2016/09/03 のログ
■羽切 東華 > 「いや、この刀では斬れませんよ?だから、メインで使うのはあくまで鈍の本体であるこっちですね」
と、和洋折衷な刀を軽く掲げてみせて。実際、人外殺しの刀を使う場面がそうあっても困る。
鈍と違い、制御…信頼関係が構築できていないのだから。その点では先輩が羨ましい。
人を斬るのに心は必要ない。明鏡止水、無念無想、しかしそれとは違う。
―少年が戦う時に思う事がたった一つだけある。ただ「斬る」事。それだけだ。
それなりに、荒っぽくも真っ直ぐ育てられた癖に、人斬りの素養が混じって歪んでいる。
だから、家族でも友達でも恋人でも、強者も弱者も一切合財関係なく。
――ただ斬り捨てる、人の姿をした刃そのもの。それが少年の致命的欠陥だ。
もっとも、例え今ここで彼が指摘してくれたとしても、自覚が無いので不思議そうにしていただろう。
「色んな意味でっていうのが気になりますけど、まぁ大丈夫だと思いますハイ。
…って、マジですか。先輩にちゃっかり宣伝してたのかぁ…」
まぁ、でも会話のやり取りだけでも、彼が「強い」というのはヒシヒシと感じる。
同じ剣士として、胸を借りるつもりで挑むのは矢張り心が躍るものがある。
例え勝てないとしても、どうせ今まで叩きのめされてきたのだ。
ならば、負けすら糧にして己の道を究めるのみ。
「あ、じゃあ連絡先交換とかどうでしょう?俺、そろそろ引き揚げないといけないもので」
と、スマホを取り出して申し訳無さそうに。ある意味、場所も機会も今がチャンス。
が、ちょっと今日は引き揚げないといけないのだ。無念だ。
■寄月 秋輝 >
「あぁ、技術の問題ですか……」
ほんの少しだけ目を細める。
あぁ、やはりわずかながら歪んでいる。
そう、わずかであればよいのだが。
彼に何かあれば、両腕の腱を斬ってでも止めてやらねばならない。
そんなことを、人斬りとしての心で考えた。
「ついでにテマシミート……だったかな。
肉屋で肉を切って生計を立ててみてはどうですか、と言ったのも僕です。
……結局あそこでバイトしてるのかどうかまでは知らないのですけれど」
まぁ多分話は通ってるだろう、ということで言っておいた。
あんなナリだが、話すのは好きそうに見えたし、多分伝わってる。
ぱっと携帯端末を取り出し、ぱたぱたと操作して自分の連絡先を表示した。
「どうぞ、こちらが僕のアドレスです。
鈍さんにも教えてありますから、どちらからでも好きな時にどうぞ。
僕がフリーの時でしたら、すぐに駆けつけますから」
■羽切 東華 > 「まぁ、婆ちゃんに「お前は何処か危なっかしい」とか説教も食らってたりするんですけどね」
と、彼が少しだけ目を細める様子に気付かず肩を竦めて気楽そうに。
祖母の危惧が的中しているというか、初対面の彼にも歪みを認識されている事に気付かぬまま。
「ああ、何かメイド服にエプロン姿で普通にバイトしてるみたいですよ。
と、いうか寄月先輩の紹介だったんですか。ありがとうございます!」
と、そこは頭を下げて。自分もいい加減アルバイト見つけないといけないなぁ、と思いながら。
ともあれ、こちらも最近やっと慣れてきたスマホを操作して彼の連絡先を登録。
もちろん、こちらの連絡先も彼へと渡しておこう。連絡手段があるに越した事は無い。
「分かりました……っと、じゃあ近々、かは分かりませんが出来るだけ早く手合わせのお誘いさせて頂きます」
竹刀袋を担ぎ直しつつ。何だかんだで剣士と出会えたのは矢張り嬉しい。
満面の笑みを浮かべつつ、スマホに届いたメールに気付く。相棒からだ。
「……あの妖刀娘は、送る写真を考えろ…!!」
と、頭を抱えてから気を取り直し。返信は帰り道でしておこう。
「ともあれ、今日はありがとうございました寄月先輩。今度手合わせよろしく御願いします!」
と、律儀に一礼してから竹刀袋を担ぎながら歩き出そう。
■寄月 秋輝 >
「ちゃんとバイトしてるんですね。
それはよかった」
面接に通るかどうかは彼女次第だったのだ。
ちゃんと通ったならば問題ない。
連絡先を登録すれば、携帯端末を再び仕舞い、小さく頷いた。
「ええ、また是非。
気を付けて帰ってくださいね、羽切さん」
どうもまた妖刀からいたずらを仕掛けられたらしい、苦悩する姿も見える。
十分に年頃の少年だ。
こんな平穏な時間が続けばよいのだが、と考えながら見送った。
■羽切 東華 > 「あぁ、もう何だ最近この手のイタズラがブームなのか!?この前はエロ本いきなり置いてあったし…!!」
と、何かブツブツ呟きながらスマホを操作…しながら歩くのは危ないので我慢。
足取りも早く一足先に訓練施設を跡にするのであった。
ご案内:「訓練施設」から羽切 東華さんが去りました。
■寄月 秋輝 >
微笑ましい。
微笑ましいのだが。
(……またまた癖のある子が来たものだ)
矯正には時間がかかるかもしれない。
正すことは出来ないかもしれない。
自分の仕事ではないのかもしれない。
それでも、彼を捨て置くことは出来ないだろう。
(……斬ってしまうのと、斬るのとでは訳が違うからな)
彼を見守れるのは不幸中の幸いだ。
しばらくは様子見と行こう。
時間も経ってしまった。
今日の訓練は時間が短い分ハードに行こう。
そう考えて、さらなる地獄の中で刀を振るうことに決めた。
ご案内:「訓練施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に羽切 東華さんが現れました。
■羽切 東華 > 昨夜の相棒からの提案により、今夜はこの訓練施設にて手合わせをする事になった。
初対面でもあった転移荒野以来であろうか?彼女と剣を交えるのは。
殺傷や重傷に繋がる程の戦いは当然禁止されているが、それを守れるかどうか危ういもの。
「………スゥ」
一足早く到着していた少年は、何時もと装いが少し違う。
まず、伊達眼鏡は付けておらず、最初から左腰に《人外殺し》の刀を帯刀している。
更に、何時もの地味な服装に黒のロングコートを羽織っていた。
祖母から譲られた、いわゆる勝負服というヤツらしい。この季節だと暑いが。
右手には、今夜戦う相棒の本体でもある和洋折衷な装いを醸し出す妖刀を携えており。
ご案内:「訓練施設」に影打 鈍さんが現れました。
■羽切 東華 > 「……ん?」
スマホがメールの着信を知らせる。懐から取り出して内容を確認。少々遅れるとの事。
短く「了解、気をつけて来てね」の返信を返せばスマホを仕舞って。
「さて、と。手合わせで終わるかどうか…」
苦笑いを交え独り言を零す。相手が相手だ。それに前回の様子見とは違うだろう。
■影打 鈍 >
(訓練施設の扉を潜る。
広い部屋の中央には主が居る。
いつものようなにやけ顔――ではなく、口を真一文字に引き結んだ真面目な顔。
カランコロンと下駄の音を鳴らしながら、彼へ近寄る。)
すまん、遅くなった。
(彼の正面へ立ち、そう声を掛ける。)
■羽切 東華 > 「――ん、気にしないで。それと…ハイ、一度君に返すよ」
聞こえてくる下駄の音、慣れ親しんだ気配。正面に立つ彼女に笑みを返しつつ。
その、右手に携えていた彼女の本体を軽く投げ渡そう。初対面の状況と同じ。
こちらはこの人外殺しの刀、そして相棒が自身の本体。条件はなるべく公平にしたい。
「それで…えーと、手合わせなんだけど明確な負けの基準決めないとマズくないかな?」
むしろ、ここは訓練施設だ。だから、当然ながら「限度」というものがある訳で。
■影打 鈍 >
おお、すまんな。
流石に汝が相手では。
(魔力の刀を使うことは出来るのだが、強度が雲泥の差だ。
攻撃はともかく、受けが厳しい。
投げられた刀を受け、鞘を左手で持つ。)
ふむ、そうさな。
動きを止められた方、ではどうだ。
(喉元に刀を突きつける、投げ飛ばして組み伏せる、打撃で昏倒させる、等々。
手段はいろいろあれど、要は戦えなくなった方が負け。
実戦に近いルールを提案。)
■羽切 東華 > 「初対面の時とまた状況が違うしね…とはいえ、こっちもコレじゃないと鈍との手合わせはキツいよ」
苦笑い。鈍も日々の鍛錬などで使い慣れてきているが、彼女自身との戦いは例外だ。
どうしてもコレを使わざるを得ない形になってしまう。
こちらは、左腰に鞘ごと刀を差したままの自然体で。
「分かった、それで行こうか――先手は?」
相棒の提案に頷きつつ、最後の問いかけ。彼女の返答次第では直ぐに仕掛けるつもりで。
■影打 鈍 >
――そうだな、色々と違う。
(感慨深げに右手を見ながら。
まだ半月と少ししか経っていないが、結構色々あった。
エロ本とか自撮りとか。)
うむ。
では、今回は私から行こう。
(刀の柄に右手を掛ける。
彼の準備が整ったのならば、地面を蹴った。
常人であれば消えたようにしか見えないような速度で彼の左手側――刀の死角へと回りこみ、彼の背後の方向から刀を振るう。)
■羽切 東華 > 「…魔力パス繋がってるからなんだけど、何か感慨に浸る内容が偏ってないかな?」
と、一度ジト目になりつつも、小さな吐息と共に苦笑。さて、どうやら彼女から仕掛けてくるようだ。
「――ああ」
短く頷いて。集中…そして完全に意識が切り替わる。ごく自然に何の気負いも無く。
地面を蹴る相棒、消えたかと錯覚するような速度でこちらの左側に回り込んでくる。
「――【五輪貫】」
と、不意にその場で急旋回。彼女が刀を振り下ろした瞬間、目にも泊まらぬ速度で抜刀。
一瞬で5つの斬撃…いや、刺突をこの至近距離から繰り出し、彼女の体を刀ごと弾き飛ばす狙い!
■影打 鈍 >
(流石に対応が早い。
彼の身体が旋回した瞬間、こちらの攻撃の失敗を悟る。
同時に足元へ魔力の刃を生み出し、振るう。
自身の足の裏へとそれを振るい、その刃を蹴るように脚を伸ばす。
刃の速度と自身の速力を合わせ、空中で急激に横へと飛ぶ。
五連の突きのいくつかが自身の髪に触れ、火花を上げる。
髪が数本、宙に舞った。)
――ッシ!
(地面に着地し、今度は正面から。
正眼から小細工なしの振り下ろし。
同時に左右から挟み込むような刃と、自身のやや前方から飛び出す突きが二本。)
■羽切 東華 > 「――…」
無言、無表情。敵意も殺意も感情も無く、この一時は相棒だろうと関係なく…ただの「斬る」対象だ。
瞬時の五段突きは、彼女が生み出した魔力の刃を足場として横へと跳んで交わされる。
足場を利用した急激な方向転換。髪の毛を掠める程度にこちらの攻撃は外れる。
続いて、今度は真正面からの振り下ろし。…と、魔力の刃の同時攻撃。
鞘に収めず、右手に持つ青白い刀身と不気味な赤い文字が連なる刀を下から振るう。
振り下ろしを真っ向から相殺し、同時に左右から挟み込む刃は背中から生やした鋼の2本の刃で受け止める。
同時に腹から飛び出した二本の刃が突きの2本を受け止める。
――鋼刃生成、彼が持つ異能である。
■影打 鈍 >
――。
(彼の眼を見る。
何の表情も読み取れない眼は、やはり思った通りの眼で。
僅かに、奥歯をかみ締める。)
(硬質な音と共に、振り下ろした刀は防がれた。
続く四本の刃はガラスが割れるような音を立てて砕ける。
鍔迫り合いの格好に持ち込みながら更に刃を四本生み出し、彼の背中と腹の刃の動きを邪魔するように絡みつく。)
■羽切 東華 > 「――…。」
彼女の顔を見返す。何の感情も浮かばない表情と視線がそちらを見据える。
いや、ただ一つあるとすればただ――斬る。その一念のみ。その他雑念妄念全て無く。
鍔迫り合いをしながら、硝子が割れるが如く砕ける魔力の刃。
更に4本追加された刃に一瞬だけ視線を向け――
「……鋼刃【剣林陣】」
――次の瞬間、少年を基点とした半径5メートル圏内、地面から無数の鋼刃が突き出す!
魔力の刃ごと、彼女の体を真下から容赦なく貫いて串刺しにする狙いだ。
■影打 鈍 >
(押される力、押す力、流そうとされる力に流す力。
細かく大きく、お互いに自分に有利な体勢を作ろうと、様々な力が刀に掛かる。
刀を通した駆け引きが一瞬行われ、直後に地面から無数の刃が生えてきた。)
――っ。
(刃から特別なものは感じられない。
しかし撃たれればバランスを崩すのは避けられない。
脚を繰り、体を捌き、身を捻る。
いくつかの刃が羽織をかすめ、金属をこする音がして、羽織が舞う。
この衣服も自身の一部、物理的な刃では穴などあくはずも無い。
曲芸のような動きで刃を避け、その体勢と勢いのまま刀を下から跳ね上げる。
地を這うような軌道から喉を狙う、変則の動きによる突き。)
■羽切 東華 > 斬る一念しか無くとも、無意識のレベルで思考が瞬時に状況を把握する。
どうやら、己の異能は彼女の肉体を貫くには力が足りないらしい。
そうなれば、牽制と彼女の生み出す魔力刃の迎撃に使う程度に留めておくべきか。
鋼刃による刃の林を器用に曲芸じみた動きで避ける相棒。
迷わず異能を解除して鋼刃の群れは一瞬でバラバラに砕け散っていく。
同時に、無茶な態勢と勢いから放たれた一撃。すかさず右手の刀を翳し…
ギィンッ!!金属が擦れ合う耳障りな音が響き渡る。
完全に受け止めるには少々足らず、軌道を逸らして対処する。
首を若干掠めて血が少々噴出したが…問題ない。頚動脈が切れた訳でもない。
「……フッ…!」
そして、次の一手は斬撃、ではなく…ただの蹴り。しかし、それは斬撃に等しい。
蹴り飛ばすのではなく、蹴りで「切り裂いて」しまわんとするカウンターだ。
■影打 鈍 >
(己の刀が彼の首筋を掠める。
赤黒い液体が僅かに飛ぶが、視ているのはそこではない。
放たれた蹴りに魔力の刃を三本合わせた。
あっけなく砕かれてしまうだろうが、防ぐ目的ではない。
自身の本体と比べればアメ細工のような脆さだが、それでも普通の刀ぐらい強度はある。
それを三本合わせれば、さすがに速度は落ちよう。
蹴りを潜り込む際に、蹴りでの斬撃が髪を捉える。
硬質な金属をこすり合わせるような音。)
■羽切 東華 > 「……!」
少年の学んだ《魔剣》は、その無茶な長年の鍛錬により、拳や蹴りにも切れ味が発生する。
いわば人の姿をした刃。が、それでも彼女の体に届くには至らない。
彼女が生み出した魔力の刃を蹴刃で切り裂く…までは良かったが。
速度と勢いが削がれたのもあり、彼女の髪の毛を掠めながら空振りする。
今、こちらは蹴りを放った直後で不安定な態勢だ。彼女がこの機会を見逃す筈があるまい。
なので、蹴りが不発と判断した瞬間には、既に右手で人外殺しの刀を構えており。
■影打 鈍 >
(大きく身体を沈みこませ、そこから彼を見上げる。
体勢は崩れているが、自身の担い手だ。
どんな体勢からでも十全の一撃を繰り出せる。
それは自身のみならず、担い手たる彼にも可能な事であり、今まで自覚していなかったとしても本能的に理解できるだろう。
だからこそ、刀を握る。
縮めた脚を伸ばし、腕を振るう。
地面すれすれから伸び上がる、渾身の一撃。
その一刀が彼の身体へと迫り、)
――っ。
(僅かに、鈍る。)
■羽切 東華 > 右手に構えた刀、その柄を一度強く握り直す。
態勢を崩しているとはいえ、長年の鍛錬で培ったバランス感覚と、契約による補助。
その二つの相乗効果により、この程度の崩れた態勢は然程問題にはならない。
地面スレスレからの伸び上がる斬撃に対し、不十分な態勢から右手一本で超高速の斬撃。
彼女の伸び上がる刃と対照的に、斜めの角度で振り下ろされるそれは相棒の首狙いだ。
当然、動きを止めるなんてモノはこの少年には無い。迷い無く斬り落とすつもりで。
「――…」
斬る事にのみ全ての動きを傾けている少年に、彼女が刃を鈍らせた意味など分かる筈も無く。
逆に彼女とは対照的に、僅かに鈍る所か鋭さが増していた。
■影打 鈍 >
(振り切れなかった。
伸び上がる刃は明らかに速度を落とし、彼の刃と交差する。
向けられるものか。
この少年に、自分の刃を向けられるものか。
そうしなければ自分が斬られるとしても、出来るわけが無い。
迫る刃を見ながら、小さく笑う。)
――すまんなぁ。
(小さく呟き、せめて一刀で斬り伏せられぬよう身体をよじる。
同時に自身と刀の間に魔力の刃を生み出すが、どうにもならない。
彼が手を緩めなければ、その刃ごと自身の身体はバッサリと斬り捨てられる事だろう。)
■羽切 東華 > 斬る。斬って切って裂いて断ち切って…あらゆるモノ全てをただ一太刀に処する。
敵意は無い、悪意は無い、妄念も、執着も、感情も、思考も無い。
一度対峙したのならば、須らく目の前に立つ全てが斬り捨てる対象だ。
だから、相棒が刃を鈍らせた意味や思いなんて今の彼は理解も出来ない。
ただ単に、こちらが確実に斬り殺せるその瞬間を見出しただけ。
「――……!」
そう、その筈だった。迷い無く、その斬撃は彼女の首を落とさんとする。
彼女が身を捻ろうと、魔力の刃を緩衝材代わりにしようと関係ない。
ならば、その刃ごと胴体を両断するまで――の、筈だ。斬る事に躊躇いはない。
が、その振り下ろす右腕が急激に停止。しかし、無理な態勢からの超高速の一撃だ。それを強引に止めた反動で――…
ベキッ!!枯れ木を圧し折るような音と共に少年の右腕があらぬ方向へと曲がった。
だが、その痛みが切っ掛けとなったのか…彼女を切り捨てるのはギリギリで防げた。
……のだが
「……痛い。」
何時の間にか何時もの少年の空気に戻っていた。
自分の圧し折れた右腕を眺め、何でこうなってんだ?と理解不能の表情。
ただ、それでも刀は握ったままなのが彼らしいと言えるだろうか。
■影打 鈍 >
(眼を閉じる。
斬られた事など無いが、さぞかし痛いのだろう。
いや、痛みを感じる必要が無い身だ、痛くは無いのだろうか。
どちらでも良い。
斬ってでも彼を止めると言う約束は果たせなかったが、彼に斬られるのであれば――
とかなんとか考えていたが、一向に斬られた気配が無い。
もしかしてもう斬られたのか、と目を開けて、)
――何やってんだ汝。
(彼の右腕が圧し折れていた。
その様子を呆けたように見、気の抜けた声を出す。)
何やってんだ汝!
腕、折れ――折れてんでないか!
アホか!!
(激昂した表情で叫び、掴みかかる。
右手を伸ばし、彼の襟首を引っつかもうと。)
■羽切 東華 > 「え?と、いうかこれどっちが勝ちなの――あ、ちょい待ち鈍!今揺らされると痛い痛いいたたたたたっっ!?」
完全に何時もの空気に戻った少年。何が理由かは本人が一番分かっていない。
が、どうやら相棒を斬り殺さずに済んだ模様。とはいえ、襟首を掴まれて別の危機が。
何せ右腕が圧し折れている。むしろ曲がってはいかん方向に曲がってる。
どれだけ常人離れした剣術を扱おうと、彼女との契約の補助があろうと人間は人間。
反動は当然あって然るべきなのだ。まぁ、その痛みと衝撃で我に返れた、とも言えるが。
「だから鈍!ちょっ!むしろ悪化するから揺らさないでホント!!」
現在進行形で痛みで泣きそうです。それでも、へし折れた腕で刀はしっかり握っている。
根っから、というより天性の人斬りの素養は矢張りあるのだろう。
■影打 鈍 >
勝ちとか負けとかあるか!
アホか!
素直に斬っとけ!
何でそう後先考えんのだ!
アホか!!
(がっくんがっくん揺らす。
その度に彼の腕がぶらんぶらん揺れるが、気にしたこっちゃない。
むしろ徹底的に痛めつけてやると言わんばかりに揺らす。
今にも泣きそうな顔で。)
つーか離せ!
刀離せ!
こんなもん――ええい!
(刀を奪い取らんと手を伸ばす。
離さないのなら無理矢理にでも引き剥がそうと、指に手を掛ける。)
■羽切 東華 > 「よくわかんないけどごめんなさい!!って、だから揺らさないでくれってば!!」
先程まで、完全に人斬りになっていた少年とは思えないヘタレっぷりである。
と、いうか右腕がブランブラン揺れる度に激痛が走るのだがホント泣きそう。
相棒も泣きそうな表情であるが、少年から言わせれば泣きたいのはこちらである。
「あ、ちょっと強引にいたあああああいっっ!?!?」
抗議は途中で絶叫に。彼女の手で多分、強引に刀は右手から引き剥がされただろう。
■影打 鈍 >
――ふん。
その様子では、まだ気付いておらんようだな。
(不満を隠さない表情。
彼から刀を奪い取り、ついでに彼の腰から鞘を抜き取って、刀を鞘へと仕舞う。
彼の腰には代わりに自身の本体を差しておいた。
最大の重さに設定して。)
エニィとの時もそうだったが、汝は一旦戦闘となるとこう!周りが見えんくなる。
その調子ではいつか本当に誰か殺す事になるぞ。
その前に私を斬らせて気付かせるつもりだったがな。
――医務室いくぞ。
(鞘に納めた刀を彼の鼻先へと突きつけながら。
こう!のところでは、片手で顔の前から手刀を繰り出すようなジェスチャーと共に。
その後、彼の左手を取ってすたすたと引っ張るように歩き出そう。)
■羽切 東華 > 「……え?」
案の定気付いていなかったらしく、呆けたようなキョトンとした表情を浮かべて。
あと、ちゃっかり人外殺しの刀が没収されて、代わりに鈍の本体が左腰に差された。
「は、はぁ……え?殺す?えーと、ともあれ結果はどう…地味に刀が重たいんですが鈍さんや」
いまいち理解していない。それはそうだろう。ここまで無自覚だったのだから。
そもそも、一度戦いになり人斬りな状態に移行すると記憶が半ば飛んでいる。
周りが見えない、のもそうだがそもそも斬り殺した後にならないと【自覚が沸かない】のだ。
――と、いうか戦いでは斬る事以外に全く後先考えてないのがそもそも問題だった。
で、左手を取られて医務室に直行する事になる。
流石に、右腕の骨折はアレだから多少の間は右腕は三角巾と包帯、ギプスの世話になる事になりそうで。
■影打 鈍 >
汝、帰ったら説教だ。
覚悟しておけ。
(さっぱり覚えていない彼に、ものすごい顔を向ける。
鬼か般若かと言うような顔で、怒りのオーラが視えるかもしれない。)
知らん。
ったく、私の覚悟はどうしてくれるんだ。
野暮天め。
(ぶつくさ言いながら彼の手を引いて歩く。
こちらはすっかり斬られるつもりだったのに、斬られなかった。
とりあえずそれなりに親密な相手であれば踏みとどまるらしい、と言う事は分かったのだが、その度に怪我をされてはたまったものではない。
ぷんすこと怒りながら彼の手を引いて歩く。)
■羽切 東華 > 「あ、ハイ…いや、帰る前に取りあえず医務室行こうよ医務室」
確実に圧し折れているし、むしろ手を引かれて歩いている間にも激痛が走る。
が、流石にもう痛みに喚く事はなくグッと堪えている。痛みとは割と慣れるもの。
ちなみに、恐怖心が全く無いので、怒りのオーラを見ても怖くは無かった。脅威は感じたが。
「えーと、よく分からないけどごめんなさい?」
無自覚ここに極まれり。一朝一夕で自覚するほど甘いモノではない。
生まれ付き持ち合わせた天性の素養だ。16年間自覚が無いモノを、今すぐに気付ける訳も無く。
ともあれ、ブツクサ彼女に言われながら歩いていく訳だ。
ちなみに、踏み止まった理由はもちろん謎だ。少年自身が分かってないのだから。
■影打 鈍 >
当たり前だ!
本当にバカか貴様は!
(歯をむき出しにして吼える。
怪我をしているくせにどこか他人事のような様子に、怒りが増す。
奇妙なヒトガタの能力に目覚めそうな擬音すら見えそうな勢い。)
――わからんなら謝るな。
腹が立つ。
(八つ当たりだ。
分かっている。
理由はわからないが、彼が自分を斬ることをためらってくれた、と考えると嬉しいやら腹立たしいやら複雑な気分で。
そのよくわからない気分を誤魔化すために、彼に怒っているというところもある。
先に歩く自身の顔は彼からは見えないだろうが、ちょっとだけ口が緩んでいたり。)