2017/01/24 のログ
東雲七生 > 「でしょー?
 えへへ……問題はどれにするかなんだけどさ。」

へにゃりと笑みを浮かべてから、隣に腰を下ろす深雪に併せて上体を起こす。
そうして改めて小物へと視線を移して

「玩具っぽいのはあえてそうしてるよ。
 まんま武器だと風紀委員とかに怒られそうだしさ。

 ……あ、それはね。というか、全部そうなんだけど。
 一度創ったものは触ってれば幾らでも作り直したり出来るからさ、だからこうして……こう。」

無造作にカードを手に取ると、たちどころにカードがその形状を変える。
瞬きする間に深紅色のフォークへと変わったそれを自慢げに手の中で回しつつ、七生は深雪を見た。

深雪 > 少し自慢げな表情の七生を見て,くすっと笑う。
それから,あえてそうしているという言葉には頷きながらも,

「ふふふ,可愛いけど,ちょっと子供っぽいんじゃないかしら?」

素直な感想を述べる。
七生がスーパーボールを持ち歩いているとか,可愛い想像しかできなかった。
手のひらの上でカードがフォークへと転ずる瞬間を見た深雪は,感心しながらも楽しそうに笑い,

「凄いけれど,武器って言うにはちょっと可愛いし,弱そうね。
 その可愛い武器で私に勝てるかしら?」

立ち上がれば意地悪な笑みを見せて,両腕を広げて見せた。

東雲七生 > 「本気でやる時はもっとちゃんとしたの造るよ。」

あくまで仕組みを見せただけ、と七生は頬を膨らませた。

「子供っぽいくらいが油断を誘えるでしょ。
 ただでさえ何事も体格で不利を被ってるんだから。
 
 ……流石にフォークで勝てたら苦労しないし。
 いや、フォークを使って勝つなら、難しくないけど。」

以前にも一度、戦闘に巻き込まれる形でフォークを使った事があったっけ、と思い返す。
あの頃より自分の力を操れている様な気はするのだが、果たしてどうだろう、と。

深雪 > 「…でもそうすると,持ち歩く小物も大きくなるんじゃないかしら?」

大きさまでは操れていないように見えたので,首をかしげてそう聞いてみる。
そうなると,どんな形で持ち歩くかも難しそうだ。

「ふふふ,確かにそうかもしれないわ…強そうには見えないもの。」

悪気はない。思ったことをそのまま口に出しているだけだ。
けれど七生が続けた言葉を聞けば,あら?と意地悪そうな笑みを深めて…

「…フォークで私に勝つなんて,随分強くなったのね?
 そんなに自信があるなら,試してみる?」

東雲七生 > 「そうでもないんだよなあ……
 少しだけタイムラグは出るけど、大きいものだって造れるよ!」

元々の出血量とつり合いが取れなくなれば、大きくした分だけ脆くはなるが。
よほど巨大な物を造らない限りは大丈夫だ、と胸を張る。

「でしょ? ふふ、この状態で隙を突けば深雪だって……」

どうだろう。
ふと小首を傾げる。不意打ち程度で簡単に勝てる相手ではない事は解っているつもりだが。

「うぇっ、い、今?
 うー、試すのは良いけど、後で怒ったりしない?」

手の内のフォークと、深雪とを交互に見て。
恐る恐る覗き込む様に首を傾げる。

深雪 > 「あら,それならおっきなボールを持ち歩かなくて済むわね。」

それはそれで可愛いかもしれない。
そんな風に思ったりしたけれど,口には出さずに…

「…ふふふ,怒るくらいなら最初から言わないわ。
 それとも,やっぱり自信が無いのかしら?」

侮るように立ったまま笑い,七生を挑発する。
もっとも深雪にとってはこれも暇つぶしに過ぎないのだけれども。

「もし七生が負けたら,何かしてくれる?」

なんて楽しそうに笑う。今なら確かに,隙だらけだ。

東雲七生 > 「ふふん、流石にそんな事はしないっての。
 目立つし、逆に不便でしょそんなの。」

それじゃあ本末転倒じゃないか、と頬を膨らませて。
笑いものになる為に切磋琢磨してる覚えは無いのだ。

「ううん、あ、いや……別に自信がある訳じゃないけど。
 怒らないって言質が取れたし、あんまり気分は乗らないけど……」

よっこいしょ、と掛け声とともに立ち上がる。
手に握ったフォークを軽く握り締め、なるべくその先が鋭くなるように変形させて。

「……やるからには、負ける気無いしっ!」

ぐっ、と奥歯を噛み締めると握ったフォークを自分の首過ぎに突き刺した。

深雪 > 七生が努力を積み重ねていることはよく知っている。
…いや,きっと,深雪が知っている以上に,血のにじむような努力をしているはずだ。
だから,深雪は意地悪な笑みを浮かべながらも,決して貴方を侮ってはいなかった。

「ふふふ,世界一強い男の子になるなら,今の私にくらい,勝ってほしいわね。」

ぐっと手のひらを握れば,手首に巻かれたリボンが力に反応して光を放つ。
リボンはやがて肌を焦がすように熱くなり,僅かに煙さえ上がっているが,深雪は気にも留めない。

「……………!」

そしてもちろん七生の異能についてはある程度把握している。
それでも,自分で自分の首を刺すという異様なその光景に,深雪は僅かに怯んだ。
七生にとっては,チャンスだろうか。

東雲七生 > 首筋に鋭い痛みが走る。
これで首にフォークを刺したのは二度目だが、前回使ったのは食事用の本物のフォーク。
先が丸まっていた物と比べれば、今回は鋭利に出来ただけ幾らかマシである。

「ほら、行くよ深雪!!」

痛みを紛らわす様に声を上げると、刺したフォークを引き抜く。
自分の心臓の鼓動に合せて疼く傷口を今は無理やり意識の外へと追い出した。
均等に並んだ傷口からすぐさま血が溢れ、それらはフォークの先に連なる様に延びていき、そして、

「そー……れっ!!」

七生が手に持ったフォークを振れば、四条の紐となって深雪へと向かっていく。
拘束して身動きを取れなくさせるつもりなのだろう。

深雪 > 真っ赤な紐はまるで意志を持っているかのように深雪に絡みつく。
洗練された七生の動きと,それからトリッキーな武器。
怯んでいる深雪にはそれを回避するだけの余裕はなかった。

「…………っ!」

完全に自由を失う前に,右腕を強引に紐の拘束から引き抜く。
その腕を伸ばして,七生と深雪を繋ぐ紐を握りしめ,力任せに引っ張った。
深雪の外見からすれば信じられないほどの力で,引き寄せられる。
貴方の目論見通りに右腕しか自由にならない深雪だが,その尋常でない力は健在である。

東雲七生 > 「うおっととととっ……!」

引き寄られれば一瞬虚を突かれてよろめくが、すぐに踏み止まる。
かと言って膂力で敵うはずもなく、ずるずる引き摺られながらその距離を縮めていた。

「ぐぬぬ……綱引きじゃ勝てる見込みもないしどーすっかな……っと!」

紐の出元であるフォークを、強く握る。
何は無くとも深雪の力を緩めなければ、と考えて。
意識を手元に、フォークから延びる紐へと集中させる。

触れてさえいれば思うがままに操れる、と七生が言った通りに。
深雪の動きを制そうと絡み付いた紐は、枝分かれすると衣服の隙間から入り込んで深雪の身体を擽ろうとし始めた。

深雪 > こうして力比べなどするのはいつぶりだろうか。深雪は明らかに楽しんでいた。
大幅に制限された力だが,それでも小柄な七生を引き寄せることなど容易いことだ。
思いのほかに七生が抵抗するのも,可愛らしく思えて仕方がない。

「あらあら,なかなかやるじゃない。
 でも残念,まだまだね…このままじゃ引きずり込まれちゃうわよ?」

くすくすと楽しそうに笑いながら,尋常でない力で紐を引き寄せる。
七生が小細工をするだろうとは思っていたが,その時は一瞬で,思い切り引き寄せてやればいい。

そう思ったのだが…

「……ひゃっ……!!」

…深雪は,らしからぬ可愛らしい声を上げた。
その瞬間に貴方を引き寄せる紐の力は失われ,深雪はその場にすとんと尻もちをつくように座り込む。
声を上げてしまったのが恥ずかしいのか,耳を赤く染めながら。

「……………っ!!!」

しかし同時に沸き上がった怒りの感情が,深雪の細腕をして二人を繋ぐ紐を思い切り引っ張らせる。
それはもはや僅かほども容赦の無い,“怪物”の力そのものだった。

東雲七生 > 「ぐぬぬぬ……」

どうにか持ち堪えられれば、と懸命に踏み止まっていたが、対する深雪は余裕そうである。
まだまだ単純な力比べでは及びそうもない、というよりは人間の力で並ぶことが出来るのだろうか。
そんな事が脳裏をよぎった直後。

「……あっ」

突然引かれる力が弱まる。策が功を奏したのは間違いなかった。
だが、深雪のリアクションは流石に予想のはるか上であった。
思わず、「可愛い……」と呟いてしまうほどには。

「……って、うわちょっと待っ……!!」

しかし、その直後に凄まじい力で引っ張られてしまう。
咄嗟にフォークを離すことも出来ず、さながら釣られる魚の様に深雪の下へと引き寄せられてしまった。

深雪 > 七生を思い切り引き寄せた右手は紐を手放した。
力を込めれば,決して長くはない爪が,ほんの僅かにだが,鋭く尖る。
本気で貴方を傷つけようというのではない,恥ずかしさのお返しにすこし驚かしてやろうと思っただけだ。

「…………ッ!!」

が,深雪にできたのはそこまでだった。
右手首のリボンが眩しいほどに光を放って,その腕を縛り付ける。
何かが焼け焦げたような匂いは七生にも伝わるだろう。

深雪の腕は振り抜かれず,その場から立ち上がることもできない。
七生が引き寄せられた勢いを殺せないのなら,そのまま深雪にぶつかることになるかもしれない。

東雲七生 > 「怒んないって言ったじゃんかー!!」

悲鳴にも似た抗議を口にしつつ引き寄せられて。
そのまま何をされるにしても已む無しと身構える。
不可抗力とはいえ、少女の肌を無遠慮に弄ったのだから──とそこまで考えて異変に気付いた。

「深雪──!?」

厭な匂いがして七生の表情がこわばる。
咄嗟に今や深雪の体中に張り巡らさせていた紐を膨張させてクッション代わりにすると、半ば飛び付く様にぶつかった。

「大丈夫、深雪!?……痛くない!?」

血相変えて心配をするのはぶつかった事に対してでは無く、
その身に巻いたリボンが深雪を焼き焦がしているだろう事に対してだった。

深雪 > 深雪は明らかに表情を歪めていた。
その右腕は、まるで焼き印でも押されたかのように、皮膚が焼かれている。
深雪の表情からは、苦痛というよりかは、怒りや悲しみが感じられるだろう。

「……大丈夫,平気よ。」

飛び込んできた七生にリボンが触れないよう腕を避けつつ、答える。
リボンが光を失えば、熱も、不快な匂いも消え去った。

「……私の負けね,力の使い方も忘れてるなんて。情けないわ。」

東雲七生 > 「深雪……うぅ、大丈夫そうに見えないってば!」

今にも泣きそうな顔で縋る様に引っ付いたまま深雪を見つめる。
こうなった責任は自分にもある、と言わんばかりに表情を歪めて、ぶんぶんと首を振った。

リボンの光が消え、匂いが消えても七生は離れようとはしない。

「……こんなの、勝った内に入んないもん。
 うう、だめ。引き分け!引き分けだから!」

少なくとも自分は絶対に認めない。
悲しさと怒りとが綯交ぜになった様な表情で、七生は断固主張した。

深雪 > 「あら,この程度で私が痛がるとでも思ってるの?」

強がりにも見えるが,確かに痛そうなそぶりは見せていない。
泣きそうな顔をしている七生を,右手で優しく撫でつつ,

「ふふふ,そうね,引き分けかしら。
私の方がずっと力も強かったものね。」

七生のそんな様子を愛しげに見つめて,深雪は笑った。

東雲七生 > 「うー……思わないけど。」

でも、辛そうな顔してた。
そう言い掛けて、七生はすんでのところで飲み込んだ。
深雪が大丈夫だって言ってるんだから、大丈夫。そう自分に言い聞かせる。

「力は……そりゃ、強かったけど。」

こんな細い身体のどこにあんな力があるんだろう。
撫でられながら、何となく腑に落ちなくて考える。
考えてもきっと無駄だろう事は、すぐに思い至るのだけど。

深雪 > 「……ありがと。」

きっと,色々と聞きたいことも言いたいこともあるのだろう。
けれど,七生は何も言わず,頷いてくれる。
改めて,それに甘えてしまっている自分が居ると気付いた。

「………………。」

きっと七生は,このリボンから自分を解放してくれる。
そう信じてしまっている自分に気が付いた。

「結構強くなったみたいだけど,もっと鍛えないと駄目ね。
今度から,トレーニングするときは私が手伝ってあげようかしら?」

深雪は七生を安心させるように,楽しげに笑って見せた。

東雲七生 > 「うん、どういたしまして!」

大丈夫だと信じるからには心配そうな顔はして居られない。
多少の硬さはあるものの、笑みを浮かべた七生はようやく深雪から少しだけ身体を離した。
いつか必ず、この少女にさっきみたいな表情をさせない日が来ると、自分が来させると決意しつつ。

「……手伝う、たって何するのさ。
 深雪の手を借りてする事なんて、大体何も無いよ……。」

釣られてくすっと笑いながら、改めて深雪を見る。
さて、この身体中に巻き付いている紐をどうしようか、と。

深雪 > 七生にも,苦悩があるはずだ。記憶が戻ったという話も聞かない。
けれど七生は,そんな苦悩なんて,少しも見せはしない。
もっと,見せてくれたって良いのに。七生はいつも,笑ってくれる。

「そうね……例えば,今度は狼の私と戦ってみるなんてどうかしら?
擽られたくらいじゃ止められないわよ。」

だいぶハードモードなトレーニングを提案する深雪。
そして,紐を自分でどうにかする気は無いらしい。ほどいてー。

東雲七生 > 「えぇ……流石にそれは。
 正直、あんまり深雪に手荒な事したくないよ……?」

深雪の提案に、心底困った様に眉尻を下げる。
もし本気だったらどうしよう。擽られても止まらないらしいし。
そもそもあの分厚い毛皮に擽りが通るのだろうか。通らない気がする。

「もっと他に考えよう。
 ていうか深雪こそ、擽りに免疫無さ過ぎじゃない?」

深雪こそ鍛えたらどうだろう、と小首を傾げる。
取り敢えず解くけど、と拘束するために巻き付けた紐を緩めていく

深雪 > 「ふふふ,私も七生をぷちって踏んじゃったら嫌ね。
でも,何か手伝えることとか,無いかしら?」

深雪の性格からは考えられないことかもしれないが,
深雪はどうしても,七生の力になりたいらしい。
楽しげに笑いながらも,真剣に考えているのが分かるだろう。

「仕方ないじゃない……それに,どうやって鍛えるっていうの?」

七生の提案には,まだ紐に縛られたまま,深雪も反駁した。

東雲七生 > 「特に何も思いつかない……かなあ。」

深雪が真剣に考えている事は、何となしに伝わってきた。
しかし七生にはまったく思いつかないのも事実だった。
精々夕飯をトレーニングに見合った内容にして貰うくらい。

「え?……何度も擽られたらそのうち慣れてくるんじゃない?」

しゅるしゅると巻き付きが緩んで解けていく紐を巻き取りながら呟く。

深雪 > 残念そうな表情だったが,七生がそう言うなら仕方がない。
実際,鍛練などしたこともない自分が,力になれるとも思えなかった。

「……そういうものかしら。
でも,いま擽ったら怒るわよ。」

ちゃんと釘をさしておく。
今この瞬間は無抵抗なのだから。

東雲七生 > 「ありがとう、気持だけで充分だから。」

へにゃり、と笑みを浮かべる。
深雪が力になろうとしてくれるのは本当に嬉しかった。
しかし、越えようとする相手に手伝って貰うというのも変な話なのも否めない。

「えー……深雪の肌すべすべでつい擽りたくなっちゃうんだけど……。」

呟いてから、ハッと口を噤む。
七生が異能によって変質させた血液は七生の語感がある程度同調される事を、話しそびれていた気がしたからだ。

深雪 > 初めて出会った時と比べて,七生は本当に頼もしくなったと思う。
……笑顔が愛おしいのは,相変わらずたけれど。

「駄目よ………………っ……。」

深雪は,びくりと身体を震わせた。
七生が意図的にそうしたのか,事故なのかは分からなかったが……

「……ほどけたら,分かってるわよね?」

……怒ってらっしゃるご様子です。

東雲七生 > 「怒んないって言ったじゃん!!」

二度目の抗議。さっきは予想外のアクシデントによって中断された事になっている。
ふるふると首を振って事故を主張して、もうさっさと済ませてしまおうと思い──

──思うの、だが。

「………。」

駄目だ駄目だと言われると無意識の内にやってしまうのが人のサガだろう。
ましてや後で怒られるのがはっきりしているのなら、と心のどこかで思っていたのも否定出来ない。

深雪 > 「……いいから早くほどきなさい。」

今度はしっかりと怒る宣言をしているのだ。
何を遠慮することがあるだろうか。
黄金色の瞳がまっすぐに七生を見る……が,身体の自由を奪う紐はほどける様子がない。

「…………!!」

それどころか,今度は明らかに意図をもって,深雪の身体を撫で上げ,柔らかく擽ってくる。

「七生っ…………駄目…、……やめ……!!!!」

うずくまるようにしながら耐える深雪だが、ついに限界に達したか……

「……怒らない!だからっ……あぅ……、やめてっ!!」

東雲七生 > 「ほどく、ほどいてるってば!」

重圧を掛けられて七生の表情がこわばる。
七生としても出来るだけ迅速にほどいてしまいたい気持ちはある。間違いなくあるのだ。
それでも、ふと邪念が過ったりすればあらぬところをするりと撫で上げていく。

「わ、た、ごめんって!今のはわざとじゃないから!
 てか、いきなり大声出されたら手元が狂……っ」

故意と事故が入り混じりながら作業は遅々として進行しない。
それどころか悪化の一途を辿るばかり。

とうとう深雪が限界に達してしまい、七生は一度手を止めた。

深雪 > 七生がその手を止めれば,深雪は静かに呼吸を整えた。
服も乱れ,頬や耳を赤らめた姿はきっと,普段の深雪とはまた違った印象を与えるだろう。
これが七生以外の人間相手だったら,今頃血の雨が降っていたにちがいない。

「…………もう,丁寧にやってくれないなら,無理に引き千切るわよ。」

怒らないと言ってしまった手前,言葉は丁寧に。
しかし明らかな怒気がこもった声で,そう告げた。

東雲七生 > 「………えっと、あの、ごめんっ」

俄かに動悸が激しくなって目を逸らす。
やたらと扇情的な深雪の姿が原因である事は間違いないが、
状況を作ったのは七生であるからどうしようもない。
一刻も早く帰りたい衝動に襲われつつ、

「もうそのまま帰った方が手っ取り早い気がするけど。」

帰って服さえ脱いでしまえば、あとは紐を何か別の物に変えてしまえば良いだけなのだ。
まさかこの場で服を脱いでもらう訳にもいかないので提案はしなかったのだが。

深雪 > 座り込んだままの深雪は,相変わらず右腕しか自由になっていない。

「……身動きも取れないのに,どうやって帰るのよ。」

方法があるとすれば,七生が深雪を運ぶ他に無いだろう。

東雲七生 > 「……ですよねえ。」

あはは、と乾いた笑いを浮かべて大きく息を吐く。
取り敢えず邪念を追い払って、そして無の境地で一気に作業を終わらせる。
あとは深雪の忍耐次第だ。正直小さな喘ぎ一つ取っても精神に悪い。

「出来るだけ丁寧に、それでいて一気にやるので
 深雪は出来るだけ変な声出したり動いたりしないでね?」

そう言うと再度深呼吸。
あとは宣言通りに一気に片を付けるだろうか。

深雪 > 笑うなと言われると笑いたくなる。
耐えろと言われると,どうしても耐えられなくなる。

「………………!!」

それでも,深雪は七生の言うとおりに,声を上げなかった。
やっと身体が自由になれば……。

「…………七生…。」

怒気120%の震えた声。でもさっき,怒らないと、約束してしまった。

「……帰るわよ。」

ので,それを飲み込んで,立ち上がった。
怒っているわけではない。
ただ,七生に見られたのが,恥ずかしかったのだ。

ご案内:「訓練施設」から深雪さんが去りました。
東雲七生 > 「………ふぅ。」

思春期真っ盛りの男子には少々過酷なミッションだった。
しかしそれも何とか終えて、やり遂げた男の顔で一息つく。
自分で自分を褒めてあげたい気持ちをぐっと押さえて、自由になった深雪を見れば、

「………はい。」

一瞬で表情が凍りついた。
怒ってる。どう見てもこれ怒ってる。
怒らない、と言われたけどどう見ても怒ってる。

「…………はい。」

実際の所、恥ずかしがっているなどとは夢にも思わず。
家に帰った後に言い知れぬ不安を抱きつつ、深雪の後を追う様にして帰路についたのだった。

ご案内:「訓練施設」から東雲七生さんが去りました。