2016/10/19 のログ
ご案内:「演習施設」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
ブーツのつま先で、とんとんと地面を叩く。
腰に吊るした刀を左手で優しく叩く。
大きく息を吸い上げ、大きく吐き出す。
魔力と気が、空間を揺らした。
冴えわたる思考、極限の集中。
静かな水面に落ちる、小さな一滴が生み出した波紋を見つけ出す。
明鏡止水。
■寄月 秋輝 >
空気の中を滑るように、左手が愛刀の鞘に添えられる。
まるで導かれるように、右手が愛刀の柄に添えられる。
静まり返る空間。
衣擦れの音も起こさぬ。微動だにしない。
呼吸の音も響かない。息をするのも止める。
心臓の音も鳴らない。世界と一つになった存在。
ゆっくり目を開く。
瞳を潤す極少量の涙が動き、ぱちりと音がする。
■寄月 秋輝 >
キン、と甲高い音。
秋輝の姿勢は動かない。ように見える。
一瞬の抜刀、銀色の剣閃、ほぼ同時に鳴る納刀の音。
人の域を超えた技と力による、神速の抜刀術。
完成され、染み付くまで馴染ませた挙動は、まるでその場から動いていないようにすら見せた。
「……速くなってる」
ぽつりと呟いた。
以前ほど鍛えているかというと怪しい。
どころか、剣以外のことに費やす時間が相対的に増えてしまった。
にも関わらずだ。
■寄月 秋輝 >
一太刀を終えたら、再び目を閉じる。
心を鎮める。
抜刀術、こと『八雲流抜刀術』においては一撃必殺が基本だ。
しかし同格、もしくはそれ以上の相手との戦いにおいては、一太刀で勝負がつくことはまずありえない。
よって次の一撃、さらに次。
果ては相手が耐える間、常に神速を保たねばならない可能性がある。
そのためには精神集中の時間、心を鎮める時間を極限まで削らねばならない。
本来なら一瞬でも途切れたら、こちらの首と胴体のつながりが途切れると考えたほうがいいのだが、秋輝は結局人間に過ぎない。
そこまで至ることが不可能に近いほど難易度が高いと考えている。
(……つまり、限りなくゼロに近付けることが……)
生死を分ける。
こちらでの生活の間に、そう感じさせられた。
歯車となって戦うことと、己の意思で戦うことでは、戦いそのものの質があまりに違うのだ。
■寄月 秋輝 >
次の一閃。
再び心を鎮める瞑想。
次の一閃。
瞑想。
一閃。
瞑想。
振るうたびに早くなる。
納めるたびに早くなる。
剣閃も、瞑想の時間も、思考の切り替わりも。
心が水の底へと沈んでいくような感覚。
水滴を探すために水面を見ていた自身の精神が、いつしか真っ暗な深海に落ちていく錯覚。
それに従い、自分の神経が恐ろしいほどに研ぎ澄まされる現実。
剣が鞘に納まり続ける時間が短くなっていく。
まるで夢の中に居るように、剣を無心で動かし続ける。
無念無想の境地に完全に至り、剣と一体となった心と体が動く。
■寄月 秋輝 >
刀を振るい続け、唐突にぴたりと手を止める。
抜いた刀を握ったまま、右腕をまっすぐ横に伸ばす。
水の底に居るかのような感覚。
深い深い海の底、自分以外が誰も居ない意識の果て。
剣の極みがどこにあるのか、未だにわからない。
けれど一歩ずつ近づいている感覚だけはある。
当代限りで絶えさせる剣術、それでも自分が極めることには必ず意味がある。
無念無想の底で、そんな直感を覚える。
■寄月 秋輝 >
「……ぷふー……」
息を吐き出す。
同時にようやく意識を元のレベルに戻した。
ひゅん、と刀を振るい、静かに鞘に納める。
「……なんだか調子がいい気がするな」
普段なら体調を崩してダウンする時期だが、腹に穴を空けて休んだのが効いたらしい。
体の動きも、心の鎮まり具合も十分だ。
ぐるぐると鞘に納めた刀を手の中で回しながら、上機嫌で去っていく。
剣の道は果てない、その中で先が見えたのは僥倖だった。
ご案内:「演習施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」にルベールさんが現れました。
■ルベール > 殴り合う格闘技があるらしい。
やってみるしかないよな。
自分の中の脳内会議が2秒で終了し、施設にやってきた女。
金髪をなびかせ、自信満々といった表情でヘッドギアを身に着け、マジックテープ製のグローブをその手に付ける。
ルールをその競技に合わせて、躊躇なくスタートのスイッチを入れる。
よっしゃ来いや! と拳を合わせたのが……おそらくは5分前。
ご案内:「訓練施設」に大河さんが現れました。
■ルベール > 「当たんねぇ………」
汗だくになりながら、相手の動きを目で追う。
拳闘、という名前だったが、彼女の知り得る拳での殴り合いとは似て非なるスポーツがそこにあった。
大振りな拳を振り回す彼女に対して、フットワークを使ってジャブを的確に当ててくる対戦者。
ならば、と足を踏み出して持ち上げ、蹴るぞ、というフェイントをかけても、当然それは『認識』されるはずもなく、バランスを崩したそこにワンツーをぶち当てられる。
「あぶっ…」
危ね、とも叫べないままガードを上げて、そこにまた拳が突き刺さる。
ガードをしてるから大丈夫、ってわけでもなく、痛いは痛い。
ひとしきり拳を振り回して、今は相手を観察する方向に切り替えた。
相手の動きを観察して、まずは真似る。
このスポーツは、身体能力のみでなんとかなるような甘いもんじゃない。
彼女は馬鹿だが、身体で感じたものは無条件に信じる女だ。
■大河 > 今演舞場にいるルベールという奴が、俺達の仲間をひどい目にあわせた。
報復としてぶちのめしてきて欲しい。
知り合いにそんな依頼を受けた男は、演舞場にいるという情報を頼りにやってくる。
違反者とはいえ学生である以上、使用の許可は下りているのか中にはすんなり入れた。
後は目当ての人物を見つけて、ここで倒すか外に引きずり出して倒すかするだけなのだが…
男は、一つだけ重大な勘違いをしていた。
「…ルベールってどんな男だ。」
性別を勘違いしていたのだ。
丁度そのとき、試合をしている女が目に留まる。
「…ボクシングか」
賭けの対象としてのボクシングなら何度か見た事はあるが、純粋にスポーツ、それも女性が行っているのは初めて見る。
物珍しさに惹かれたのか、しばしその試合を眺める事に決め、見物客に加わる。
■ルベール > 視線を右に、左に。相手の動きを眺めていれば、相手の足遣いが自分と圧倒的に違うことに気が付く。
即座に真似る。ワン、ツー、とステップを踏んで、フットワークで相手の拳から急所を守る動きを身に着け、左右に揺さぶりを入れ始める。
次にパンチだ。しばらく受け止めていると、その型があることが理解できる。
左から放たれる軽い一撃が回避しようにもしきれない。
それを今度は真似て、できるだけモーションを小さく、相手の顔面を狙ってまっすぐに。
試合中に急速に『らしい』動きになっていく女。
嗚呼、なるほど。こういうものね。
吸収力、身体を思い通りに動かす能力は天性のそれ。
最初の5分で己を知り、次の5分で相手を知った。
「オッケー。……こう、かっ!!」
軽い左からの打撃を嫌って相手が距離を取ろうとする瞬間にぐっと踏み出し距離を詰めて。
右足、腰、身体を順に捩じりながら相手の顎から上を斜めにかちあげ。
「……ふぃぃー………なーるほど、なるほどね。」
結構殴られた。いてぇ。
■大河 > 「…やるな」
相手の方は、まさに蝶の如くといった足捌き、何より距離のとり方が上手さが素人目に見ても絶妙。
かなりの経験と技量を持った人物なのが分かる。
だが、男が賛辞を述べたのは…挑戦者である女の方。
最初に見ていたときははっきり言えば素人もいいとこの動きが、見る間に成長を遂げ相手に食らいつき始めている。
恐らくセンス、身体能力が生来ずば抜けているのだろう。
その異常ともいえる成長速度は、余裕から驚愕、徐々に焦りへと変わりつつある相手の表情を見れば、それがどれほどか一目で分かる。
加減をしていたであろう相手が、明らかに今までとは違う、必死さすら感じる動きで女の拳を避ける。
ここからは、相手が女が成長しきるより前に叩くか、女の成長速度が相手を凌駕するかだ。
「へ、寄り道のつもりが、面白いもん見れそうだな。」
試合の行く末を、他の見物客に紛れ眺め続ける。
ご案内:「訓練施設」に龍宮 鋼さんが現れました。
■龍宮 鋼 >
(やることも無いので訓練施設に来ていたら、面白いものを見た。
見ていたものはボクシングのスパーリング。
リングの上でケンカをしていたド素人が、十分後にはちゃんとボクシングをしていた。
動きそのものは最初から慣れている様子ではあったが、その成長速度は目を見張るものがある。
中々に面白い。)