2017/07/03 のログ
ご案内:「訓練施設」に宵町 彼岸さんが現れました。
宵町 彼岸 >   
雨の降る夜の演習場に雨音とはまた別の水音が響いている。
それは暫く後、栓を捻る音と共に静かに鳴りやみ、
暫くすると演習場のシャワー室が開き、まだ濡れた髪と残った雫に濡れた白衣を薫った少女が姿を見せた。

「あー……これなんかこうぺたーってするぅ……」

何度か自身の腰回りを気にかけるような所作を見せた後
髪を拭きながら気だるげにコンソールへと近づき情報端子を差し込むと、指先で設定を開始する。
髪に含む水分を乱雑にふき取るタオルを近くのベンチに投げ、その上に羽織っていた白衣を脱いで投げる。
本来制服などを着込んでいるところだが彼女はラバーキャットスーツの様な物を身に付けていた。

「ああ、面倒だなぁ……誰かモニター(被験者)になってくれればいーのにぃ…
 でも研究室の皆は運動苦手だしぃ……仕方ないよねぇ……
 自分で計測するの大事だからっていう言い分はわかるけどぉ……
 私も運動苦手なのになぁ……」

彼女が身に付けているのは全身用のフィットスーツだが、
視覚的には最低限の防護のみを考えられたもので
彼女の白い肌がうっすらと透けて見えてしまうほど生地は薄く、
気密性の高いものの為に胸部や腹部に向かっての体の曲線がくっきりと浮き出てしまっている。
観測と記録に邪魔になる為それ以外の物を下に何も着込んでいない為
人によっては全裸以上に煽情的に感じるかもしれない。
同時にスタイルが残念な人物……例えば研究のみに没頭していて
あまり運動向きでない体型をしたような研究者等が身に付けたなら
きっと映像に残る自らの雄姿に涙があふれる事は想像に難くない。

……とは言え現状それを身に着けている本人はまったく気にしていない様子で
コンソールに対象用のデータをアップロードし細かい調整を行っていく。
画面上にインストール完了の文字が浮かぶと同時に演習場の真ん中付近に
影法師の様な人影がゆっくりと身を起こした。
演習場をよく利用する生徒や教師であればそれが
この演習場に設置されたインストール用ダミーエネミーだと判断できるだろう。

「……モニタリング開始
 デバイス起動。クラスⅠまでアクセス解除。
 想定対象……クラス”アーミー”
 対象は軽機関銃、標準小型拳銃、電磁ロッド、コンバットナイフを所持。
 CQB、CQCトレーニングクラスインストール」
 
中央に立ち尽くす人影を横目に小さく呟きながら
演習場のゲートをくぐり、シェルターを閉めると
スターティングエリアに入り、とんとんとつま先で地面を蹴る。
あと数秒もすれば”彼”は動き始めるだろう。

「サンプリングの為デバイス実行までに時差を設定。
 使用者の戦闘可能領域は”ノーマル(一般人)”
 被弾判定、行動障害の発生詳細データの出力は開始直後から開始」

そう呟くとカウントを始め……

「戦闘開始」

その言葉と共に轟音と閃光が演習場を駆け抜けた。
 

宵町 彼岸 >   
「……!?」

小さな体が後ろに吹き飛ぶ。
エネミーの拳銃から放たれた弾丸は狙い違わずその射線上の”物体”に突き刺さり
それを受けて崩れた体勢にエネミーは容赦なく追撃の弾丸を叩きこむ。
しっかりと訓練を受けた兵隊であれば当たり前の、的にたいする容赦ない射撃は
その体を吹き飛ばすには十分な威力を持っていた。
その刹那アラートが鳴り響き十分なダメージを受けたことを示す表示が空に浮かび上がる。
それと同時に煙の立ち上る拳銃を向けたダミーはぴたりと動きを止めた。
実際の戦闘であればなすすべもなく撃ち殺されていた。
その表示はその事実を無機質に周囲に知らしめている。

「……いつつ」

当の吹き飛ばされた本人は倒れた姿勢のまま身を丸めていた。
今は観測用、”データ提出用”の普通の調整体を使っている以上
普通よりも貧弱な身体能力程度しかない。そんな体で軍人相手に……

「まぁ対処なんか無理だよねぇ」

少し咳き込みながらゆっくりと立ち上がる。
的確に急所を狙った射撃は体の各所に突き刺さり、呼吸もしばらくままならない。
訓練用とは言え、致死に至らないだけで使用を想定されている物は軍用品のデータが利用されている。
当然撃たれればとても痛いどころの騒ぎではなく、一定値のダメージが出れば死亡判定が出る。

宵町 彼岸 >   
「えーっと何々?
 肩鎖関節部に一撃からの鳩尾、心臓にとどめに側頭部に一撃かぁ……
 うっわぁえげつなぁぃ。これ綺麗に致命傷だねぇ
 正にハートブレイクぅ。あー……頭くらくらするぅ」

模擬弾に弾かれた頭部を抑えるように立ち上がりながらモニタを一瞥する。
最初の一撃で腕を砕かれた時点で実弾なら勝敗は決している。
というより最初の一撃でも十分人は死ぬだろう。
現状圧倒的な戦力の差がその少女とダミーエネミーとの間にはある。

「……サンプル用にもう一戦はとっておくべきかなぁ
 でも痛いの嫌だしなぁ……うーん」

立ち上がろうとしてそれもできず、ペタンと座り込みながら
腕に付いているデバイスの様なものを軽くタッチする。
其処にはこの戦闘を始めた理由である”研究成果”が装着されていた。

「ああ、面倒な玩具作っちゃったなぁ……
 我ながらなんでこんなの作ったんだろぉ」

それを眺めて一つため息をつく。
その研究成果(玩具)の性能実証の為にこんな面倒な事をしているのだけれど
これでは比較データが取れているとは言えない。
このデバイスを利用しない条件下でのデータが無ければ
それの有用性を証明できないからだ。
とは言え、自分一人で痛いなんて何も楽しくもない。
地面にこけて怪我をしているようなもので、
その怪我をわざわざ悪化させるような趣味の持ち主が居たなら

「……そーとーのへんたいだよねぇ?」

ぶっちゃけ自分を棚に上げて変な人扱いをする自信がある。

ご案内:「訓練施設」に柊 真白さんが現れました。
柊 真白 >  
(日課の鍛錬のために訓練施設を訪れた。
 空いている部屋は無いかと、廊下に並ぶ扉の窓から部屋を覗いて周っていたところ、部屋の中央に座り込んでいる人物を発見。
 体調でも悪いのか、もしくは怪我でもしたのだろうか。
 扉を開けて室内へ。)

どうしたの。

(声を掛けてつかつかと無遠慮に近寄る。
 身に付けているのはボディスーツのような、しかしかなり生地が薄い。
 何かの実験かテストだろうか。)

宵町 彼岸 >   
「……めんどーだしいいやぁ
 サンプルは他でとるっていぅ事で売り込んじゃおーっと。
 私がくせ―だしぃ」

あっさりと学生特権無責任を発動させて
ホログラムの画面を指先で叩く。

「”加速(アクセル)”起動
 スロット1を使用、セル固定。
 優先度は最優先。
 追加スロットはモード変更なし……っと」

呟きながら設定を終えると同時にシェルターが開く。
そこに姿を見せた相手の此方を伺う声に
まだ少しぼんやりする頭を押さえながらそちらへと顔を向けた。

「……んー。キミはボクが知ってるぅ人だっけ?
 まいっかぁ。んと、なんというか、ダミー体が強くって
 実験したくなーぃ誰か代わりにやってーってなってるところぉ
 銃で撃たれるのってぇ、いったいよねぇ」

一瞬きょとんとした後
ふんわりとした笑顔と間延びした返答をそちらに向けて声に応える。
なんと言うべきか、少し共通感というかシンパシーの様なものを感じる見た目の相手で
けれど今の自分と比べると体運びが実践向きだと思う。
この施設は武闘派の学生が訓練で利用する事も多いのでその内の一人かもしれない。

 

柊 真白 >  
知らない。
初めて会う。

(こんな格好をしている人物と会った覚えは無い。
 まぁいつもそんな格好だとは限らないわけだが。
 どちらにしても彼女の顔に見覚えは無い。
 これでも記憶力には自信があるのだ。)

ダミー体。
――私でよければ。

(代わりの人を探している、と言った。
 ならば自分がその代わりになろうと提案。
 勿論、)

報酬が貰えるなら。

(対価はいただくけれど。)

宵町 彼岸 >   
「そっかぁ、じゃぁはじめましてー、だねぇ?
 よろしくねー?まぁ私何時だってはじめましてだけどぉ」

ペタンと地面に座り込んだままけらけらとそちらに笑顔を向ける。
顔の判別がつかないのだから知っていてもどうせわからない。
けれど彼女の白い髪はなんだか少し好きな色かもしれない。
そんな事を考えながら眺めていると投げかけられた言葉に少し目を丸くする。

「えーっとそれは、どゆこと?
 実施試験の被験者的な意味でぇ?
 それともダミー体の代わりにデータとるのに協力するってことぉ?
 私うんど―苦手だからぁどっちにしろ助かるけどぉ」

少しだけきょとんとした後にこりと笑って見上げる。
データを取るという点ではいろんなパターンがあるに越した事は無いので
正直どちらにしても彼女にとっては悪い話ではない。

「ほ―しゅ―……えと、内容によるかなぁ?
 とりあえず欲しーものてーじしてくれてもいーし、
 私が勝手に決めても良いならそーするけどぉ?」

故に拍子抜けするほど簡単に首を縦に振った

柊 真白 >  
(いつだって初めましての言葉に若干首を傾げるも、特に気にしない。
 それより今は仕事の話だ。)

実験に協力しても言いし、ダミーの代わりしてもいい。
報酬さえ貰えれば、貴方の足りない手の代わりになる。
――命の危険を伴う、もしくはそれに類する事はやらないけど。

(流石に人が死ぬ時のデータが欲しいから死んで、何て依頼はどんな金額を積まれてもやらない。
 が、そうじゃなければ大体なんでもやるつもりだ。
 彼女の顔を見下ろしながら、淡々と続ける。)

報酬の額は内容に釣り合うなら何でもいい。
お金が一番手っ取り早いとは思うけれど、物とか行為とかでも構わない。

宵町 彼岸 >   
淡々とした口調からはこういった交渉に慣れている印象を受ける。
というよりも、其処か嗅ぎなれた香りがするような気配すらあるものの……
今の彼女にとってはそれは正直知った事ではない。
今のところ面倒を代わりにやってくれる人が居るのは渡りに船なのだから。

「そーぉ?じゃぁお願いしちゃおっかなぁ
 実験報酬は……うん、成果給ってことで?
 足りないなーと思ったらその都度交渉って事でおねがぁぃ。
 じゃ、けーやくかんりょーなら、よろしくねー?えーっと」

名前はわからないので適当に濁しながら片手を差し出す。
先ほど撃ち抜かれた衝撃でまだ指先がふらついているものの
先ほどよりは元気に見えるかもしれない。
仮にその手を取ったなら二コリとほほ笑んだ後少し強く手を引くだろう。

柊 真白 >  
真白。
柊真白。

(名乗りながら差し出された手を握る。
 瞬間、軽く引き寄せられるように手を引かれる。
 倒れないよう、引かれる動きに合わせて一歩距離を詰めた。)

――何?
なんでもないなら、何をすれば良いか教えて。

(悪戯のようなことをされ、ほんの僅かに目を細める。
 今度はこちらから手を引いて、立つように無言で促した。)

宵町 彼岸 >   
「ああ、先に言っとくねぇ。
 ちょっと調整するから動かないでくれると嬉しいなぁ」

二コリとほほ笑むとそのまま相手の指先を口に含もうとする。
今はまだ試験中のデバイスという点と、
調整データはまだ学校側に開示したくないという理由で
副作用を抑える方向にデバイス出力を調整する必要がある。
とは言え其れを説明するのは面倒なので、説明するよりやっちゃった方が実際早い。

と言う訳で相手の指先を咥えようとしつつ、成否に関わらず
片手の小さな機械をするりと外すと相手の手頸へと装着し、コンソール画面を叩く。
設定はニュートラル状態に戻し……

「声紋はもうサンプル貰ってるしぃ……登録完了っと。
 うーん、追加スキルは……加重で良いかなぁ」

恐らく対飛び道具には慣れているだろうとの判断から一撃を重くするという”異能”を選ぶ。
瞬間的な質量増加と筋肉の出力を高める異能自体はそう珍しくもないが……

「能力実行は”起動(オン)”の一言で発動するように設定してあるからぁ
 好きに使っていいからねぇ。
 あ、でも慣れない所使うから使いすぎると筋肉痛になるから気を付けてねぇ」

そう告げると再び二コリとほほ笑んでその手を放す。
それと同時にダミーエネミーが初期位置へと戻っていき、臨戦態勢を取る。
好きなタイミングで交戦を始められるだろう。

柊 真白 >  
(事前情報無しで指を咥えようとしたのならば抵抗をしただろうが、動くなと言われている。
 微動だにせず成されるがままだ。)

好きに使っていいと言われても。

(何も説明を受けていない。
 加重と言う言葉と「オン」と言う単語から、なんらかのスキルを追加するようなデバイスだろうと言う事はわかるのだが。)

これがどういうものか説明してくれないと、何も出来ない。
説明を求める。

(じ、と彼女の顔を見つめ、説明を要求。)

宵町 彼岸 >   
「あっれぇ?説明してなかったっけ?」

きょとんと首を傾げるところを見ると素で忘れていたらしい。
少しの間首を傾げたまま固まるとそのままかくんと人形のような動きで元の姿勢に戻った。

「感覚派というか使ってみて考えるみたいなタイプかと思ってたけど
 意外と慎重だねぇ?まぁいい事だよね、うん。」

柔らかい笑顔のままうんうんと頷くと
指先を空に向け遊ばせながら説明を始めた。

「要は外付けの異能みたいなものだよぉ。
 加速とか加重追加とか……まぁ軍用品想定だから出力はそこそこだけどぉ
 あの異能便利だなーとか、いざというときに一手が欲しいって経験あるでしょぉ?
 それだけじゃなくってぇ
 仮に異能を持たない複数の兵士に外付けの異能をインストールできたら?
 インストール可能な異能があるとしたら便利だと思わなぁぃ?」

笑顔のままかなり物騒な事をさらっと言い放つ。
くすくすと笑う口から紡がれるのはある意味幻想領域の言葉。
最も彼女にとっては自身の能力の一端を簡素な玩具で劣化再現したに過ぎないのだけれど。

「まぁ各国軍事部が開発してて、喉から手が出るほど欲しいだろうモノの
 負荷の少ないプロトタイプってとこかなぁ?
 その分出力に難があるけどねぇ」

簡単な異能であれ、瞬間的にでも使えるとなれば目の色が変わる国は多いだろう。
勿論、国以外でも。

「一応事前実験では死亡率は格段に下がったよぉ
 というか普通のヒトなら多分使いすぎると筋肉痛やらで動けなくなるかもぉ。
 無理やりに動かしてることは間違いないからねぇ」

その言葉には嘘はない。
実際問題”彼女以外にも”転用可能とふんだからこそ、テストに踏み切ったのだから。

柊 真白 >  
ふーん……。

(彼女の言葉を聞きながら、手首に装着されたデバイスを眺める。
 確かにそうなれば便利だろう。
 自分のような他人の異能を使う異能・能力を持っていても、使うには色々制限があったりする。
 中には制限が軽かったり、そもそも制限などないような者もいるだろうが、それは一般的ではない。
 一瞬とは言え戦場ではそれが生死を分けるのだから、確かに国としては垂涎物だろう。)

大体わかった。

(なんにしても「オン」の一言で発動できるのは楽でいい。
 ダミー人形に向き直り、)

始める。

(直後、銃弾が飛来。
 それを消えたと錯覚する速度で回避。
 不規則に部屋を跳ね回りつつ、回りこむように距離を詰めていく。)

宵町 彼岸 >   
ダミーエネミーは拳銃を数発撃つと即座に単発では意味をなさないと判断したようで
クラスアーミーの名を冠するだけある判断力で
最低限の所作で効率よく相手の動きの先に置くように弾丸をばら撒いていく。
射撃はけん制、動線の誘導に使い堅実に動ける範囲を狭めていこうとするだろう。
そのパーツの無い顔は僅かに遅れているもののその動きにぎりぎりついていっているようで
射線を楯にするよう飛び道具で最も有利なリーチを保ち、相手を近づけないようにするだろう。
その姿を見て彼女は楽しそうに笑った。
いや、実際に見ているのは別の影かもしれない。

「うんうん、解析通り。
 速度系に特化ってとこかなぁ。
 弾丸程度なら単発だと足止めにもならないねぇ」

流れ弾が顔の横を通り過ぎ、片目を隠した長髪の一部を攫っていく。
一瞬だけ露になった左目はぼんやりと発光して見えたかもしれない。
踊るように交戦する二つの影を面白げに眺めながら
その指はすさまじい速度で手元のPDAを叩いていく。
最適化とデータ処理を並列で進めながら決してその視線は二つの影からずらさない。

「まぁあの速度なら掻い潜れると思うけど」

普通に戦えば恐らくダミーの方がじり貧に陥るだろうことは目に見えているが……

「打ち合いになったらどうだろうねぇ」

あのダミーの進化は実際のところ近距離戦での能力に傾けてある。
思った以上の耐久力と出力をもつあのダミーに彼女はどう対処するだろうか。

柊 真白 >  
(なるほど、そこそこ手ごわい設定にされているようだ。
 抑えているとは言え、こちらの速度にギリギリではあるが付いてきている。
 置いてくる射撃に対し、上下左右前後に自信の身体を振り回しながら銃弾を避ける。
 距離を詰めるにつれて、流石に避け切れないものも増えてくるが、そちらは切り払いで対処する。
 こちらの速度と動体視力ならばそれもたやすい。)

――。

(そうして刀の間合いに入った瞬間、刀を抜く。
 データ取りが目的らしいので、これまでの交戦から感じ取ったダミーの力量上限ギリギリに合わせた速度の抜刀。
 もし反応が少しでも遅れれば、あっさりと首が飛ぶ。)