2017/10/23 のログ
■HMT-15 > 「その事については賛同する。
実際、キミの方も忙しいみたいで。」
訓練スペースへ歩みを進めるロボットが
一瞬理央の方を向いてそう伝える。
風紀委員の活動状況については逐一チェックしているようで
もし彼が人間であれば冗談めいた笑みを浮かべながら
放った言葉だろう。
「特に問題はない、
カタログを見れば載っているような機能だ。」
理央の質問に少し距離が離れたからか
すこし音声のボリュームを上げてそう答えておく。
むしろ今後、任務を共にする場合も想定して
一つ見てもらっておく方が良いかもしれない。
そうして訓練スペースへと下りれば
歩みを止め見た目的にはしばらくの間動作が停止する。
そしてしばらくの時間がたてば訓練場の全ての照明が一旦落ち
暗闇に包まれた後、約一秒ほどで回復する。
<不明なハードウェアにシステム操作権を譲渡。
特殊訓練プログラム12XXXを起動。
準備完了までお待ちください。>
どうやら訓練場のシステムに少しグレーな方法で
アクセスを試みたようである。
すると理央の方へ顔だけ向け
「失礼。暗闇は苦手だったか?」
一言だけ放つ。
■神代 理央 > 「おかげさまで、毎日学業と委員会活動に充実した日々を過ごしているよ。流石に試験前くらいは彼等にも大人しくしていて欲しいが」
僅かな苦笑いと共に彼に言葉を返す。
そんな他愛のない話を続けながら、彼が何をするのかと興味深げに眺めていたが―
「…停電、ではないか。イチゴウ、何かしたの――」
一瞬訪れた完全な暗闇。直後に復旧した照明の明るさに眩しそうに目を瞬せつつ彼に言葉を投げかけるが、響き渡る音声に口を閉じる。
「…成る程。いや、流石にこの歳で暗い所が怖いなどとは言わないよ。気にせず、訓練を始めてくれ」
僅かに首を振って彼に答えれば、壁に背を預けて観戦の姿勢を取る。
ひらひらと手を降って、此方は気にするなと示しているだろう。
■HMT-15 > 「人間に限らず生物は暗所が苦手だと思っていたが、
キミは強いんだな。」
復旧した照明の眩さに参りつつ返してきた理央の態度に
少し驚いたような様子と共にその一言。
正直このロボットの知識の認識がいちいち極端すぎるのも問題点である。
<特殊訓練プログラム12XXX準備完了。>
このロボットに負けず劣らずの無機質なアナウンスが
この場を支配するとまず瞬時にスペース内部の空間拡張が行われる。
元の面積の3~4倍の大きさになった所で拡張が終了し
床面のあちこちに穴が開く。
そしてその穴から這い出てきたのは何とイチゴウと同じ形の機体で
量産型HMTであるHMT-13、
背部にランチャーと思しき物体を装備している。
その数は軽く20。
<実弾仕様の対戦車HMT及び複数の武装ドローンの
展開完了、訓練開始。>
けたたましいアラート音が3回ほど反復されると
イチゴウが居るフィールドを覆うように
安全のための高レベル術式で組まれた魔術防壁が展開される。
丁度理央はその外から眺める形になるだろうか。
20機ほどの量産型が一斉にランチャーの発射準備を
完了させ数秒間フィールドに沈黙が流れる。
■神代 理央 > 「暗い場所の方が落ち着く…という程でも無いが、元々嫌いではないからな。それだけのことさ」
更に言えば、学園内でも比較的安全な部類に入る演習施設であること。同僚である彼がいること。それらを複合すれば、停電ごときに怯えるまでもない。
尤も、それを素直に口に出すには流石に気恥ずかしさが勝り、僅かに肩を竦めるに留まるのだが。
「同型……いや、量産型か。対装甲戦力の訓練にしては、随分と過剰戦力にも見えるが…」
防壁の外からフィールドを眺めつつ、小さく独り言を零す。
此の島の違反部活がHMTを多数運用するようになれば、他国の介入を招くレベルになるだろう。
とはいえ、異能や魔術を行使する者を従える組織が大半の此の島ではそのような常識も通用しない。
何より、自分自身が出来損ないとはいえ機甲戦力を召喚する異能を所持しているのだし。
そんな思いに耽りつつ、沈黙が支配するフィールドに視線を向け、次のアクションを待っているだろう。
■HMT-15 > 「制圧モードへ移行。」
眩い発光と共にいきなり背部に彼の全長ほどの
巨大なガトリング砲が出現し
いつにも増して歩く際の金属音が重々しいものとなる。
イチゴウが機械音声でモード変更を呟くと
それに返答するかの如く恐ろしい数の量産型から
次々とミサイルが放たれ
その弾頭は第三世代MBTの装甲をも抜き得る。
しかもその数は一機につき2発の計40発。
それだけなく180度ワイドな角度であらゆる方向からやってくる。
無論、常識的な兵器なら一瞬で消し炭になるが
「システム、"アイアンウォール"起動。
火器管制装置問題なし。」
そう宣言すると同時にいつもは頭部の動きと
連動しているガトリング砲が独立射撃を開始する。
それは雨のように降り注ぐミサイルに対し
正確かつ極めて素早く優先順位をつけさらに
容赦しない照準で40発の鉄の矢を次々と迎撃し
イチゴウの目の前では正に爆発のカーテンがかかっているよう。
またそれだけでは終わらず20機の対戦車HMTも
正確無比な砲弾に晒されミサイルの迎撃と
平行して量産型が次々と鉄屑と化し宙に舞う。
そうしながら演習は第二フェーズへ移行し武装ドローンが
出撃を始めるがその素早いガトリング砲は
高速かつ高精度な攻撃で
ドローンを"出撃したと同時に"叩き落としていく。
<訓練終了。>
イチゴウが射撃を終えれば砲身は回転を停止し
シュウウという音と共に煙があがり
眼前には原型がほぼ失われた鉄の塊が散乱するのみ。
■神代 理央 > 「…さながら、陸上稼働のイージスシステムといったところか。或いは、陸上駆逐艦と表現するべきか?いやはや、チャーチル卿の夢此処に極まれりといったところか」
訓練の様子をしげしげと眺めていたが、目を奪われるのは派手な爆発や巨大なガトリング砲――ではなく、その命中率と脅威判定を計測する火器管制システム。
20世紀後半から21世紀にかけて合衆国艦隊の栄光を支えたイージスシステムを彷彿とさせるその能力は、正に陸上のイージス艦と言っても差し支えないだろう。
面制圧の為に大量の異形を召喚し、敵味方関係なく弾幕を形成する砲兵地味た自身の異能とは違い、洗練された現代火器の実力を垣間見た事に感嘆の溜息を吐き出すだろう。
「落第街やスラム街では、本来彼の様に単騎での制圧能力を有した戦力の方が向いているだろうな。此方の異能は、小回りが利かなすぎる…」
そんな独り言を呟きながら、訓練終了の音声と同時に、凭れ掛かっていた壁から身体を離すだろう。
■HMT-15 > 「通常モードへ移行。」
訓練を終えればイチゴウの背部が再び発光し
今度はそのガトリング砲が消失する。
また安全対策の魔術壁も理央が離れてそれほど経たずに跡形もなく消える。
「そこに目をつけるとは素晴らしい。
確かにボクのアイアンウォールは縮小させた
イージスシステムと言える。
さらにこのシステムは人間の表現で”必殺技”というらしい。」
理央の漏らした独り言を受け
ロボットは訓練スペースから上がってくる間にそんな話をする。
単純な火力ではなく精度に目を付けた彼に高い評価を下しているようで。
「何も自身を卑下する必要はない。
あらゆるものは適材適所、現に掃討できる範囲に
関してはキミの足元にも及ばない。」
彼の異能はいわば残弾を気にしなくていい自走砲、
損害を受けても異能ゆえに再復活は早いのかもしれない。
敵からすれば補足しにくいうえに無限に降り注ぐ
砲弾の豪雨。正直想像したくはない。
■神代 理央 > 「必殺技、か。確かに、あらゆる遠距離攻撃を物理的に無力化し、正確無比な脅威判定で範囲内の敵を殲滅。そのシステムを搭載し、携行火器レベルのミサイルを装備していれば大口径の砲塔など必要無くなるだろうからな。敵からすれば、悪夢以外の何者でもあるまいよ」
此方の重要な戦力は無力化され、有効射のみを尽く撃ち落とす。
そんな敵と戦う等、現場の兵士からすれば悪夢でしかないだろう。極端な話、このシステムさえあれば自動小銃ですら最新鋭の対空火器と同等になるのだから。
「とはいえ、僕の異能はさながら旧世紀の共産国家地味た砲兵戦の様なものだ。君の様に、的確な火器管制を行っている訳ではないからね。有象無象の複数相手なら兎も角、高い戦闘能力を有した個人には相性が宜しくない。味方も巻き込みかねないしね」
範囲内の建造物や、味方の損害を気にせずに良いのならば十全の力が発揮出来る。だが、此の島ではそのような機会は中々得られないだろう。
また、機動力・火力・高度な命中率を発揮するシステムを有した彼は単騎でも異能や魔術を持った相手と戦闘可能だが、自分は正直単騎での戦闘は不得手だ。
彼の言う通り自分を卑下するのは良くないと理解しつつも、此の島で委員会から求められる戦力とは正しく彼の事なのだろうと僅かな笑みと共に言葉を紡ぐ。
「まあ、イチゴウと僕とでペアを組めば多数の有象無象も驚異的な個人も対処可能だろうと、今の訓練を見て確信したよ。同じ風紀委員として、君の様な同僚を持てたのは誇りに思う」
此方が後方から雑魚を掃討した後、本命を彼が叩く。
HMTである彼は人間とは違い砲撃の後の過酷な戦場でもその能力を十全に発揮出来るし、彼の指示で此方が後方から支援を行う事も出来る。
ミニマムな砲兵師団と機甲戦力と表現しても良いかもしれない。その実力を有した彼には、素直に尊敬の眼差しを向けるだろう。
■HMT-15 > 「現時点のキミの異能は
座標を指定しないと扱いづらい代物なのかもしれないが
異能というものは思ってもいない進化をするものだ。
それは誰にも予測できない。」
正直今の異能の力が彼の全てではないだろう。
異能というのは不安定である以上
スペックが決まっている兵器を軽々超えていく
ポテンシャルは十二分に秘めている。
「確かにキミとタッグを組めばかなり戦術を構築し易いのは間違いがない。」
前線を自分が構築し理央が後方から圧倒的な火力で
その前線を強化し敵を叩きのめす。
またイチゴウは実際の戦場で理央の異能を見たわけではない、
よって個人的な興味もあるようだ。
「ボクはそろそろ本部へと戻ろうと思うが
キミはどうする?」
とりあえず機能のテストは終わったので
ここにいる必要性は無くなった。
よってこれからハンガーへと戻るわけだが
もし彼も帰るのであれば帰路を共にしようと。
■神代 理央 > 「…そうだな。風紀委員として任務を果たす為にも、自己の研鑽を怠らない様に努力しよう」
己の強さを求めるという武人的な考えは持ち合わせていない。
ただ、力がなければ為すべきことを為す事が出来ない。
その力とは財力であり、権力であり、そして武力。それらを得る為にも、先ずは異能の強化は果たすべきだろう。
「イチゴウさえ居れば、僕も安心して後方で指揮が取れるんだけどね。今度大規模な掃討戦があれば、是非一緒に任務に当たろうじゃないか」
最近は後方支援でありながら単騎での戦闘を強いられる事も多い。彼の様にあらゆる状況に対応出来る前衛がいてこそ、自分は本来その能力を活かすことが出来るのだから。
「僕も今日は任務も無いし、そろそろ帰る事にするよ。明日からの任務に備えて、早く休まないといけないしね。良ければ、途中まで一緒に帰らないか?」
彼の言葉に同意の言葉を返しつつ、脇に置いていた荷物を取って帰宅の準備を簡単に整える。
そうして彼と帰路を共にする事が出来れば、その道中で先程の訓練の感想や戦術論。そして、カフェテリアの新作スイーツ等、他愛もない話題で談笑する一人と一機の姿があったのかもしれない―
■HMT-15 > 「ボクもキミと共に出撃できることを希望している。
しかしボク達はあくまで兵士というコマであり
出撃の編成を決めるのは上層部。
上層部がその有用性に気づくのを願うばかりだ。」
戦場での編成というのは個人の私情で決められるものではない。
だがイチゴウも彼に興味を抱いているため
任務を共にしたいという考えがあるのは事実だ。
「勿論だ、丁度いい。
それともし足が疲労しているのなら
ボクの背中に座る事を推奨する。」
タクシーの如く自身の背中に座ることを提案する。
同僚に対するロボットなりの気遣いだろう、
こういうのは何度か経験があるため揺れもかなり少ない。
また彼が乗るにしろ乗らないにしろ帰路を共にして
様々な談笑に花を咲かせる事だろう。
ご案内:「訓練施設」から神代 理央さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」からHMT-15さんが去りました。