2016/10/02 のログ
東雲七生 > 距離を取れば爆発で精神を削られ、その隙を突かれて増幅のかかった打撃が打ち込まれる。
一連の流れは理解して、それに対抗するなら一番良い手は打撃を躱してカウンターを入れる事だろうが、
爆発によって受けた疲労感がどうしても回避を鈍らせる。

(──なるほど、実に面倒臭い。)

無意識に口の端が釣り上がる。
こんな戦い方は転移荒野の、力でねじ伏せる様な野生生物との戦いではまずお目に掛かれないだろう。

(確実に反撃を入れるには──)

一つ思いついた手はある。
それを実行に移すか、と決意したところで再度爆発が起こった。

阿曇留以 > 爆発が起こると再度走り出す。
今度は両手と両肘にお札を張り付かせる。
起爆に打撃と、潤沢に御札を使っていくためにこの攻撃方法は御札が大量にあるときでしか使えないが、有効な戦い方でもある。

が、こんな戦い方が通じるのはそれこそ妖怪だけ。
彼は人間で、頭の回転、もしくは直感もよいためにこの戦い方も既に見破られているか、何かしら考えている頃だろう。
それでも、再度この戦い方を続けるのは――

(模擬戦、だからよねぇ~)

自分の戦い方の弱点を理解でき、対処されたとき。
瞬時に代わりの戦い方を用意できるか。
そのために、こうやって様々な戦い方をおこなっている。
彼の胸を借りているわけだ。

「もう一打、いくわよ~」

東雲の懐まで近づくと、今度は右手で腹を、左手で胸を狙い衝撃を起こそうとする。

東雲七生 > 爆発が起こり、更に自分の中の疲労が増した気がする。
手足も重く、動き出すのも億劫だが頭は割と普通に働くのが幸いか。

(この気怠さが一番の問題だな……)

すぅ、と呼吸を整える。
手にした小刀の柄を強く強く握り締めて、強く思い描く。
この状況に於いて確実な一手、それを実行し得るだけの自分自身──

───

阿曇の打撃が、七生の身体に触れるか触れないかの刹那、打撃の軌道上から小柄な体が消える。
と言ってもただ体の軸をずらし、相手の手を、動きを見切って躱しただけなのだが。
それが疲労に精神を蝕まれている人間がやったとは思えない精確さで行われた為、消えたように感じるだろう。

同時に七生の呼吸や視線および体の動き、果ては心臓の鼓動に至るまでが最小限に、あるかないか、くらいの域にまで落とされていた。
有体に言えば一瞬のうちに七生は影が薄い人物へと相成ったのである。

そして阿曇の攻撃を躱した体捌きのまま、巫女装束の袖と、袴とをそれぞれ手で掴み、
合気道よろしく阿曇の攻撃の勢いをそのまま投げの勢いに持ち込もうと試みる。

阿曇留以 > ふ、と東雲の体が消える。
一瞬目の前から彼の姿が消え、見失う。
魔術で消えたのか。何らかの異能で移動したか。
その一瞬のうちに何通りかの可能性を考えながら目を動かして姿を探し。

「――あらっ?」

次の瞬間には体に浮遊感が生まれ留以の体が地面に転がる。
なにをされたかいまいち理解できず、ただし自分が地面に転がっているのは理解でき。
慌てて押さえ込まれる前に起き上がろうともがく。

東雲七生 > 異能も、魔術も使わず。
ほんのわずかな瞬間、東雲七生は阿曇留以の意識から消えていた。

疲れて動きが鈍るなら、その『疲れ』を殺せば良い。
七生が行ったのは疲れを感じてしまう精神そのものを一時的に自分の中から消し去る事だった。
もちろん常人がそんな事を長い間行っている事などできず、すぐに希薄になっていた七生の存在感が戻る。

「わっ、とと、てっ。」

我に返ってすぐ、押さえ込むという発想には至らなかったものの、地面に相手が横たわっていたのは好機。
とにかく相手の動きを制して首筋に小刀の刃を添えさえすれば一応は自分の勝ちになるだろう。

そう考えて、咄嗟に七生が行ったのは。
起き上がろうとする阿曇の巫女装束、その袖を強く踏みつけることだった。
一瞬でも動きが止まれば勝てる、と。

阿曇留以 > だんっ、と地面を大きく叩く音。
それが自分の袖を強く踏みつけられたと気付く。
当然、彼がまだ子供といっても男性の力強さにはかなわない。
後はこのまま小刀を首にでも顔面にでも向けられれば、そこで試合終了だ。
そうなる前に、最後の足掻きかもしれないが。

「こ、のぉ……っ!
――悪鬼、退散っ!!」

最後に、残っている全ての御札を自分を巻き込んで爆発を起こす。
残っている御札は十枚程度。
十分な出力を得て、訓練場に大規模な爆発を起こす。
これだけの出力を持って爆発を起こせば力も緩んで逃げられるだろう。

彼が疲れを殺せる、という点を考慮せず。

東雲七生 > 「よしっ、貰った──」

勝った!心からそう思っていた。
だから少しだけ隙が出来ていた。

「──って、おいおい嘘だろ流石にそれは──ッ!?」

そんな事したら阿曇自身の身も危ないのでは。
そう思う暇も無く間近での爆発に巻き込まれる。
精神ダメージや物理ダメージ関係無く、爆発の勢いに面食らって踏みつけの力は確かに緩んだ。

阿曇留以 > 当然、なんの抵抗も出来ずに自爆すれば自分もダメージがひどい。
もうこのまま眠ってしまいそうなほど疲れを感じ、ダルさで体を動かすのが億劫になっている。

(こ、こんなに辛いのね……。
ちょっと、やばいかも……)

くらくらする意識、それでもなんとか力をこめて足から袖を引っこ抜く。
袖を抜く際にこけてくれれば僥倖、そのまま上に乗って押さえ込もうとする。
こけなければ、ごろごろと地面を転がって、ふらつきながら立ち上がるだろう。

東雲七生 > 「うわっ、ちょ……!?」

突然足元が動けばバランスを崩し、文字通りの自爆技で疲労を積まされた七生は面白いくらいにすっころぶ。
元から自分を追い込むような無茶な鍛錬を重ねていたからか、今すぐ眠ってしまいたい訳では無い。
ではないが、あらゆる体の感覚が鈍っているのは否めない。

「くっ……も、もう一回、……」

もう一度だけ心を、精神を殺して逆転を測ろうとするが、
そう易々と扱えるものでは無い。そもそもその域に入るだけの集中力が無い。
そうして悪戦苦闘の中、意識も朦朧としている阿曇の影が自分に重なる。

「ひぃっ!?」

思わず悲鳴を上げるほどには鬼気迫る物を阿曇から感じていた。

阿曇留以 > 例えるなら徹夜3日目ぐらいのサラリーマンのような目だろうか。
疲れから眠さにまけそうで、しかし眠ってはいけない。ランナーズハイになるにもまだ振りきれてない。そんな状態。
のしり、と彼のお腹に跨り彼の顔を挟むように、両手で地面を叩く。

「――降参、してくれないかしら」

眠気がマッハからか、不機嫌な顔で問い詰める。
女性特有の、謎の威圧感をもって、問い詰める。

東雲七生 > 「ひっ……」

元来、七生は異性に免疫が無い。
ここ一年ほど居候生活を送って多少の慣れは付いて来たかとも思ったが、どうやらそれは居候先の相手に限定されているらしい。
そんな彼が自分の上に女性を乗せるなど、耐えられる筈も無いのだが。

「──い、やだ……って、言ったら?」

眠気は吹き飛んで、気怠さの中に恥ずかしさと困惑が渦巻きながらも辛うじて負けず嫌いな性根が言葉を紡ぐ。
威圧的な表情から逃れようと視線を下げるも、そうすれば今度は表情とはまた別の、女性特有の大きな威圧があって。

阿曇留以 > (眠い。眠い……。ねむ……)

今にも倒れそうな眠さで脳みその八割が思考停止している。
今起きていられるのは身体を動かし、眠らないために気をつけているため。
そして、彼が嫌だといった瞬間、更に強く彼をにらみつける。

「――降参、して」

眠気覚ましに更に強く地面を叩き、自分に痛みを与えることでなんとか目を覚ましている。
先ほどから彼を恐喝しているが、それは留以に直接的な攻撃手段がないためだ。
太刀も、お札も手元には無く、実はこれ以上戦える状況でもない。
故に恐喝して、降参を狙っていた。

東雲七生 > 耳元で大きな音が鳴る度にビクッと七生の肩が跳ねる。
疲れた頭で現状を認識すれば、「巫女さんに組み敷かれて迫られている」となったのでみるみる内に顔が赤らんで。

「わ、解った解った。降参、するから!降参!」

退いてー、と心で泣きながら降参を宣言する。
どのみち時間ももうすぐ切れるだろう、と思った矢先にタイマーのアラームが鳴り始めた。

阿曇留以 > 「――そう、よかった……」

降参。
その一言が聞こえれば、普段の優しい笑顔に戻る。
ゆっくりと転がるように彼の上から退いてぺたりと座り込む。
同時にアラームもなり始めたところで。

「おつかれさま~、どこも、怪我してないかしらぁ~……?」

ふわふわと夢心地な顔で問う。

東雲七生 > 「はぁ───」

阿曇が上から退けば、安堵したように息を吐く。
ゆらゆらと眠気が立ち上って来るが、それを何とか押さえつけて身を起こして。

「怪我は、一応。
 ……そっちこそ、大丈夫?派手に爆発させてたけど。
 それに、結構思いきり服ふんじゃって、ごめん。」

何処か破けたりしてないかな、と心配そうに見回す。

阿曇留以 > 特に服は破れていないものの、最後の投げ飛ばしで服が若干乱れており、鎖骨から谷間までが見えている。
とはいえ、先日のディアンドルと比べれば露出はかなり少ないが。

「えぇ~、こっちは大丈夫よ~。
ただ……自爆で、眠くて、ちょっとあぶないけれどぉ……」

うと、うと、と頭を揺らしながら答える。
御札の起爆がこれほどまでに疲れを呼ぶとはしらず、ある意味良い結果だった。

「今日は、模擬戦に付き合ってくれて、ありがとうね~。
ほんとうに、沢山よくわかって助かったわ~」

東雲七生 > ──どうやら衣服は無事らしい。
それが分かればすぐさま目を逸らした。
豊かな谷間に目を奪われそうになって、ぺしぺし、と自分の頬を叩く。

「そ、そう。
 ……それにしても、一体あんな御札を使って戦う相手って何なのさ。」

はふぅ、と欠伸を噛み殺してからコンソールのある方へと目を向ける。
そういえば設定関係の事を教える約束だった筈だ。
しかし、お互いこうも疲弊していては碌に教えられないし、碌に覚えられないだろう。

「こちらこそ、面白い物を体感できてよかったよ。
 で、部屋の設定のことだけど……正直その状態じゃ聞いても覚えられなさそうだよね。」

阿曇留以 > ぺしぺし、と頬を叩いている彼をみて首をかしげ。
自分の姿を良く分かっていないのか、気にしていないのかは不明。

「えぇと、備えあれば~程度のものだけれどぉ。
以前の学校の騒動があったでしょ~?
あれからある程度の量は持ち歩くようにしてるのよ~。
これだけあればあのぐらいのは一気に殲滅できるから~」

うふふ、と笑いながらうっとんうっとん。

「そうねぇ……ちょっと……むり、かも~。
もう、このまま寝ちゃいそうだしぃ……。
貴方の、お名前だけ先に聞いてもいいかしら~?」

東雲七生 > この人は異性の目とかは気にしないのだろうか。
それとも見せたがり?前のお祭りの時もわざわざあんな格好してたし……と悶々と考えこむ。
阿曇がうとうとするたびに緩やかに乱れが広がりそうな事に気が気じゃない。

「な、なるほど。
 物理で足りない分は特殊攻撃でカバーか。」

殲滅できると聞けば、流石にそれは凄いと目を瞠る。
以前に夜の校舎で遭遇した異形の存在。あれらを相手取るには特殊な装備が必要なのも頷けた。

「流石にここで寝たらまずいって。
 えっと、俺、東雲七生。2年生。
 ……せめて外のベンチまで送ってくからさ、ほら、立てる?」

問われれば素直に名乗って。
ついでに恐る恐る近づいて、阿曇に手を差し伸べよう。

阿曇留以 > 「そうそう~、特殊攻撃でカバーでね~……」

ふんふん、すやすや。
もはや思考も死んでおり、繰り返して頷くしかないらしい。

「東雲くんね~、私は一年の阿曇留以っていうの~。
また、こんどもよろしくね~?」

なにがまた今度もなのかはわからないが。
差し伸べられた手をとり、ものすごーくゆっくりな動きで立ち上がる。

東雲七生 > なるほど、そもそも他人の目を意識出来ないほど眠いのか。
そう結論に至れば、先程の鬼気迫る様な脅迫と併せて面白い人だなあと思う。
──目のやり場に困らなければの話だが。

「阿曇さん……って、一年?
 精々同級生かと思ってたのに……!

 え、えっと。今度?
 よく分かんないけど、また手合わせして貰えれば嬉しいな、うん。」

特殊な戦法は何度でも戦って身体に憶えさせたいところだ。
今後、似たような手を使う生物が転移荒野に流れて来ないとも限らない。

「じゃ、行くよ。阿曇……さん……?」

またしても増えた年上(に見える)の後輩の扱いに心底困る七生である。

阿曇留以 > 「ふふっ、留以でも阿曇でも、呼び捨てにしてくれればいいわ~。
はぁ~い、おねがいしま~――」

す、がいえなかった。
留以視点でいえば、一瞬のうちに世界が闇に飲まれ、体の感覚がなくなった。
第三者始点で言えば、留以が急にこけるかのように倒れた。
そして神的視線でいえば――留以は寝始めた。

すぅ、すぅ、と聞こえてくる寝息。
ベンチまでたどり着けずに眠る巫女だった。

東雲七生 > 「う、ええっと、流石に呼び捨てなら苗字?
 ともかくっ!……ほら、早いとこ行こ──」

手を引いてそのまま歩き出そうとし、突然阿曇の体が傾ぐ。
反射的に支えようとするが、ただふら付いたのではなく完全に彼女の意識が離れたのを確認する頃には──

(……ど、どないせえっちゅーん!?)

寝息を立てる阿曇の身体を真正面から支えていた。
両肩を押さえてギリギリ踏み止まるが、七生も疲労困憊、正直立っているのもつらいのだ。

阿曇留以 > 後は宜しくとでもいうように、すやすや眠っている駄巫女。
60kg程度の塊がのしかかっているのだ。
それはもう、大変だろう。

「んん……」

すやぁ。

東雲七生 > 「う、嘘!?このタイミングで寝る普通!?
 おぉい、阿曇!起きろ、起きて!お願いだから!」

懸命に支えながら声を掛ける。
先程の爆発の爆心地に居た彼女が果たしてどれだけの疲労を背負ったか。
それは十分に分かるし、無理はして欲しくないとも思う。
それでも、それでもだ。流石に近くのベンチまでは頑張ってほしい。

「あとちょっと、ちょっとだから!阿曇ー!」

ゆさゆさと肩を揺すって引き続き声を掛ける。

阿曇留以 > 「――ふぁっ」

びくん、と跳ねてから眠たそうな顔で目を覚ます。
中途半端に眠ったときにびくんってなる現象を起こしつつ。

「あら……ちょっと眠ってたかしら~……。
ごめんなさいね~……ふぁっ」

肩を借りて、ひょこっと足に力を入れて立つ。
やっぱりまだ眠そうであはある。

東雲七生 > 「起きた?……良かったぁ。」

半ば泣きそうになりつつも、目を覚ました事に安堵する。
寝るなよ、寝たら(支えきれなくなって自分が)死ぬぞ、と物騒な事を言いながら肩を貸して部屋の外へ。
七生だって眠くて疲れてどうしようもないのに、何とか耐え凌いでいるのだ。

(てか、柔から……っ!)

身体に当たるモノに気が気じゃないのもあるが。

「はぁ、はぁ……よし、ここまでくれば……
 誰の邪魔にも、ならないだろ……。」

施設の廊下、そこに据えられたベンチまで阿曇を誘導してくると、
ここなら大丈夫、と促した。

阿曇留以 > うん、うんと頷きながら介護されるように歩き。
年上なのに介護されて歩く姿は、とても年上とはおもえないかもしれない。

「んぅ……ありがとう、東雲くん~。
わたし、ちょっともう限界だからここで一休みしていくわねぇ……」

どこからかスマートフォンを取り出してアラームをセットすると、もうだめだ、我慢できない、といったかんじですやり、と夢の中へいってしまう。

東雲七生 > 「はいはい、おやすみ……。
 てか、俺も割と………限界で。」

阿曇が夢の世界へ旅立ったのを見届けると、その傍らで壁に寄りかかり。
そのままずるずると壁伝いに床へと腰を下ろして。

「はふぁ……ん、む。」

欠伸を溢した後、そのまま糸が切れた様に眠りに落ちた。

阿曇留以 > すや、すや、と二人そろって寝る。

数時間後、アラームの音で起きるのはどちらが先だろうか。
すくなくとも留以は、なかなかおきずにいるだろう。

ご案内:「訓練施設」から阿曇留以さんが去りました。
東雲七生 > きっとアラームと同時に起きるのは七生だろう。
そしてどうにかこうにか、再び阿曇に起きて貰うために悪戦苦闘するのだ。

けどまあ、それはまた別の話──

ご案内:「訓練施設」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に滝川 浩一さんが現れました。
滝川 浩一 > 無機質な訓練施設の一室。
一人の男性が息を荒くしながら何かと対峙していた。

「はぁっ…っはぁ…!」

目の前に居るのはロボット。
入院する前に一度だけ、この場で訓練相手として矛を交えた相手であった。
得物は前回と同じようにトンファーのような物を持っており、構えを取りこちらの様子を伺っている。

「ふぅ~…よし」

軽く深呼吸をして息を整える。
こちらの武器も前回同様、こちらも両手に剣を手にして相手の挙動を観察する。
そのまま数秒の見合いが続く。

滝川 浩一 > 次の瞬間、ロボットが足を踏み込んで途轍もないスピードで突っ込んでくる。
男性も剣を構え、高速で突っ込んでくるロボットの迎撃を試みる。

「―――――ッ!」

決着がついた。一瞬の出来事だった。
ロボットを切断し、それが空間を舞い、ガチャンと音を立て地面に激突する。
身体の方は首を斬られ文字通り人形のように地面へと崩れた。

「はぁ~~…あっぶねぇ~~~」

その様子を見て、固い表情から安堵の表情へと変わり、地面に尻餅を突く。
高速で突っ込んでくるロボットの攻撃を避け、カウンターで首を一斬りするなんてできるとは思わなかった。
死ぬ気とは違うけど必死にやろうと思えばできるものだ。

剣を消し、座ったままロボットを見る。
今思ったのだが、これ…壊してよかったのだろうか?

滝川 浩一 > 顔を青ざめさせる。
このロボット、見たところとても高価に思える。
恐らく一体100万とか…いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。

ロボットが格納されていた壁のハッチを開けて格納庫にロボットの体と頭を押し込み、ハッチを閉める。
そのハッチにもたれかかり、ふぅ~っと深いため息をつく。

「全く…戦闘より疲れる…」

戦闘、体を動かすことよりも今の一連の動作の方が疲れ、冷や汗を流す。
とりあえず出た汗を拭こうと壁の隅にある自分の荷物のところへ行く。

「マジで疲れた。今日は勉強やめておこう…うん。」

そう言いつつ、タオルを取り出して自身の体を拭いていく。
ジャージのチャックを開け、下に着ているTシャツを半分脱ぎながら体を拭いていると
『それ』に気付いた。

ご案内:「訓練施設」に軍服の男さんが現れました。
滝川 浩一 > 以前、黒い塊により開けられた身体の孔。
その治った脇腹の傷跡に黒い痣が出来ていた。
戦闘中に打ったのだろうか。あまりよく覚えてない。

「…………まぁ、いいか!」

気になり、その痣をジーッと凝視していたが只の痣だろうと考え、気にしないことにする。
別に肉が抉れたわけでもまた風穴が開いたわけでもない。自然に治るだろうと考え、汗を拭いていく。
一通り汗を拭けば、タオルを仕舞ってリュックサックを背負う。

軍服の男 > ドーム状の訓練施設。
その中で一人、生徒達の動きを観察してた者が一人。
軍服という服装で、此処に居る時点でおかしな話だが、どうやら腕に腕章を付けてるようだ。

それは客を示す腕章。
学園などに視察などで訪れる親御さん方に渡されるモノだろう。

うーむ、と唸りながら生徒達を観察しつつ、一人の生徒に目を付けた様子。
リュックサックを背負うのを見れば、ふらっと近寄り始め、声を掛けた。

「やぁ、君はこの学園の生徒でいいんだよね?」

滝川 浩一 > 後ろから掛けられた声に気付き、ビクッと体を反応させるとゆっくりと振り返る。
目に入ったのは軍服。その次に軍帽に左胸の記章、そして腕章が目に入る。
自分よりも高身長のその男性に気圧される。

(やばい、見られてた!?)

目が泳ぎ、冷や汗が一気に出てくる。
腕章を見れば風紀委員でもなければこの訓練施設の管理者でもないという事は判るが
如何せん何を言われるか不安であった。

とりあえず、所属を聞かれたからには答えないといけない。
冷や汗を掻き続けながら、何とか返答をする。

「あ、はい。ここ、この学校で2年生をやってお、おります!…えーっと、貴方は?」

目を泳がせながら、そう所属を告げる。
しかし、普通にしようという緊張のあまり、明らかにどもってしまう。

軍服の男 > 「なるほど、二年生か。私は――この学園に少し用事があってね、それで来ただけの客人だよ。たまたまこの施設が目に止まって、暫く観察をしてただけ、それだけだよ」

淡々と説明をしていき、自分自身は用事があり来ただけだと説明をする。
近くもなく遠くもない距離を保ちながら、目の前の彼に続けて問いを投げかけて。

「――名前を聞いてもいいかな、私から言う必要があるなら先に言うよ?」

滝川 浩一 > 「あ、あぁ…そうなんですか」

ただのの客人、観察してただけという単語に少しばかり安堵する。
どうやら目の前の男性は自分の先ほどの行いについて攻めるつもりではないようだ。

なら安心と言った風に顔色が戻っていき、冷や汗が止まる。
独特な雰囲気の目の前の彼に名前を問われ、口を開く。

「あぁ、滝川浩一です。…その、差し支えなければ貴方のお名前と…その用事とやらを教えて欲しいのですが」

その様に軽く自己紹介し、相手の事について問いを投げかける。
軍属がこの島に来るなんて珍し…ん?いや、そもそも軍属なのだろうか?

軍服の男 > 「浩一君か、良い名前だね」

ニッコリと笑顔を見せた。それでも目は全くと笑わず。
続けて自らの名前を、軍帽を取り軽い会釈を見せながら口に出した。

「私の名前は、バロム。バロム・ベルフォーゼ・シイン。少し前はこの学園で教師をしていたよ。用事は残念ながら言えないかな、すまないね」

今度は微笑みを見せて軍帽を再び被り、彼に対しての自己紹介を終える。
彼の目は未だに笑いを見せないままに。

滝川 浩一 > (……?)

ニッコリ笑顔の彼だが目が笑ってないことに気付き、眉を顰める。
少年もそれなりに対人関係を積んでいるので相手が今何を思っているのかは少しばかりわかる。
何だろうこの男性は。少し不気味だ。

「ど、どうもバロムさん。少し前まで教師を…なるほど。色々事情がおありのようで、伺って申し訳ございません」

彼の次の言葉が来ると動揺しつつもそのように返す。
軍帽とその下にある顔を見て少し不審がるが、こちらも微笑みで返す。
しかしその微笑みもどことなくぎこちない。

軍服の男 > 「なに、気にすることはないよ。謝ることもない。それよりもだが、浩一君は先まで訓練用の機械と戦ってたみたいだが――」

彼の視線は格納庫に仕舞われた機械の場所に移り変わり、質問をまた一つ。

「戦いが好きなのかな?」

緋色の瞳の視線が浩一へと戻される。
ぎこちない微笑みを察してか、今度はきちんとした笑みを見せながらに。
『癖』とは言え、此処は学園。
あまり学生に疑われてしまっては困る、そう困るからだ。

滝川 浩一 > 訓練用に機械と戦っていた。
その言葉と格納庫に向けられる視線にビクッと体が反応し、冷や汗が出てくる。
少し体が震え出すと目の前の男性が口を開く。

「……た、戦いが好き?いやそういう訳じゃないですけど…」

彼が壊れたロボットについて言及せず、一瞬唖然とする。
しかし直ぐに我に返り、タジタジながらもそのように返す。

「何というか、もしもの時に備えて戦いの技術を磨いてるだけで、自分自身戦いが好きなわけじゃありませんよ?」

きちんとした笑みを浮かべる彼に安心してこちらも笑顔を作り出す。
緋色の綺麗な瞳を持つ彼にそのように説明する。

軍服の男 > 「なるほど、その考えは大事だね。浩一君の言うもしものときに備えて戦闘技術を学ぶのは大事だ」

実際、この学園に所属しているのであれば、戦闘に関してある程度の自信を持ってたほうが何かと便利だ。

「何かしらに襲われた時や、大切な人を守る時になど、力もそうだが戦闘技術を備えてれば解決することが多い」

「私はわざわざ此処に来て、訓練するほどだから戦いが好きなのかなと思ってしまってな、だがそれは勘違いだったようだ」

申し訳ない、と静かな謝罪を送った。

滝川 浩一 > 「ですよね。まだ付け焼刃の我流ですが…まぁ、何とか学んでますよ」

彼の言葉を聞き、少し顔の緊張が取れそう返す。
何はともあれ同意されたのは嬉しい。

「えぇ…何かしらに襲われた時ですね…」

視線を逸らし、そう告げる。
その声は何処となく震え、動揺したように体を揺さぶる。
襲われた、というより自分の場合は襲ったのだがその結果大怪我を負ってしまった。

「いやいや、戦いなんて怖いですし、出来れば避けたいですよ。
 でもまぁ…大切な友達が居るのでそれを守る力ぐらいはつけておきたいなと思いまして…」

静かに謝罪する彼に恐縮しつつそう返す。
自分の事ながら島に来てここまで変われるなんて思ってなかった。