2016/06/19 のログ
ご案内:「転移荒野」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 樹氷が崩れ落ち,その隣には向日葵が咲く。
この不安定な荒野においても特に安定性を欠くこの場所は,
高濃度の魔力や,場合によっては瘴気が空間に満ちていることもあった。
「………………。」
何も無い空間に向けて,淡く光る指輪を全ての指にはめた右手を翳す。
その膨大な魔力を一挙に解放し,眼前に球体として収束させた。
それが呼び水となって周囲の魔力を,まるで引力によって引き付けるが如く吸収し,
直視できないほどに輝く魔力の球体は急激に膨張していく。
周囲一帯を吹き飛ばしてい終いかねないほどに,しかし驚くほど安定させて。
こんな場所に人がいるなら、の話だが、見えずともすぐに異変に気付くだろう。
大気も大地も震えて,この一帯の魔力が流れ込むように,引き付けられていく。
ご案内:「転移荒野」にリビドーさんが現れました。
■リビドー > 「む。」
ふと、所謂"魔力"と呼ばれるそれの流れに違和感を覚える。
魔力が雑多に引き寄せられていると言うべきか。とにかく自然でないものだ。
「――門か穴でも開いたか?」
童顔めいた年若い風貌の男が怪訝な顔で魔力の流れを追って進む。
その特異点を思わしき所まで辿り着けば、其処に居る男を認識した。
「やあ。キミか。
なにやら異様な事をしている風にも見受けられるが、順調かい?」
■獅南蒼二 > 燃料にも様々な物質があるように魔力も画一ではない。
球体はありとあらゆる色の光を放ち,熱も,冷気も,衝撃も,そして瘴気も,あらゆる現象を撒き散らしていた。
その周囲は幾重にも重ねられた防御術式で固められており,
貴方が視界に獅南の姿を捉えるのとほぼ同時に,さらに1枚の防御術式が展開される。
魔力は僅かながら流入し続けており,術式はその収束された魔力によって維持される。
「……あぁ、順調だとも。
こんな馬鹿げた実験など,学園の中では許可が下りんだろうからな。」
さらに防御術式を展開し,制御のための術式を幾重かに描き込む。
そこに作りだされるのは,魔術的に完全なる均衡と安定。
くるりとそれに背を向けて,貴方へと視線を向け,
「魔術学における不可能は,量的なものと質的なものに分けられる。
量的な不可能を超越した時に,人間は一体どこまで出来るのか,やってみたくてな。」
「………これを私が解放したら、どうなると思う?」
ポケットから取り出した煙草に火を点ければ,楽しげに笑って問いかけた。
■リビドー >
「ふん。ちょっとした質量兵器になるだろう。
意識や技術でなく、あくまでリソースが足りないから出来ないって所を潰す試みか。
それだけでも化け物や英雄と並びたてるなら、と。生まれ持っての魔力親和性や内包魔力量を代替出来るなら。」
集束された魔力を見据え、僅かに眉間に皺を寄せる。
怪訝な表情で一歩ずつ獅南に近づき、結果として防除術式の前まで歩むか。
「――極限まで才能が在るものと同様に成れたのならばどこまで出来るようになるか。
それを試していると睨んだ。そのまま解放するればただの質量兵器となると考えよう。
……キミは、それがあれば何処までできると思っている。」
■獅南蒼二 > 「何の属性も指向性も与えずに開放すれば,1km四方くらいは消し飛ぶかもしれんな。
同時に魔力侵食を引き起こし,環境を激変させるだろう。
……だが,察しのとおり,そんな無意味な使い方をするつもりは勿論無い。」
魔力の結晶を覆う防御術式は複雑にして堅牢。
そして単純に枚数を重ねてあるだけではなく,様々な魔術系統の防御術式が幾多に折り重なった迷宮のような構造になっていた。
強引にそれを突破するのであれば,内部に存在する魔力と同等の魔力をぶつける必要があるだろう。
「分からんからこそ,実験しているのだ。
だが,終局的には,極限まで昇華された魔術学は際限なく不可能を可能にできると,私は考えている。
アンタはどう思う?思い上がりだと感じるか?」
■リビドー >
「極限まで昇華すればそうなるだろう。極限までは昇華出来る。
故に思い上がりとは言わんが完璧になるまい。――完璧な真円を描こうとするようなものだろう。
其れでも十分なものではあるんだろうが、キミのことだ。多分足りない、って思うだろう。」
防御術式の壁を指の甲で軽く叩く。
反応を読めば、どのような防御術式であるかを推察し始めた。
「複雑な術式に加えて"リソースの壁"を組み込んでいるか。
冗長性を重ねた影響でどっかを切ってもどっかで補われる形だな。
いやはや、今でも十分にやるじゃないか。」
■獅南蒼二 > 「要塞の防御と同じ考え方だ。単純な壁では,どこかが破られれば意味が無い。
だが流動的に動かせる兵力を配置しておけば,状況に応じて補うことができる。
魔力がこれだけあるのだから,やっていることは単純さ。」
紫煙を燻らせながら防御術式を解説する。
十分にやるじゃないか、と賞賛されれば、小さく肩を竦めて…
「ははは,“限りなく真円に近い円”と“真円”の間には雲泥万里の壁があるだろうからな。
……だが,満足してしまえばそれ以上の発展は望めない。
足りないと思うからこそ,向上心があるからこそ,努力と研鑽が生まれる。」
煙草を携帯灰皿に入れて,内ポケットへしまい込み…
「いつか私の野心が,この島や世界そのものを滅ぼすことになるかも知れんな。」
■リビドー >
「足りないと思うからこそ,向上心があるからこそ,努力と研鑽が生まれる。
それはボクも同意する。それらのない力など無価値にも程がある。だからある事は好ましい。
――が、滅ぼすと来たか。」
愉快そうに口元を釣り上げた後――そのまま睨んでみせる。
「ふん。キミにしちゃ珍しい思い上がりだな。
元々そうする覚悟が有ったのは承知しているんだろうが――到達点が与える全能感に思いをはせてしまったか?
キミの野心は世界を滅ぼす事ではないだろう。人間を滅ぼす事ではないだろう。気に喰わん。
それでキミが破滅するのがトゥルーだとしても、気に喰わん。」
苛立たしげに言い放てば、各魔力が集積する状況下に於いて土の大剣を精製する。
――リゾーマタと呼ばれる元素概念が。
それらを集積に向かう魔力の流れから奪い返し、武器にしてみせた。
「これ以上の正論は吐かん代わりに少し付き合え。どうせ最後はボクのエゴだ。
ボクが異能者や化け物でないから付き合えんって言うなら、理由を用意してやるが。」
■獅南蒼二 > 「………さて,どうだろうな?
私はこの理不尽な世界に絶望し,全てを破壊して…伝承にある天地の創造からやり直そうとしているのかも知れんぞ?」
苛立たしげな貴方の声や表情,その言葉を聞けば,
獅南は自らの野心を否定することなく,そう言って笑った。
無尽蔵とも言える魔力濃度の下で,獅南はポケットに手を入れたまま,ぼんやりと立っている。
「理由ならすでにある……アンタを使って,実験させてもらおう。
私の野心が,私の努力と研鑽が,私の論理がどこまで,不可能を乗り越えたのか。」
構えることも,空間に術式を展開することもなく,獅南は真っ直ぐに貴方を見る。
■リビドー >
「ふん。どうせ手段も決めていないだろう。
ま、お行儀の悪い神になるのならそれはそれで殴るが。」
大剣を肩に担ぎ、大きく溜息をついた。
そもそも大剣は専門に添えていない。
分かりやすく戦意を示す為だけのものである。
「なら構わん。
――差し当たっては小手調べだ。」
土の大剣を地面に突き刺す。
そのまま地面の深さを己が術式を以って読み取り――
獅南の足を支える地面そのものを10平方メートル程余裕を持って急激に12m程せり上がらせ、
せりあがった後は自ら崩れろと言わんばかりに制御を放棄する。
せり上がるまでは領域外としても、障壁の内部に入り込んでしまえば制御は困難と読んだのだろう。
逆干渉も警戒し、ただ地面をせり上げるだけせり上げてから落とし、地面に叩き付けようと不意打ちを狙うに留めた。
■獅南蒼二 > 「ははは,残念だが滅ぼす方法もまだ分からん。」
貴方が収束させた魔力の属性から大地に関する魔術を行使することは読んでいた。
とは言え身体能力は凡人の領域を出ないのだから,せり上がる地面から逃れることはできない。
バランスを崩して地面についた右手を基準とし,即座に術式を描き直して指向性を固定し足場としようとするが……
「……なるほど単純だが,よく考えられている。」
……貴方が制御を放棄するところまでは計算に無かった。一瞬の間の後,自由落下を始める足元の地面。
浮遊魔術では間に合わない,ならば少しだけ,手を加えるとしよう。
落下のベクトルを,僅かに操作して崩落の方向を,12mの眼下に立つ貴方の居る方向へと,変化させた。
高さ12mの巨大な土の塊が,貴方の頭上へと倒れ掛かる。
■リビドー >
「使わない事もまた選択肢だ。
何でも使えば良いってものじゃあない。」
巨大な土塊を思い切り蹴り飛ばし、丸ごと砕く。
勢いを散らされた土砂が注ぐだけならさほどの問題にはならない。
砂に身体を取られながらも場を離脱して、仕切り直す。
改めて獅南の状態、防御術式の状態と範囲、輝く球体の状態を確かめる。
「人の想像に限りなし。旧友の言葉だがね。
裏を返せば総てをカバーする事は出来んともいえる。
さて、今のキミは何処までカバーできるのかな。」
■獅南蒼二 > 獅南は一切,防御術式の制御を行っていない。
彼が不意を突かれても,着地地に足を捻っても,変化はない。
防御術式は獅南の制御からほぼ完全に独立しているようだ。
「その通りだな…だが,できる,とできない,の間には大きな差があるだろう?
嘗てアインシュタインとオッペンハイマーが当時の世界を滅ぼせる兵器を作ってしまったように,
決して使うことのできない,しかし確かに存在する脅威を生み出すことは……」
貴方に向けて,右手を翳した。
全ての指にはめられた指輪を媒体にして,魔力の球体から無尽蔵の魔力が供給される。
貴方が魔力の流れを見ることが出来るのなら,その手から溢れ出る魔力と,空中に描かれる術式を見ることが出来るだろう。
「……私にも,十分に想像できる範疇のことだ。」
…それはあまりにも単純な,火炎の術式。
それを果てしなく膨大な魔力と術式でスケールアップしただけのもの。
確かに強大な力だが,それはあくまでも,旧東西冷戦時代の再現に過ぎない。
膨大に膨れ上がった魔力と術式は,解放される瞬間まつダムのように飽和し,その時を待つ。
「さて,アンタは繰り返す歴史を止められるか?」
獅南はそうとだけ呟いて,楽しげに笑った。
■リビドー >
「歴史は基本繰り返されるものだよ。
その上で繰り返す歴史を止めるのは英雄や旅人、努力家や勇者の役目だ。」
極大火炎術式とも言うべきか。
目の前に圧倒的な規模で磨かれた術式を把握すれば、舌を打つ。
「とは言え、やらん訳にも行かんか。
――やむを得ん。」
自分の左腕の肉をふたつまみ程引き千切り術式に向けて投げ込む。
――そのまま魔力として扱うには異物足り得る生命力と、己が持つ異なる魔力。
これらを未加工のまま術式内に取り入れさせる事で、エラーを引き起こさせる狙いか。
徒労に終わる可能性も危惧しているのだろう。
投げ込んだ後も追撃などはせずに気を張り、策を練っている。
■獅南蒼二 > 「それはあくまでも結果の話だろう?
歴史が変わる瞬間にその場に居るのはただの人間…
…今のアンタのような,歴史に巻き込まれた1人の“登場人物”だ。」
全く躊躇することなく発動される,火炎魔術。
それは火炎と呼ぶにはあまりに巨大で,周囲一帯全てを焼き尽くすほどの,熱エネルギーの爆発だった。
物理的な炎と異なる点は酸素を消費せず,二酸化炭素や一酸化炭素を排出しない点。
そしてこの火炎魔術も,防御術式と同様に,発動回路が複雑に絡み合っている。
目論み通り,確かにエラーは発生した。だがそれによって術式全体が破綻することはない。
炎は燃え上がり,獅南は防御術式に守られる。
そして貴方は炎に包まれるだろうが…
…貴方の周囲,投げ込まれた肉片の周囲には僅かだが炎の生じるタイミングの遅れる“隙間”が生まれるだろう。
互いの姿は炎に遮られて見えない。
飛び退くも,飛び込むも,貴方の判断に委ねられる。
■リビドー > 「結果があるから想像出来――」
――巻き起こる焔に呑まるる。
その直前、途方もない水蒸気が噴出しただろうか。
周囲一帯の土と水、それと真空状態を引き起こさない程度の空気総てを手繰り寄せて組み替える。
――山脈めいた土と水の防壁を形成し、辛うじて防ぐ。
だが、防いだとしても負傷は激しい。衣服などは全損に近い。
「ち、しくじったが、まだ生きているか。
どうにも最近は燃やされてばかりだな。――全く、やはり俯瞰的な言葉は呪いを呼ぶ。言うものではないな。
つい弱音を吐いてしまったボクもボクだが、あまりその手の言葉は吐くな、よ。」
大地を踏み鳴らし負傷した体に喝を入れる。
呼吸を置いた後、術式を行使する。
「――お返しだ。喰らっておけ。」
防壁をそのままに、"空気"を形成する要素そのものに目を付ける。
――一帯の、自身の周囲1m程度を除いた空気全てを"火"そのものに組み替える。
少し聡いのならば気付くだろう。
リビドーの使う術は物理的な現象に寄っていると。
且つ制御を放棄すれば、ただの自然現象として零落するものであることを。
聡いのなら気付くだろう。
空気を火に変えてしまえば、酸素が無い故に物理的な現象としての火は続かぬと。
レジストするまでもなく火は消えると。
更に聡いのならば察するだろう。
狙いは火炎による攻撃でなく、真空状態を形成する事による空間破壊と酸素消失による窒息である、と。
■獅南蒼二 > 獅南の読みは,炎を貫いて攻勢に転ずるか,もしくは飛び退いて体制を立て直すか。
そのどちらでもない貴方の行動と,それを成し遂げる力には,獅南も目を細めて…
「シェルターを作ったか……原始的で単純だが,非常に優れた魔術だ。
だが,単純に飛び退いた方が被害は少なかったかも知れんな。」
いや,必ずしもそうとは限らない。
現にリビドーは今,あの爆炎すら凌いだ防壁に囲まれており,
2人の距離は一般的な魔術の射程圏内に留まっている。
さらに言えば,術式構成に僅かながら時間を要する獅南よりも,リビドーの魔術発動は,速さで勝る。
「…………ッ…、やってくれる!」
初撃から,リビドーの扱う魔術は現象を“再現”するのではなく,物理世界に干渉しているものだと,気付いていた。
自己の生み出す魔力の炎と,物理世界の存在する炎との差異は,無論,理解していた。
そしてその先に齎される結果も,同様に。
空間を埋め尽くす炎は獅南の白衣を,そしてその肉体を損傷させる。
その炎を吸い込まぬよう,獅南は咄嗟に呼吸を止めた。
炎に焼かれつつ,さらに1つ獅南は深読みする。
初撃がそうであったように,この炎もまた,制御されぬ無垢の炎であろうと。
ならば,この炎は敵でもあり,同様にして味方ともなり得るのだと。
「……………!」
実験と称したこの戦いに,いかほどの意味があるのだろう。
だが,己が目指す高みにその手をかけるために,僅かも躊躇は無い。
獅南はあまりにも単純な術式を展開した。
“転送”
周囲の空間から空気を,継ぎ足してやる。
圧縮された酸素を取り込んだ炎はさらに燃え上がり,リビドーをも包み込むだろう。
尤も己もまた,その炎の余波に焼かれるのだから,ただでは済まなかった。
■リビドー >
「――空気の類は限り全てを浪費したつもりだが、在るな。
先程の話だが、跳び退いてどうにかなる規模と思わなかっただけだ。
避けた所で歴史は繰り返すだけであるし、高めに見積もっても損はない。さて。」
ただただ飛び退くだけで捌き切れないと踏んだ故の真っ向防御。
それだけだとの意を含め告げ返しつつ、身を灼く事を承知で土の防壁を組み替える。
――組み替えた土を巨大な篭手として右腕に纏わせれば、地を蹴って炎の中心へと飛び込む。
炎の外からでも、巨人の彫像のような石の腕を伺う事は出来るだろう。
これ以上の消耗戦は互いに危険だ。
故に決着を付けんと迎撃を承知で拙速に奔る。
注ぎ足されている空気の周囲に殴りたい奴は居るのだろう。
目星を付けた上で獅南の姿を探り当てれば――
「――オ、ラァツ!」
飛び掛った勢いを丸ごと乗せて腕を振り下ろし、獅南を狙う――!
■獅南蒼二 > 「アンタの判断は全く正しかったようだな。
それと,私が使ったのはただの“転送”だ……空気など,どこにでもあるものだからな。」
声帯を焼かれたか,声はしゃがれていた。
炎に焼かれた身体に,もはや相手の一撃を回避する力はない。
同様にして,対抗する術式を構成するほどの時間的余裕も無かった。
だが,痛手を負っているのは相手もまた同様。
そして,炎に映る影は貴方の次の行動を明確に教えてくれた。
「全く酷くやられたものだ……が,負けてやるつもりは,僅かも無い。」
術式を構成することも無く,飛び退くことも身構えることも無い。
ただ、静かにポケットに手を入れて……ごく自然に,流れるように,取り出したM1911の引き金を引いた。
炎を意味するルーン文字,カノを刻んだ弾丸は,空中ですでに炎を纏い,火球となって飛翔する。
炎を突き破り,それを僅か身体に纏いながら飛びかかるリビドー。
振り下ろされる拳を掠めて,炎の弾丸は貴方の胴に迫る。
拳が獅南に打ち下ろされる,弾丸が貴方の身体に迫る。
「………がッ…ああっ…!」
獅南は後方へと吹き飛ばされ,仰向けに倒れ伏した。
■リビドー >
拳と弾丸が交差する。
迫る火球弾はリビドーの胴体を焼きながら射貫く。
土石を纏う巨大な拳は獅南を思い切り殴り飛ばす。
「――っ、く!」
痛みに呻き、そのまま地に転がる。
渦巻いていた炎も、燃やすものがなくなれば次第に落ち着くか。
――そも転移荒野ともなれば、酸素以外に必要な要素――燃え移るものも非常に限られる。
倒れ伏し、仰向けに転がり直す。
「全く、梃子摺らせてくれる……だが、一発殴ったから満足としよう。
――魔術を極限まで極めるのは構わんが、だからと言ってこの世界は無視できるものではない。
魔術で全てを成す。魔術のみを以って不可能を可能にするのは構わん。
だが、それで総てを蹂躙するようなことは、お前の嫌う化け物じゃないのか。ったく。」
極度に消耗し、声が枯れていようがしゃべり倒す。一応の論理はある、ある、が。
言わなきゃ気が済まんと駄々をこねる童のような振る舞いにも見えるだろうか。
■獅南蒼二 > 倒れ伏したままに,獅南は貴方の言葉を聞いた。
反論するでもなく,ただ,僅かに笑んで……
「……はははは,全くお前の言う通りだ。すまなかったな,リビドー。
魔術を知らぬ者にとって,この馬鹿げた魔力が理不尽な力であることは十分に承知しているよ。
だが……知りたいとは思わんか?」
ポケットから煙草を取り出した。
地面で燃えていた流木から火をもらい、静かに吸い込めば煙を吐き出して…
「私が信じ,全てを捧げ,究めようとしている力。
私が憎み,全てをかけて,打ち倒そうとしている力。
どちらが強く,どちらが生き残るのか。」
「傲慢と言われるだろうが,私はただ,知りたい。
才能の無い,魔術師の出来損ないがどこまでやれるのか。」
防御術式に守られた魔力の結晶。結局,その膨大な魔力は殆ど消費されぬまま,ここに在る。
獅南がパチンと指を鳴らせば,防御術式に隠すように仕込まれた,高位の禁術が発動する。
恐らく,魔術師を志す者なら,誰もがその存在を知っている術だろう。
「……流れに逆らうな。」
膨大な魔力が解放され,周囲が光に包まれる。
その光が収まった時,そこには樹氷と,向日葵が並んでいるだろう。
【時は遡った。すべては無かったこととなり,痕跡も残らない。】
戦闘が始まる前と,異なるのは,ループを避けるために獅南が細工した1点のみ。
記憶だけが,2人の中に残っただろう。
■リビドー >
「はっきり言っておく。
ボクからすりゃどっちも平等に同じものだ。
ただただ理屈が違うだけだからな。そんな事、考えもしないよ。
くだらん事を聞くな。キミにしたってアンサーは決まっているだろう。この戯けが。」
――再び不機嫌そうに吐き捨て、上身を起こす。
苛立っているのはタバコの煙のせいではないでしょう。
「ま、やってみろ。
少なくともボクはお前を出来損ないと思わんよ。
知識、貪欲さ、意志――肉体的なスペック以上のものを持っている。
それに比べたら生まれ持っての魔力親和性や内包魔力量など、誤差だ誤差。」
精神論の言を叩き――
「逆らわん。大分気に喰わんが、
殴った事に免じて黙っておく。」
――行うことを、受け入れたでしょう。
ご案内:「転移荒野」からリビドーさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から獅南蒼二さんが去りました。