2017/07/04 のログ
宵町 彼岸 >   
抜き打ちで放たれる抜刀にダミーがわずかに上体を逸らす。
その見えない視線はわずかにぶれており、普通の身体構造であれば追撃を放つような揺れ方をしていた。
けれど、追撃を狙うのであれば歴戦の猛者であれば多くが持っている予感のようなものを感じるかもしれない。
相手は人形。故に感情も殺意も無い。
つまり……

「気配を察知する前にノータイムで致死の一撃が飛ぶよねぇ」

上体を逸らすと共に通常その体勢では放てないような衝撃波を伴う蹴り上げが
刀を振り切り力が反転する一瞬の硬直を狙って駆け抜ける。
軍人特有の巨躯と足の長さを生かした必殺の一撃。
回避と同時に放たれるカウンターはもしも当たればそれこそ容易に意識を持っていかれるだろう。
明確に異能を理解し、その特性を生かしたうえで、一撃で意識を奪う……
そんな理論の元に繰り出された一撃は音の速度を超え、空気を鳴らした。

柊 真白 >  
(殺意は感じない。
 ただ、予感があった。
 すでに鞘から刀身が放たれていた刀を無理矢理捻じ曲げ、その蹴りを防ぐ軌道へと変える。
 それでもこの小さな身体は浮くだろうし、見た目どおりの力では衝撃を逃がす事が出来ない。)

オン。

(だから、何のためらいも無くそれを使った。
 自分の身体とは思えない重さと、それを充分に動かせるだけの力。
 副作用がどうとか言っていたけれど、それを考えずに全力で迫る脚へと刀を叩き付ける。)

宵町 彼岸 >   
「わーぉ」

音速を超え、白の少女に叩きつけられた足は
轟音と共にまるで冗談のように少女の持つ刀で動きを止めた。
同時にその反作用で軸足を中心に地面に蜘蛛の巣状のひびが入る。
超高質量の物を蹴り上げ、打ち負けた力は地面を破砕するに十分だったようだ。
それは同時にダミーの軸足が埋まる事を意味する。
あの速度を持つ彼女であれば首を取るには十分な時間を稼げるはずだ。

「えくせれーん♪」

それを見て能天気にも聞こえる調子で称賛の声を上げる。
いくら宙を浮く異能があるとしても空中に浮くとなれば動きをかなり制限される事になる。
しかも近接高速戦闘ともなれば……相当の不利は免れない。
打ち上げられれば地面に足が付くまで一方的に打たれても不思議ではないのだから。
だからこそためらいなく迎撃に刃を振るった判断力は素晴らしいものがある。
同時にただ説明を受けただけの物に躊躇いなくその身を任せる胆力にも。

「それを躊躇いなくつかって打ち合うんだもんねぇ」

加えてデバイスは本人の適正に出力を左右される。
負荷の関係上数秒しか起動を行えないものの……
単純な力比べで打ち勝つ程度の出力を確認できた。
仮に使わず迎撃すれば刀ごと蹴り飛ばされてただでは済まなかっただろうけれど
結果として真逆の状況になったのだから、戦闘センスはやはり目を見張るものがある。
純粋な戦闘データとしても価値あるものと言えるだろう。

「うんうん、やっぱり特化型って汎用性持たせるには良いよねぇ」

素晴らしい物には称賛を惜しまない。それが彼女の作法。

柊 真白 >  
(当然そのスキを見逃す自身ではない。
 返す刀でダミーの首をオモチャのように跳ね飛ばした。)

――。
便利と言えば、便利。

(ダミーが動きを止めたことを確認し、刀を鞘へ納める。
 副作用とやらも、一度の瞬間的な使用ならば特に問題も無いらしい。
 身体の調子を確かめるように動かして、感想を口にした。)

弱点を補えると言うのは良い。
これが無かったら浮かされていたし、流石の私でも空は走れない。
ただ音声認識だと口の動きを読まれる可能性がある。
武器にスイッチつけたり、複数の起動方法を用意するといいと思う。

(淡々と感想を述べる。
 勿論その程度は彼女も承知の上かもしれないが、こういうのは感想を言う事が大事だと分かっているから。)

宵町 彼岸 >   
「おつかれさまー。うんうん、思ってた以上に良いデータとれたよぉ
 ふふー。満足満足。色々改善点も見えてきたしぃ。
 でもぉ……んー、やっぱり起動方法は複数あった方が良いよねぇ。
 軍人さんは規格化好きだからそこがネックなんだよぉ……
 まぁトリガーアクション採用すればいいんだけどぉ」

後半は独り言になりながら賛美を表すようにぱちぱちと拍手をしながら歩み寄る。
今回の想定は低級クラスの異能を所持した兵士を想定したデータのため、
この相手にこうも軽く勝てるなら大体の相手に後れを取る事は無いだろう。
最も現状では目前の彼女の身体能力と判断というオプション付きで
初めて真価を発揮する製品になっている。
やはり最後にものを言うのは何処まで行っても経験値だ。
現状のままでは納品しても事故を起こす未来しか見えない。
もっとも起こしても彼女にとってはどうでも良いのだけれど。
とりあえず調整中のパフォーマンス程度に公開しておこうと脳内で少し予定を変更する。

「うんうん、協力ありがとねぇ。すっごい助かったよぉ。
 やっぱり使用感っていうのは貴重なフィードバックだからねぇ」

うんうんと頷きながら投げていた白衣をばさりと音を立てて羽織り
改めて椅子に腰かける。
そうして少しだけ首を傾げて……

「で、ほーしゅーだけど、
 これ使いたい?」

一介の学生(と思しき相手)に軍用品を報酬として提示してみる。
無邪気にトンデモ発言をする辺り
本当にこれの価値が分かってるのかと突っ込まれてもおかしくないかもしれない。

柊 真白 >  
どういたしまして。

(短く答える。
 正直軍の事はあまり詳しくない。
 それでも規格化が便利だと言うのはなんとなくわかる。
 物によって使い方が違うのは不便だし、同じものを揃えれば使いやすいのだから。)

――これ。
特定の異能を無効化もしくは弱体化させることは可能?

(彼女の言葉を聞き、腕に装着されたデバイスの画面をしばらく見つめてから。
 正直貰っても設定とかは良く分からない。
 彼女に協力もしくは対価を支払って、都度設定してもらってもいいのだけれど。
 それ以上に気になることは、それだった。)

宵町 彼岸 >   
「ん―……ランクの低い異能とか物理的に付加するような物なら
 相殺できない事は無いよぉ?
 特定のコレ……って限定してもらえればその分
 精度とか出力も上がるけどねぇ」

椅子に腰かけて足をゆらゆらとさせながら気軽に応える。
よどみなく回答する辺り、その用途に関しても想定しているのだろう。
というより……

「だってそれ劣化品だもぉん。
 ぶっちゃけデバイス形態じゃなくても動かせるしぃ
 いちいち初期化とかめんどくさいでしょぉ?
 汎用性捨てたらもっと特化させられるもん」

ほんわかとした笑顔でさらっとぶっちゃけた。
要は一番の完成品は彼女自身の玩具なのだから
それをわざわざ軍なり国なりに流すつもりは正直ない。

「なーに?消したい異能でもあるのぉ?」

そのまま小さく首を傾げて相手の瞳を見上げるように覗き込んだ。

柊 真白 >  
そう。

(異能のランクについては分からないけれど。
 あれはそんな低級な異能でもないだろう。
 短く答える顔は、きっと落胆の色を隠しきれていない。)

――別に、なんでもない。
それじゃあ、これを報酬として貰う。

(彼女の問いかけに首を振って否定。
 とりあえずこれは便利だ。
 劣化品と言えど、咄嗟に使える事には変わりない。)

これ、異能の種類は変えられる?
なんなら引き続きモニターしてもいい。
必要ないなら代金は払う。

宵町 彼岸 >   
「ふぅん」

言葉少ない返答と裏腹に滲む濃い落胆を宿すその表情を見上げ、
のぞき込むその瞳に一瞬何かを察したような光が走る。
そうして何故か透明な笑みを浮かばせた。

「ん、これ(劣化版)で良いの?
 もう少し便利にできるけどぉ
 あと内容に関してはもちろん変えられるよぉ?
 万能ってわけにはいかないけどぉ」

けれどそれは一瞬の事で、またにこーっと何も考えてないような笑みを浮かべ、
けらけらと楽しそうに笑い声を響かせる。

「長く使うつもりならいくつか注意しとくけど、
 異能の種類によってその内容が変わるんだよねぇ
 だから先に希望があるなら聞いておくよぉ?
 クラスによってはそだね―……
 何かお願いする事もあるかもぉ?」

なまじ金銭にあまり興味がない分割と適当だったりもする。

柊 真白 >  
――。
便利にしてくれるんなら、その方がいい。

(彼女が何故笑顔を見せるのかわからない。
 軽く首を傾げて、とりあえず返事。
 より便利になるのならその方がいい。)

内容が変わる、って言うのはどう言う事。
希望――今はこのままで良い。

(そもそも使えるようになる異能は何があるのかわからない。
 とりあえず今のものは、一瞬とは言え自身の欠点を潰せるのでかなり使い勝手がいい。
 しばらくこのまま使ってみて、何か不足を感じたらその時変えてもらうとしよう。)

何でも言ってくれていい。
出来る限り協力する。

宵町 彼岸 >   
「んーとねぇ」

ツイと座っている椅子の下に手を差し込み、何処からともなくケースの様なものを取り出す。
その中には数枚の結晶状の小さな板の様なものが入っていた。
その中の一枚を取り出すとダミーが握っていたナイフを拾い上げ、握りこむと……

「つまりはねぇ、こういうこと」

無造作に壁に向かって投げつけた。
力の欠片も感じられないような、そんな軽い調子で投げられたそれは
けれど金属が震える重低音を響かせて深々と壁に突き刺さる。
同時に大質量の物が叩きつけられたかのように壁にひびが入り、轟音を響かせた。
その数秒後……ナイフはまるで崩れるかのように形を失い壁には亀裂と深い刺痕だけが残った。

「質量系だとノーセーブで使うとその分の質量の消失を引き起こしたりとか……
 加速系だと体機能破壊しちゃったりとかするんだよぉ。
 でもその負荷を考えないなら……」

(ハイクラス相当も可能なんだよねぇこれぇ)

人差し指を唇に当て、小さな声で悪戯っ子のように囁く。
それは本当に無邪気な、玩具を前にした子供の様な表情。

「だから、その代償を別の何かに付与すればいいんだよぉ。
 もしくはそれを補う機構をつけるとかねぇ?
 でも代償が無くなるわけじゃないから、注意点は常に守る必要がある……
 それをちゃんと理解するなら好きに使っていいよぉ?そんなとこぉ
 その後は勝手にこっちでデータ取らしてもらうからぁ気にしないでもーってとこかなぁ」

柊 真白 >  
――要は、ちゃんと加減して使えってこと?

(流石に腕とナイフの速度に差があり過ぎて目で追えなかった。
 轟音の後にゆっくりと壁を見て、彼女の方へ向き直る。
 代償を別の何かに付与――つまり、押し付ける。
 どこかで聞いたような話だ。)

設定でリミッターみたいなものは付けられるのなら付けて欲しい。
自分で加減しろってことなら何とかするけど。

(流石に外付けの異能で自爆とかは勘弁して欲しい。
 万が一が無いとも限らないし、それならば最初から制限をかけていた方が使いやすい。)

あと、これはどちらかと言えば私からの依頼なんだけど。

(真っ直ぐに彼女の目を見て。)

解析して欲しい異能がある。
まだどうなるか分からないけど、お願いしてもいい?

宵町 彼岸 >   
「そそ。話が早くて助かるよぉ。
 キミの場合は具体的には大体一日に多くても3回ってとこかなぁ。
 意外と負荷に耐性あるみたいだしぃ。
 さっきのデバイスとか普通に使ったら今頃立てない位体力使ってるはずだもん」

使用後にサラッとえげつない話を公開するが、そもそも之の用途はそれで良いのだから。
的確なタイミングで使用し、対処すらさせずに一撃で屠る……それこそがこれの正しい使い方。

「あ、あと連続使用は1時間に2回までね?
 それ以上制限考えずに使った場合は最悪ぅ……」

キミが消えちゃうかも。
そう口の動きだけで告げると小さく人差し指を手に当て秘密ねと無邪気に笑みを浮かべる。

「その代わり片手で大型トラックを止められる程度の出力は保証するよぉ。
 刀に埋め込み式にしてあげるから、さっきの難点もクリアできるしぃ、良いことづくめでしょ?」

要は切り札を適切に切ればいい。ただそれだけの事。
そこから先は使用者の問題で、彼女の問題ではないと割り切っている。
たとえどのような願いでそれが振るわれようとも。
暗にその言葉を含ませながら真っすぐに見つめられた瞳を見上げる。
少しの時間じっとその瞳を見つめ……

「ん、良いよぉ?
 その時が来たと思ったら好きに連れてくればいいと思うの
 面白い異能ならちゃーんとみてあげるぅ」

ふわりとほほ笑み言の葉を綴った。

柊 真白 >  
一日三回、一時間に二回。
分かった。

(充分過ぎる。
 元より自身には一撃必殺しかない。
 無駄な戦闘をする方でもないし、一時間に二回と言う回数制限も問題ない。)

それは、ちょっと困る。
使い勝手は変えたくない。
手首も違和感が出るから――首に巻けない?

(出来れば手首の周囲は開けて起きたい。
 居合いと言うのは結構手の感覚が重要なのだ。
 出力に関しても充分――と言うか若干過剰ではあるけれど。)

――本人は連れてこない。
私がその異能を使って、それを解析してもらう。
誰の異能かは言わないし、詮索しないで欲しい。
許可もらえなかったら、無しになるけど。

宵町 彼岸 > 「まぁ別に本人が良いなら好きに使えばいーと思うけどぉ。
 ”もう少し長生きしたい”ならーくらいかなぁ?」

本人にとって長寿などが望んだものではないという事はもう
”知っている”けれど。

「一応使用感も変えないようにはできるよぉ?
 ”そういう風に作ればいいだけ”だしぃ。
 まぁ希望があるならペンダント型でもマフラー型でもよゆーですよぅ?
 ボク天才だもぉん」

敢えて口には出さないし別に知りたくもないだろう。
似たような能力を保持しているなら猶更、知られたくないだろうから。

「……ふぅん。大事にしてるねぇ。
 まぁ、うん。いいよぉ?
 気が向いている間は付き合ってあげるぅ」

白薔薇の冠に殉ずるというのであればそれもまた一興。
綺麗なものは好き。それを造り守るものも。
面白ければ、それで良い。

柊 真白 >  
まだ死ぬつもりも無い。

(別に望んでいないわけではない。
 望んでいるわけでもないと言うのは、人間と同じだ。)

物理スイッチがあるだけでも変わるから。
首輪みたいなやつがいい。
ちょーかー、だっけ?

(ある、と自覚しているだけでも違和感が出る可能性がある。
 出来れば武器に手は加えたくない。)

わかった。
恩に着る。
――そろそろ帰る。
ちょーかー型デバイス、出来たら送って。
これ住所。

(頭を下げて。
 帰る事を注げて自分の住所をメモに書き、そのページを破って手首から外したデバイスと共に彼女に渡す。
 そうしてくるりときびすを返し、訓練施設を後にした。)

ご案内:「訓練施設」から柊 真白さんが去りました。
宵町 彼岸 >   
「うんわかったー。ここに送ればいーんだねぇ
 届いたらテキトーに使えばいーと思うのぉ
 それじゃぁまったねーぇ」

軽い雰囲気のまま去っていく彼女を見守る。
その後ろ姿を見送ると、おもむろにドアを閉め、
映像記録の保管等の退室処理を進めると
閉じたドアに寄りかかるように背中を預け、呟いた。

「ボクがザミエルじゃない保証はないんだけどね。
 君の最後の弾丸は誰を射抜くか楽しみだよぉ。
 ……まぁ面白いから何でもいいかぁ……それに」

”きっと全て忘れてしまうだろうから。”

そう呟くとゆっくりと瞳を閉じ、
いつの間にか真横に佇んでいた漆黒の人形の腕へと倒れこんでいく。
それはふわりと彼女を抱きとめると優しく抱え上げ、訓練施設から音もなく去っていく。

「君の魔弾の射手を大切にね……せめて亡くしてしまう前に」

そんな小さな誰かのつぶやきは夜の闇に微かに響き、溶けて消えていった。

ご案内:「訓練施設」から宵町 彼岸さんが去りました。