2015/08/28 のログ
ご案内:「第一演習場」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > 魔術学が学問として冷遇されていたのはもはや過去の話だ。
だが、その研究は、もはや停滞していると言っても過言ではない。
日常生活に用いるには難解にして利点が少なく、軍事技術としては欠点が目立つ。
さらに、一般化し、普及させることが非常に難しい。
厳密に言えば何人でも習得可能なものなのだが、
魔術とは非常に感覚的であり、才能に左右されるものだと、一般的には理解されている。

「……以上で、本日の授業を終了する。
演習の成績に関しては次回の授業時に……」

そしてその認識は、概ね間違ってはいない。
彼の授業は確かに凡人を魔術師に成長させることもあるが、
一般的な生徒の多くは落第生へと転落する。

獅南蒼二 > 全15回の【魔術学演習】だが、すでに3回目にして過半数の生徒が課題をクリアできなかった。
道具を使わずに蝋燭に火をつける。それだけの課題なのだが。

「…………。」

平凡だが熱心な少数の生徒と、特別熱心でもないが才能に恵まれた少数の生徒。
課題をクリアする生徒はこれらに二分される。
……いつものことだ。

獅南蒼二 > 生徒たちが演習場を後にすれば、白衣の男は残された蝋燭たちに手を翳す。
火のついた蝋燭、焦げた蝋燭、溶けた蝋燭、何の変化もない蝋燭。
それら全てに、獅南は【話しかける】。
【描き出せ】と。


すると、特殊な術式を組み込んである蝋燭は魔術的な操作を再生する。
生徒一人一人がどのような操作を行い、どのように術式を構成し、現象を発現させようとしたのか。
蝋燭のまわりの何もない空間に、可視光を放つ光の線が伸び、全てを明らかにしていく。

ご案内:「第一演習場」に鏑木 ヤエさんが現れました。
ご案内:「第一演習場」に十六夜棗さんが現れました。
獅南蒼二 > 相応に魔術学を学んだ者でなければ、それが何なのかさえ分かりはしないだろう。
非常に美しい、蝋燭と光のオブジェにさえ見えるかも知れない。

「ほぉ……案外と、いい線までは行っていたのだな。」

焦げ目すらついていない蝋燭から描き出された術式を見て、獅南は小さく笑んだ。
非常に丁寧に構成された術式には、残念ながらそれを発動させる起点が欠けていた。
燃料も、導火線も完璧だが火打ち石を忘れている。

鏑木 ヤエ > (授業が終わり、生徒が席を外して残るのが教師ひとり、
 という頃合いに空気の読めない声が飛び込む。
 光と熱の描く空間になど微塵も興味を示すことはない)

「どうも、やえですけれども。
 フツーに授業を寝過ごした訳ですがペナルティはありますかね」

(ずかずかと何の遠慮をすることもなく演習場へと脚を踏み入れる。
 教師が何をやっていたかなど知る由もない。
 ただ、寝過ごした授業の単位を貰えないかと、ただそれだけを求めて)

「最近バイトが忙しくてですね。
 ほら、委員会街のラウンジあるじゃないですか。あそこ。
 いやあ、びっくりするくらいあそこの新人教育厳しいんですよね。やえ驚きました」

(全く表情を変えることも悪びれる素振りもなく、自信満々にない胸を張った)

獅南蒼二 > 白衣の男は、遅れて来たこの生徒を問題児と認識しているか、どうか。
少なくとも印象には残っているのだろう。
驚く様子も、自身の作業を止める様子もなく、視線だけを向けて……

「学ぶ意思のある者にペナルティを課す趣味はない。
……が、学ぶ意思の無い者を救済するつもりもない。」

どこか楽しげに言い放つ。
きっとこの男は、少女の裏表の無い発言をそれなりに気に入っているのだろう。
下手に言い訳をする連中より、よほど愉快だ。

十六夜棗 > 魔術学。学問として学ぶ上で…独学で学んだ人間としては、癖が出来てしまっている。
理論と感覚、両方を押さえ直す事を目的として、先ほどまで授業を受け…魔力消費量を抑えたまま火炎を構築して火をつけようとして、
結局最後には得意属性である電気の火花でろうそくに火を付けて、一応の課題のクリア。
しかし、火炎の構築が出来なかった事で、誰も居なくなった授業の合間を見計らおうと戻ってきたはいいものの…先程の教師がまだ残っており、もう一人生徒が残っていた。

「……お取り込み中、でしたか?」

心の準備をしてから、入り口で頭を下げる。
授業中も、人と距離を置いてほぼ一人で過ごしていて、自分から誰かに話しかける事さえも珍しい、光景かもしれない。

鏑木 ヤエ > (どうにも目の前の男の機嫌を損ねたわけではないらしい。
 胸中では「また留年したらダメダメの烙印押されちまいますけど」と一人囁いて)

「ありがとうございます獅南蒼二。
 学ぶ意思自体は有り余りやがってますがどうしてもラクしたくなるのは人の性です。
 テキトーな課題でもくれませんか」

(普段通りにフルネームで彼の名前を呼びつける。
 どの教師に対しても、どの生徒に対してもこの乱雑なコミュニケーションなのは間違いない。
 不遜、それとも常識外れ。魔術方面への興味はからきしだが男には興味を持っていた)

「やあ、ええと───、やえです。
 お取込み中という訳ではねえですけども、別に問題はねえですよ。
 センセイにご用事ですか。もっといえばやえの単位の方が問題アリアリですね」

(名前は直ぐに出てこなかったらしい。故に、自分の名前を名乗って。
 ひらひらと右手を入り口の少女に振りながら、言外に単位をどうにかしてくれ、と。
 目の前の教師を見つめた)

獅南蒼二 > 「あぁ、お前か。熱や炎ではなく電気を使うとは、面白いアプローチだった。」
才能に満ちた生徒ではないが、確実に習得するだけの知識基盤と、それから執念がある。
二人目に現れた生徒は良い意味で、記憶に残る生徒だった。
……もっとも、こうして言葉を交わしたのは初めてであるかもしれないが。
「なに……気にするな、授業よりもバイトに熱心な生徒が遊びに来ているだけだ。」
楽しげに笑ってから、ヤエの方へ向き直る。
それから少しだけ考えて……先程の、起点を欠いた術式の描かれた蝋燭をヤエへと投げ渡して、

「望み通りに適当な課題をやろう。
術式を5%だけ書き換えてその蝋燭に火をつけろ。」

適当な上に難易度がえらく高い。
唯一のヒントは術式が可視化されていることだが……ヒエログリフより難解だ。

ご案内:「第一演習場」に獅南蒼二さんが現れました。
十六夜棗 > びくっ、と女生徒に声をかけられて、反応する。

「――十六夜、です。
単位の方は、…補習課題が有るようですね。」

名乗りを苗字、八重姓だと勘違いして、深呼吸をしてから、もう一度頭を下げる。
頑張って下さい、だの、応援の言葉もなく。表情も余り変わらない。若干怯え気味な位。

「…有り難うございます。
ただ、火炎の構築が出来ませんでしたから、もう一度、と。」

視線を教師へ向けて、それから自分の来た理由を端的に述べ。
恐らく初めてだろう言葉を交わした後、その課題の見学をしようと、部屋の壁際に移動する。

鏑木 ヤエ > 「アホですか」

(テンション高く、ただそれだけ呟いてまた言葉を継いだ。
 この言葉遣いとそれから別のものも含めて落第スレスレ──落第生なのだが
 知ったこっちゃないと言わんばかりに吐き捨てる。
 敬う心算の見えない敬語が余計に残念さを掻きたてた)

「これのどーこが簡単なんですか。
 だから落第するようなヤツがごろごろ出るんですよ。
 嫌がらせですか嫌がらせ。これだから性格が悪いって陰口叩かれるんですよ」

(叩かれているかどうかは定かではない。
 ただ、自分が今抱いた不満を全員が抱いている、というようなよくある手法で)

「そこは適当なレポート何枚~みたいな課題じゃねーんですか。
 テキトーって言うのは適度に当たる、って書くんですよ。
 どう考えてもやえに適していない課題だと思うんですが」

(鏑木彌重は魔術の才がからきしな上に異能も学園では確認されていない。
 明確な"第から落した"生徒である。
 故に可視化されていようがヒエログリフより難しかろうが簡単だろうが関係ない。
 やる気もなければ出来るようにならない。ただ、ゴネた)

「そーですよ、補習課題にしては随分レベルが高いものでやえ困ってましてね。
 性格悪いと思いませんか、十六夜さん」

(ちらり、視線をずらした)

獅南蒼二 > ヤエの方はまぁ、頑張ってもらおう。
学ぶ意思のある者には、きちんと助言をしよう。

「炎に比べても、電気というものは再現が難しい。
得意不得意はあるだろうが……そうだな、【熱】と燃焼の【燃料】を別に構成してみろ。
実際の炎も、酸素が十分な空間で火種と燃料が触れてはじめて着火する。
……最初から炎を作ろうとするから上手くいかないんだ。」

言いつつ、蝋燭を十六夜にも1本投げ渡そうとして……多分キャッチできないと思ったか、ふわりと浮かせて目の前に置いた。

十六夜棗 > 陰口なんてどこでも大抵の相手が叩くものでしょう、と。
落ち着いている。ただ、他人への陰口の内容を知っている、それは信用できなさそうな陰口側の人間だと言う疑惑が沸く。

不信度、アップ。

「……本人に適しているかどうかではなくて、授業内容として適しているかどうかが課題なのではないでしょうか。
座学と言うステップが必要なら、概論を平行して受けた方が…受けておられますか?」

ただ、不興を買うつもりはないので、先生の援護、と言うつもりは無いけれど、授業を受ける順番、間違えていたりしませんか、と問いかけてみる。
座学→応用→実践の順番か、その平行ではないかと。

「……熱と燃料…分けて構成、有り難うございます。」

教師に礼を述べて、浮遊したろうそくが目の前へ。

小声で、詠唱を始める。通常使うものとは別に、構成を丁寧に行う為に、省略部分を減らし、正式に構築していく。熱の構築は早かったが、燃料の構築が遅い。”燃料”と言う構成物の構成式を…目に留まった可視化されていた術式から、借りる。

獅南蒼二 > 「おや……お前の注文は【適当な課題】だったはずだぞ?
簡単な課題が欲しかったなら、最初からそう言えばいい。」
相変わらずの相手に、こちらも意地悪な対応を取る。
もちろん、簡単な課題など出すつもりは無い。
「学ぶ意思の無い者に教えることは何もないよ。
単位を取りたいだけなら別の教師を当たることだ。」
とりつく島も無いとはまさにこのこと。
そうでなければ、記録的な落第者数を出す授業など、はじめからやっていない。

ヤエが視線を十六夜へ向ければ、獅南はニヤリと笑った。
「……あぁ、どうやら彼女には難しい課題だったようだ。
さて、十六夜はどうかな?」
結果次第ではヤエの立場がピンチである。

鏑木 ヤエ > (彼女の心中も知ったことではない。知る由もない。
 故に楽しげに、先刻と全く変わらずに十六夜に対して親しげに声を掛ける。
 課題に関しては諦めたらしい。放り出している)

「座学はしっかり出てますよ、3年連続2回生だなんて恥ずかしすぎますからね。
 ところで十六夜は何でこの授業取ってるんですか?
 なにか魔術でしたいことでもあるんですか?
 生憎やえにはそれがないもので身についてないような気もしますね」

(指を唇に当ててむう、と考え込む。
 男の言葉を聞けば「そうですそれそれ、その意気です」、と)

「簡単な課題が欲しいか欲しくないかでいらないと言えば嘘になりますね。
 学ぶ意思自体は在り余りの有明の月って言ってるじゃないですか、意地悪ですね。
 やえは『獅南蒼二が如何ほどのことを考え、何を生徒に教え、教えた上で何をさせたいのか』が
 知りたくてこんなわざわざ単位が取りにくい講義を取ってるんですから」

(早口でまた小鳥の囀りよりかは随分と喧しく捲し立てた。
 ───、その話をしようにも毎度毎度の授業で寝落ちて話す機会がなかっただけなのだが。
 教師全員に同じ質問をする。それに対して反感を買って──それが2年連続留年の真相である。
 反省の色は全く以て見当たらない。どの教師にも繰り返した問答を)

「教えてもらえませんかね、獅南蒼二。
 ただ単に生徒と触れ合ってーじゃないんでしょう、やえはあなたに興味があります。
 この授業に出ることでやえは何を学び、獅南蒼二はやえに何を教えてくれるんですか」

(成績の悪い生徒が「なんで勉強しなきゃいけないの」、と劈くのと同じように。
 それよりも幾らか静かに、真正面から男の顔を見遣った。
 ちらり、返答を伺うように十六夜の方にも視線を移しながら)

十六夜棗 > 目に留まった構成式を、借りて、そのまま”燃料”として構成。
構成したまでは良くても、このままでは”熱”と”燃料”が出来上がっただけ。
そこで…”熱”を少し前方において、構成した”燃料”を”熱”を通してろうそくへ放射した。

ろうそくに火をつけるには、制御性は悪いものの、火炎放射魔法の誕生。当然ろうそくにも火は点くが、ろうそくの周りにも火が飛び、ろうそくの溶けが早い。

「…点火魔法とするには使い勝手はあまり良くありませんけれど、火炎の構成と言う点では及第点…」

でしょうか?と教師へと一礼。
自分自身としては後はこれを元に構成式を調整していけばいいので、前進には違いない。

「……そうでしたか。すみません。
何故、と言われると…したい事の為に、魔術は必要な物ですから。
身につけてからしたい事を考えても…」

内容までは、言わない。言えない。
迂闊な事をいいそうになって、途中で口を噤む。

噤んだ後にヤエが獅南先生へ知りたい事を聞く場面となり…自然と、二人の会話を聞く側へと回った。

獅南蒼二 > ヤエの言葉を聞けば、男は僅かに目を細めた。
課題をクリアできるとは思っていない。
そして、教えるに値するほどの才能も勤勉さも無い。
だが、この少女の瞳には…
「私が教えるのは学問としての魔術……それをどう使うかはお前たち次第だ。
……などという答えでは納得しないのだろう?
まったく、お前の言い方では、まるで私がお前たちを私の都合が良いように教育しているようじゃないか。」
……確かに、光るものがある。

「まるで火炎放射だな……上出来だ。後は指向性をどのように構築するか、だな。
丁度良い、十六夜もよく聞いておけ。」
近くに置いてあった椅子に腰を下ろして、散らばる蝋燭たちに手を翳す。
すると、蝋燭たちはまるで意志があるかのように、浮かび上がって箱へとしまい込まれた。

「…魔術は便利なツールや、面白くもない手品の種ではない。
もちろん、そのように使うことも出来るが……魔術学は、他の学問に比べても、【力】に直結する学問だ。」
そして、静かに語り始める。
貴方たちは、きちんと聞いてもいいし、椅子を見つけて座ってもいい。
言葉を挟んだって構わない。

鏑木 ヤエ > 「十六夜はセンセイの話のあとにきっちり聞きますからね。
 そんなしたい事、だなんて面白そうな話聞き逃してはやりませんよ」

(薄かった表情にじわり、と笑顔が滲む。
 薄らと口元が微妙に吊り上がっただけ、だったが十分に興味を示した。
 続いた男の言葉にもまた面白いものを見つけた、といった様子でにやりと笑った)

「ええ、やえはそんなクソほどツマンネー話を聞きにきた訳じゃねーですからね。
 いやいや、大抵の教育機関なんてそんなモンでしょう。
 有能な学生を育てて社会に送り出してまたそのループ。
 獅南蒼二もそうだってんならやえは1単位落としてしまうのできっとまた留年ですね」

(手頃な位置に椅子を見つければどかり、とふてぶてしく腰を下ろした。
 自分の興味心に対して真摯に向き合ってくれるのならば、と五月蝿かった口も閉じた)

「まあ、そうでしょうねえ。
 魔術犯罪だとか異能犯罪とかも最近はよく聞きますもんねえ。
 やえには到底できそうにはないですけど。ああ、する気もなかったです」

十六夜棗 > 魔術構成への評価を聞いて、安堵。
続いて、話に混じれるみたいなので、まずは先生の話を聞く。

「喰らう怪物の噂も、ありますからね。」

力に直結する、と言う言葉に反応して、頷く。
ヤエの視線から軽く逃げるように視線と会話の向きを先生に向けたかった事もあったが。

「…フェニーチェ。」

犯罪、と聞いて思い浮かぶ話と言えば、自分を除いてはこれになる。
ただ、話の腰を折る気はないから小声だったが。

ご案内:「第一演習場」にサリナさんが現れました。
サリナ > 魔術学演習が終わった後、他の生徒と話しながら学園に戻ろうとしていた所、用事を思い出して舞い戻ってきた。

「………」

遠目には生徒が二人程残っていた。
どうやら先程の授業でわからない事を教えているとかそういう雰囲気だった。
研究費について獅南先生と話があったけれども…仕方ない、しばらくここで待っていよう。

獅南蒼二 > 「面白くもない歴史学だが、現在、この世界を支配している力は【異能】に他ならない。
それは……先天的に、または後天的に、意識的に、または無意識的に、
つまりは殆ど規則性も無く、突発的に発現する大きな力だ。」
ここまでは理解しているな?と、確認して、

「近年の急速な異能学の発展により暴走する力の制御 を可能とした。
一般社会の認知度も上がり、この学園をはじめとして社会への適応も図られている。
……だが、考えてもみたまえ。
隣に座っているかも知れん異能者が、どんな力を秘めているのかも隠して笑っている。
ひとたび隠した爪を振り翳せば……我々凡人にはなす術がない。」

「…これではやがて、我々凡人は、異能者に支配されてしまう。
表面上は取り繕われた平和があったとしても…そこには決して覆すことのできない優位性が存在する。」

「……だが、それは努力もせずに得た力だ。
どんなにか努力を積み重ねたとしても、異能者には勝てない。
そんな社会は、おかしいとは思わんか?」

普段の授業では、この男がこんなに語る姿を見ることは出来ないだろう。

獅南蒼二 > 男の語りは続く。静かに、けれど、訴えかけるように。
「無論、魔術も異能と同様に凶器となり得る。
だが……異能との決定的な違いは、努力と研鑽によって、誰でもそれを得ることができるということだ。」
心を操る魔法など使いはしない。
その言葉に惹かれるものは惹かれ、そうでない者は去る。
それでいいと、思っている。

「私がお前たちに魔術学を学ばせているのは……
【異能にさえ対抗できる】力をもってほしいからだ。
そしてその力を、正しく使ってほしい。
……天から力を授かるだけの異能者とは違って、努力と研鑽を積むお前たちなら、その判断も、できるはずだ。」

全てを話したわけではないが、男の話はそう、締め括られた。
その後のことは、自分達で考えろ、ということか。
それとも、今はまだ、話す時ではないということか。

鏑木 ヤエ > (男の言葉にひとつ、ふたつと頷く。
 流れるように語られるその言葉を一字一句聞き漏らさんとしっかりと男の言葉に意識を向けた。
 されど、途中から縦に頷いていた首が横に傾げられた。
 そこで口を挟む。浮かんだ疑問をただただぶつける)

「別にオカシーとは思いませんけどね。
 そんなの異能も魔術も変わんねーと思いますが。
 ひとたび隠した爪を振り翳せば我々凡人にはなす術がない?
 やえはそれ、間違ってると思いますよ。ああ、なす術がない方でなくて」

(傾げた首を正面に戻して、ぴんと指を立てる。
 ニュースのキャスターのように、朗々と言葉を紡ぐ)

「我々凡人、って言ってますけど、やえには獅南蒼二も十六夜も同じに見えますよ。
 魔術だって異能と同じでしょう。
 振り翳せば為す術がねーのは異能も魔術もオンナジですが」

(こてん、とまた首を傾げた)

「努力をして得た力は正しくて努力をしないで得た力は正しくねーんですか?
 やえはまず、そこから疑問に思いますが」

(「どう思いますか十六夜は」、と言葉を継いだ。
 疑問を皆でぶつけ合う。
 ある意味補習のようなこのディスカッションの時間が、鏑木彌重は大好きだった)

十六夜棗 > 背後に誰かが戻ってきている事等、余り気付いていない。
気配はするかも、程度の認識だ。

それよりも、この話の方が興味深い。
異能が支配している、制御も可能となった。
学園が作られ、社会に適応された。

話の筋を聞けば……
理解してしまう理論がある。

しかし、ああ、そうだ。ヤエの言葉もある意味真実だ。
凡人に、劣った者に為す術はない、ただし、魔術もそして、武術も、科学力も。それらもまた、力であると言う事。

「社会は数の多い強者には適応を積極的に試みても、弱者への適応は取り繕われた物になる。
それが社会と言う物ではないでしょうか?」

この場合、強者は”力”と言っても様々な分野のうちのどれか、となる。弱者はそれを持たない者。
持たざる者は、傍目に危害を受けないようにする事までは可能でも仲間から外され、苛められ――そして厄介払いだ。

語りは続く。

「脅威となり得る異能に対抗できる魔術を持てるか否か。
私は、先生の話をそう受け取らせていただきました。

(そして、とヤエに顔を向ける)

私の疑問点は、異能に”後天的に、意識して発現”した物も有るとしながら一纏めにした方なのですよ。」

だから、努力をして得たかどうかは論点ではないのではないか、と指摘する。

「だいたい、先天的に努力をせずに得られる力なら、生まれ、親の財力、権力、生まれ持った容姿、そう言う力はどうなのか?と言う問いも生まれる。」とヤエには小さく繋げて。

獅南蒼二 > ヤエの言葉には肩をすくめて笑った。
「いや、異能そのものが問題なのではないよ。正しく使えるのならそれも構わん。
だが、私のような凡人には、【異能】という選択肢は無いだろう?
異能者が神に選ばれたのか悪魔に触れられたのかは知らないが……。」

「お前のように努力を嫌う者も居て然るべきだ。
だが…凡人でも努力すれば異能者を越えられるような……そんな世界を作りたい。
……やられっぱなしは、癪だからな。」
そう言って、笑う。
もしかすると、最後の一言が全てなのかも知れない。

この男は凡人。本来、魔術の才能も異能もない。

獅南蒼二 > 彼の裏の顔を知る者なら、腹を抱えて笑うだろう。
けれど、その言葉に嘘は無かった。

「なるほど尤もな指摘だ。
私の話では確かに異能者を一括りに扱っている。」
十六夜の感じた違和感は、この男の裏の顔が、僅かに覗いた部分だったのかもしれない。
「良い感性を持っているな……全てを平等にするのなら、それらさえも均一化しなければならん。
だが、人であるならば……そこに絶対的な差異など存在しない。」
全て平等にしてやれればいいんだがな、なんて笑って、

「私にとって、魔術は……人が人らしく生きる上で絶対的な差異となり得る【異能】の有無を克服するためにある。
と、まぁ、そんなところかな?」
ふと、視界の端にサリナの姿を見れば、小さく頷いた。
きっと、用件について心当たりがあるのだろう。

鏑木 ヤエ > 「なるほど」

(こくん、とひとつ深く頷いた。
 十六夜の言葉も、男の言葉も聞きながら中で人差し指をくるくると回す。
 そして無遠慮に、不躾に言葉を落とす)

「十六夜は異能にさえ対抗できる力、を欲しいと思いますか?
 ああ、十六夜が異能を持ってるかも知らねーで言ってて申し訳ねーですけど。
 
 生まれ?親の財力?権力?生まれ持った容姿?
 そんなのはやえ、異能と魔術に並ぶような力には思えませんね。
 別にどうだってなるじゃないですか。生まれも覚えていなければ関係ない。
 親の財力がどうであれそこにいるのは親じゃなく子供。
 権力なんてもってのほかですよ。権力をその子供も持ってる訳じゃねーですし。
 親がテロリストでも犯罪者でも子供には関係ねー話ですから。

 十六夜の挙げた力、ってのはそれは相手が脅威に思えば脅威になりますね。
 ただやえみたいな頭の悪い奴からしたら脅威でもなんでもねーんです。
 よっぽど異能や魔術のほうがやえからしたら脅威に思いますよ。

 ああ、脅威に思えば脅威になる。なるほど。
 胸囲も脅威になり得ますしね」

(つらつらと言葉を並べ立てる。性質の悪い自己完結を添えて。
 十六夜に向いてぺしぺしと自分の頬を人差し指で叩きながら。
 続いた男の言葉にはまた「なるほど」、と嘆息して)

「獅南蒼二は異能が嫌いなんですね。異能に親でも殺されました?

 でもその考え方はなるほど、って思いましたよ。
 常世学園って異能に肯定的な人間ばっかかと思ってたので最高の収穫でした。
 中々面白い話が聞けました」

獅南蒼二 > ヤエの言葉、術式をの言葉を順に聞き…小さく頷く。
学ぶ意欲のある者、その意味を考える者、どちらも、この教師にとって、良い生徒なのだろう。

「いや……私の両親を殺したのは魔術学だよ。」

これまで誰にも言わなかった事だが、男はそれを小さくもらした。
言ってから、どうして自分がそれを口走ったのか、理解できなかった。
ヤエの異能に当てられたのか、それとも、単に口が滑ったか。
いずれにせよ、それ以上語るつもりはない。

「好き嫌いは人それぞれ、私はこういう性格だ。
お前たちが異能者なのだとしたら、一応は謝ろう。」

それにしても、酷い言い草である。

十六夜棗 > あ、と…詰まる。
努力をすれば先天的な者を越えられる。
そちらが論点だったならば。そう思ったけれど――努力を凌駕しうる物として捉えている、と繋がるのでしょう。そう、理解した。

「……人と、異能者の絶対的な差異。それが異能。
と、捉えて居られた訳なのですね。」

しかし、ヤエの言葉には……
少し、暗い影を落とした表情を浮かべる。

「異能はありませんよ。対抗できる程の力を欲しい、とは思いますけれどね。

…けれど、さっき話した4つは、単独では並ぶ力でなくても、”それらを持つ者”を動かせる力だと思います。

生まれはまぁー、”持つ者を動かせなくなるマイナスの力”の場合が多そうですけれど。

最後には自身の力、と言う事はー。」

…言い終わる前に、胸囲に触れた時点で押し黙った。
眉間に皺が濃く寄った。
そして、暫く押し黙った。

鏑木 ヤエ > 「なるほど、親を殺した魔術学に傾倒するとは中々にメンタルつえーもんですね」

(無遠慮に言葉を吐いた。
 果たして彼女の異能であるか、それとも別の何かであるかは知り得ない。
 されど、ただ正直に自分の感想を漏らす。
 続く十六夜に対しても同様に)

「ほんほん、それなら十六夜は力を求めて何をするんですか?
 さっき言ってましたよね、したいことがあるーって。
 獅南蒼二みたいに異能をどうにかしてやりたいーとかそういう系統のものですか。
 なんだか治安の悪そうな話ですけど」

(悪びれもせずに、こてんと首を傾げた)

獅南蒼二 > 十六夜の言葉に、小さく頷いた。
恐らく、それなりに伝わりはしただろう。
「実際のところ、魔術にも才能は関係する。
……そこのサリナは、私の何倍もの魔力をもっているからな。」
単純な出力では、絶対に勝てる見込みはない。
魔術学も万能ではないのだ。
……だからこそ、研究の日々に終わりは無い。

「…………。」

胸囲の話に男性が入り込むのよくない。獅南知ってる。

十六夜棗 > ……暫く押し黙っていた所に、ヤエに問われた言葉。

「ヤエさんが言った、取るに足らない力で虐…」

何を、言いかけた?
口を思わず噤む。
復讐は距離が遠すぎて今は出来ないから、思考から捨てていたのではなかっただろうか。
それでも、根源には違いないし、陰口を叩いていたと見てヤエへの不信感を最初に募らせた理由の一部でもある。

「…そこのっ!?」

失言を自覚した上での、更なる誰かの存在の示唆。思いっきり振り返り。首からおかしな音が鳴った。

獅南蒼二 > 二人の会話を横目に、静かに立ち上がった。
それから、サリナの方へと歩み寄る。

「待たせてしまったかな。
……研究の話か?」

ある程度の論理構築は済んでいるが、資金調達が上手くいかずに実験を先伸ばしにしていた。
だが数日前に、大口の研究資金提供を申し出た組織がある。
そこまでは、サリナにも伝わっているはずだ。
獅南がそれにどう答えたかまでは、伝わっていないだろうが。

サリナ > 遠目から見ていれば、獅南先生も私の存在に気付いたのか、頷いた。
私があえてここに居るのだから用件も種類もわかったのだろう。それからもしばらく待っていたが……

それにしても結構話が長い。単純に今回の授業の事だけで話してる訳ではなさそうだ。

「………?」

ふと、先生と生徒達の仕草に気付く。なんだか私の事で何か言ってる気がする。
ちょっと離れていて、声は聞こえないのだが、先生の視線と振り向く生徒でなんとなくそう思った。
それからすぐに先生が立ち上がってこちらへやってきた。やはり用件はわかっていたようだった。

「……そうです。研究費についてお話が…あとで研究室に、忙しいのであれば明日以降でも構いません」

用意していた言葉を述べる。
大口の研究資金については知っていたが、それとは別に私の方で資金繰りをしていた。
と、他の者が居る所で話す内容でもなし、とりあえずはそれだけ言っておいた。

鏑木 ヤエ > 「なるほど」

(大層つまらなさそうに頷いた。
 彼女の過去についてはその数文字しか知らない自分が口を出すことではないだろうと特に触れなかった。
 ただ一言、)

「ツマンネー話に縛られるのは楽しくなさそうですね、随分と」

(それだけ漏らして、ゆっくりとサリナの方に目を向ける。
 ここから先はきっと自分には関係のない話なんだろう、と忙しそうな男を横目にゆっくりと立ち上がる。
 もふもふの量の多い髪が大きく揺れた)

「じゃあ獅南蒼二も十六夜も。ステキな時間をどうもありがとうございました。
 それじゃあやえはこの辺りで失礼しますので。
 単位のほうはよろしくお願いしますよ、かわいいやえの為だと思ってください」

(こつん、こつんと厚底のストラップシューズを鳴らす。
 擦れ違いざまにサリナには「やえです」、と。
 それだけ呟いてその場を後にするのであった)

ご案内:「第一演習場」から鏑木 ヤエさんが去りました。
十六夜棗 > 「……。」

首からおかしな音がして。痛みで暫く押し黙った後。もう一つまでばらさなくて良かった、まだ救いはあった、それだけ思った。

つまらない話。ヤエはそう言った。

「そうでしょうとも。楽しさ?」

ずぅっと、ずぅっと遠い感覚。

「…では、私もこれで。」

苛立つ。ああ、苛立つ。こんなに話した事は久しぶりでも、苛立つ。
首を押さえて、ゆっくりと無理をしない様に、壁を伝ってその場を後にする。

楽しい事って、なんだろうね?

ご案内:「第一演習場」から十六夜棗さんが去りました。
獅南蒼二 > 「あの二人も、なかなかに見所のある生徒だ。
……片方は少々問題ありだが。」
なんて冗談を交えながら……サリナの言葉に、小さく頷いた。
「……分かった。
私からも、研究費に関してお前の意見を聞きたい案件がある。」
資金提供への返答は、まだ行っていなかった。
共同研究である以上、知的財産の扱いは意見の一致の下で行うつもりだ。
「……そうだな、この後は時間が取れそうにない。
明日でも構わないか?」
ここでは話を進めず、そうとだけ返した。

サリナ > 生徒の一人が私の横を通り過ぎ、何かを言った。

「…ん?」

"やえです"?どういう意味だ?私に言ったような気がする。
いや、自己紹介だったのだろうか今のは…あまりにさり気無く言ってそのまま去ってしまうので咄嗟の判断ができなかった。
それから、もう一人の生徒も去っていく。去り際の彼女の顔は、何か様子がおかしかったが…一体何を話していたんだろうか?あの二人にどんな見所があるというのだろう…
とりあえずはこの場に二人残されているのを確認してから返事をした。

「わかりました。ではまた明日以降に……教材の片付け、手伝いましょうか?」

獅南蒼二 > 面食らった顔をしているサリナを見て、苦笑しつつ
「アイツに魔術を教え込める奴が居るなら、きっと私よりよほど魔術の教師に向いているよ。」
そうとだけ呟いて……蝋燭を詰めた箱を持ち上げる。

「いつもすまないな、術式を消す作業を少しだけ手伝ってくれ。
どうにも、今回は随分と人数が多すぎてな。」
そしてまた、大量の単位難民が生まれるわけである。悲しいけど、これが現実。

ご案内:「第一演習場」に獅南蒼二さんが現れました。
ご案内:「第一演習場」に獅南蒼二さんが現れました。
サリナ > 「ふむ…」

見所がある癖に魔術を教え込むのは困難なのだろうか?
彼女達の事はよく知らない。一緒の授業に出てるだけの認識。授業中の彼女達を見る事もないので先生の言った意味が深く理解できないでいた。

「…わかりました。それでは… …… …… …」

小さな声で詠唱すれば、蝋燭に組み込んである術式を消す影響を振りまき、蝋燭周りに伸びる光が消えていく。
それから沢山の蝋燭を綺麗に並べていくのだった。

ご案内:「第一演習場」からサリナさんが去りました。
ご案内:「第一演習場」から獅南蒼二さんが去りました。