2017/02/15 のログ
ヘルト >  
平穏無事なこの世の中(少なくとも彼はそう思っている)で退屈していた。
戦装束でいつも身を固めている彼曰く『心を振るわせる戦いが無い』だの『ここのチンピラは貧弱』だのと常日頃ぼやいているのだ。

「あ゛ー! 退屈すぎる! なにかこうドラゴンがどーんと出てこないかね」

そんな物騒な事をぶつくさと言いながら退屈凌ぎに訓練施設に足を運んだヘルト。
そこで訓練に不釣合いな格好で訓練をしている生徒らしき姿を見かける。

「あ? なんだありゃ、この後どこかのパーティーとかあるのかね」

己に服飾の美的センスが無いのは自覚しているが、なるほど。
あのフリフリでヒラヒラな服があの生徒の体捌きに合わせて動くサマは一種の美を表した舞いみたいに見える。
しかし実際の身体の捌き方を見るに洗練され見栄えのよさを取り入れたそれとは違う、野生的とも実践的とも思える体裁き。
美しさとは程遠いそれと服飾のギャップが逆に可憐さを思わせるのだろうか『面白い』とヘルトは思いつつ適当な壁に背を預け眺めている。

柊 真白 >  
(さほども掛からず大した苦戦もなく、わらわらと出てきたダミーは一体残らず殺し尽くされた。
 ダミーたちから奪い取った剣をぽいと投げ捨てれば、それは足元に転がったダミーの身体に突き刺さる。
 地面にはダミーの残骸の他に、折れた剣や突き刺さった剣が散乱していて、掃除が大変そうだ。)

――。

(そうして改めて見物人に目をやった。
 彼の存在には最初から気が付いていた。
 無視していたのは訓練に集中していたから――ではない。
 特に邪魔をする風でもないし、乱入してくる雰囲気でもなかったからだ。
 時代錯誤な鉢金と重装の鎧と言う出で立ちはどこかちぐはぐなものを感じた。
 とは言えそれは自分が言えることではないが。)

何。

ヘルト >  
しょせんこれはお遊び、という事だろうかとヘルトは考えた。
訓練用のダミーとは言え数もそこそこあっただろうに事も無く殲滅せしめた、余裕で。

「何、とはご挨拶だなあ。
 暇潰しに訓練場でいっちょ暴れようと思ったらお前さんが居た。
 んで、面白そうだったから折角なんで見学していた」

声を掛けられ始めて壁に預けていた背を離し彼女へ『それで理由としては充分だろ?』と含みニヤリと笑いかける。
久々にいいものが見られた。

柊 真白 >  
(遊びも遊びだ。
 何せ本来の得物を使っていないのだから。
 本来の得物――刀とは使い方の違う剣で、と言うのだから尚更。)

――なにか用事じゃないの。
一応私部外者だし。

(その事で何か小言があるのかと思っていた。
 自身は用事が無ければ暴れることなどしないタイプだ、その笑みに含まれた感情までは読み取れない。
 むしろゲストカードを貰ったとは言え学生じゃない自分がここを使っている事の方が、声を掛けるには充分な理由に思えた。
 とは言えそう言う人種もいるという事は分かっているので、彼がそう言うのならそうなのだろうけれど。)

ヘルト > 「部外者? でも許可取ってんだろ、だったら何も問題無いだろ」

変な事を言うやつだなあ、とカラカラと笑ってみせる。
ヘルトはお小言を言うつもりは微塵も無かった。
強いて言えば気になるのは──

「それにしてもだ、さっきのアレは見事なものだった。
 ……でもさ、何でその格好で?」

そのヒラヒラフリフリはもしかして何かしら意味があっての事なのか?
ヘルトの頭の中はそれでいっぱいだった。

柊 真白 >  
そう。

(確かに許可は取っている。
 ならば問題は無い。
 なるほど、その通りではある。)

――実用性。

(ヒラヒラフワフワしていれば、それだけ身体の動きは見えづらくなる。
 こう言った格好をしていれば、油断される事も多い。
 スカートが広がっていれば結構動きやすい。
 そう言ったもろもろの理由から、実用性が高いと判断してのこの格好だ。
 そう言う趣味があるわけではない。)

ヘルト >  
「うむ、そうだとも。
 いちいち小事にこだわっていては時間がいくつあっても足りん」

脳裏に副官を浮かべながらヘルトは言った。
副官から何かしらお小言を言われている彼は思わず苦虫を潰した表情になる。

「実用性、なるほど実用性か……」

まじまじと彼女を見つめるヘルト。
ヒラヒラフリフリした服は実用性があった。
実用性とは? 好きだから満たされるものがある?
いや、愛。そうか彼女はこういう服に愛を持っているのか!

悲しいかな、ヘルトの頭脳では彼女の真意を汲むことは出来なかった。

柊 真白 >  
豪快さん?

(暴れる発言といい細かい事は気にしなさそうな感じといい。
 どうやら彼はガハハ系の人間らしい。
 実際そのへんどうなのかを首を傾げて尋ねてみる。)

――。

(一つため息。
 直後、右足を軸にターンしつつ足元に転がる剣を跳ね上げる。
 ターンによってスカートが広がり、跳ね上げられた剣を彼の視線から隠して。
 その勢いのまま剣を彼に突き出す。
 当然喉元ギリギリのところで寸止めするつもりであるし、そう言う意図だと彼ならば気付くだろう。)

ヘルト >  
「ワハハ! さんではなくて先生、だな!」

彼女がどういう思考回路か分かる術など無いが大抵似たような反応をされるヘルトは笑ってそれを受け入れる。
事実、豪快だの化け物だの馬鹿だのと言われていた。

「おっ?」

ピタッと喉元ギリギリで止まる剣とそれをキョトンとした表情で見つめるヘルト。
直後、何かを察した彼は口を開いた。

「なるほど、動きの一つ一つをより華々しく彩る訳だ。良い趣味をしている。」

喉元の剣には一切注意を払わず、暢気に彼女を褒める。
自分を狙ったのはすぐに分かったものの、それに殺気が込められていなかった。
一切の殺気を気取らせず相手を屠る一部の者が居るのも確かだが、果たして彼女がそうだとしてそれに利益はあるだろうか?

その問答の末の結果がこれだった。

柊 真白 >  
先生。

(確かに生徒と言うには歳を食っている。
 歳を取っても学ぼうとするものは居るだろうが、しかし確かに生徒と言うよりは先生と言った方がしっくりくるのは確かだ。)

――違う。

(伝わっていなかった。
 不満そうに僅かに眉を寄せたあと、剣を放り投げた。)

衣服に動きがある方が身体の動きを見切られにくい。
面積を広げることで技の出所を見にくくする。
この服装はそれに適している。

(ガランと音を立てて剣が床に転がる。
 同時に腰を軽く振ってスカートの裾を翻し、そこからダミー人形の腕が彼に向けて放られた。
 ついでに右足で音も無くダミーの頭を背中側へ蹴り上げて右手でキャッチ。
 そのまま背中越しにその頭も軽く投げつける。
 それら一連の動作が手早くかつさりげなく行われ、しかもそれぞれの動作が直後の動作を隠すフェイントとしても機能している。
 武の心得の無いものであれば、投げ捨てられた剣に気を取られている間に腕と頭をぶつけられる、という事になっているだろう。)

ヘルト >  
「うむうむ。」

腕を組み満足そうに頷くヘルト。
問題はそこであろうか?

「んっ? 違う? 何が違うんだ?」

直後、自身に飛び掛るダミーの腕と頭。
だがそれすらも避けるそぶりを見せず何かに目を取られているヘルト。
ぶつかるはずだったダミーの腕と頭は一瞬で消滅していた。
乾いた破裂音のようなものと共に。

全く気にしていない様子で『ううむ、もうちっと肉付きが……』だのとのたまう。

柊 真白 >  
セクハラ。

(別に見られることは気にしない。
 気にしないけれど、仮にも先生と名乗っておいてそれはどうなのか。
 じとっとした目を向けて。
 説明は諦める事にした。)

――。
したいなら売るけど。

(弾け飛んだ腕と頭。
 彼自身が何かしたわけではなさそうだ。
 仮に何かして自身が見えなかったのなら、対策の立てようが無い。
 考えるだけ無駄として、おそらく自動防御の類だろうと推察。
 そんなことを考えつつ、彼の視線についても考えを巡らせた。
 巡らせた結果が売春のおしらせである。
 本職では無いけれど経験が無いわけでも無いし、本職の仕事が無いときに小遣い稼ぎにやっていたりするのだ。)

ヘルト >  
「たはー、キツイお言葉!」

額に手を当ておどけた調子で言う自称先生。
別に言葉責めで喜ぶような性質ではない、そのはずだ。

「魅力的なお誘いどーも。
 残念だがお兄さんはもうちょいお姉さんが好みなんだな、これが。」

彼女の動きを観察していただけのつもりだが、どうやらさっきの呟きを聞かれていたらしい。
無意識の内に呟いた言葉は紛れもない本音ではあるがそれよりも。
先程の訓練といい今の身のこなしといい、暗器の類が獲物であろうか。

どちらにせよ、彼女の闘いぶりに興味を抱いていた。

柊 真白 >  
風紀委員に捕まっても知らない。

(この島では一部の生徒は教師より権限が強いらしい。
 別に告げ口するつもりも無いが。)

そう。

(断られても気にした様子も無い。
 人の好みは色々あるし、別に身体的なあれこれをコンプレックスに思っているわけでもない。
 幸いにしてこの島は「仕事」が山ほどあるらしいので金に困っているわけでも無いし。)

そろそろ帰る。
さようなら、先生。

(ぺこりとお辞儀をして歩き出す。
 その歩みは羽のように軽く、足音も殆どない。
 歩きながら、奇襲に動じた様子の無かった「先生」について考えを巡らしつつ。

 外よりも戦いを意識する必要がありそうだ、と小さく息を吐いて。)

ご案内:「訓練施設」から柊 真白さんが去りました。
ヘルト >  
「……風紀はダメだな、間違いなくダメだ。」

さーっと血の気が引いていくヘルト。
風紀から副官へ連絡が行きこってりお叱りを受けるのは間違いない。
そう考えるだけで恐ろしかった。どんな化け物よりも副官が一番怖い。

「おーう、気をつけて帰るんだぞー。」

足音すら立てない彼女の技量、如何ほどのものだろうか。
このまま背後から斬りかかったらどう反撃をしてくるだろうか?
全然先生らしい要素皆無の思考を広げつつご機嫌な様子で訓練に取り組んだという。

ご案内:「訓練施設」からヘルトさんが去りました。