2016/07/03 のログ
■寄月 秋輝 >
「共同で使う場所を全面占拠したようなものですから、僕に非がありますよ」
ひらりと手を振って、それを否定する。
彼自身は、不自然なほどに依然と変わらない。
「何をするか、決まりましたか?
よろしければ手伝いますよ」
一応尋ねてみる。
■阿曇留以 > 「……えぇと……」
明らかに今考えている。
考える時間が足りなかったか、実はなにも考えていなかったか。
「あ、寄月さんとちょっと模擬戦なんてどうかなぁ、なんて思って……」
そして思いついたような声で。
断られるのを前提に言っている巫女。
■寄月 秋輝 >
「……明らかに今考えましたよね?」
当然のツッコミである。
だが続く言葉には。
「……いいですね、やりましょうか。
では木刀を借りてきます」
すたすたと準備室に向かった。
■阿曇留以 > 当然のつっこみに顔を逸らしておく。
が、その後の返事には、あれ?と首をかしげ。
(……断られると思っていたのだけど……)
意外にもすんなりと、特に嫌そうな声も聞こえず受け入れられた。
木刀をとってくる、といっていたため、適当な場所に大太刀を置いておく。
■寄月 秋輝 >
しばらくして、二本の木刀を持ってきた。
「お待たせしました。
あなたの大太刀よりかなり短いですが、大丈夫ですか?」
片方を差し出し、尋ねる。
普段の獲物とリーチや重さが違うと、感覚がかなりずれるものだが。
■阿曇留以 > 差し出された木刀を受け取り数回だけ振ってみる。
昔は普通の木刀で練習していたために、なんとなく感覚は覚えているものの。
「……仕方ないとはいえ、ちょっと……ふりにくいですね」
なんて、苦笑いしながら答える。
久しぶりの木刀。
それも、通常の長さのものだ。
意識して振る間は平気だろうが、無意識に振るようになると、リーチの違いから攻撃を外したりしてしまうかもしれない。
「うん、でも大丈夫です。
本気の手合わせはできませんが、軽く流す程度なら出来そうです。
お付き合いいただけますか?」
■寄月 秋輝 >
「難しければ、真剣を使っても大丈夫ですよ」
ふ、と笑顔を見せる。
しかしその下の目は笑っていない。
技術を見極めたいという気持ちが強かった。
「えぇ、軽く。怪我をしない程度に。
慣れたらそれこそ真剣に持ち替えてもいいですからね」
くるくると、まるでペンのように手の中で木刀を回す。
それを握り直し、軽く腰を落として居合の構え。
■阿曇留以 > 「……もし、試合にもならなかったらそのとき使わせてもらいます」
あまりにも真剣と違いがあって、うまく立ち回れなかったら使わせてもらおう。
しかし、今はこの木刀を使ってみることにする。
彼が居合いの構えをしたのを見て、少し考えてから同じように居合いを構える。
体を横に向け、しかし顔は前を向けた半身の状態での構え。
通常の居合いの構えとは少し違い、阿曇流の居合いの構えだろうか。
ゆっくり、ミリ単位で足を動かし、寄月に近づいていく。
■寄月 秋輝 > 「そうしましょう」
ふぅ、と息を一つ吐き出す。
その瞬間に剣の極地、無念無想、明鏡止水の世界へ。
まるで世界がゆっくり動いて見えるような感覚の中、じっと留以を見つめている。
わずかに形の違う居合の構え。
しかしほとんど同じような移動方法、人間に感知できるかどうかというレベルの短距離をすり足で移動する。
間合いをわずかに縮めていく。
呼吸音すら鳴らさぬ、ほとんど無の存在。
互いの刀の間合いに入るまで、自ら攻めようとはしない。
■阿曇留以 > 彼の剣が静ならば、留以の剣は動だろう。
動いているようにみえない彼に対し、自ら動いて剣の間合いへと引き込む。
彼の剣が何に対して作られたものなのかは知らないが、阿曇は魔――人外に対して作った剣術。
その時折、環境に適応させ、祓うための剣術。
動く様子がないのならば、留以が自ら動いて彼を場に引き出す。
「――ふっ!!」
そして剣の間合いに入る瞬間、一歩大きく踏み出し寄月へ剣戟を振るう。
女の力だけでなく、遠心力を加え、強く振るう。
■寄月 秋輝 >
完膚なきまでの殺人剣。
言い逃れの出来ない暗殺剣。
それが秋輝の剣術。
「ふっ……!」
右手が残像を残して消える。
次の瞬間、木刀が相手の木刀に打ち付けられる。
神速の居合術。
抜刀、斬撃、納刀がほぼ一瞬で完了するような、常軌を逸した剣術。
速度と威力を兼ね備えた一撃必殺の剣閃で、木刀を迎え撃つ。
■阿曇留以 > カンッ、と木刀同士がぶつかる音。
全力で打ったつもりの剣も、彼の前では当然のように防がれ。
だけれど、その状況は大いに予想できており。
「――やぁっ!」
止まるという動作をせず、次の攻撃に移る。
その場で一回転してからの、大きく上段から下段へ振り下ろす袈裟斬りの動作。
■寄月 秋輝 >
止まらずの袈裟斬り。
明鏡止水の境地で大幅に増した知覚能力は、それを先読み同然に見切る。
そして何より、弾いた次の瞬間には木刀は左手に納まっている。
「は、っ!」
刀を抜く。
その柄頭に当たる部分で、留以の斬撃を防ぎ。
跳ね上げるような手首のスナップで、留以の胸を薙ぎにかかる。
■阿曇留以 > 上段からの、遠心力に重力をも加えた振り下ろしが、なんなく防がれる。
そしてお返しとばかりに振られた居合い斬り。
「こ、の!!」
体を投げるように、無理やり前へ飛んで寄月を押し倒そうとする。
後ろにも横にも避けることができないなら、せめてダメージののりにくい根元へ行き、ダメージを減らそうとする。
■寄月 秋輝 >
手首を柔らかく動かし、刀身を押し付ける。
押し倒すように密着してくるならば、それに応じる。
留以の背中に手を回し、逆に逃がさないよう捉える。
ぐいっと、押し付けた刀を上に引き上げる。
真剣ならば、これで留以の胸は裂けていただろう。
「王手……っと」
押し倒されるような動きを、自ら後ろに、背中から地面に倒れるように受け入れる。
だん、と背中から打ち付けられるが、なんとか互いに怪我することはなかっただろう。
お互いの胸に木刀が挟まっているため、それなりに痛いは痛いだろうが。
■阿曇留以 > 木刀が腕に当たることはなかったものの、背中を抑えられ、相手の木刀もすぐに動かせる状態。
対してこっちは相手を詰みにするのに何手か必要な状態。
ふぅ、とため息。
「……参りました。
私の負けです」
木刀からそっと手を離し、寄月に体重をかけないように地面に手をつく。
■寄月 秋輝 >
「ありがとうございました」
模擬戦の礼を述べる。顔が近い。
「かなり早い剣でしたね。
正直、あなたの細腕からあの速度が出るとは思いませんでした」
じっと顔を見ながら言い放つ。
触れられればわかるかもしれないが、秋輝の腕は恐ろしく硬い。
尋常ならざる鍛え方の末路ともいうべきか。
■阿曇留以 > むすっとした顔。
自分より速い剣を出す人に言われるととても複雑な心境なのだろう。
「これでも一応、現役の退魔師よ?
だからそれなりの腕とは自負してるつもりだけれど~。
でも、寄月くんはもっと速いじゃない。
私のほうが年上なのにこれじゃあちょっと面目がたたないわ~……」
はぁ、とため息。
まだ寄月を押し倒したままだが。
■寄月 秋輝 >
「一応、これでも軍人でしたから。
対人能力は僕の方が上だった、ということではないでしょうか」
じっと目を見つめる。
少しだけ、悲しそうにも見えるだろうか。
「加えて、鍛えこみ方が人間の限界超えてたらしいので。
普通はここまでたどり着けないでいるべきだと思います」
目を逸らした。
人とは少し作りの違う筋肉と、それを極限まで鍛えたあの日々。
まともな学生生活を放棄することになった一因。
留以の下で、少しだけブルーな気分。
ここで気付いた。
今女の人が自分の上に乗ってる。
……でも表情を変えずに、じっと見てるだけ。
多分胸元から顔あたりを。
■阿曇留以 > 「あら、寄月くん軍人だったのね。
それなら、寄月くんのほうが強いのは仕方ないかしら……」
退魔師といっても、けっきょくは民間人。
そして、化け物相手の専門職。
軍人と比較しようなどおこがましい。
「体もしっかり鍛えてるみたいだし、寄月くんがんばってたのねぇ。
人間の限界……って、どういう状態なのかは全然想像つかないけれど……。
……?寄月くん?」
寄月の視線が顔から胸元へと動いている。
はて、なんだろうと小首をかしげ。
■寄月 秋輝 >
「退魔戦もまぁ、魔獣戦の応用で出来ることは出来ますが……
おそらく本職のあなたには及ばないでしょうね」
特に浄化の力は秋輝にはほとんど備わっていない。
何せ退魔でやってきたのは、再生する前に消滅させるという力技ばかりだったのだ。
「いえ、そういえばお名前を伺っていないなと。
改めまして、僕は寄月 秋輝と申します」
目をぱちくり。
話題を逸らしてる間に、豊満な胸を見て目の保養をしておこう。
■阿曇留以 > 及ばない。
そんな発言を聞けば子供のように嬉しそうな顔をし。
「ふふ、当然よ~。
伊達に23年生きて、退魔師として15年もやってないんだから。
そっちでも負けちゃったら私は廃業よ~」
いつものほわほわした雰囲気で嬉しそうに語る。
「……あら、まだ名前言ってなかったかしら。
阿曇留以です。
本土のほうの、海に面してる神社で神職と巫女を兼任してるわ。
留以って呼んでくれればいいわ」
名前で、というのは自分に妹が居るため、区別させるためだろう。
なお、視線先の物体は白衣がはだけ、肌襦袢が見えている。
微妙に谷間もみえるかもしれない。
■寄月 秋輝 >
「……小さい頃からなんですね……」
少しだけ、哀れみの目。
彼女もまた、自分と同じように幼い頃から戦う宿命にあったのだろうか。
平和な道もあっただろうに。
「本土出身の方でしたか……
ではよろしくお願いします、留以さん」
こくん、と小さく頷く。
さて、胸も谷間も眼福ご馳走様でした。ということで。
「ところで、いつまでも女性が男の上に乗っていては、あらぬ疑いがかかりますよ。
あと衣がはだけてますから、正した方がいいです」
しれっと指摘。
■阿曇留以 > 「そうねぇ……8歳の頃からだから……小さいといえば小さいのね。
でも、仕方ないわ。
私がそういう家系に生まれ、長女だもの。
誰かがやらなきゃいけないのをやるだけ。
そんなに悪いことでもないわ」
そのような視線を送られても特に気にした様子はなく、ただ当然と受け入れている。
確かに最初は辛かったが、いまはもうなんともない。
「はい、よろしくね寄月くん。
……って、あらあら……」
指摘された事項に関しては、少しだけ動きをとめて。
よいしょよいしょと寄月の上から退き、胸元を直す。
「えぇと……見苦しいものを失礼しました」
ぺこり、と謝る。
■寄月 秋輝 >
「……そうですか」
諦観は感じない。
ならきっと、それが当然だと受け入れたのだろう。
自分が人を斬ることを受け入れたのと同じように。
「ああいえ、むしろ眼福ご馳走様でした。
……つい目が行ってしまいました、申し訳ありません」
ぐいっと自分の足を持ち上げ、両腕で跳ね上がるように起き上がる。
そしてわずかに目を細め、微笑むように。
「あなたくらいの女性の体は、正直精神的によろしくないですね。
あまり無防備にしていると、誘いますよ」
冗談めかして、声色は本気の色を混ぜながら囁く。
しかしそれ以上を求めることは無く、むしろ言い切ったらすぐに顔を逸らし、自分の荷物の元へと歩き出した。
■阿曇留以 > 「あらあら、そういってくれるのは嬉しいけれど、私よりもっと可愛い子がいるからその子にしたほうがいいわよ~」
冗談のように、でもなんだか真剣な声で言われ、どんな反応をすればいいか困り、当たり障りのない返事をしておく。
そして立ち上がって大太刀を回収する。
結局また大太刀を使うことはなく、この子をいつ開放してあげようかと悩む。
■寄月 秋輝 >
「女性の魅力は千差万別ですよ。
断らないなら、連れて行ってしまいますからね」
そんなことを言っておく。
さておき、木刀に傷がないかを確認する。
一応魔力コーティングしたとはいえ、破損させていたら申し訳ない。
ひとまずは大丈夫そうで、ほっと一息。
「……大太刀でリベンジしてみますか?」
木刀を立てかけ、自分の刀を拾って尋ねた。
■阿曇留以 > 「あら……えーと、あんまりそういうのはよくないと思うわ……?
恋人同士ならまだしも、ね?」
割と本気の目をしているような気がして、ちょっと引き。
本当に食べられてしまいそうに思えちょっとだけ逃げておく。
「……そう、ね。
一撃だけ。
居合い一撃だけ、いいかしら?」
リベンジ、というよりは本当に、久しぶりの感触を味わいたいだけ。
彼の誘いを受け、大太刀をしっかりと握る。
■寄月 秋輝 >
「嫌ならちゃんと言わないといけませんよ。
一応本気ですから」
ふぅ、と嘆息。
「いいですよ。
僕が以前言ったこと、覚えてますね?」
自分もまた愛刀を脇に。
今度は居合術ではなく、しっかり抜刀して正眼に構える。
秋輝にとって、体の一部。
まるで手に吸い付くかのように、腕の延長のように収まっている。
■阿曇留以 > 「曖昧な発言でごまかすのは日本人の良いとこでもあり、悪いとこでもあるとおもわないかしら?」
ふふ、と笑ってから居合いの構え。
先ほどの木刀よりもしっくりくる感覚。
まるでお辞儀をするように、頭を垂れるように深く前傾姿勢になって腰を落とし、脇に大太刀を構える。
「掛巻も恐き我が遠津御祖の御霊の命を以ちて――」
小さく呟く。
その言葉は力ある言葉。
西洋で言えば呪文にあたる行為。
大太刀に、ゆっくりと神性を宿した力がたまっていく。
■寄月 秋輝 >
刀を構えていると、世界と一つになったような感覚になる。
ほとんど無意識に明鏡止水の境地へと至り、自身を一振りの刀と化す。
空気の一部のように澄みながら、相手を、そして相手の刀を見つめる。
フラットになった精神で、わずかに優しい目で。
自身、すなわち刀までの全ての部分を魔力と気で覆い、留以を待つ。
■阿曇留以 > ふ、と右足が進む。
それに追従するように、左足が進み。
一歩、二歩、三歩と進んで、
「畏み畏み申す」
地面を駆け、寄月へと迫る。
さきほどの居合いより動的で、積極的な接近。
その一撃で全てを決めようとする意思を籠め、
彼が大太刀の間合いに入る瞬間、ふわりと回転しながら飛び上がる。
「――海神祓(わだつみのはらえ)」
寄月を上から見下ろし、大太刀を抜く。
その刀身には、水流を纏っているかのような青い波紋が漂い。
回転で遠心力をつけ、重力を味方にする。
居合い斬り。
■寄月 秋輝 >
す、と目を細める。
刀が泣いていない。苦しんでいない。
これは、正しく振るわれた刃だ。
少し安心した様子で、刀を振り上げる。
「変則型。八雲流、抜刀術。」
ぽつり、呟く。
刃をまっすぐに突き上げる。
その突きは驚異的なまでに、自分の刀の芯と相手の刀の芯を捉えている。
「月光剣・上弦」
自身の刀を月に見たて、突き上げる。
刃と刃、その細い線が綺麗にかみ合い、ずれることなくぶつかるだろう。
同時に、その刃は魔力や霊力を散らす。
相手の刃を傷つけず、自分に降りかかる力だけを破壊し、重なる。
■阿曇留以 > 力が霧散する。
それはまるで、子供があやされ眠るように。
もしくは、触れられぬ水月に石をなげ、月をちらしたかのように。
ふわり、と地面に降り立つ留以。
霧散した力に、驚愕する。
全力の一撃も、彼には届かず。
それが私の限界なのか。
それがこの子の限界なのか。
――そうじゃない。彼も言っていた。
「祓い給え――」
――信用してあげるんだ。
――あの日、変わりに鬼を祓ってくれたこの子を。
「――清め給えぇ!」
大太刀をもう一度だけ振るう。
寄月の刀とかみ合った状態から、遠心力も、重力も何もない状態で。
ただ、留以の声に応え大太刀は水流を刀身に纏わせ、寄月を吹き飛ばそうとする。
簡略式・祓。
■寄月 秋輝 >
「む……!」
突きの型から、今度は刀を横に。
受ける形に切り替え、留以の刃を受け止めにかかる。
筋力と魔力で受け止める。
そのまま受け続けると、水流の余波でダメージを受ける。
そう感じて、思い切り後ろへ跳躍した。
と同時に、刃を振り抜き、留以の一撃をわずかに反らし。
直撃。
その状態から二打目を受けるとは思っていなかった。
心の底でナメていたせいだろうか。
思い切り吹き飛び、背中を打ち付け脇腹に留以の一撃。
思わず顔が苦悶に歪んだ。
■阿曇留以 > そして消える水流と神性。
役目を終えたように、もしくは疲れたかのように、大太刀はまた普通の大太刀にもどる。
留以も肩で呼吸をし、疲れた様子を見せる。
「はぁ、はぁ……。
ど、どうかしら。
これが、答えって事で、大丈夫?」
先ほどの質問。
以前言ったことを覚えているかといわれ。
その答えがこれだといわんばかりに、笑顔を見せる。
■寄月 秋輝 >
「っつぅ……
ええ、十分な答えです……」
脇腹を抑えながら立ち上がる。
その手をどけると、道着は穴が開いて、腹が見えていた。
過剰に筋肉質な体と、衝撃で赤く腫れた様子が見える。
「あなたが刀に助けられていたこと。
そしてあなたの声に、刀は応えてくれること。
それがわかったでしょう?」
ぱちん、と刀を納めて、笑顔で尋ねる。
柔らかな、教え子に対するような笑顔。
■阿曇留以 > 「……そうね。
まだ、まだちょっとだけわからないところはあるけれど」
どうにも、この子は自分を隠す性格らしく、依然として分からないことが多い。
けれども、今のように応えてくれるのは確かで。
「考えを改めていこうと思うわ。
ありがとう、寄月くん」
ふっと、柔らかい笑みをうかべる。
■寄月 秋輝 >
「ええ。それがいいです」
ふぅ、と一息。
肩の荷が……というより、懸念事項がこれで一つ消えた。
「ご理解いただけて何よりです。
今後もその気持ちを忘れないでくださいね」
笑顔で告げ、もう一度大きく息を吐いた。
■阿曇留以 > 優しく大太刀を鞘に収め、背中に背負う。
「で、えっと……お腹大丈夫?
ごめんね、少しやりすぎたみたいで。
歩けそう?」
穴が空いた胴着をみて、困惑。
そこまでつよくやったのかと、自分のやったことに驚きがあるようだ。
■寄月 秋輝 >
「ええ、大丈夫ですよ。
このくらいは傷のうちにも入りません。
……新しく買うのが、少し出費として痛いだけですから」
その穴を少し弄る。
腹のあたりには、他の要因で出来たであろう大小さまざまな傷跡がついていた。
しかし足取りはしっかりしており、表情も歪んでいない。
■阿曇留以 > 「あら~……」
出費、ときいて同じく耳がいたくなる。
留以もそれほど裕福な暮らしではない。
お財布のなかはわりときびしめだったりする。
が、仕方ない。
「ねぇ、寄月くん。
この後時間あるかしら。
ちょっとだけ付き合ってほしいのだけれど……」
そう、おねがいをしてみる。
■寄月 秋輝 >
「時間ですか。
ええ、一応はありますが……
何か御用でも?」
運動を終えたストレッチを軽くしながら聞いてみる。
さっきのこちらからの誘いの返事、なわけはないだろうが。
■阿曇留以 > 「ええ、ちょっとお洋服を買おうかなと思ってて。
寄月くんにちょっと選んでもらおうかなとおもってね~」
残念ながら先ほどの誘いではないが、別件でお誘いだった。
ふわふわした笑みを浮かべる
■寄月 秋輝 >
「は、はぁ……それは構いませんが……
また急ですね。
あまりいい意見が述べられるかどうか不安ですし……」
困ったものだ。そういう経験はまるでない。
断る理由もないが、だいぶ戸惑っている様子である。
■阿曇留以 > 「ふふ、ならこれを機会になれればいいわ~。
もしかしたら他の女の子からも誘われるかもしれないし、ね?
それじゃ、すこしだけまってて。
着替えてくるから~」
そういって、更衣室のほうへ歩いていってしまう。
おそらく、普通の私服にきがえてくるのだろう。
ご案内:「演習施設」から阿曇留以さんが去りました。
■寄月 秋輝 >
「……誘われるのか……?」
全くそんな機会が思い浮かばない。
とはいえ引き受けた以上、納得するしかない。
自分も制服に着替えるため、更衣室へ向かった。
ご案内:「演習施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 「───ふうっ」
訓練施設にて
体操着姿で汗を流す少女、凛霞
じっとしたまま動かないようにも見えるその型、
ただしその集中力は周りの空気の密度が変わっているのではないかと錯覚させる程に張り詰めている
目の前には、藁束
「───はっ…!!」
裂帛の気合と共に、垂直に立てられた手刀が笑束を貫き
破裂音がドームに響いた時には、既に納刀…手は藁束から引きぬかれ、腰元へ
■伊都波 凛霞 > 「──ッ、いッ…」
遅れてくる感覚
右手から、白い指を伝うように赤い筋が垂れる
「………はぁ」
小さくため息をついて、少し右手をかばうようにしながら、床に無造作に置かれたバッグへと屈みこむ
簡易的な治癒魔術で出血をとめて、応急処置
これくらいなら手慣れたものだ
「…"毟り蕾"、やっぱり私にはまだ出来ないな…」
ぽつり、とそう零す
ご案内:「訓練施設」に上泉 和正さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 何度か、この技に関しては父親からも叱咤を受けた覚えがある
"仮想する相手の身を案じるな"
合戦での捕り手や組打ちを源流とする古流武術・伊都波流
当然戦闘対象を無力化する技術に秀でる、しかし何よりその本質は…
人を殺す技
合戦の中の技だ、当然なのだが
戦場で刀剣や弓を失っても尚、敵を絶命させ得る、技
「でも、今は戦国時代じゃないもんなぁ……」
苦笑する
仮想敵とはいえ、相手を殺してやろうなんてことは考えたこともない
…だから、出来ないのだ。この技が
■上泉 和正 > (拍手の音が響く)すごいのう。素手で藁束に刺さるとは……刀でも斬るのには技が必要だというのに(感心した様子で言う)
■伊都波 凛霞 > 「えっ、あ…」
声をかけられて、気づく
集中しすぎて周りの気配に気づけないようではまだまだである
「あはは…まだまだです。怪我しちゃって」
苦笑して、軽く包帯の撒かれた右手を見せながら
「えっと…上泉先生……です、よね?」
直接の面識がなかったので記憶を頼りに、ぺこりと頭を下げて挨拶
ご案内:「訓練施設」に古志野 緋色さんが現れました。
■上泉 和正 > ああ、そうじゃ。専攻は符呪の教師じゃよ(包帯を巻かれた手を見て)しかしその技、古武術の技かの?人体に刃のように突き刺さるなんて技太平の世の武ではないからの(観察した結果を言う)ああ、そういえば名前を聞いておらんかったの。よければ名前を頂戴してもよろしいかの?>伊都波
■古志野 緋色 > 定期的に鍛錬に来ている訓練施設へやってきた。
もさっとした髪をまとめるべくヘアバンドで髪をあげ
スポーツ用の眼鏡を着用する
「ん?」
見知った顔が二つ、上泉教諭と……
「げ、伊都波……」
実はこそこそと、個人的に身辺調査をしている相手である
気づかれては無いと信じたいが、果して
■伊都波 凛霞 > 「えっと…はい、古流武術を継承した家柄でして…」
と、そこまで言ってハッと気づいたように
「申し遅れました。伊都波凛霞といいます」
もう一度、今度は礼儀正しく腰を折った一礼を
束ねた長い髪がするりと垂れる
そして顔を上げると…
「あれ」
見知った顔が見えます
ご案内:「訓練施設」に高峰 司さんが現れました。
■古志野 緋色 > 「よう、奇遇だな」
極力、冷静を装って挨拶をし、そそくさとそれなりに離れた場所へ
彼女の習得している古流武術に心ひかれないでもなかったが……
一旦距離を置いておこう
■上泉 和正 > 何も離れる必要はなかろう(カカカと笑い)それとも何かやましいことでもあるのかの?>古志野
■高峰 司 > 「…………ちっ」
舌打ち。
『訓練施設で稽古しにいく』と言うメールを受け取っていたので、せっかくだし見物しようと思っていたのだが。
数名、周囲にいる事に小さく舌打ちをしてしまった。
……そう、彼女は自分とは違う。誰かが常に周囲にいるタイプの人間。
だから仕方ない……とは思うのだけれど、やはりもんにょりするところがあって。
不機嫌そうに遠巻きに見たまま固まっていた。
■伊都波 凛霞 > 「君も訓練?風紀委員さんは大変だね」
一般生徒よりも体を張る機会が圧倒的に多いであろう風紀委員
彼らの働きには敬意を払うことしかできない
もし邪魔だったら退くから言ってね、と言葉をかけて、先生のほうへと向き直る
「やましいことっていうわけじゃないんですけど」
苦笑しつつ、自分の右手を眺めて
「…鍛錬は身になるんだけど、たまに自分に向いてないんじゃないかって思うことがあって…」
そんな言葉を零す
年長者、しかも先生相手だとつい弱音に近い部分が出ることもあるのだった
そして………
「あ……司ちゃん?」
その場に現れた小さな影にも気づいて、大きく手を振った
■上泉 和正 > ん?(視線を感じた方向を見る)おや、演習場の利用者かな?すまんの。利用しづらかったか?(入りにくい雰囲気を作ってしまったかと思い言う)>高峰
■上泉 和正 > ふむ、向いているかどうかわからないと……難しい問いじゃな。そもそも何を以って向いているとするのかということも分からんしの(顔が真面目な教師モードになる)>伊都波
■高峰 司 > 「……あのなぁ」
溜息を吐いて歩み寄って行く。
全く、分かっててやってるんじゃなかろうか。
「アタシが人が集まってんの苦手なの分かってんだろ……」
人混みが苦手どころか、そもそも人と関わる時点で論外な司である。
誰かと一緒に、と言うだけでハードルが跳ね上がってしまうのだった。
「いや、アタシはコイツの見学だ。使う予定はねーよ」
むすっとした表情で、上泉に言葉を返す。
こちらはより一層ぶっきらぼうである。
■伊都波 凛霞 > 「ん…古流武術だって見抜いちゃった先生ならわかりますよね?
私がさっきやってたのは、人を絶命させる為の技で…免許皆伝の条件の一つにもなってるものなんです」
それが、未完成
そしてきっと、その人の命にとどめを刺すための技は……きっと身につかない
そんな予感があった
苦笑、することしかできない
それは向いていないといえるのか、果たして
溜息をつきながら歩み寄ってくる友人の姿
なんだかそのいつもどおりに少しだけ安心して
「そう?この間は私の友達と一緒のカラオケとかも来てくれたじゃない」
歌いにくそうにはしてたけど、と悪戯っぽく笑った
■上泉 和正 > そうか(ぶっきらぼうな高峰に対して特に機嫌を悪くした様子もなく言う)>高峰
■古志野 緋色 > 「ふぅ……」
一通りのアップは終わり、体もほぐれてきた
件の二人に目を向ければ、新たに一人増えていた
……確か伊都波とは友人だった筈
一時期あまり見なかったような気もするが
「どうするかね」
■高峰 司 > 「っせ、そりゃオマエが呼んだからだろうが」
むすーっ。
仏頂面で不機嫌そうなのはいつものことだが、いつにもまして不機嫌そうなのが分かるかもしれない。
「つーかオマエは何練習してんだよ。あんなの完全な『殺し技』じゃねーか。
……似合わねーよ」
最後の言葉はぽつりと小さく。
どこまで自分が追い詰められても、相手を攻撃するという選択肢を取る事が出来なかった伊都波凛霞。
そんな人に、純然たる殺しの技術は似合わない。
覚えていても、極論使わないだろうから意味がないだろう。
そんな気持ちを、ぽつりと零したのであった。
「(……にしても、やりづれぇ)」
一人の顔は知っているが、もう一人は初顔。
正直利益も無ければ凛霞の為でもないコミュニケーションを取るのは非常に億劫なのだが……そう言うわけにもいかないのだろうなと半ばあきらめ気味である。
■上泉 和正 > なるほど……(大体の事情は飲み込めた)伊都波ちゃんは優しいんじゃな。それは宝物じゃから大切にするとええ(にっこりと笑って言う)そうじゃな……気になったんじゃが伊都波ちゃんは何故その流派を修めようと思うんじゃ?>伊都波
■伊都波 凛霞 > むすっとする司には笑顔で返す
なんだかんだ言っても自分が呼んだら、来てくれる
そういうところは可愛らしいなと思うけれど
今日は少し様子がへん…?
「そうかな、そうだよね」
らしくない、と言われれば自分の右手を眺めて、複雑そうな顔
"妹が習得していたから"なんてことを言うのは少し憚られる
対抗心、ではないと思うけれど。不思議な感情に揺らされていた
「先生…」
温和な笑みになんだか心あらわれるようで
「一子相続の流派なんです。男の子が生まれなかったから。
私は妹と一緒に子供の頃から道場で鍛錬の日々でした」
一子相続、の筈なのに"妹と一緒に"という点、違和感を感じるかもしれないが──
■古志野 緋色 > 一か八か、近づいてみるか
「よう、精が出るな」
肩にかけたタオルで汗を拭きながら近づき
伊都波に話しかける
そして高峰の方を向けば
「そっちは久しぶり……でいいのかね」
■高峰 司 > 「オマエのホントの力っつーのは、切り捨てる力じゃなくて包み込む力だろーが。
んな『切り捨てる力』の代表格みてーなのに手ェ出してんじゃねぇよ」
むっすー。
契約の打算で近づいた自分を、疎むどころか友人として受け入れた凛霞。
その懐の大きさこそが、伊都波凛霞と言う人間の持つ最大の強さなのだと、司は思う。
カタログスペックでは量れない、伊都波凛霞の本質。
だから、そこを切り捨てるような真似をしているのは、あまり気分のいいものではなかった。
……それ以上に、単に妹が退院して帰ってしまって、一人の部屋が寂しく感じている事にイライラしているのが本当の所なのだが。
「……ああ、そうだな」
緋色にはそれだけ返す。
いや、それだけにしようとして……。
「……………………あんときゃ、悪かった」
本当に小さな声で。
慌てたまま、攻撃しようとしたことを詫びた。
何の事はない、目の前にいる女性が『ちゃんと謝らないとダメだよ』と言いそうな気がしたから、なのだが。
■上泉 和正 > ……つまり義務感でやっているということかの?(言葉である程度は察したようだ)それなら絶対にしてはならんことだけ教授しよう。それはじゃな嫌々することじゃ。身につきはしないし本人のためにならん(真面目な顔で言う)>伊都波
■上泉 和正 > しかしあれじゃの。そこの女子(高峰)は伊都波ちゃんのことをよく分かっているようじゃの。いいお友達じゃのう(ニコニコしながら言う)
■伊都波 凛霞 > 「………うん」
高峰司と、上泉先生の言葉
どちらも正しくて、どちらも言葉に響く
イヤイヤやってるわけではない、責務を感じていないかと言えば感じているけれど、
義務というよりは自分が全うすべき権利であるとも思っていた
「…ゆっくり考えてみます。まだまだ、若いもん」
二人に笑顔を送って、そう結論づけた
「長いアップでしたねー、それぐらい体解さないと鍛錬もままならないくらい風紀委員って厳しいのかな」
近づいてきた緋色にはそう答えつつ、緋色に対しての司の応対にびっくり
あの司ちゃんが謝っただと!!?
■上泉 和正 > そうじゃな。そうするとええ(笑顔で言う)>伊都波
■古志野 緋色 > 「まぁな、どういう奴が相手でも対処できるようにしなけりゃならないからな
しっかりやっとかないと……」
それにしても先ほどの技は非常に強力な物であった
「なぁ、さっきのって……
お前の家古流武術って奴か?」
武術や格闘技には人一倍の興味を抱いており
本来の目的を忘れて思わず尋ねる
ご案内:「訓練施設」に水月エニィさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」から水月エニィさんが去りました。
■伊都波 凛霞 > 「うん、合戦時代から色濃く続いた古流武術。こう見えてなかなか奥が深いよ?」
緋色の質問にはほんのすこしだけ自信ありげな笑顔で答えた
特にひた隠しにするものでもない
あくまで一子相伝門外不出なのは、その"極意"のみだ
■高峰 司 > 「……コイツはアタシの召喚獣(テゴマ)だ。性質を把握してておかしい事なんかねーだろ」
上泉には、思いっきり照れ隠しでそんな事を言う。
本当は『無二の親友』と感じているのだが、それを素直に口にすることは決してできなかった。
そして、言った後、凛霞の袖を掴んでぐいーっと引っ張る。
「オマエ、なんだよその顔は。なんか言いてぇことあんのか!?」
むっすぅー!
謝ったことに対して驚いた時の表情に不満のようだ。
驚かれて当然ではあるのだが。
■伊都波 凛霞 > 「えぇ!?だって司ちゃんが人に素直に謝罪するなんて見たことなかったし…!!」
むくれる司もごもっともなのだが、さすがにごめんごめん、と謝る凛霞であった
「(でも、少しは溶けてきたってこと、なのかな)」
閉ざされた、心の氷が
■古志野 緋色 > 「合戦時代か……割と実用できるかもな」
異能と相まって近接戦闘が多くなりがちな彼にとっては
実用的な武術は非常にありがたい存在である
「なぁ、それ……もしよければ俺に教えてくれないか?」
元の目的は雲散霧消、三白眼を輝かせ
やや興奮気味
ザ・男の子、と言ったところだろうか
■上泉 和正 > そうじゃな(あからさまな照れ隠しに笑みを浮かべながら微笑ましい目で見る)>高峰
■伊都波 凛霞 > 緋色の提案には眉を顰めて横に首を振った
「ごめんね。私じゃまだまだ免許皆伝は遠くて、
伊都波流の看板背負って誰かに教える、なんてことはできないんだ」
でも、と一旦区切り
「どんなものか、見せることはできるよ?」
それを、勝手に盗む分には構わない───ということだろう
■高峰 司 > 「オマエがちゃんと謝れって言いそうだからじゃねーか!」
理不尽な言い分である。
完全に自分の想像だというのに、その責任を思いっきり全部投げ付けてしまった。
「……ち、やりづれぇ」
そして、上泉には軽く舌打ち。
一般に、人間は年を取れば丸くなる、などと言われるが……司の知る限り、アレは嘘だ。
人間、基本的に年齢を重ねれば、耄碌する上に自我ばかり強くなり、身勝手なだけの存在に成り下がって行く。
が……この上泉はその例外のようだ。
視線に落ち着きがあり、そして見透かすような雰囲気も感じる。
そう言う相手は……正直、苦手とする司であった。
■古志野 緋色 > 「見て盗め、か……この手の物の基本だな」
ニッと笑い
「了解だ……そういうのいいなぁ
少し憧れるよ」
男の子な一面がうかがえる言葉をこぼしつつ、相手の言葉にうなずいた。
■上泉 和正 > おお、見せてもらおうかの。その若さで先の芸当ができるのじゃから期待しても構わんな(少し興奮した様子で言う)>伊都波
■伊都波 凛霞 > 「謝らなきゃいけないようなことしてたって知ってたらそりゃあ言うけど…」
二人の間のことは知らなかったし!と弁明弁明
まぁそれはともかく気を取り直して
「それじゃあ、軽くお手合わせでもしてみます?」
上泉先生や司ちゃんも見ている中だと、格好わるいところは見せられないけど、と笑って
■高峰 司 > 「………………オマエ、忘れてたのかよ」
じゃあ言わなくてよかったのでは、と溜息。
ちなみに、謝った事案と言うのは、凛霞と本当の意味で『親友』になったあの日の事。
その姿を見られた動揺でイフリートを召喚しかけたアレである。
「(……まあ、これが凛霞だよな)」
自分の武技は、何が何でも隠し通すというタイプの人間も結構見てきたし、それは情報戦と言う観点で見れば当然であろう。
だが、彼女はそれを普通に開帳する。
閉ざされている、と言うことが無いのだ。だからこそ、閉ざされてばかりの司を、包み込む事が出来たのだろう。
模擬戦の流れになれば、掴んでる袖を離す……前に、くいっともう一回引っ張る。
ちょっとこっち向け、と言わんばかりに。
■伊都波 凛霞 > 「……???」
割りとガチめに、あれを謝罪が必要なことと認識していなかったあたり
この姉は姉でじゃっかんズレがあるような気がした
「っと…うん?」
袖を引っ張られて、司のほうを向く
なんだろう、と不思議そうな顔で
■古志野 緋色 > 「ああ、望むところだ」
すっかりその気になっており、彼女の身辺をこっそり調査していた事すら忘れている
「我流ではあるが実践は山ほど積んできたし
俺も一筋縄ではいかんぞ」
■高峰 司 > 「……凛霞。オマエはアタシの召喚獣(テゴマ)だ」
見上げながら、むすーっとそんな事を口にする。
違う、言いたい事はそんな事じゃない。
「だから、模擬戦っつっても負けは許さねぇ」
そうじゃない。そう言う事を言いたいんじゃない。
「……後、オマエはアタシの召喚獣(テゴマ)だから。アタシがサポートするのも当然だ」
無理矢理だけど、少し近づいた。
「その、なんだ……つまり、だな……」
少し言いよどんで。
一瞬目を逸らし、少し深呼吸して口を開き直す。
「少しくらい、手伝わせろ。 ……オマエに勝利を」
言いながら、凛霞の手の甲に、勝利を意味する『ティール』のルーンを刻む。
今回の効果は、勝利を齎すというよりは……実力の発揮。
自分の力を十全に発揮出来るお守りだ。
……詰まる所。
『友達が試合するんだから、何かの形で応援したい』。
その気持ちを素直に表現できなかった結果が、これであった。
■上泉 和正 > ほう……ルーン文字を使うんじゃなお主。あとわしはそろそろこの場を去らないかん。見届けられなくてすまんのう……では(そう言ってその場を離れた)
■伊都波 凛霞 > 「……ん、ありがと司ちゃん」
不器用な友人の、精一杯の応援
背中を押された、という感じである
けれどもまぁ
「大丈夫だよ、私」
長い髪をなびかせ、緋色へと振り返れば
「実は負けたことないから」
双眼が、緋色を見据える
いつでもどうぞ、というような、気迫にあふれた視線を向けて
ご案内:「訓練施設」から上泉 和正さんが去りました。
■古志野 緋色 > 「言うねぇ……ま、さすがは才色兼備、文武両道の優等生って所だな
ならばこちらも全力を尽くすまで」
目を閉じて深呼吸をする
その後ゆっくりと構えると
「……高峰、だったか?
合図を頼めるか?」
■伊都波 凛霞 > 去っていく先生の背中に一礼
ふぅっと呼吸を整えなおして
「あと、古流武術を知ってるなら大丈夫だろうけど…。
私、"丸腰"じゃないから、そのつもりでね?」
一応の釘を刺した
もちろん、ただの徒手空拳にしか見えないのだけれど
■高峰 司 > 「……そうか。なら心配いらねーな」
微笑んで、少し離れる。
二人の邪魔にならない距離まで離れると、そこで向き直って。
「分かった。それじゃあ……
試合、始めっ!」
司的にちょっと頑張った大きめの声で、組手試合開始の宣言をした。
■古志野 緋色 > 「……っ!」
司が言い終わると共に伊都波との距離を縮める
ある程度待て近づけばその勢いで鋭い上段蹴りを放った
■伊都波 凛霞 > 疾い、けれどその詰めは直線的
その直前の踏み込み、重心のかかり方から蹴り技が来るのは見えていた
蹴りが来るならあとは股関節と膝の動きを注視すれば、自ずと軌道が見えてくる
上段へ、かなりキレるであろう蹴り
「よっ…と!」
見えていれば対応は問題ない
柳のように蹴りをするりと避けて、流れる動きのままにその軸足を払う
祓ったところに体が落ちてくれば…そのまままるで四方投げのように、回転を加えてすっ飛ばした
■古志野 緋色 > 「ぬっ……」
受け流されることは予想していたが
飛ばされるとは
だがこんな事で驚いていては風紀委員は務まらない
受け身を取りすぐに立ち直る
「やるな……」
楽しそうに笑う
■高峰 司 > 少し離れたところで二人の動きを見る。
「(……よくわかんね)」
司は、体術は正直素人である。
そう言うのは専門の前衛に任せればいい、魔術師は魔術師らしく距離を置いて戦うのだ。
なので、目の前で繰り広げられている戦いについては、細かいところはよくわからない。
流石に目が追いつかないと言うことはないが、認識は中々追いついてくれないのである。
それでも。
「(……アイツは、負けねぇ)」
親友に対する強い信頼が、そこにはあった。
■伊都波 凛霞 > 「うわっ結構飛んだ…受けなくてよかった…」
飛び方を見るに、多分あの蹴りを受け止めていたら凛霞の軽い体では逆に姿勢を崩されていただろう
瞬時の判断に助けられたところである
「まぁ真っ直ぐなだけのテレフォンキックだったしね。
あれくらいなら、何百回蹴られても多分へーき。
さて、それじゃあ次は……私の番かな?」
ズラッ
その軽装の一体とこから取り出したのか
その両手にこれでもかというほど握られたのは大量の苦無である
両の手の指にいくつも挟みこむ形で握られたその量…多分、30以上
「刺さってもちゃんと治療はしますので悪しからずっ!!」
それらの苦無を、一瞬で全て、投擲する
まるで逃げ場を全て塞ぐような苦無の嵐
威力は高くはないであろう、弾くことも十分に可能な筈である
が、苦無の雨を目眩ましに使うように、同時に凛霞はその姿を晦せた
■古志野 緋色 > 「んなっ……!」
さすがにこれは予想外であった
すぐさま腰に提げてある棍棒を手に取り
回転させることで弾く
「古流武術じゃなくて忍術じゃないのかこれ?」
近くに落ちた物をいくつか拝借し、体勢を立て直す
■伊都波 凛霞 > 「──残念、"何でもできる"のが古流武術なの」
徒手での組打ちからあらゆる武器術、暗器術に精通する全局面対応型の殺人術
それが伊都波の継承する古流武術の真の姿
その声は、緋色の背後から聞こえる
そこで即座に反応ができなければそのまま背中から組み付かれるだろう
■古志野 緋色 > 「ぐっ!」
肘鉄からの回し蹴りを放つ
「“なんでも”ありじゃねぇか」
それこそ忍者でも相手にしているようだ
■高峰 司 > 「(……マジか)」
見えなかった。
岡目八目、こういうのは外から俯瞰している方が全体をしっかり見れるので状況の把握がしやすいのだ。
だが……苦無に気を取られたのもあるが、凛霞の動きから、背後に回るまでがまるで見えていなかった。
否、苦無が目くらましと言うのなら、気を取られるのもまた術理の内なのだろう。
「(思ってたよりよっぽど強いんじゃ、アイツ……)」
実際、薙刀を使っていた時も強かった。
だが、この手札の多さ。もしかして物凄く強いんじゃ、と改めて間抜けな感想を抱く司であった。
■伊都波 凛霞 > 即座に反応を返すのはさすが、実戦慣れしている
スウェーで肘鉄と回し蹴りを躱して、再び構えをとった時には
その手にはまた別の───
「流石にそう簡単には捕らせてくれないよね」
ジャラリ
万力鎖
これも代表的な隠し武器である
ちらりと時計を眺めて…
「なんでもあり、間違ってないよ。
なんでもやらなきゃ、負けたら死ぬ世界で生まれた武術だもの」
分銅のついた鎖が大きく弧を描いて放たれる
先端の錘が当たれば大きなダメージ、下手な受け方をすえば鎖が絡み自由を奪われる
■古志野 緋色 > 「鎖文道!暗器のオンパレードだな……」
棍棒のジョイント部分に手をつけると三節棍へ変わり
鎖の部分で相手の鎖をふさぐ
「一応持ってきておいてよかったよ……」
■伊都波 凛霞 > 鎖同士が打ち合い、当然鎖は絡むことになる
と───
「なら…こうっ!」
手元の万力鎖を瞬時に全力で放り投げる
遠心力とともに戻ってきた錘は、三節棍を中心として緋色の体へと巻き付いてゆく
そう、あらゆる応用が効くというのもこの武器の良いところだ
同時に駆け出す
正面からではなく、左右へ重心を振りならら
不規則なリズムでその軌道を掴ませずに接近する!
■古志野 緋色 > 「うっ……!」
錘を飛ばされれば絡みつく、そう判断し捨てようとするも時すでに遅し
上半身の自由を奪われてしまう
「くそっ……」
体をよじりながら相手との距離を縮めぬように努める
足だけでなんとか移動するも、いつ転んでもおかしくはない
■伊都波 凛霞 > 「武器の形状から攻撃手段の予測をつけにくい。
戦闘慣れしてる人を相手にするほど、有効な武器だよね」
足だけの動きでは追撃をかわせるわけもなく、
直前でのフェイントから死角に入り、そのまま組み付くとまるで重力がふわりと消えたように緋色の体が浮く
重力を消した正体は、鎖
天井近くの照明に引っ掛けられた鎖が緋色の体を引き上げているのだ
死角に入った一瞬で、先端の錘を巧みに投げ放ちこの状況を作り上げた
相手がもしド素人であったならばもはやなにをされているかもわからないレベルである
そのまま飛び上がり、空中でその背中に組み付いて
「飯綱落とし、っていうのもまた忍者っぽいって思われるかな」
苦笑
そして、勢いよく回転しながら、脳天から床に落下───はしなかった
ギシギシと鎖が鳴り、ギリギリのところで落下は止まっているのだった
■古志野 緋色 > 「ぐっ……」
手元に忍ばせたクナイでどうこう出来る状態ではない
鎖で雁字搦めにされた挙句つりさげられれば
「……まいった」
しばらくして、悔しげな声が漏れるのであった
■高峰 司 > 「……すげぇな、凛霞」
終わったと見て近寄って行きつつ、意外にも素直に賞賛する。
否、それしか言う言葉が見当たらなかったのだ。
全体的な組み立て、それを行うための視野の広さと頭の回転。
流石『完璧超人』だなどと言われているだけはあった……改めて、親友の持つ強さを感じ取った司である。
■伊都波 凛霞 > じゃらららら
小気味良い鎖の鳴る音が響いて、雁字搦めだった鎖が綺麗に解けてゆく
程なくして自由に体が動くだろう
「子供の頃はこの鎖の解き方がわかなくて泣きそうになったりしたっけなぁ…」
言いながら、小さく笑う
「ん…今回は多分意表をつくことばかり仕掛けたからね…。
多分手の内を予め知ってたら、わかんなかったと思うよ」
解いた鎖を何処かへ仕舞ってしまう、まるで魔法のようだ
「ほんとは最初の苦無での目隠しの後で決めるつもりだったんだけど、
思ったよりも反応が速かったからついつい、引き出し色々開けちゃった」
そう言って、緋色に手を差し伸べて立たせようと
■古志野 緋色 > 「いや、完敗だ……」
はぁ、とため息をつきながら汗をぬぐう
「反応速度は……ま、実戦経験の賜物だな
ボーっとしてたら最悪殺されちまう
そこまで物騒じゃないにしろ、大けがのもとだ」
先ほどくすねた苦無を差し出す
「返すよ……にしてもどこに隠していたんだか」
隠せる所は意外と多そうだが……
「それでも、完璧超人サマに引き出しを開かせるってんだから……
ま、俺も捨てたもんじゃないのかね」
■伊都波 凛霞 > 苦無を受け取って、後ろ手に隠せば、それもまたドコかへと消え去って
「ふふ、隠し場所は秘密ー。
…うっ、学内でまだそう呼んでる人いたなんて…」
謙遜するわけではないけれど、
ちょっと重苦しい肩書であった
「少なくとも私は本気で立ち合ったつもりだし、
引き出しがまだあったとはいっても出し惜しむつもりもなかったよ?
常世学園の風紀委員が相手だもの、実力を隠すのは愚ってものじゃないかな」
言いながら時計を見て
「わっと…もうこんな時間か…。
妹にケーキ買って帰る約束してたんだー」
にわかにぱたぱたと片付けはじめる
主に散らばった苦無の回収
■高峰 司 > 「でも、だ。
あの組み立て、視野広くねーと出来ねぇだろ」
高峰司はルーン魔術師。それ故に、地形利用はよくやる手段だ。
ルーンはそもそも設置向けで、罠として使うのに向いているのだから。
だからこそ『戦闘中に地形を利用する』と言う行為の難しさも知っていた。
なかなかどうして、目の前の相手に集中してしまうと、周囲の地形が目に入ってこない事が多いのだ。
だが、正確に武器を操り、上に引っ掛け、敵を吊り上げた。
それは、相当な経験と視野の広さが無いと出来ない事だ、と言うのが司の認識である。
「これなら、前衛は任せて大丈夫だな」
信頼を込めてそんな事を口にする。
妹、と言う言葉が出れば、少しむすっとするのだが。
■古志野 緋色 > 「妹か……そういや噂があったな
伊都波は超絶シスコンだとか」
あくまで噂の範疇を出ないのだが
そんな話を聞いた事がある
「……俺も精進が足りないねぇ」
■伊都波 凛霞 > 前衛は任せても、と聞こえれば苦無を拾いながらひょいと顔を上げて
「当然!司ちゃんは私が守るよ」
そう言ってぱしっと自分の二の腕を叩いて見せた
そしてようやく片付けが終わって
「シスコンって…まぁ、間違ってもいないかもしれないけど」
苦笑、世界で一番可愛い妹だと自負しているし、まぁ間違いじゃない
「よいしょ、それじゃまた!
司ちゃんまた後でメールするねー!」
ぶんぶんと元気に手を振って、ぱたぱたと駆け足でその場を後にした
ご案内:「訓練施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■古志野 緋色 > 「……ああ、そうだ」
当の伊都波が立ち去ってからやっと本来の目的を思い出した
「高峰、少しいいか?」
真面目な表情で高峰に話しかける
■高峰 司 > 「トーゼンだ。思いっきり使い倒してやるからな」
実際の所、司の召喚獣にはシュルヴェステルと言う人間の剣士が存在する。
『実力で排除できないから搦め手で殺そう』と言う手段を使われる程度には手練れだったのだが……総合力で言えば、そのシュルヴェステル以上かもしれない。
本当に、頼れる存在だ。
「わかった、後でな。待ってるぞ」
ついでに、来たメールには『たまにはこっちにも来い』と言うぶっきらぼうな言葉を添えて返すのであるが、それは先の話。
「あ”ー?んだよ、なんか用か?」
緋色には、面倒くさそうに応答する。
それでも、一応聞くだけマシになったのではあるが。
■古志野 緋色 > 「……そういう反応をされると困るな
まあいい
伊都波、あいつ妙な事に首をつっこんだりしてないか?」
時折言葉の端から、なにか後ろめたい物があるように感じられ
合間を縫っては探っていたが、あまり成果は得られなかった
ならば近しい者に聞くのが一番だろう
■高峰 司 > 「知らねーな」
あっさり嘘を口にする。この程度の腹芸ならばお手の物だ。
実際は、絶賛巻き込まれ中どころか、その妙な事の元凶の一人は司であるのだが。
それをあえて黙ってくれているのも、それが司の為なのも分かっているので、口にして漏らす事はない。
「つーか、なんかあったらそりゃあそれで、それこそオマエら風紀に駆け込むだろ。
それが無い時点で、オマエらが出るような事はねーって話じゃねーのか?」
これも嘘。
伊都波凛霞はそう言う時、自分で何とかしようと抱え込む癖がある。
だが、彼女のためにも、いくらでも嘘を重ねよう。
それくらいの事は、いくらでもやってきたのだから。
■古志野 緋色 > 「俺たちに相談できないような事をやっているってことだ……
実際にやっていないならそれまでだし
言いたくないなら理由があるんだろ」
ガリガリと後頭部を掻く、何かあるとすぐこうしてしまう癖がある
「……もしも後者だとしたら、できるだけ支えてやってくれ
完璧超人なんてもてはやされちゃいるが、限界もできない事も色々あるだろうからな」
ふぅ、とため息をつき
「ただし本当に危なくなったりしたら俺たち……風紀委員に言ってくれ
あまり介入されたくないんなら……まぁ、その時は俺が個人的に動いてもいい」
■高峰 司 > 「穿って考えすぎだぜ、オマエ。事件ありきで探してねーか?」
嗅覚が鋭い、と感じつつ、突き放すように言葉を紡ぐ。
嘘で嘘を塗り固め、隠すべき真実を覆い隠す。
それが、今できる高峰司の精一杯だ。
「そもそも、何でアタシがアイツをどーこーしてやらなきゃならねーんだ?
アイツの強さ見たろ、アタシに出来る事なんて何一つねーよ」
出来る事などありはしない。
だって わたしが いま たすけて もらってて。
いったいなにができるっていうんだろう。
「は、それこそアタシには関係ねぇ話だな。本人に言えや」
突き放す。
自分と伊都波凛霞の事件性のラインを細くする。
そうする事で、凛霞が守ろうとしている『高峰司の安全』も守られるし、そうする事が彼女の望みのはずなのだから。
■古志野 緋色 > 「の割には、伊都波はお前を信頼してたし
お前も伊都波を信頼していたな」
この二人には強い結びつきがあるらしい
「それに伊都波は以前……いや、いいか」
彼女は既に事件に巻き込まれている
二回三回、巻き込ませる訳にはいかないのだ
「妙な事聞いて悪かったな……じゃあ」
片手をあげてその場を後にする
探偵ごっこはまだ続きそうだ
ご案内:「訓練施設」から古志野 緋色さんが去りました。
■高峰 司 > 「……ふぅ」
いなくなってしばらくして。溜息を吐く。
少し、人前で凛霞と普通に話し過ぎたかもしれない。
そして、風紀と言う立場を考慮すると、どこかで尻尾を掴んで首を突っ込んでくる可能性は、ある。
ああいうタイプは損得計算が出来ない。
自分がこうすると決めたら、打算が吹き飛ぶ厄介なタイプなのだ。
「しゃーねー……一応、報告しとくか」
メールで『さっき模擬戦してたやつが、オマエが何か事件にかかわってないか、と嗅ぎまわってる。場合によっては首突っ込んでくるかもしれねぇ』と凛霞に報告。
その後、もう一度溜息を吐き……
「……アタシの、せいだよな」
自分を責めて、その場を後にした。
ご案内:「訓練施設」から高峰 司さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」にカラスさんが現れました。
■カラス > 「……。」
訓練施設の一つの中を覗く黒い影。
大きな黒い翼を背に持つ少年が、おずおずと誰もいないのを確認してから入る。
「……、誰も、いない、よね。」
耳から生えた羽を揺らし、キョロキョロと辺りを見渡した。
殺風景な訓練施設の中、特に配置されているモノはこれといってない。
■カラス > あるのはちょっとした運動具だろうか。
ダンベルを一つ見つけて手を伸ばしてみるも、
思ったより重かったのか、ふんぎぎぎぎ…と両手で持ってみたがどうにも持ちあげられない。
背中にある翼を広げて羽ばたいてみて、やっと持ち上がるか。
「お、おも…。」
異形な見た目に反して非力らしく、
手を離すとじんじんする手の平をふーっと吹いた。
■カラス > 「うぅー…。」
やったことをちょっと後悔しつつ、
今日は何をしにきたって訓練をしにきたのだった。
とはいえいざ来てみると何をしたらいいものやら吹っ飛んでしまった。
えーと、と誰か他に居るでもないのに言い訳しかかったが、
少ししてから思い出したようで、少年は己の胸元に手を当て、息を吸い込む。
■カラス > 誰かがそれを見ていて、魔力等の扱いが分かるならば、
咥内に魔力を溜めているのが分かるだろう。
息と一緒に魔力を。
吸い込む時に閉じていた眼を開く。
真紅の瞳が、煌めく。
めいいっぱい吸った口が開かれた時、そこに火が点った。
■カラス > 「っ……ッぐ、けほ、げほっ! あつっ!!」
■カラス > ……咳込んだ。むせた。
むせた拍子に、火がいらぬところに触れた。
本来はこの火を吐き出す練習のはず…、が。
少々涙目になりながら煙さも感じる口元を袖口で拭った。
■カラス > 治まるまでけんけんと咳き込む。
彼が練習しているのは要するにブレス、
使えれば強力なのだろうが、いかんせんに上手く行った試しがない。
そもそもに自己保護を行っていないのが要因だが。
もう一度息を吸い込む。
咥内に魔力を貯めこむまでは同じ。
で、口を開く。