2018/08/29 のログ
ラフィニエレ >   
「わゃー」

単純な話、噛ませてしまえばいい。
黒化していない状態なら皮膚の薄い場所なら歯は通るはず。
問題は吸われ過ぎる可能性と、血を吸われる事にトラウマがあるという点。
魔力の塊である彼女の血は吸血種曰く極上のワインのようだとか。
目の前に居るだけで襲いたいという衝動を掻き立てると何度言われたことだろう。
……あの頃の屈辱は忘れがたいものがある。

「!?」

そんな葛藤の最中急激に膨れ上がる気配に全身が泡立つような感覚を覚える。
瞬時に距離を取るのは最早身に付いた習慣。
先程までの少々儚げすらある、不便そうな雰囲気は一蹴され、
ある意味馴染み深い感覚……
力在るヴィンターレの気配を纏った”対象”に
いつでも対応できるように感覚を欹てる。
……とは言え自分の血でもバフをかけられるなどと言うタイプは
今までお目にかかったことが無い。レア種である。
レア種と言うのは往々にして、厄介なほど強い事が多い。

「……へーき、か?」

それでも小声で、そしてゆっくりと声をかけた。
瞬時に攻撃しなかったのは怪我をさせていたという自責の念と
先程の反省から無理やり自身の感覚をねじ伏せたから。
理性ではそれが一番傷を治すには早い方法だったのだろうと理解はしている。
……獣としての感覚はまず殴り倒せと告げているけれど、
少なくとも”今この瞬間は”敵ではない、筈だ。
……血の衝動に囚われていなければ。

柊 真白 >  
(全身の毛穴が開くような感覚。
 全身の毛が逆立つような感覚。
 ぎちぎちと左腕の腱が悲鳴を上げる。)

ふー……。

(威圧感は一瞬。
 取り込んだのはほんのわずかな量だ。
 効果時間も物の数秒もない。
 けれど、副作用は容赦なく自身を襲ってくる。
 視界の端が黒くなり、地面が傾くような感覚。)

ごめんね、怖がらせた。
平気だよ。

(まだ若干の痛みはあるが、動かす分には問題ない。
 貧血に似た症状でふらふらしながら左腕を伸ばして彼女の頭を撫でようと。)

ラフィニエレ >   
一瞬、黒の獣としての何処までも冷静な殺意が沸き上がった。
感覚が研ぎ澄まされている時の一秒は普段の数十倍に引き伸ばされて感じる。
その間の殺意を我ながらよく抑え込んだと思う。
表情は読めないけれど、なんだか酷く苦しそうに見えたというのも
抑え込めた要因の一つかもしれない。
……少なくともこんなに苦しそうに血を扱うヴィンターレは初めて見た。

「ぅ……」

伸ばされる腕に一瞬逡巡するも、大人しくその場に留まる。
ひどく疲れた様子を見せる相手に敵意は感じられない。
此処で逃げるのは流石に傷つくだろうといくらネコ科の性格でも予想はつく。

「……ごめん、ぁさぃ」

なんだかんだ素直に謝る。
落ち着いてみれば無理に能力を使わせたことも理解できる。
その原因が自分のうっかりにあることも理解できないほどお馬鹿でもない。
噛まれなかったという点にほっとしている所もあり
ぐりぐりと頭上で動く手に身を任せる。
……毛繕いは欠かしていない。
さらっさらの触り心地の髪は自分でもちょっとした自慢。
少なくとも触り心地はかなりいいはずなので多少は罪滅ぼしになったら嬉しい。

柊 真白 >  
(頭一つ分ぐらい高いところにある彼女の頭をわしわしと撫でる。
 サラサラで触り心地がよく、手入れを欠かしていないのがわかる。)

君は、やさしいんだね。

(所々で野性的な顔を見せる彼女だが、それはやはり野性的な面だ。
 ちゃんとそれを抑えているのはわかるし、自分が怪我をさせたと落ち込んでいるのもわかる。
 だからきっと、彼女は優しい性格なのだ。)

私が不用意なことをしたのが悪いし、そもそも君に結構失礼なことをしたから。
だから、おあいこ。

(そう言って自身の面を外す。
 彼女のようなまっすぐで優しいヒトに顔を隠したままというのは失礼だから。)

柊真白。
あなたは?

ラフィニエレ >   
最初が気が立っていたからだろうか。
思っていた以上になんだか穏やかに過ごせているような気もする。
このヴィンターレ……と言うには失礼だろうか。
彼女が思っていた以上に穏やかな性格と言うのも理由の大きな割合を占めるはずだ。
最初に思った以上に彼女は”ちゃんと生きている。”

……大体苛ついているのはななぃが全部悪いのである。
後でれいぞーこにあるビールを全部机の上に並べておこうと思う。

「……よー、わか、らん」

優しいという言葉は多分正反対だと自分では思う。
憧れるほど優しかった人は、もう随分前に居なくなってしまったけれど
随分経った今でも彼女の優しさの一端に未だ届きもしていないと思うから。
もしも気ままに生きている自分が少しでも”優しい”に近づいているなら、
……それは少し、嬉しいと思う。

「……きにすぅ、ない、のに」

気にするなとは口では言いつつも
意識の流れが読めない相手と言うのはどうしても警戒してしまうので
やはり幾分か安心しながらもその瞳をじっと見つめる。
仮面を外した顔は、思っていたよりも若く
今、そこにはとても静かな感情が宿っている。
深い色を湛えた瞳は若干目つきの悪い自分とそこは対照的で……
けれど根拠なく心の何処かで思う。
きっととても良く似た所がある相手なのだと。

「……らふぃぃえれ。らふぃ、いい」

少しそれを見つめた後そっと目を伏せ、小さく口にする。
随分とぶっきらぼうな口調に聞こえたかもしれないけれど
口調と表情に関してはもうどうしようもない程前から一本調子だし、
……少しだけその目に見惚れた照れ隠しもあってなので許してほしい。

柊 真白 >  
君は優しいよ。

(だからこそお互いこうして血を流さずに済んでいるのだ。
 ちゃんと人の気持ちのわかる、優しいヒトだ。
 左腕はちょっと切ったけれど、さっきのでもう既に治っている。)

私も同じ。
だから、おあいこ。
ね?

(お互いに気にしなくていいと言っているのだ。
 同じ言葉を繰り返し、彼女の髪を梳かすように左手を動かして首を傾げる。
 黒い瞳がこちらを見つめる。
 それをまっすぐにじいと見つめて。)

ラフィ、でいいの?

(らふぃいえれ、と言うのが正しい発音かどうかわからない。
 だからおそらく愛称だろう呼び名を口に。
 目を逸らされた。
 なぜだろう。
 首を傾げる。)

ラフィニエレ >   
「そ、か。……そか」

小さく頷く。
こういう時、どんな反応をすれば良いのかわからないけれど
彼女が言うのならばきっとそうなのだろう。
ぴょこぴょこ動く耳が表情とは裏腹に素直に感情を物語っていたりするのは
最早オヤクソク。

「はじ、ぇていわ、ぇた」

今度はそっと、頭を撫でる手に両手を添える。
傷つけてしまわないように、そっと。

「ん、わか、った。」

そしてその思いを乗せるように口にする。
これ以上問答をするよりも素直に受け取るべきなのだろう。
なら、その言葉を飲み込む事にしようと思う。

「きれー。
 ……うらや、ま、し」

言葉が足りないけれど素直に思ったことは口にする。
自分の黒曜石のような瞳とは違う、澄んだ蒼玉のような瞳は
きっと色々なヒトを魅了するだろうと思う。
宝石は好きだ。食べるのは勿論、こうして眺める事も。
最も長く見つめるのは苦手なので、つい目を逸らしてしまうのだけれど。

「……らふぃ、いい。
 もと、なまぇ……いぃにくぃ」

元々、愛称で呼ばれる方が気楽で……それになんだか少し嬉しい。
名前を呼ばれる事自体にはあまり良い思い出が無い。
愛称なら、そんな事もないから。

柊 真白 >  
(彼女は良くも悪くも動物的なのだろう。
 自分の感情をあまり隠さず、そのまま外に出す。
 きっと苦労も色々してきたのだろうな、と思う。)

じゃあ、大事にしよう。
その気持ちは、君が生きる上できっと役に立つ。

(手に添えられた彼女の大きな腕。
 頭から手を放して、それを掴む。
 大きすぎて掴みきれないけれど。)

よし。
――ラフィの目も綺麗。
宝石みたいで。

(またも目を逸らされた。
 恥ずかしがり屋なのだろうか。)

いつか、ラフィの本当の名前がわかると、私はとても嬉しい。

(名前を知るということは、そのものを知るということだ。
 本当の名前を知っていて愛称で呼ぶのと、そうじゃないのとでは天と地ほどの差がある。)

ラフィニエレ >   
「ん」

小さく頷く。
言葉は生きてきた証。
ならそれはきっと実感を伴ったものだから
彼女の言う通り大事にしようと思う。
……身長は自分が少し上だというのにまるで姉のよう。
でも言っている事は至極もっともだと思うのだから仕方ない。

「……ぅー」

耳がフルフルと震えながら寝ていく。
褒められるというのが実はとても苦手である。
何せ元の世界では銀の禍星だの黒の魔獣なんて言われていたせいで
唾棄や畏怖の念を持たれる事は多くとも褒められたりと言ったことは
ここ最近珍しかったと言うかほぼ無かった。
……そもそも滅多に他者と関わることが無かったし。
コミュ障?いいえ独りが気楽なだけです。

「名前、いぇぅ、ようなった、ら、おしぇ、ぅ」

それにはもう少し此方の発音に慣れなければ。
此方の母音は少し変で発音が難しい。特にさ行は難関。

「ましぉ、おぼぇ、た」

けれど多分この名前は忘れない。

柊 真白 >  
(こちらも頷き、もう一度頭を撫でて。
 彼女からは結構幼い印象を受けるが、実際のところはよくわからない。
 動物的、ということもある。)

もっと自信を持っていい。
――いろいろと。

(恥ずかしそうにする彼女。
 言葉とか行動とか、人慣れしていないように見える。
 髪だって綺麗だし、大きな手も爪も、機能美にあふれている。
 ――あまり認めたくないけれど、胸だってそれなりにあるのだから。
 くやしくはない。
 目が細まる。)

うん、楽しみにしてる。
――っと。

(名前を呼ばれてちょっと笑う。
 直後、少しふらついた。
 まだ副作用が抜けきっていないようだ。)

ラフィニエレ >   
「ここは、ふしぃな、島
 ましぉ、あぇて、ょ、かった」

戦闘面や生存能力には自信があったけれど
最近それにも少し不安を感じつつある。
どうにも体が少し変わってきたように感じる事もその一環。
内側も外側も、想っていた形と違う形質に変質しつつある、
以前であれば他者に触れる事も触れさせることもなかった。
だというのに今のように触れられている事がそんなにいやではない。

「……がんばぅ」

魔種だというのに体が自分の思う形にならないというのは凄く不安だ。
――嗚呼、たぶんその不安でこんなに苛々していたのだなと思い至る。
自信をもってと言われなければ気が付かなかっただろう。
これは自信を持つ方向に代わっているのだろうか。
今の所はよくわからない。邪魔にしか感じないから。

「おくぅ。ましぉ、へーきところ、まで」

幾分かふら付いた様子に小さく首を振る。
幾ら風通しと視界が良いとはいえ、此処は落ち着くにはよい場所とは言えない。
先程の感覚から辺りを歩いてた赤い変なの(ヒト型)程度なら
軽く一蹴しそうではあるけれど、連戦になったりしたら今の体力ではキツそう。
ならその状態でも平気な場所まで運ぼうと、今度は掴まずそっと手を差し出して。

柊 真白 >  
そうだね、不思議な島。
私もラフィに会えてよかった。

(誰とだって新しい出会いは新鮮で楽しい。
 最初の出会いから予想もしなかった関係になった人もいるし、そうじゃない人も――。
 ふと。
 数日前のことを思い出し、表情が変わる。
 悔しそうな、悲しそうな。)

私でよければ相談に乗るから。
会いたくなったらいつでも――連絡、取れるかな。

(少なくとも彼女の腕では普通の携帯やスマホは扱えなさそう。
 毎日落第街に来るわけでもないし、どうしたものかと。)

ありがとう。
じゃあ、お願い。

(この状態で一人になるのは少し不安が残る。
 差し出された大きくて優しい腕にこちらの手を重ねて。)

ラフィニエレ >   
やはりこちらでもぎょっとされる事はあるけれど、
普通に歩いていても排斥されず、自由に街を巡り
豪華(当社比)な食事を毎日しながら眠る…。
少し前の自分なら絶対に信じなかっただろう。
特に食事面。

「……ん。
 こまった、よぶ。
 ましぉ、も、そーするぅ
 におぃ、おぼぇた。へーき」

少なくとも匂いはしっかり覚えた。
ある意味独特な魔素の持ち主、本気で探せば
この島程度なら半刻もあれば探せるはずだ。
……本人が気配を遮断していなければ。

「らふぃ、ななぃ、とこいぅ。
 ななぃ、がっこー、せんせー」

だから必ず遊びに行こうと思う。
月の綺麗な夜にでも。
その時には、きっとこの言いようのない不安も落ち着いているはず。
……今日は随分と喋った。もう1週間分位喋った気がする。
次は同じくらい、いやもっとお話するかもしれない。
その時が楽しみなんて少し思ってみたりする。気が早いかもしれないけれど。

「いこ、ましぉ」

そっと重ねた手を取ると体を掬い上げる様に持ち上げ、
夜の空気に体を躍らせ、空中に燐光を散らしながら空を跳ねていく。
新しいトモダチをしっかりと守る様にその腕に抱いて。

柊 真白 >  
そっか。

(じゃあ問題ない。
 仕事の時以外は出来るだけ気配は殺さないようにしておこう。)

ななぃ……。

(ナナミ、ナナキ、単純にナナイということもありうる。
 いずれにせよ人の多すぎるこの島では絞り切れない。
 あったこともある人物かもしれないが、情報が少なすぎて。
 今度探ってみよう。)

……ん、いこうラフィ。

(体が浮く。
 いわゆるお姫様抱っこ、というやつ。
 自分以外の力での移動というのは久しぶりだが、これはこれで悪い気はしない。
 今度同居人にもしてもらおう、なんて思いつつ、空中散歩を楽しんで――)

ご案内:「スラム」からラフィニエレさんが去りました。
ご案内:「スラム」から柊 真白さんが去りました。