗っていたのは私だし、襲撃されたのも私。賊を追い払う為に、仕方なく異能を発動したに過ぎないよ。何なら、ハイヤーを手配した男に連絡を取ることも出来るがね?」

確かにこの状況だけ見れば、自分を容疑者と疑う事は仕方のない事だろうと苦笑いを一つ。

「私は学園の一年生、神代理央だ。身分を証明する物も所持しているし、データベースを照合してもらっても構わない。以前共に茶を嗜んだ相手に疑われるというのは、良い気分ではないからな」

異形達に待機する様に思念を飛ばしつつ、両手を上げたまま僅かに首を傾げる。
ロボット相手に有効だとは思えないが、取り敢えず行儀の良い「優等生」を演じる為、人懐っこい笑みと共に。

HMT-15 > 理央から発せられた言葉から判断するに
この少年は加害者というより
むしろ被害者であるようだ。
しかし

「ならばそちらも証拠を出すべきだ。
言葉だけなら何とでも言える。
もしここで証明できないならば
風紀委員会による精密検査が必要になるため
同行してもらう必要がある。」

証明できなければ
いわゆる風紀委員会の同行要請。
普通の生徒なら抵抗感があるかもしれない。

「一緒に茶・・・?関係ないな。」

「任務」を受けて行動している彼は
いつもの好奇心旺盛なロボットではなく
任務に忠実な戦車だ。

神代 理央 > 「証拠か。先程も言った通り、其処のハイヤーを手配した男、或いはハイヤーの業者に連絡を取れば、私が何処から車に乗り込み、どういったルートで此処まで至ったか容易に判明する筈だ。歓楽街の監視カメラのどれかに、私が乗車している所も写っていると思うがね」

正当な方法――とは言い難いかもしれないが――で権勢を得ようとしている時に、風紀委員会の世話になるのは避けたい。
流石にロボット相手に賄賂を渡す訳にもいかないし、どうしたものかと少し困った様に両手を上げたまま肩を竦める。

「確かに。仕事に私情を挟むべきではなかったな。失言だったよ。謝罪しよう」

取り敢えず顔を知っている、程度では話にならない…というよりも、ロボットにそういった人情を期待するべきではなかったかもしれない。
彼がこの案件を処理するまでは、自分は容疑者であり彼はその容疑を判断する者。それ以上でもそれ以下でも無いと知れば、早々に思考を切り替えるだろう。

HMT-15 > 「・・・監視局へアクセス、
当該時刻の全映像をチェック。
対象者の証言を証明。
警戒状態を解除。Lv.0へ移行。」

しばらくの間ロボットが動きを止めれば
どうやら少年に対する疑いが晴れたようだ。

「やあ、理央、カフェ以来だな。
そこの鉄の塊はキミのか?」

警戒状態を解除したと言ったかと思えば
唐突に挨拶と共に声をかける。
相変わらずの合成音声だが
ただ雰囲気が明らかに変わっている。

神代 理央 > 「…ふむ。やはり治安維持を目的とするならば監視カメラ程度へのアクセスは可能か。これが風紀委員会の権限なのか、公安委員会も持つ権限なのか。何方にせよ、有益な情報を得る手段としては有効か」

自分への疑惑が晴れた事よりも、疑惑を捜査する為の手段が与えられている事が重要である。
未だ委員会には所属していない身であるが、風紀か公安。この何方かに狙いを定めようと、内心で決意を固めつつ―

「…そういった情緒の無い切り替え方は、もう少し人間らしく出来ないものかな?まあ、此方をきちんと認識してくれたのなら別に構わないが。
御指摘の通り、アレは私の異能で召喚したモノだ。不格好だからな、出来れば見せたくは無かったんだが…」

まるでたった今再会したかの様な口調と共に雰囲気を豹変させた彼に再び苦笑いを浮かべつつ挨拶を返す。
それと共に、彼の質問に答えながら瓦礫の山に鎮座する異形に視線を向けるだろう。