2016/02/06 のログ
雪城氷架 > 「……物騒なこと言うなよ」

人間を一瞬で灰にできる
それはそうだろう、金属すら融解させる熱量なのだ

「……結構苦しいんだぞ…」

命は保証するという、周囲の影響も
限界には興味もあった
この教師を信用するのならば、一度は……

集中力を高める

一気に熱量が上がっていく
加算でなく乗算
グングンと、数百万度をゆうに超えてゆく

獅南蒼二 > 「なに、事実を述べたまでだ。
 この炎で自分を焼けば苦しみを感じる間も無いだろう。」

それは、核反応でも起こしたかのような馬鹿げた熱量の上昇速度。
温度そのものは十分に想定範囲内であったが、このまま加速度的に熱量が上昇して行けば……

「…止めるのはお前の自由だ。
 お前の身体が限界を超えれば、心臓が停止し、死ぬよりも恐ろしい苦しみを味わう事になるかも知れん。」

「だが、自分の力を知りたいのなら、私を信じろ。
 これだけの魔力があれば、何が起きようと、私が全てを止めて、元通りに戻してやる。」

……この炎が、どこまでも際限なく燃え上がって行けば…。

雪城氷架 > いうことがいちいち物騒な教師だと思う余裕もそろそろなくなってる

「……信じていいんだよな。
 頼むぞせんせー……」

心臓の鼓動はどんどん大きくなる
今にも張り裂けそうなほどに
制服は汗でべったりと貼り付き、顔色も僅かに優れず───

倍々ゲームのように跳ね上がる熱量は摂氏数千億度に達する

「───ッあ」

つ、と鼻血が流れ落ちる、同時に耳からも

それは少女の肉体の負荷に対する限界を意味している

獅南蒼二 > 温度上昇の曲線は加速度的な上昇を続け、その温度はもはや尋常の手段では到達できない数値となっていく。
この多重に張り巡らせた術式が無ければ、この部屋はおろか、この建物が、この学園が丸ごと消し飛んでいるだろう。
異能であるが故に、防魔処理も全く意味をなさない。
そこに存在するのはただ、純粋な熱量。

「……なるほど、思った通りだ。」

実験としては、十分な成果だった。
限られた状況下ではあるが、この少女の異能は“危険”などという言葉で片付けて良いほど生易しいものではない。
この魔術学部棟全館から集めた魔鉱石が、その魔力容量をオーバーし、禍々しい光を放っていた。
そのエネルギー総量は、恐らく、過去に存在したいかなる兵器をもはるかに凌駕しているだろう。

ビシリ、と、恐ろしげな音を立てて、魔鉱石に罅が入り…

「聞こえているか分からんが、嫌なものを見たくなければ目を瞑れ。」

…落ち着き払った教師の言葉が聞こえた瞬間、世界が、真っ白に吹き飛んだ。





……

………

………………。

目を開けていたのなら、貴女は確かに“死”を知覚することになっただろう。
目を閉じていたのなら、貴女はきっと、それを知覚せずに済んだだろう。

だが、次の瞬間、貴女は部屋の中央の正方形を見つめて真っ直ぐに立っていた。
血も流れていないし、心拍数も通常通り、そして汗もかいてはいない。
けれど、まるで夢を見ていたかのように…おぼろげに、先ほどまでの感覚を思い出すことが出来るかもしれない。


隣に立つ獅南は先ほどよりも疲労の色を深めて、肩で息をしていた。

雪城氷架 > 「(あぁ…やばいなこれ…意識がなんか……)」

朦朧とする中で、獅南の声が耳にはいる
……聞こえる声のままに、その目を閉じる




「………あれ?」

目を開けば、先程までに自分がみていた光景

まるで夢を見ていたように

「えっと…」

状況が飲み込めていないように、獅南を眺める

獅南蒼二 > 少女の口からは、自覚の無い、呆けた声。しかしそれも仕方ないことだろう。
“空間の時間を操作した”のだから、少女の記憶は混乱して当然だ。

「夢を見たわけではない…言っただろう、私を信じろ、と。
 モニタを見てみるがいい、この実験室での新記録だよ。」

モニタには空間の温度上昇の折れ線グラフが表示されている。
常温から、数百度、数万度、数百万、数億、数千億、そして、グラフからはみ出し、オーバーフロー。
デジタルの数値は最終的に1兆飛んで92億8200万度を記録していた。
そこで魔鉱石が炸裂し、実験が中断されている……実際には、もっと上昇していたのかもしれない。

「何が大袈裟なものか……この数字が表す意味が、お前に分かるか?」

雪城氷架 > 「……そうみたいだな」

正直、最終的に指す数値はあまりよくわからない温度であった
高いというのはわかるものの

「…えっと…マグマぐらい?」

学がない少女であった

獅南蒼二 > 何を馬鹿なことを。と、肩を竦めつつ、

「マグマは約1000度、太陽の表面温度が6000度。
 太陽の中心でも2000万度には届かないだろうな。」

そうとだけさらりと言ってから、近くの椅子に腰を下ろし、

「この実験室の中で良かったよ。」

小さくため息を吐いた。

雪城氷架 > 「へー…じゃあ相当高いんだな。
 途中からよくわかなかったけど……」

少女がまともに思考を保っていたのは途中まで
頭が熱に侵されたようにぼうっとして、途中からは文字通り夢心地であった
それとは別に、学のなさがその熱量の異常さをまだ理解できていないのだったが

「…外でやってたら結構危ないってことだよな」

獅南蒼二 > 氷架の様子をみて、小さく苦笑しつつ…

「そうだな、軽く………この宇宙が吹き飛んで新しい宇宙が誕生するくらいか?」

それから、鋭く冷たい瞳で、貴女の瞳を睨みつけるように、見る。

「全てを、男も女も老人も子供も、動物も魚も草木も、
 悲鳴を上げる時間も逃げる時間も与えず、全てを焼き尽くすだろうな。」

雪城氷架 > 「…さすがにそれは大袈裟だって」

何を言うかと思えば、とくだけた笑いを見せる、
が…続く言葉には、わずかに身を強張らせて

「……そんなことに使ったりはしないけどな」

脅しではないのだろうその言葉に、表情も僅かに熱を収めて

獅南蒼二 > 「大袈裟な話ではない…そして、本当にしないと言い切れるか?
 どんな事件に巻き込まれようとも、お前の友人がどんな目に遭おうとも、お前は冷静に戦うことができるのか?
 それどころか、仮に、お前が誰かに操られたとしても…齎される結果は同じだ。」

睨むように見た瞳もそのままに、小さく、首を横に振り、

「望んだものではないだろうが、お前は世界を滅ぼす力を持っている。」

雪城氷架 > 「…それは」

自分自身が感情的な人間であることは、周囲からも言われるし理解もしている
かといってそれは流石に、と反論をしたかったが…続く、操られたとしてもという言葉に西園寺忍によるあの事件を思い出す
操る、とは違うものの、あの時彼女は自分の力を利用しようとした
そういう人間が他にもいないとは言い切れない

「……じゃあ、どうすればいいんだよ…。
 そんなこと言われたって、なくそうと思ってなくなるものじゃないんだぞ……」

獅南蒼二 > 氷架の悲痛な表情に、獅南は小さく頷く。
異能をもつ相手を同情するようでもあり、その異能を嫌悪するようでもあり、

「そうだな、それが異能の面倒なところだ。
 だが、恐らくこの状況下でなければ、世界を焼く前にお前自身が焼けてしまうだろう。
 それに、お前の身体が持ちこたえられるとも思えない。」

「………言うなれば、自然のリミッターがかかっている状態だ。
 しかしそれでも不安だというのなら、もう少し強力な“リミッター”を用意してやろうか?」

雪城氷架 > 「………」

当然だろう
太陽よりも熱いものが近くにあれば燃えてしまうのは学のない自分でもわかる
それでも、世界を滅ぼすという言葉はあまりにも現実感がなかった

リミッターを増やすという提案、言いたいことは伝わる
だが一体この教師が自分になにをしたいのか、それがまだわからない
その質問の答えを出す前に一つだけ、問う

「…獅南先生は、何のために今日のこの実験を私にやらせたんだ?
 私に自分の異能力を理解させるため?それとも…」

獅南蒼二 > 「知的好奇心だよ。なんて答えではお前が納得せんだろうな。」

くくく、と楽しそうに笑う。
それから、真っ直ぐに貴女を見つめて、

「正確にはお前の能力が暴走した事件を聞いた…炎の巨人、だったか?
 同じように被害を出されては困る。
 私ならともかく、私の教え子たちはその炎を止める術を持っていない。」

「そして、なにより、お前が知らぬまにそれをつかって世界を滅ぼすのは、私にとっても甚だ迷惑だ。
 それだけでは理由にならんかな?」

雪城氷架 > 楽しげに笑う獅南に僅かながら訝しげな視線を向ける
それは、すぐに真っ直ぐな視線と重なって、なんだか逆にこちらがかしこまってしまうのだったが

「あれは…公安の女がやったことだろ。
 私を攫って、勝手に力を使われて……ほとんど、覚えてないけど」

あの事件において氷架は西園寺忍に拉致された時点から記憶が途切れている
大勢の人間を巻き込み、大勢の人間に自分が助けられたそんな事件だったらしい
大体の概要は後に呼びだされた風紀委員にも聞かされた

「色々言ってくれたけど、
 私がこの力を好き放題使える状態で野放しは危険、ってことか」

獅南蒼二 > 「……私には似合わんかも知れんが、真面目な話をしよう。」

「お前の能力にリミッターをかければ、その時と同じように誰かに利用される心配は無い。
 ……だが、お前にとって、いつかその力が必要になる日が来るかも知れん。
 世界を滅ぼすその力を、お前が“使いたい”と思う日が来るかも知れん。」

真っ直ぐに見つめたままに、語る。
それから、楽しげに笑って……

「その時のために、自分でそのリミッターを外せるようにしてやろう。
 お前が世界を滅ぼしてでもその力を振るいたいと思ったのなら、迷わず、その力を解き放て。」

「さぁ、やるもやらないもお前次第だ。」

雪城氷架 > 「…私が世界を滅ぼしたい、なんて思うはずないけど…」

大事な友人も
大事な家族も
みんながいる場所を
壊したい滅ぼしたいなどと思うはずがない

なら、それは…保険があってもなくても同じこと
ないよりは、あったほうが良い

「それ、無料でやってくれるの?
 私バイトはしてるけどあんまりお金ないぞ」

リミッターがどういうものかわからない
ただ、魔術の先生のやることである
おそらく魔術的な措置なのだろうというだいたいの予想はできる

獅南蒼二 > 「世界を滅ぼしたい、と思うことがあっては困るのだが…
 …その力に賭けたい、という瞬間は、来るかも知れんだろう?」

例えば、その大事な友人を救うためならどうか。
家族を救うためならどうか。

「なに、実に簡単な処置だ。無料で構わん。
 神経系に作用する麻痺の術式をかけさせてもらう。一定以上の電気信号が流れれば術式がそれを麻痺させ、身体の動きを無条件で止める。」

「これは本来であれば囚人などに使う恒久的に効果を発揮する術式だが…
 …少々アレンジを加えて痛みは感じないようにしておこう。」

手を翳せば、氷架の胸元に刻み込まれていた不可視の術式が消失し、代わりに、先ほどまでの“治癒”とはだいぶ雰囲気の違う“麻痺”の術式が埋め込まれる。

雪城氷架 > 「…あんまり、ピンとはこないけどな」

一介の女子高生として生きてきた自分にあ、今日のことは衝撃が過ぎた
落ち着いてるように見えるもの内心はかなり不安定であった

「………え、これで終わり?
 なんかこう魔法陣とか描いたり詠唱したりとかじゃないの」

自分の知る魔術とあまりにも違うというか、簡単なものになんだか逆に拍子が抜けてしまった

獅南蒼二 > 「……何を書き込んだか、見てみるか?」

手を翳せば、不可視の術式が可視光を放って光り輝く。
胸から首あたりにかけて見えない魔法陣が事細かに描き込まれているのが分かるだろう。
術式そのものは非常に単純な麻痺の術式だが、その発動条件が複雑に設定されている。
一定以上の心拍、一定以上の体温、一定以上の神経刺激。
先ほどの実験から得られたデータをもとにして“100万度前後”で麻痺させられることになるだろう。

「リミッターの解除は簡単だ。
 “お前がそれを強く望む”ことをキーにした。世界を滅ぼす力を使いたいと心から願った時、その術式は崩壊する。」

「……とは言え、今日のそれは即席のリミッターだ。
 もう少しいい方法が無いか模索してみるから、また研究室に来ると良い。
 ついでにまた炎でも出してもらえれば、魔力のチャージが出来て助かるんだがな?」

もしかして、本当の目的はそっちじゃなかろうか。
そう思えるくらいに、この時の獅南は気楽な笑みを浮かべていました。

雪城氷架 > 魔術のことは正直よくわからない
が、獅南の口から出る内容は実にシンプルである
それを理解できないほうが難しい

「(私が、世界を滅ぼす力を使いたいと願った時…)」

そんなことはありえない
しかしありえないのならばリミッターが外れなくても問題はない
別に日常生活に支障あるわけでも、異能の授業にだって支障はない
リミッターとはいうが、完全なる安全装置である

「じゃあ、また来るかも…。
 私魔術の講義とってないから、あんまりセンセーと話する機会なかったしな」

こんな人物だったのか、と素直に受け止める
なんだか顔がコワイので若干斜に構えてしまっていた自分を恥じよう

「そんなに魔力が必要ならまた調子の良い時にでも来るよ」

そう言って、こちらも小さな笑みを浮かべた

獅南蒼二 > 獅南は周到な教師であった。
危険極まりない異能者に首輪を付け、目の届く所へおいておくこと。
そして、禁止するのではなく表面上は主導権を握らせておくこと。

「だが、授業をサボってまでくる必要は無いぞ?
 いっそ、お前が魔術学を学べば、自分で自分を制御できるようになるかもしれんのだが、な。」

そうすることで、得体の知れない麻痺術式を描き込んでも、拒まれることはなくなるだろう。
コントロール下に、少なくとも、監視下に置いておきたいのだ。

「それは助かる……と言っても、今度は魔鉱石が吹き飛ばん程度に手加減をしてくれよ?」

楽しげに笑いながら、煙草に火をつける。
それから静かに、入口の扉へ向かって歩き出した。

ご案内:「魔術学部棟隔離実験室」から獅南蒼二さんが去りました。
雪城氷架 > 「私に魔術は難しすぎるよ」
苦笑する
あんな学問、初級とて修められる気がしない

「いあ、今日はせんせーが加減するなって言ったから…!
 あ、ちょっと待てよ!」

ぱたぱたと、後を追うように教室を後にしたのだった

ご案内:「魔術学部棟隔離実験室」から雪城氷架さんが去りました。