2016/09/29 のログ
デーダイン > 「うううむ。何だかコレ、思った以上に面倒くさいぞ……。

えぇええいッ!!!闇の力よォッ!!」

グッと握りこぶしを作るデーダイン。
すると、デーダインの目の前で真っ黒な炎の様なモノが広がり…なんと、あっちに投げられっぱなしだった黄色いボールが、
炎から飛び出し、デーダインの目の前に落下したのだ!

「ハッハァ!次はこそ貴様を―――ム?」

ボールを手に取り、力強く勝利宣言を、と、思った矢先に、
グラウンドに何やら大きな女子生徒らしき声が響いた。
デーダイン、こと、白い穴あき丸型仮面は、呼びかけた化野千尋へと振り向く。
なるほど、一目で分かる、トレーニングの様だ。
一方でデーダイン、黒ローブに黒フード、赤マントというヤケに不審な格好である。
気になるのも致し方ないかもしれない。

「ウム!!私はドッジボールの勉強、つまりトレーニングをしに来たのだッッッ!!!!
丁度、一人で寂しいとか思ってたところなのだッッ!!!!是非一緒にやらないか!!!!」

黄色いボールを両手で掴んで頭―――もとい、白い仮面―――の上でぶんぶん振ると、
快く、暑苦しくて大きな声で、化野千尋に答えた。

化野千尋 > 「!!」

目の前で繰り広げられる超常現象の次々に目を輝かせる化野。
炎のように見えたのに、黄色いボールは焼け落ちることもない!
口を押さえて、感動に打ち震える。

ぶんぶんと振られる黄色いボールに嬉しそうに表情を緩める。
タッタと軽快にデーダインの傍へと駆け寄る。

「一人で寂しいのはよろしくないですっ、ね!
 あだしのも、実はトレーニングに来たんです! やります!!
 さっきの、どうやったんですか? 魔法ですか? 異能ですか!?」

化野は、ジャージの袖を捲くって気合十分を表明しながら、ぴょんぴょんとその場でジャンプする。
デーダインの仮面を暫くじっと見つめたのち、ツッコミたそうな表情をして堪えた。

「あのう、ご質問をひとつだけよろしいでしょーか。
 ドッジボールは実は、一人じゃ難しい競技なのですが……ご存知です?」

デーダイン > 「ハッハッハッハ、今のはな、暗黒魔術の中にある転移魔法である!!
難しい話をすると何だが、簡単に言えば…そう、森羅万象全てに備わる闇の力に、
ボールを掴んでここまで持って来てもらったのだよ!!」

黄色いボールをぽーいと空中へ投げれば、ゆっくりと、まるで重力に逆らうかのようにふわふわ浮きだした。
手袋の掌を広げ、とても愉快そうに先ほどやってのけた魔法について説明する。
向けられる驚きの感情は、デーダインにとっては嬉しいもの。
表情こそ読めないものの、声と仕草は嬉々としている事が明らかに分かる。
解説が少々厨二っぽく聞こえるのは、デーダインであるがゆえ。

「ハッハッハッハ、それは見ればわかるぞッ!そうか、貴様はあだしのと言うのだな!
私はデーダイン!!さっきやったような、いわゆる黒魔術を教えている教師だッ!
ダイン先生、若しくはダイン様と呼ぶが良い!!

うむ、うむっ!では…始めようかッ!!」

さっと自己紹介をすれば、謀ったかのようなタイミングでデーダインの広げた掌へ落下する黄色いボール。
空いてる方の手袋の親指をグッ立てしてみせる。
何故黒魔術教師がドッジボール…?という疑問は沸くかも。

「―――言いたい事があるなら言っても良いぞ。答えられるとは限らんがな!」

もの言いたげな視線に気付いたのか、ふとそう言って。

「あ、あぁ―――それはな。」

ぽん、ぽんとデーダインの手から零れるボール。
腕組みの姿勢をしていた。

「たった今、痛い程知ったよ。」

化野千尋 > 「暗黒魔術! 転移魔法!!
 しんらばんしょーの闇の力は偉いのですねえ!」

格好いい言葉の並びに、完全に化野はツッコミを忘れている。
なるほどなるほど、と頷きながらもチラチラボールに視線を向ける。
デーダインの言葉に、やや困ったような顔を浮かべた。残酷なことを言ってしまったのかもしれない。

「え、えへへ……でもだいじょーぶですよう! 
 ふたりでドッジボール、いたしましょう! ふたりでなら、できますからねえ!」

自信満々の化野であったが、ふたりではできないことも、完全に忘れている。
できてキャッチボールである。
超常を目の前にして、どうにも思考能力が下がっているのが伺える。

「わ! せ、先生でいらしたんですかあ。
 てっきり生徒の中のどなたかかと。すみません、えーと、ダインせんせい。
 あだしのはあだしのです。化野の、ちひろと申します!」

ブツブツと「あだしのも黒魔術でしんらばんしょーの……」と呟いたのち、はっとしたように声を張る。
今日はトレーニングをしにきていた。化野は、体育会系のノリを貫く姿勢らしい。

「はい! それではお願いします、ダインせん――いやちょっとまってくださいませんかあ! 
 どうして黒魔術のせんせいがドッジボールをひとりでやってらしたんでしょーか!!
 あだしのはすっごく気になるのですが!」

デーダイン > 「フッハッハッハ!!その通りだ!!暗黒の力に勝る者はないッッ!!!
故に!闇こそ至上!私は異界より舞い降りた暗黒の化身―――暗黒神なのだよッッ!!」

褒められれば、極限までに調子に乗るデーダイン。
なんだかとても誇らしげだ。

「そうだな!あだしのよ、貴様が来てくれたおかげで私もホンモノのドッジボールが出来る!
ありがたい限りだ!!というわけで、あれはもういらんな…。」

やけに無表情な人型の的に仮面の目を向ける。
それにしても、ツッコミが不在のこのドッジボール、大丈夫なのだろうか。

「そうだ!これでも教師なのだよ!気にする事はないッ!
ただ、生徒に間違われることはあまりないがな。この様な格好では間違われても不思議ではない。

あだしの……うむ。あだしのちひろ、化野千尋だな!覚えたぞ!」

概ね、デーダインは生徒や教師よりも、不審者に見間違われることが多い。
っていうか、誰がどうみても不審者なのだが、それはさておく。

「クックック、偉大なる黒魔術の力をより深く知りたければ、私の授業に出てみるが良い!」

等と軽く宣伝がてら大々的に自身の授業をアピールするのもわすれずに。

「クク、―――ハーッハッハッハ!!
良い所に気付いたな!化野千尋ッ!

何故、私がドッジボールを、しかも一人でやっていたか?
それを説明するには少し長くなる。」

仮面に手袋を添えて覆い、天井を仰ぐデーダイン。
長くなるので、真面目に聞いてくれても良いし、勿論聞かなくても大丈夫。

「その日、私はいつもと変わらぬ一日を過ごしていた…はずだった。
しかし!末山修一なる無慈悲な体育教師が!新婚旅行へ行くから等と!
ふざけた理由で私に1コマ授業を押し付けたのだ!


それゆえに。私は代理として授業をしようと思ったのだが、
私は黒魔術教師!体育の授業はやったことがなかった!」

手袋を退け、再び化野千尋へと向けられる仮面。

「未知なる恐怖に足を踏み入れながら、しかし授業は蔑ろにしてはならない!
そうして、私はドッジボールをその授業で行おうと思い、
とりあえず、と言う事で単身でここに赴いたのだ。

そして、今に至る―――ッッ!」

つまるところ、
・次の体育の授業を代理でやる
・授業ではドッジボールをやる
・そのためにとりあえずで自分もやってみようと練習に来たが行き当たりばったり過ぎた
ということだ。

「―――理解したかね?それでは、早速やってみよう!持ち場につきたまえ!」

片側のチームコートに立つデーダイン。
こうして、ツッコミ不在のドッジボールが開幕、なるか…?

化野千尋 > 「暗黒神!!」

かみさま!? と、謎の感動を得て。
相手がすごい人だと言われればいくら自称でも信じ込んでしまうのが化野である。
永遠にツッコミのない会話はどんどん続く。
無表情な人型が物言いたそうな顔をしているように見えたが、
的は喋ることができない。哀れである。

「黒魔術の授業ですねえ。
 あだしの、ばっちり覚えました! 黒魔術。黒魔術!」

半ば演説のようなデーダインの言葉を、興味津々に頷きながら聞く。
合間合間に相槌を挟むのを忘れない。

「で、でもですよ! 
 ダインせんせいが、一組の新婚夫婦の幸せを錬成したと思えば、
 それはたいへん立派な功績なのではないでしょーか!
 もし大成功したら、体育のせんせいが帰ってきたあとに、きっと
 生徒のみんなに『えーダインせんせーじゃないんですかあ』とか、
 言われちゃうやつかもしれないのではないのでしょーか、とあだしのは思います!」

思わずデーダインの流れに乗せられて、普段よりも数倍は饒舌な化野。
そして、自信満々に(体育はあまり得意でないのだが)こう宣言する!

「ダインせんせい! あだしのと一緒にがんばりましょう!
 きっと、超一流体育教師にだってなれちゃうかもしれませんっ!

 ――いつでも、どうぞっ!」

ボールを受け止める構えをして。
ツッコミ皆無の中、ふたりドッジボールの幕が上がる――!

デーダイン > 「然り!私は暗黒の神。
そう、つまり私は完全無欠なる絶対悪にして、永久不滅なのだよ……!」

どこまで本当の事を言ってるのかは不明だが、
デーダインは口調を変えず、鼻高々に言ってのける。
次から次へと並べられていく厨二心を擽るやけに尊大な言葉たち。
褒められ、驚かれ、感動され…それらの化野千尋の言動は、
デーダインが益々お調子者と化す原動力となる。
ツッコミが居ない永久機関は、加速するばかり。

「そうだ!因みに、黒魔術を受講するなら魔術基礎の知識もあった方がいいと思うぞ。
ああ、そうだ。ついでに聞かせてもらおうか。貴様は魔術の心得があるのか?」

この辺りはちゃんと前置き説明する。
授業をやる者として、丸投げはしないのが主義である。

「……ふむ、ふむ。ハッハッハッハ、なるほどなぁ。
そうだ、思い出したよ…。

―――あの時、かの少女に必ずヤツの授業よりも面白い体育の授業をしてやると、宣告したことをッッッ!!!!
そうだ!末山修一のヤツを上回る、最高に楽しい体育の授業をしてやろうではないか!
化野千尋よッ!私は貴様と、貴様の言葉に感謝するぞ!!!ありがとう!!」

仮面の表情は見えない。しかし、その心配りに大層感激し、感動しているのは、明白だ。

「ああ!やろう!私なら…私達なら、きっと、やれるッッ!!」

手袋で拳を握りしめて、
そして。

「行くぞ!化野千尋ッ!!我が偉大なる闇の力、受けてみよ―――!!!」

全く暗黒要素のない黄色いボールが、デーダインの手から解き放たれる。
強烈な回転のかかった勢いのあるボールが、化野千尋のコートへ向かって―――

化野千尋…ではなく、何故か寡黙なる人型の的を撃沈せんと、仮面の向きとは全く関係ない方向へ透破抜けて飛んでいった!

そのままほっとけば、的に当たってポテポテボールが転がり、的が後ろ向きに倒れて、
化野千尋の手にボールが渡るだろう。

化野千尋 > 「えーっと、魔術の心得、ですか。」

きめ細かい講師としての対応に、目を丸くしながらええと、と呟く。

「心得、はあまり。
 魔術とはこんなもの、っていう基本の基の部分だけは習いましたがっ。
 あんまり向きはしてないみたいでしてっ。
 あだしのは、魔術というよりも、呪いのほうが親しみがありまして。」

感動するデーダインの姿に、化野も表情を緩める。
表情は見えずとも、喜んでもらえるのはとっても嬉しいものだ。

「はい!! どういたしまして!!」

そして放たれる闇(闇?)の力を含有した黄色いボールを取ろうと飛び上がったものの、
全く見当違いの方向へと飛んでいくボール!
内心もしかしてあの的は自分の味方だったのではないかと困惑する化野!

――そして、的の胴体の部分に当たってポテポテと転がってくるボール。

「あああっ! 杉本さんがっ!」

的(杉本さん)がアウト。胴体に当たったので彼はアウトだ。
そして、転がってきたボールを拾い上げて、闘志を滲ませる。

「ダインせんせい、許しません……! 
 まずは周りの味方から倒して最後に(最後に?)あだしのを狙おうという巧妙な作戦ですね……」

両手で黄色いボールを持ち上げる。

「それでは! 当たって! くだっ! さいっ!」

投げる。
その一連の動作だけで、化野が運動神経には残念ながら恵まれなかったことが理解できるだろう。

デーダイン > 「ふむ。なるほどなぁ…呪いかぁ。それもまた、色々あるのだろうな。
話を聞くに、黒魔術の派生の呪いとはまた違ったものなのだろうな。
日本的なもので言えば、藁人形なんかが思い浮かぶぞ!

まぁ良い…後天的に魔術を取得する事もやろうと思えば大体出来るのだ!
―――たまに、出来ないって事もあるがな。
というわけで、興味があったら是非に!」

仮面の顎あたりに手をやって思考するデーダイン。

「…あぁっ?!」

投げて大分たってから気付いた。
暗黒の力の暴走、もとい、黄色いボールの暴投に。
しかし!怪我の光明だろうか、
デーダインの暗黒の一撃は、相変わらず無表情を浮かべたままの杉本さんを無残に、無慈悲になぎ倒した。
化野千尋がまるでチームメイトを倒されたかのような反応を見せるので、
デーダインは「あっ、外しちまったコレ」って様相を取り繕って、

「ハーッハッハッハ!!!杉本は滅びた…。
次は貴様だ!覚悟するが良いッ!」

腰に手を当て高笑い。

「来いッ!私を討って見せろ!!!……我が偉大……いだいー……。」

どんどん下がっていく語調。
化野千尋が両手でぽいとボールを投げる。
ぽいと。
何だろう、ドッジボールにあるまじき優しい弧を描きながら、
デーダインの手袋にぽすんと、収まった。

「化野千尋。本気か?!」

どの口が。
もとい、どの仮面の穴、及び魔術音声が言うのだろうか。

化野千尋 > 「ほ、本気ですよう!」

顔を真っ赤にして、恥ずかしいんだか怒っているんだかよくわからない表情の化野。
これでも化野は、本土での体育の評定は2であった。
関心・意欲・態度以外は認められることはなかったが、
この運動神経のなさでも評定1にはならなかったという妙なプライドがある。

「すぎもとさんの仇を、あだしのは取らなければいけないんですっ……!!」

哀れな最期を遂げた杉本さんの横たわる姿を見て、また覚悟を決める。
絶対に、自分の代わりにボコられた杉本さんのためにも、
化野千尋はこのゲームに勝利しなければならない。
ルールの設定すらしていないドッジボール(キャッチボール)のために。
絶対に勝たないといけない、倒すべき敵は目の前の丁度ラスボスチックなデーダインであると!

「ふっふっふふふ。手加減はここまでですよ。ダインせんせい。
 あだしのは、まだまだ奥の手を残しておりますからねッ……!」

精一杯の虚勢で、黒魔術師であるデーダインのボールを受け切るとッ!

「どうぞっ!!!」

――宣言したッ!!
女、化野千尋。今まで生きてきた16年間の中で一番の虚勢をドッジボールで張った。

デーダイン > 「なん…だと。
本気なのか…?!」

本気なのか、本気なのか?!
色んな意味で戦慄するデーダイン。
彼女の通信簿の評価もナットクの2であろう。
でもラジオ体操とか提出物やってたら3になりそうだけど、それは言わないお約束。

「フハハハハ、仇を取ってどうするね…?!杉本は、死んだァ!
生き返る事など、ないのだ!!」

暑苦しく、仰々しく。ぽん、ぽんとボールを宙へ投げて、取って、投げてを繰り返す。
しかしこの不審者、ノリノリである。

「クックック!喜ぶがいい、化野千尋…!!!
貴様もすぐに杉本と同じ場所に送ってやるッッ!!

貴様が奥の手を用いると、言うのであれば―――
私は、我が身に内在する暗黒の力を全てこの一撃に込めてやろうッッ!!!」

片手の手袋に包まれる黄色いボール。
言いながらコートの一番後ろのラインまで走って、とんぼ返りで戻ってくる。
そう、この暗黒教師!運動神経がない女子に対して、助走まで付けた一撃をお見舞いしようというのだ!

「行くぞ―――ッ!!!」

だんだんだんだんだんッ!!!
不審者が駆ける。どんどんコートとコートの中間線へ迫っていく―――!

「うおおおおをををををををッッッ!!!―――んぁァッ?!」

―――ここで、思い出そう。デーダインは、今日ほぼほぼ初めてドッジボールをするのである。
もとより、魔法に頼らず物理的運動は苦手なフシがある様子を周りに見せていたが―――

力を加える!力み、力んで―――力み過ぎて、こけた。
バランスを崩して前倒れになるデーダイン。でも仮面もフードも取れない。
ボールは無様に内野フライみたいにふわりんと気の抜けた上昇をするだろう。
そして、デーダインがこけている今、化野千尋にはこれ以上ない攻撃のチャンスだ!

化野千尋 > 「い、生き返ることはない……ですが!
 あだしのにはできませんっ……! すぎもとさんが、あそこで待ってるんです!
 ――あだしのを、待ってるんです!」

会話の流れと傍目の印象は驚くほど一致しない。
完全に小学生がキャッチボールをしているような状況なのに、
台詞がRPGの中盤から終盤直前に出会うラスボスとする会話みたいになっている。
化野の中では仲間である彼(息がない)を倒されたのだから、それも当然かもしれない。

「だいじょうぶです、あだしのは、絶対にすぎもとさんのためにがんばりますからね……!」

助走をつけるデーダインをしっかりと見据える。
ボールの描く軌道を絶対に見切ってやるという、強い意思を胸に。
仲間を討たれたRPGの勇者は、逃げたりなどしない。
正面から向けられる昏い力を受け止めて、その力を祓うほどの光を――……

「受け止めてさしあげましょーーーーーーーーー…………へっ?」

コートの中間点ジャストで転倒する魔王(デーダイン)!
ふわりと弧を描いて落下してくるボール! 取らねばと落下地点に滑り込む勇者(化野)!
ここで勇者、ボールを手に魔王の前に立つ!
容赦のない暗黒教師を、容赦のない天然娘の放つボールが襲う!

「……この機会を逃しはしませんよ。
 あだしのの身に宿った暗黒の力……今こそここで!
 見ていてくださいねすぎやまさん! あだしのは――……」

もはや杉本さん(的)の名前すらも間違っている。
ガバガバの状態で、化野は両手で持った黄色いボールを、彼の胴体の上に落とす――。
頭を狙ってセーフにすらしてやらないという、執念の一撃!

デーダイン > 「貴様の―――勝ちだ…。」

落下して来るボールがデーダインの背中に落ちた。
それは、確かに、当たった。
そう―――光の力を纏った勇者は暗黒の力に満ちた魔王を、打ち破ったのだ。
杉本、ないし杉山、最早名前すら安定しない彼の仇は打たれた。
悲願は、なされたのだ。

かくして、化野千尋の魔王討伐英雄譚は、喪う物もあったけれど、
ハッピーエンドにて終結する―――。
コロコロとデーダインの背中から落ちたボールが、コートの中央線を沿い転がっていく。

「しかし…悪は、闇は、私は不滅だ…。

貴様らに悪の心がある限り…私は何度でも蘇る。
貴様らにここを通らせるわけには…いかない。
例え、私が力尽きようと、第二第三の―――

ガクッ。」

転がっていくボール。地面に付く前に拾えればセーフだが、
今頃伸びていくデーダインの手袋は、手遅れにもほどがあった。
手袋の指先が黄色いボールに触れて…ついに、掴むことさえも出来なかった。
あれこれとお約束の暗黒不滅論を論じながら、デーダインは力尽きた。

化野千尋 > 「だ、ダインせんせい!」

杉本君に駆け寄ることもなく、自らの手で倒してしまったデーダインの傍に駆け寄る。
あのあの、とわたわたしつつ周りを伺う。
丁度、というところで保健委員の生徒が覗きに来ていたのに気づく。

「あのっ、あのっ! ダインせんせいがっ!」

困ったように保健委員の生徒が、「あとは任せてね」と笑い掛ける。
多分、心底困っていたのだろう保健委員は置いておいて、
化野は思い出したかのように端に置いていた鞄の中の端末で時間を確認する。

「ダインせんせいっ、あだしのっ、」

嗚咽を漏らすように。切実な声と共にひとつの言葉が落とされる。

「履修登録っ、しておきますねっ……!」

化野は、倒れたデーダインを背に、また新たな戦いへと向かっていった。

ご案内:「演習施設」から化野千尋さんが去りました。
デーダイン > 「ああ…いってらっしゃい。」

立ち去っていく化野千尋に、
今、現世に降臨したデーダインセカンドが親指をグッ立てする。
何だかイロイロ誤解を生んでしまったのだが、
保健委員が良い感じに、この暗黒不審者デーダインを何処かへ連れて行ってくれたそうな。

魔王デーダインは討伐された。
しかし、悪は不滅なのだ。
後日、ピンピンした様子でいつもながら暑苦しい変態授業をしている事だろう。

ご案内:「演習施設」からデーダインさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に東雲七生さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に阿曇留以さんが現れました。
東雲七生 > 「さてと、今日はどうしようか。」

とりあえず弱点である水への抵抗力をつける訓練は何日も続けて出来ないので今日は普通の格好で普通の訓練スペースを歩いている。
上手い事参考にできそう、あるいは手合わせくらい出来そうな人はいないだろうかと、時折部屋を覗き込みながら廊下をうろついていた。

先日のシングと名乗る後輩の魔術師との模擬戦から、対人戦への慣れも大事だと考えていた。

「……出来ればあんまりお互いの手の内を知らない人が良いな。」

阿曇留以 > 絶賛前屈中。
体は柔らかいようで、脂肪の塊が潰れながらぐにゃりと体を曲げている留以。
今日も今日とてダイエットなのか、準備運動を行なっており、体がいろんな方向へ揺れたり揺らしたり。

「いっちにー、さんし~。
よいしょ~、さんし~」

そんな軽い声が聞こえてくる。

東雲七生 > なかなか眼鏡にかなう利用者が居ない。
というか、そもそも利用者がそんなに居ない。

もっぱら肉体鍛錬系の機具やらの方に人は集まっており、
異能や魔術の実践形式をするなら演習施設に人は流れているのだろうか。
そんな風に考えていたが、実のところ単なる時間帯の問題である。

「うーん、こりゃ俺もグランドの方に行くべき……ん?」

ようやく人影を見つけた。
入念なストレッチをしている姿は、既に何度か見かけた人物だった。
ただ、顔を知っているのと得物が大太刀であること、人外との戦闘経験があることくらいしか知らない。名前も学年も知らないのだ。

(丁度良い、っちゃ丁度良いか……。)

阿曇留以 > 「ん~っ、ふぅ」

体を大きく反らし、その大きさをアピールし。

「よし、それじゃあ始めようかしら。
えーと、設定はっと……」

置いていた大太刀を拾い、いったん訓練場の外にでてコンソールをいじろうとコンソールとにらめっこをする。
機械に弱い、というわけではないにしても、こういうちょっと難しい機械は苦手のようで、毎回困った顔をしてコンソールを弄っていたりする。

東雲七生 > ──大きい。
いや、以前広場でお祭りが催された時にも思った事だが。
あの時と違って今回はさほど露出のある服装では無い。それなのに──

(いやいやいや、そうじゃなくて。)

ぶんぶんと首を振って邪念を頭から追い出すと、何やら複雑そうな顔でコンソールを見つめる姿に声を掛ける。

「こんちはっ……えっと、こないだ校舎で追いかけられてた人だよね?」

一度心を静めてから声を掛ける。
流れが出来てしまえば、普段通り、歳不相応に幼さの残る笑みを浮かべて。

阿曇留以 > 「ん~……ん?」

コンソールとにらめっこをしていたところに後ろから声をかけられれば、そちらに振り返る。
赤い髪の毛。
慎重派それほど変わらず、しかし目の前の少年はどう見ても年下で、年齢も中学生程度に見える。
校舎で追いかけられていた人、といわれれば、ああっ、と思い出して。

「あっ、あのときの……。
え~と、あの時はごめんなさいね。
あんなことに巻き込んじゃって……」

ごめんなさい、と頭を下げて謝る。

東雲七生 > 「ははっ、いいよいいよ、気にしないで。
 俺も俺で、あの日は良い経験させて貰ったからさ。」

実はその後も会ってるのだが、その時は素性を隠していたためノーカウントという事にしたい。
というか、七生自身あんまり思い出したくない。

「それで、何してるの?部屋の設定で何か悩み事?」

一度コンソールに視線を一瞥を向けてから、阿曇の顔を覗き込む様にして首を傾げる。

阿曇留以 > 「そう……?
そういってくれると助かるわ~。
アレはちょっと大事になったから……。
あ、ちょっと模擬戦闘の準備中なのよ~。
先生方にちょっとお願いして、模擬戦闘を行なえるようにしてもらったのだけれど……こういう機械はあんまり得意じゃなくて~」

苦笑しながらコンソールをみせる。
なにかの設定画面らしく、魔力強度だとか記憶固定だとか、項目がいろいろあったりする。

東雲七生 > 「模擬戦闘。」

そりゃ都合がいいや、と笑みを深める。
当時と今と、口ぶりからしてあの手の相手に立ち回るのはそれなりに経験があるらしい。
だとしたら、その腕の方にも多少興味がある。

「そういう事なら、俺と手合わせしてよ。
 一戦付き合ってくれたら、設定のコツ教えるからさ。」

ぴ、と指を立てて提案する。
施設の設定回りなら散々利用しているからそらでも出来る程だ。
とはいえ、こんなものは覚えてしまったもん勝ちなのだが。

阿曇留以 > 「手合わせ」

言葉を復唱する。
一瞬、大丈夫だろうかと不安になるものの、あの校舎の一件で生き残っているのだから平気だろうと思いなおす。
いや、死ぬほどのものではなかった……と思いたいが。

「そうね~、じゃあ一戦だけお付き合いお願いしようかしら~。
えーと、模擬戦だから大太刀は……鞘に入ったままなら大丈夫かしら?」

鞘を抜いてしまえば普通に切れてしまう。
勿論,不死身とかきにすることはないのかもしれないが、あんまり斬りたくは無いという感覚もある。

東雲七生 > 「うーん、まあ、そうだね。
 お互いに怪我はしたくないだろうし、刀は抜かない方が良いのかも。」

何なら模擬専用の武器を持ってこようか、と訊ねながら大きく肩を回す。
対人戦。前回は主に飛び道具(魔術)を使う相手だったから、白兵戦は初めてに近い。
少しばかり胸が高鳴るのを覚えつつ、軽く一礼して部屋の中へと入っていく。

「試合終了の判定はどうしようか。
 ……時間制で良いかな、別に勝っても負けても関係無いし。
 あとは実戦だったらこれ死ぬ!ってのを一発貰ったら正直にギブするって事で。」

どう?と振り返り首を傾げる。
どうにも場馴れした風に話すが、その姿はやはり幼く見えるだろう。

阿曇留以 > おそらくは、知り合いの男の子と同じぐらいの年齢だろうか。
勿論、子供といっても気は抜かないし、真面目に戦うが。

「はぁい、そのルールで問題ないわ~。
武器はちゃんと鞘に固定しておくから大丈夫よ~」

細い金具でなにやらかちゃかちゃと鞘と鍔をいじっている。
どうやた固定をしているらしく、何度か素振りをしてすっぽぬけないのを確認すると、留以も同じくフィールドに入る。

「それじゃあ、合図をお願いしてもいいかしら~」

大太刀を軽く持ち上げて、右肩に乗せる。
準備万端のようだ。

東雲七生 > 「おっけー……じゃあ、ええと。
 5分くらいで良いかな……と、よし」

腕時計をぽちぽち操作して5分のタイマーをセットする。
そして腕からはずし、なるべく巻き込まないよう部屋の隅へと放って。

「じゃ、あれが落ちたら開始で。
 よーし、宜しくお願いしまーす、っと。」

ぺこり、と一礼してから身構える。
軽く拳を握り、半身の態で胸の前で構え、呼吸を整える。
あどけない表情が一変、真紅の双眸が尖れた刃物の様に鋭く光って。

──そして時計は落ちた。

阿曇留以 > 時計がフィールドにおちた。

「――」

……が、留以は動かない。
右肩に大太刀を乗せ、左足を一歩踏み出して構えたまま、動かない。
元々、阿曇の戦い方は対人戦を想定していない。
相手が妖怪なら自ら斬り込みに行くことが多いが、こと対人戦に関しては知識不足。
ゆえに、今取っている構えは留以が図書館の本で知った構えの一つでしかない。
付け焼き刃の構えを、少年に向けている。

東雲七生 > (………?)

開始の合図はあった。
しかし相手は動いてこない。
そこから考えるに、カウンタータイプの戦闘を主とするか、
そもそも対人戦自体に不慣れであるか。

(──どちらにしろ、戦い自体が慣れてない訳では無さそうだけど。)

夜の校舎で遭遇した時の事を思い出す。
あの黒い異形たちを相手にしていたのは事実、そして女子の腕には不釣り合いな大太刀も携えていた。
それは今も変わらず、模擬戦の場に於いても手にしていることから戦闘そのものに抵抗がある訳では無い、と考える。

(ま、仕掛けてみれば分かる──か)

ふぅ、と小さく息を吐いて、一瞬だけ七生の体から戦意が消える。
が、次の瞬間爆発にも近い勢いで間合いを詰めると、裂帛の気合と共に敢えて防ぎやすいよう掌底を突き出した。

阿曇留以 > 「――っ!」

まるで――そう、少年がふっとばされてこっちにきたかのような、そんな速さ。
もちろん違うだろうし、一気に間合いを詰められて繰り出された掌底からも伺える。

「ん、ぅっ!」

体を屈め、構えていた腕を盾にするようにして掌底を防ぐ。
筋肉の量は少なく、荒事にむいてなさそうな柔らかい腕に掌底の力が響いて苦痛に顔をゆがめる。
が、それで動きは止まることなく。

「はぁああっ!」

大太刀のリーチを完全に生かせなくはなったが、それでも腕を小さく振るって少年の肩から腰まで斬る様に、袈裟斬りをする。

東雲七生 > 小柄な体と人並み外れた脚力を最大限に用いた突撃。
それは七生の最も利用する攻撃であり、それはつまりこの少年にとって初歩の初歩の攻撃という事でもある。

「──ふ……ッ!」

突撃の勢いをそのまま載せた掌底が入れば、しっかりと両脚で地を踏みしめて相手の動きを見据える。
視線は主に二点、刀の柄頭と、柄を握る阿曇の腕その肘。
それらを注視していれば、自然と次の『刀の動き』は読み取れる。

(──来るッ!)

阿曇の反撃に併せて軽く地を蹴る。
先の様な爆発的な跳躍では無く、僅かに身体を浮かせる程度。
そのまま体の重心をズラして、最小限の動きで袈裟懸けの軌道から身体を逸らす。
長物の一撃なんて貰ってしまえば、それこそ致命傷だろう。まだギブアップするには早すぎる。

「──疾……ッ!」

次の掌底を打ち込もうと構えたのをそのままに、僅か動きを止めて急遽大きく後方へと跳んで距離を取った。

阿曇留以 > ぶんっ、と空気を切る音。
鞘が地面をこすり、ガリガリと音を立てる。
大きく後ろに跳んだ彼を見て、しかし其れは逆効果。
刀の動きを止めずに留以の左脇腹までもってくると、左手で鞘をもって駆け出す。

一歩目踏み出し身を屈め。
二歩目踏みしめ右手添え。
三歩目踏み抜き居合構え。

「瞬閃・海神――!」

左手から大太刀するりと抜け、勢いの乗った居合い抜きが、鞘ごと振られる。

東雲七生 > 「……危なかった。」

最初の掌底、勢いが載っていたとはいえ予想以上の手ごたえがあった。
幾ら長物を振るっているからとはいえ、どうやら阿曇の身体は自分の様に鍛えられているのではないと予想する。
普段の戦闘には、太刀による剣技と、きっと他にも何かあるのだろう。
そして何より──

(胸に……手、当たるとこだった……ッ!)

主にその懸念が七生が途中で掌底を止めた最大の理由だった。
どうにも徒手空拳のみじゃ分が悪い、万が一変な所に触れてしまっては気まずいというのもある。
だったらこちらも何か武器を──

「……っとぉ!?」

などと考えている間に相手に間合いを詰められ、居合抜きを放たれる。
慌てて跳びあがろうとするのを辛うじて踏み止まり、自分の身体を低く低く、上体が地面に着かんばかりに屈めてそれを躱す。
そして懐から真っ赤なテレカ程の大きさのカードを取り出すと、小さく息を吐く。

(イメージ……えっと、小刀!)

七生のイメージを反映し、半端な造形の小刀がカードから姿を変える。
強度も切れ味も鈍らに劣るそれを、逆手で持って切り上げた。

阿曇留以 > 【中の人が時間切れのため、一時中断。続きは後日。】
ご案内:「訓練施設」から阿曇留以さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から東雲七生さんが去りました。