2016/07/30 のログ
ご案内:「研究施設群・入り口」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > 「………」

少しだけ不安げな面持ちで、塀に寄りかかって人を待つ

家族、伊都波悠薇を迎えにきたことを係員に伝えると、
少しだけ待つように言われた

………あれから一週間
事前の説明では2、3日で結果がわかると言われていたのに
心配も募るが、この先のエリアは家族でもおいそれとは入れない

ただただ、静かに待った

ご案内:「研究施設群・入り口」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
あれから一週間。
一週間という時間はとても、とても長かった。
判明しなかった異能の調査。研究者が張り切らなかったわけがない。
謎の解明、それこそ至上の餌である。
ならばと、食いついた研究者はいくつもいた。
それらに振り回される、日々。解明には時間はそうそうかからないだろう。
程よい暇つぶし、程度に考えていた学者どもの度肝を抜いてしまったのが、悠薇の第一の”不幸”だった。

少し、細くなった腕。ほんの少しやつれたようにも見える。
ふらりと、係員に支えられてやってくる少女が一人。
その後ろには、研究者が一人

暴力などをされた形跡は、ない。
ただ――ただ。精神への負担がひどく、大きかった。

しかし、妹は折れることはない。根性だけはある、そんな女だ。
それが第二の”不幸”。

”検証”に””検証”を重ねられて――少女は……

「――……」

――異能の調査、完了しましたよ

研究者は、重くもなく軽くもない、平坦な声でそう口にして。

少女は、まだ、しゃべらなかった

伊都波 凛霞 > 「!」

平坦な声に反応し、身を正す
目の前には妹と……見知らぬ研究者

妹の様子はと言えば……

「悠、薇……」

伊都波 悠薇 > 少女の表情は、髪で見えない。

まだ、姉の言葉にも応えない

研究者は、そっと口を開いた。

――これが、研究結果です。結果として、異能は存在しました

研究者はそう口にして、そっと封筒を差し出した。

――私の口から説明してもよいですが……

その先は口にせず――暗に妹から話を聞きますか? と聞いてくる

伊都波 凛霞 > 「………」

一礼して封筒を受け取る
中身はまだ開けずに視線を戻して

異能は存在した
その事実をひとまず受け止めて───

「……悠薇?」

ゆっくりと近づいて、その肩へと手を触れようとする

伊都波 悠薇 > 触れれば……少女は顔をあげた。
さらりと、流れた噛み――
ぼーっとした瞳。揺らめく瞳に、姉の――凛霞の顔が映る。

――では、私たちはこれで

その動作が説明はいらないというシグナルと受け取ったのか。
研究者と、係員は後にしていく。

「おね、ちゃ……?」

ようやく絞り出した声は……

伊都波 凛霞 > 「…あ…、ありがとうございました」

去ってゆく研究者達に深く頭をさげて

「…ん、おねえちゃんだよ。
 ………大丈夫?」

ゆっくりとその背中を撫でる
検査の結果がそれほどショックだったのかと危惧する

伊都波 悠薇 >  
――そして……
みるみると生気が顔に戻っていき、表情がどんどん明るくなって――

「……お姉ちゃん」

にこやかな笑顔で、もう一度名前を呼び――

「私、頑張ったよ。頑張ったよ――そして……」

嬉しそうに。顔を綻ばせ――

「報われたよ」

伊都波 凛霞 > 「えっ…?」

嬉しそうに顔を綻ばせる妹
そんな表情は久しぶり…もしくは初めて見たような気すらして…

「…やっぱり、あったんだよね。悠薇の異能が…」

手元の封筒を胸元に抱きしめて

伊都波 悠薇 >  
「――うん」

どんな苦労も報われる。なぜなら――なぜなら……

「私の、異能は……」

――お姉ちゃんを幸せにする異能なの

昔の――妹の表情。活発で元気で、笑顔が華やかな、朗らかな……

笑顔が咲き誇る

伊都波 凛霞 > 「私、を?」

思わず、自分を指差してきょとんとする

言ってる意味がわからないわけではないけれど、
そんな異能は聞いたことがなかったから

でも、それじゃあ妹の努力がまるで実を結ばない、それは
異能のせいではなかったということなのだろうか

よくわからない、といった表情になってしまう

伊都波 悠薇 >  
「そう――私の異能は……”平等―シンパシー―”。お姉ちゃんと、私の”つり合い”をとる異能、なんだって」

宝物だというように口にして、爛漫に笑う。
幸せそうに――

「私に起きたことの、対がお姉ちゃんに起こる。逆も、そう」

記憶をサルベージされて、追体験をさせられて。
常世の記録を解析し――判明した”異常性”。
そしてその”規則性”から観測された”異能―もの―”

「だからね、お姉ちゃん。無駄じゃなかった。全部、無駄じゃなかったの」

心底安堵するように、妹は言葉を紡ぎ続ける

伊都波 凛霞 > ビリ、とまるで電気の走るような感覚を受けた
耳の奥でわんわんとした音が反響するような感覚を覚えて、思わず一歩下がって

「………え?」

平等、シンパシー
自分と、妹の釣り合いをとる異能
お互いがお互いに影響する、異能

じゃあ……

「っ───」

思い当たることが、多すぎた
前期の自身の学業での成績はほぼ満点に近かった、妹は───
自分は友達も多く出来て、学園でも目立つほうだった、妹は───
運動能力の成長も著しく、成長も早かった、妹は───
自分の身につけられなかった技、妹は───
自分が幸福を感じられていた時間、妹は───

「………」

2度、3度
幸せそうに笑う妹に気圧されるように後ずさる
………理解できてしまった

今、自分は生きてきた中で一番の"失意"を感じている
…目の前で幸せそうに笑う妹とは、対象的にその顔は不幸せそのものだったから

伊都波 悠薇 >  
――首を、傾げた。
どうして、喜んでくれないんだろう。
どうして、頭を撫でてくれないんだろう。

どうして――
   そんな顔をしているんだろう。

「――お姉ちゃん? なんで、泣きそうな顔をしてるの? なんで……?」

なんで?
やっと、やっと――

   追いついたのに

伊都波 凛霞 > 「……わ、私…───」

声が震える
今された宣告は、妹の幸せを何よりも願っていた姉にとって、

何よりも苦しいもの

一体いつからそんなことになっていたのか
妹のために、妹の幸せを願って
守ろうと、道になろうと、やってきたことが全て、尽く

妹を不幸にしてきたのだから

「───…ごめ…ごめん、悠薇──」

そして姉は、妹に背を向けた
手にもった封筒をその場に落としたことも気づかずに、背を向けて

その場から逃げ出した

ご案内:「研究施設群・入り口」から伊都波 凛霞さんが去りました。
伊都波 悠薇 > 「……――お姉ちゃん?」

手を伸ばして、追いかけようとして――止まる。

「なんで、謝るの?」

ぽつりとつぶやく。どうして――

「どうして、ありがとうって言って、くれないの……?」

悠薇には理解、できなかった。
落ちた封筒を手に取り――

それじゃ、まるで。

「お姉ちゃんのせいで、こうなったみたいじゃない」

ほんの少しの、”感情”がその言葉ににじみ出た

ご案内:「研究施設群・入り口」から伊都波 悠薇さんが去りました。