2016/08/31 のログ
ご案内:「訓練施設」に寄月 秋輝さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にレイチェルさんが現れました。
■寄月 秋輝 >
こっちなら人も居るだろうか、と入ってくる。
案の定というか、人は居ない。
(こっちの方が希望は持てるかな?)
刀を鞘に納めたまま、くるくると回転させる。
魔力を体内で増幅させながら、周囲を見渡す。
そういえばこちらに来たのは久しぶりだ。
■レイチェル > 「さて、と……仕事の前に適当に身体を動かしておくか」
金髪の少女、レイチェルが演習場に入っていく。
くわぁ、と小さな欠伸をしながら、片手で口を押さえて。
「お、珍しい顔が居たもんだ」
すでに演習場に居た寄月に気がつけば、よう、と
手を挙げて挨拶するレイチェル。
■寄月 秋輝 >
ぐるるる、と回る刀をぱしんと掴み直す。
振り返り、ふっと微笑む。
「お疲れさまです、レイチェルさん。
あなたも訓練ですか?」
こちらは対人訓練を望んでのものだが。
先ほどの相手のあくびも把握しているし、軽い運動目的だろうか。
■レイチェル > 「実戦だけじゃ得られねぇものもある。
訓練はいつだって欠かさねぇさ。
今回は、仕事前にちょいと身体を動かしておこうと思ってな」
彼の微笑みに対しては、軽く目を閉じて微笑みを返す。
「お前は? 素振りでもやってたのか」
刀を掴み直している様子を見て、そんな風に問いかけるレイチェル。
■寄月 秋輝 >
「なるほど、そういうことでしたか。
……僕は逆ですね、実戦があまりに足りない。
なので誰か来ないものか、と待っていたところです」
刀を掴んだ手を下ろし、ふむ、と一息。
「まだウォームアップ中です。
……よろしければ、少しだけお付き合い願えませんか?」
しっかり向き直り、そう尋ねてみる。
噂に聞くほどの女性だ、十分な実力を持っていると思って。
■レイチェル > 「そういうことだ。
成程、実戦……つーか、訓練相手を探してたって訳か」
ニ、三度。深くゆっくりと頷いた後に、レイチェルは寄月を見やった。
「構わねぇ。断る理由は特にねぇしな。ただし一つ。
少し後に刑事課の仕事が入ってる。時間になったら切り上げさせて
貰うぜ。 そうだ。真剣使うんなら、構わねぇぜ。ただし首飛ばす前にちゃんと止めてくれよ。
オレも首が飛んだら死ぬんでな」
冗談交じりに、そんな言葉を飛ばすレイチェル。
17歳の少女にしては、過ぎた威圧感を覚えるその容姿から、
親しみを込めた笑みが浮かんでいる。
「じゃあ……さっさと始めちまうか」
寄月の持つ刀に対して、少女はクロークの内から巨大な漆黒の大剣を
取り出した。巨大な質量を、ぐるりと縦に一回転させてから構える。
■寄月 秋輝 >
「まるで機会が無くなってしまって……
警邏も幸か不幸か平和すぎて」
かりかりと頭をかく。
平和なのもいいが、それを維持するための力が磨けないのは困る話だ。
「あぁ、もちろん。時間が来たら終わりにしましょう。
真剣……のほうがいいですけど、大丈夫でしょうかね。
ちゃんと斬れないようにしますけど」
ぽんと鞘の上から刀を叩く。
オリハルコンの力、込められた神性と魔力に封印をかけていく。
秋輝自身、斬りたくないと思う物は斬らないように出来る。
それが一流の剣士、そして半生を共に過ごした相棒たる剣の為す技だ。
「えぇ、では……よろしくお願いします」
威圧感を感じて、ぴりりと肌が震える。
心地よい、まさに力を感じる波動。
それに呼応するように、精神を張りつめる。
居合の構え。そして明鏡止水、剣の極地、極限の集中。
その状態で、レイチェルと相対する。
■レイチェル > 「話を聞いてりゃ、訓練というよりは実戦を望んでるみたいだったからな。
得物は実戦と同じものが良いだろうと思ったんだ。
それにお前、訓練用の手加減が出来ないような、
未熟な剣士じゃなさそうだしな」
刀を持つ彼の雰囲気で、察することが出来る。
目の前の彼は、恐らくかなりの手練であろうと。
レイチェルはそう判断したのだ。
構えや顔つきを見れば、そいつがどれだけやれるかが分かる、と。
かつて師匠の言った言葉をレイチェルは今ここで改めて感じていた。
神性と魔力に封印をかけていく寄月に対し、レイチェルは何もせず
構えたままだ。今手にしているのは紛れも無い魔剣であるのだが、
力を解放していない今は、ただの鉄塊とそう変わらないのだ。
「ああ、よろしく頼むぜ」
少女の表情は、冗談のような笑いを飛ばす顔から一転、戦士の顔つきに変わる。
寄月が剣の極地とも言える極限の集中状態で挑めば、レイチェルもまた精神を
集中させる。いつ何時その刀が閃こうが、迎え撃てるように。
瞳は真っ直ぐ、寄月の目を見つめたまま……。
■寄月 秋輝 >
小さく笑みを浮かべて、頷いた。
自分の力を、意図を理解してくれる。
そして同じように、本気を見せてくれる。
ありがたい。
心からそう感じる。
「……行きますよ」
魔力を解き放つ。
飛行魔術を展開し、高速で真っすぐに突撃。
バレルロールをしながら、その回転に合わせて刀を振り抜く。
人の身で練り上げた剣速にしては、恐ろしく速く重い。
レイチェルの目で反応出来るように、相手を見定めるためにも初手は抑えつつも素早く。
■レイチェル > 「サムライってのは空も飛ぶのか、聞いてねぇぜ」
普段から戦いの最中によく出すような軽口を放つが、表情は真剣そのものである。
確かにレイチェルは、目の前の彼を手練であると判断していた。
しかし今この瞬間において、彼女の観察眼に未熟な綻びが
あったことは否定できまい。
彼女の予想していた以上に速く、そして重い一撃が寄月により放たれたのだから。
寄月という男が、彼女が想像していた以上の手練であった、ということである。
「……速いな」
だが、レイチェルとてまた、多くの実戦を積んできている猛者の一である。
予想外の攻撃に対して、的確に防御する形で剣を振るって見せる。
刀と鋼が激突する激しく甲高い音が、演習場に鳴って響き渡った。
初手の一撃だ。相手が様子見を兼ねて抑えてきているであろうことは読めた。
つまり、次の一撃はより激しいものとなろう。覚悟しておかねばならない。
レイチェルは目を細めながら、柄を握る手に更なる力を込めた。
刀を弾いた勢いのままに、大きく後方へ鉄塊を振り――
横薙ぎに払う!
■寄月 秋輝 >
白銀の刀と、漆黒の大剣がぶつかる音。
懐かしい音だ、と目を細めた。
「一応魔術師でもあるので」
軽口に同じように軽く返しつつ。
ギャリン、と金属同士を擦らせる音を立てながら、弾かれる。
ぎゅるんと体全体を回し、衝撃を逃がしていく。
そして空中に居る自分に向けられた横薙ぎの一振り。
文字通り『いつの間にか』納まっていた刀、それを再び居合の構え。
「せいっ!!」
空中で逆さになりながら、まっすぐに居合をその大剣に打ち込む。
しかし質量の差がある。防ぎこそするが、本体ごと大きく弾き飛ばされた。
(……なるほど、噂に違わない……)
弾かれた衝撃で空中を舞いながら思考する。
殺す気ではやっていないにしろ、対人訓練時の本気に近いレベルで力を出している。
それが見事に拮抗……もしくは通じていない。
素晴らしい女性だなと考えながら、空中で刀を再び構え、恐ろしく不安定なはずの体勢から迷わず突撃。
「八雲流抜刀術、流星剣……四等星」
人間の常識を超えた角度からの居合。
そして秋輝固有の剣術、魔力の込められた斬撃。
一太刀目を追うように、幾筋かの光の剣閃が流れ星のようにレイチェルへ向けて走る!
■レイチェル > 闇深い黒と、光輝く白がぶつかる音。
ぞくぞくするもんだ、と笑みをこぼした。
「そうかい」
横薙ぎの一振り、相手の隙を思って振った一撃であったが、
ただ防ぐどころか、再び鞘に刀を収めての抜刀。
その瞬間、速さにおいて彼はレイチェルを確実に上回っているようであった。
しかし、質量は。力はといえば、此度はレイチェルが勝るようであった。
「おらよ!」
振りぬく大剣の先から、抜刀の閃きを視認する。
間髪を容れず、手元に重い衝撃。
レイチェルとて、不動とはいかない。
彼が弾き飛ばされるのと同時に、靴底を床の上で滑らせる結果となった。
それでも姿勢は、崩れない。
再び、鉄塊を彼へと向けて構える。
(こいつは、いい経験になるぜ)
抜刀術を修めている者と、対峙したことが無い訳ではない。
それでも、彼の技は殺し殺されの世界で生きる彼らのものと比べて何ら見劣りしない優れた技術であることを、レイチェルはたったこれだけの剣戟の最中に見抜いていた。
それは今度こそ、綻びの無いものであったであろう。
「剣技に名前がついてるのか、格好いいじゃねぇか」
本来あり得ない姿勢、位置からの斬撃。
更に、魔の刃が閃きの後を追うように、幾筋か。
一つ。左へ振り払った大剣で弾き飛ばす。
二つ、三つ。振り払った大剣を全力で右へと振り払い、これを消し飛ばす。
不意を突かれた形でここまではやり遂げたものの、続く四つ目の閃きが肩口を切り裂いた。
「はっ、こいつはすげぇ……!」
次は激しいものが来るとは思っていたが、成程これは、まさに手練のそれだ。
使い込まれた刀と共に、彼は技を磨き過ごしてきたのだろう。
しかし、それは彼女とて同じ。
剣を構え直す。次はこちらから行くぞ、とばかりに。
■寄月 秋輝 >
「……あ」
しまった、と刀を納めて着地する。綺麗な姿勢で。
眉をひそめて、一言謝る。
「すみません、大丈夫……」
一瞬相手を気遣うが、相手の本気の顔を見て思い直す。
大きな怪我はさせていない。
彼女も中断を申し出ない。
無理をしている様子もまるでない。
ならば時間の許す限り、もう少し胸を借りよう。
再び居合の構えを取り直し、極限の集中状態へ。
次の一手を、恐ろしくフラットな心のままに待つ。
■レイチェル > 「大丈夫じゃなさそうに見えるのか?」
ふ、と。
寄月の前に居るレイチェルの姿が、歪み始める。
彼女の内側から感じられていた、攻撃や防御、行動全般の意志が、演習場の
空気の中へと溶けてきえていく。
認識し得る『気配そのもの』が、その場から消えていく。
光学迷彩等ではない。内側から、彼女の存在自体が、溶けて消えていくのだ。
さながら、幽鬼。否。幽鬼のそれよりも、彼女の持つ『色』は今や薄く――。
溶けて、溶けて、溶けて、消える。
殺人事件を追っていく最中、この世界の手練と戦う為に修行して身につけ、
今や完全に彼女のものとした『世界と同化する』術であった。
極限の集中力を有する寄月であればこそ、理解することが出来るであろう。
彼女の気配は、今や完全に消失した。
演習場に残された気配は、今や寄月のそれのみとなる……。
■寄月 秋輝 >
「……失礼しました」
くす、と笑う。彼女を見くびっていた。
さて、その彼女の姿、目を細めて見つめる。
なるほど、これは世界との同化だ。
これほどまで極まった女性は見たことが無い。
ついぞ自分が勝てなかったあの女の子すら、そこまでは出来なかった。
ならば。
「追いつくしかありませんね」
答えは一つだ。
魔力を落ち着け、闘気をゼロまで抑え込む。
極限の集中、明鏡止水。
静かな水面に落ちる一粒の雫を捉えるほどの技術。
自らを『世界と同化』させ、レイチェルという一粒の雫を捉えんとし。
目を閉じたまま、自分の感覚と異能……光を追う力を信じる。
自分の力、相手の力を冷静に感知し続ける。
目を閉じることにも、一切の迷いも無い。
演習場の気配が完全に消失し、まるで誰も居ないかのように静まり返るだろう。
■レイチェル > 静まり返った世界の中で。
レイチェルは確かに寄月を捉えていた。
細やかな剣の技術は、寄月に劣る。
常なる速さも、寄月に劣る。
しかし。
この術に関しては、レイチェルに一日の長がある。
疾駆。
肩口の怪我は軽傷。鉄塊を振るうのに問題は無い。
駆けて。
大きく振った鉄塊《それ》を。
疾走る。
寄月の居る場、その腹部辺りをめがけて、その側面で殴打するように。
閃く、黒の暴力――。
そこには、微塵の気配すらもなく。
■寄月 秋輝 >
静かに、静かに待つ。
微動だにせず、呼吸すらほとんど行わない。
目を閉じたまま、まるで完全に眠りに落ちたかのように、まぶたの下の眼球が動くことすらない。
小さな滴が水面を揺らす感覚。
見つけ出した。
けれどわずかに遅い。
彼女の方が、自分よりも練度が高い。
手遅れなほどに近い。
防御を思考するほどの余裕など。
抜刀、銀閃。
目を閉じたまま、腰の回転と腕の振りが巻き起こる。
普通間に合わないはずの銀の剣が、黒の剣とぶつかる。
思考するより早く、反射が体のパーツを動かした。
目を閉じたまま、剣をかみ合わせて。
しかし当然ながら、質量と速度に負けて思い切り吹き飛ぶ。
右腕が軋む感覚すら遠く心地よく感じながら、空中をぐるりと舞った。
■レイチェル > 鉄塊と刀が噛み合えば。
満足そうに、そして楽しそうに笑うレイチェル。
不意を突く一撃に、これまで彼は全て対応して見せてきている。
彼の腕に過ぎた衝撃が走って軋んだとて、レイチェルが心配の言葉をかけることはない。
彼女の肩口の傷と同じ。彼のそれもまた、問題のないものであると判断したからだ。
気力体力、精気も十二分。
まだこの訓練を続けられる、と。
鉄塊を構えるレイチェルであったが。
その時、彼女の右眼に、彼女にのみ見ることの出来る立体的なメッセージが表示される。
端末とは別に、風紀委員からの連絡を彼女の右眼は受け取るようになっていた。
『至急、風紀委員会本部まで』
右眼に表示されたメッセージは、それだけのシンプルなものであった。
「……楽しいところだが、悪ぃな。呼び出しを喰らっちまったようだ」
声を発し、気配もすっかり顕となる。
クロークの内へと剣を収め、レイチェルは寄月に向けてそう口にした。
■寄月 秋輝 >
(……凄まじいな)
いくら実戦不足で多少鈍ったとはいえ、一応は元の世界で最強の剣士、英雄となった男だ。
こうも彼女に圧倒されるなどとは思いもよらなかった。
十分に評価していたつもりが、その上を行かれてしまった。
ぐるんと空中で回転し、ぴたりと止まる。
そのまますーっとゆっくり降りて来て着地した。
その時点でようやく、秋輝自身も極限の状態を解除した。
全てがスローに見えるほどの世界を継続し続ける、並大抵の精神力では為しえないものだが。
わずかに震える右手で刀をくるりと回し、鞘に納めた。
「おや、それは残念です……
お付き合い本当にありがとうございます、レイチェルさん」
刀を腰の帯に通し、深く礼をした。
戦闘中の残心はもちろんのこと、剣士としての礼儀をしっかり尽くす。
彼女の能力は、礼を述べるに値する……否、それ以上のものだった。
■レイチェル > (……ここまでとはな)
眼前のこの男の細やかな剣捌きは、確実に自分の上を行っている。
故に学ぶべき点は多くあった。自分の荒削りな剣技とは全く異なる、洗練された剣技。
勿論、そういった相手とやり合ったことが無い訳ではない。それでも、彼のそれは
彼女の頭に印象強く残る剣筋であった。
抜刀術、というものからは学ぶ所がまだまだ多くありそうだ、と。
レイチェルはそう思うのであった。
「悪ぃな、オレもまだまだやりてぇところだったが……
礼か、素直に受け取っておくぜ。でもってこちらからも
言わせて貰うぜ、ありがとよ、寄月。良い模擬戦だった」
肩の血をクロークから取り出した白い布で拭うレイチェル。
肩口の傷から流れでた血は既に止まっているようであったが、制服は破れたままであり、
白い肌がちらりと服の隙間から覗いていた。傷はまだ残っているが、既に少しずつ薄く
なり始めている。
「また、時間のある時に存分にやり合おうぜ」
腰に手をやって、レイチェルは寄月の方を見やり、
にこりと微笑んでみせた。
それは幼さを残した顔立ちに相応しい、少女らしい微笑みであった。
■寄月 秋輝 >
「おかげでかなり体がほぐれました。
やはり実戦は違いますね」
右手を強く握りこむ。
筋肉を思い切り緊張させ、痺れに近い震えを無理矢理止めた。
見ればレイチェルも肩の傷も綺麗にふさがっている。
(治癒術によるものか、体質によるものか、どちらだろう)
何にせよ、女性の体に傷を残すことはなさそうだ。
と、安心して一つ息を吐いた。
「ええ、是非またお願いします」
そう答え、同じように笑顔を浮かべた。
中性的なそれは、女性に近いほど柔らかく。
「……では、僕も満足したし……そろそろ出ますか。
レイチェルさんもお気をつけて」
これから仕事であろうレイチェルの身を案じる言葉をかけ、一歩先にその場から立ち去る。
演習場を出たら、ふわりと空を飛んでいくだろう。
ご案内:「訓練施設」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から寄月 秋輝さんが去りました。