2015/06/23 のログ
ご案内:「研究施設群」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 何も鼠が逃げた程度で大騒ぎしなくても──

(無機質な研究所の壁を眺めながらそんな事を漏らす。
 場所は東雲が住んでいるアパートからほど近い、研究区の路地裏。
 学校から帰って特にする事も無く、ランニングでもしようと思った矢先に呼び出されたのだ。相手は顔見知りの──嫌というほど見た事のある研究員だった。)

別に俺まで出張る様な事じゃないだろうに。……はぁ。

東雲七生 > まあ、実験動物が逃げたってのは、それなりに問題だよな。
異能を持った人間があれだけ騒ぎ起こすんだから、ましてや基礎能力の高い動物が異能を持って逃げだしたら……。

(事が露見する前に片付けてしまいたいというのだろう。
 東雲は逃げた実験動物に同情した。気持ちは分からなくもない。)

──俺だって似たようなもんだし。

東雲七生 > まあいいや、適当にぶらついて適当に報告上げとこ。
この区画の全鼠を捕まえろなんて無茶は言わねえと思うし、何しろ俺一人パシらされてるわけでもねーし。

(そういえばそろそろコンビニでは本格的に夏の品ぞろえに切り替わっただろうか。
 そんな事を考えながら無機質な壁の間を歩く。やたらと月の明るく見える夜だ。)

東雲七生 > にしても……ホント味気ねー場所。

(見渡す限り白く無機質な建物が並び、灯りが漏れる様な窓も少ない。
 ある意味では落第街よりも生気の無い区画の様にも思える。
 ただ居るだけで息が苦しくなるような、そんな場所だと東雲は以前から思っていた。)

東雲七生 > ………。

(独り言をつらつらと連ねていたが、それは黙っていると静けさが耳に痛いくらいだったから。
 それでも次第に独り言も減っていき、黙々と歩くだけになる。
 遠くに耳鳴りの気配を感じながら、東雲は無機質な空間を歩く。)

………。

(ウォークマンでも持って来れば良かった。そんな小さな後悔が今更ながら過る。)

東雲七生 > ………。

(帰ろう。
 そう思いポケットから端末を取り出す。
 慣れた手つきで通話機能を呼び出し、自分に話を持ち掛けた研究員へと掛ける)

あー、七生です。夜分遅く失礼します。
例の件なんですけど、うちの近所に不審な──ええ、ええ。
はい、特に見当たりませんでした。ので、俺そろそろ帰りますんで。

東雲七生 > はい、はい。分かりましたよ。
それじゃ、また何かあったら連絡ください。はい、はーい。

(まだ何か言おうとする気配を察し、一方的に通話を終了する。
 指示されたのは近所の見回りだけで、話を聞くのは含まれていない。
 そんな屁理屈を心の中で呟きながら、路地の途中で来た道を引き返し始める。)

帰りにポテチの梅味でも買って帰ろう。

ご案内:「研究施設群」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「研究施設群」にジョージさんが現れました。
ジョージ > 廊下を、一匹の黒猫が歩いていた。
その上には、掌に乗る程度の大きさしかない男が乗っている。
猫は、男を乗せて廊下を黙々と進んでいる。

男は先程まで、研究室に篭って何かをしていたようだ。
定時になり、ゆっくりと帰宅を始めているところだった。
男は小さく、徒歩で帰宅しようものなら朝帰り待ったなしだ。

ジョージ > だからこうして、猫を手懐け、移動用として役立てているのだ。
伊達に研究者はやっていない、猫と意思疎通をし、命令させるくらいはお手の物だ。
……その際、小さな男は餌として見られたことが多々あり、命の危険もそれなりにあったが。

男は猫の上で煙草を吸っている。小人サイズの、コンパクトな煙草だ。

ジョージ > プルルルルルル プルルルルルル

男のポケットから、小さな小さな着信音が流れる。無機質で味気のないアラート音。
男はポケットに入った極小の携帯端末を取り出し、画面をタッチしてから耳に当てる。

「おう、こちらジョージ。なんか用か?」

……どうやら同僚からの連絡らしい。

ジョージ > 「……ああ、こっちは今一人……と一匹だが、どうかしたのか?
 ……鼠?鼠がどうしたってんだ?猫にプレゼントでもするってのか?」

廊下に響き渡るのは、電話をする小さな男の気の抜けた声と、猫の微かな足音のみ。
ここらの人通りは少なく、こうして猫と二人旅をするのも珍しくはない。
男もこれくらいの静かさがちょうどいいらしい。煙草が美味く感じる。

「……ああ、あの部署の。たしか、いつのまにか消えてたよなあそこ。
 んで、その部署と鼠が何の関係あるってんだ?

 ……実験体が逃げた、って……それが鼠だってのか?」

男が聞いていたのは、研究員の間で噂になっている事柄だった。
とある生物実験をしていた部署と、その部署の突然の消滅
そしてそこで使われた実験体の鼠が逃げ出したこと。

ジョージ > 口から煙を吐く。紫煙は宙に漂い、そして霧散する。

「……吸血鼠、ねぇ。
 そういやあの部署、吸血鬼の娘さんで色々やってたんだっけな。俺だってそれくらいの噂は聞いてるさ。
 んで、それを俺に言うってこたぁ、つまりここいらにいるかもしれねぇ、ってわけか。
 たしかにこの大きさじゃあ、俺は格好の的だもんな。でも猫もいるんだぜ?鼠は猫に捕食されるってお決まりじゃなかったのか?」
 ……『窮鼠猫を噛む』、か。そういや古の日本にはそんな言葉があるんだっけね。」

最初は冗談半分で聞いていたものの、後半になるにつれて、男の表情も硬くなっていく。
仮にも一研究員、実験体の脱走というものがどれほど危険なものかはわかっているつもりだ。

ジョージ > 「おーけー、忠告ありがとよ。俺もこいつも、気をつけることにするぜ。
 只者じゃなさそうな鼠を見たら、ダッシュで逃げることにするさ。
 俺はあんたらと違って、小動物とすらまともに戦えないからな。
 んじゃあな、忘れ物はするんじゃねぇぞ。」

と最後に吐き捨て、通話を切る。
男は端末をポケットにしまいながら、いろいろ考え事をしていた。

(鼠……ねぇ。そっちはまぁ調査してみるとして、っと)

男には気がかりなことがひとつあった。

ジョージ > (吸血鬼……なんだっけ?あそこの部署にいた奴。
 ……まぁ吸血鬼って言えば種族能力と魔術で生きてるようなやつが大半だろうが……)

上の空気味に、思考する。
口からは、煙草の紫煙がゆらゆらと出ている。

(あまり他所に手を出すのは良くないが、というか禁止されてるが……
 ……ま、いいだろ少しくらい。あとで聞いてみるかね。
 もしかしたら、いい異能、持ってるかもしれねぇしな。)

良からぬことを考えながら、不敵に微笑む。
研究の進展が起こりそうなことを考えつくと、気持ちの悪い顔になる男だった。

ジョージ > 「あ」

ふと呟く。

「反省文そういやあいつら出したっけな……」

自分で書かせておきながら忘れていた。
非常勤だから学校にはたまにしか来ないものだから。

「……まぁいっか。職員室にでも出したろ。」

なーんてのんきなことを考えてると、猫が『にゃぁ』と鳴く。

「おう、なんでもねぇよ。」

猫とのんきな会話をしつつ、研究室の外へと向かっていった――

ご案内:「研究施設群」からジョージさんが去りました。