2015/09/28 のログ
■蒼穹 > …え、ちょ。それは問題だよね!?
はいはい、分かった分かった。んじゃはいこれ。メントス。
(世間一般では所謂アレな人が多いらしい。そりゃもう可愛いし綺麗な笑みだったけれども。
魅了の魔術とか抜きにしても眠らせて…ごほん。
取り敢えずポケットからミント味のメントスを一つ。差し出した。)
変われないのは良い事さ。私だって、変わったけど、変われないし、変わらない。
さぁ、いつだっけなぁ…このやりとりをしたのは。今だって変わらないさ。それほどにはね。
(ただ、変わらないと言えば彼の見た目もそうだろうか。自分もそうだが。
下手すれば幾百の年を越えているけれど、未だにそれが彼だと、そして己が己と認識できる、
そんな風にも変わっていない。まぁ、一番そのままなのはやはり性格なのだが。
皮肉気だが、何だかんだ言ってというところは、まるでそのまま。…頑固ともとれるが。)
理屈で考えるんじゃないのさ。感じるんだ。なんて言ったもんだと思うけど。
力の行使や魔法の行使ってさ、もう私と一体になっちゃってるのよ。
ほら、喋る時にどうして喋るか、どうやって喋るかとかいちいち考えないでしょ?あれと同じ。
(自分の見解を述べながら、えいえーい、と自重もなく右に左に引っ張ってみる。
なんともすべすべで触り心地が良いのだが、多分相手からすれば迷惑他なるまい。)
仙人の、仙術の思想だったっけ。
よく分からないけども、龍って言うのを力の流動に、と。
龍《りゅう》と流《りゅう》を掛けたのかな。
…ま、洒落は兎も角。分かったけどもよくわかんない!
(ふふんと、楽しそうに頬を伸ばしながらにやにや表情を伺うわけだが、
一切淀み歪みなく、声が伝わるのは大体何時もの事。
原理は未だに理解していないが、つまり彼の声はそういう物なのだと解釈している。
現に、木々の間に切れる事もなくクリアーに声が伝わっていたのもそういう事なのだろう。)
ああ、そういう。
確かにあそこはなんでもありの場所になってるよね。
1日置いたらまるで別の様相に。…修行、…あっはは、それこそ相変わらず、だね。
もう何歳なんだよキミ…まだそんな事やってるの。
(初めて会ったのがいつごろか、そしてあれからどれくらい経っているか。
普通の人間として置いたら老年をとうに超える月日が経っている。
けれど、未だに飽くなき研究心を携えて、それが衰えない何か尋常ではない力の鱗片と、
それを裏付けるような表情。それに、少しばかり呆れたような、安心した様な半笑いを向けて。)
ん、あ…了解了解。
怒らないでよ。メントスもう一個あげるからさ。
(そろそろ不機嫌になってしまいそうかも、とすっと手を離して。
御機嫌取りにもう一個メントスを取り出した。尚、ミント味。)
■梢弧月 > ふっ、わしほどの紅顔の美少年ともなれば惑わされるのも仕方あるまいよ
それに人が練った丹薬ごときでどうにか出来るほどやわな体しとらんしの
うむ、いただこう、口の中がすーすーしおるわ……
(ふふんと自慢げに胸を張り、差し出された菓子を確認もせずにひょいと口の中に放り込み
そして想像していた甘味とは違うミントの風味が鼻へと抜けていくと物凄く微妙な表情に)
さて、何年振りに逢うたのかもイマイチ思い出せぬが数十年では利かぬのは確かだのう
おぬしと知り合ってから幾百もの夜を超えたが……変わりもせず、時の流れに磨耗もせずに出会えて良かったよ、蒼穹
(時は人を変えると言うが、人でなければ変わらぬかと言えばそうでもない
長命な存在が最初に削られるのは情緒だ
時の流れにすり減らされた心は小さな感動を見つけるのが難しくなってしまう
それが積み重なればいつしかこの世の全てに興味が持てなくなってしまう
ならばこの瑞々しいほどに活き活きとした友人は得がたい出会いであったのだろうな、と、口には出してやらないがそう思う
一生口には出してやらないが)
そういうのを達人とか境地と言うのだがなあ…
まあ隣の山の木々は青く茂るよう見えると言うしおぬしなりの苦労はしているのだろうが
未だに式を編んではばらしてと試行錯誤しておる身としては少々妬ましくもあるのう
(左右に思い切りひっぱられればフスーと吐息が漏れる
口ではこう言っているが、その式を編むのに試行錯誤している時が一番イイ笑みを浮かべるタイプの人間であり
たとえ目の前の相手と同じような境地に達しようが続けるのだろうが)
ふむ、興味があれば講釈の一つも打ってやってよいのだぞ?
今のわしは教師だしの
おや?おぬしは学生の蒼穹くんではないか、いかんのう、教師には礼儀を払わんと
(と、意地の悪い笑みを浮かべるとケタケタと笑い声をあげて)
さて、千を超えた辺りで正確には数えておらぬし、時の流れの違う場所で過ごした事もあるからのう
さてアレから何年がたったのやら
しかしわしは足を止めぬよ
仙人とはそういう生き物よ
この道の先になにがあるのか…己の手がどこまで伸ばせるのか
狂おしくもそう願い続け、根源への道行きを歩み続ける滑稽な生き物でな
足を止める時が来るとすれば、それは最早ただの抜け殻になった時よ
穏やかな川よりも激流で泳ぐ魚の方が泳ぎ達者なのは道理
緩やかな風の中を舞う鳥よりも嵐を切り裂いて飛ぶ鳥の方が翼の扱いが巧いのは必然
ああ、ならば…ならばそう、この幾重もの運命が享楽的に踊り狂うこの常世で天地自然の理を読み解く事が出来れば
根源に向かう道行の役にも立とうというものであろう?
(穏やかに、まるで語り聞かせるように言葉を紡ぐ
それは遠くの故郷に思いを馳せるかのような郷愁すら感じさせる切なる願い
しかしその瞳はどこか遠く、果てしなく遠いがゆえに唯人には闇としか見えぬ彼方を映していた)
む、仕方ないのう、許す
今度の授業でコーラメントスして溢れなければ合格とかやってみようかの
(ククク、と笑みを浮かべて袖へとメントスをしまいこむ
先ほど見せた虚無に近い瞳の人物とは同じとは思えぬほど俗っぽい、いたずら小僧…もとい、イタズラジジイのいやらしい笑みで)
■蒼穹 > いや、それは知ってるけどさぁ…。何だろう、世の中おかしいって思わない?…こう、うん。何でもない。
…あっはは、そういうもんさ。気に入ったならもう一個あげるけど?
(はいはい、と自慢そうな彼を流しつつ、さっとポケットに手を掛ける。
彼の表情を見るに、どうにもメントスのミント味は誰が食べても不評の様だ。
といって、自分自身外れだと思っているのだけれど、甘いけど、口が変な感覚に。
甘い意外に何とも言えないハーブのソレが口を襲うのは、頂けないだろう。
それはともかく、あの笑顔一つで人が突き動かされるのだから一体この世界はどうなっているのやら。
確かに魅力的な美少年とは思うが、あまりに短絡的すぎないだろうか。)
下手すりゃ数百超えてるってね。いやぁ、人間の感じる昼と夜っていうのはあまりに短い。
存外私らからすればそんなに長い時間でもなかった、のかもしれないね。
今はすっかりこっちの時間間隔になれちゃってるけど。
…あー、あっはは、デレた。珍しい。
(指を差して悪戯に笑う。
感情を、人という物に近しい物を持つ者は、人であろうがなかろうが、時を経ると変わってしまう。
再開、という物を喜ぶには、人であろうがなかろうが、その者としての面影があったらばこそ成り立つもので。
時間の流れは、色々な物を作り変えていく。日本人的な感覚で言うなら万物流転と言うのが一番的確だろうか。
ひっそり隠してしまわれた言葉は気付いてか気付かずか。
「ま、私も会えてよかったとは思うけどさ。」と、臆面もなくにっこりと言って見せる。)
達人の境地じゃあないのさ。
刀を持つ達人じゃなくて、既に刀と一体だから極める必要さえないってところかな。
さあ、どうだろうね。最近はでも、結構面倒事も多い、気もするけどね。
力があるだけじゃ、面倒事をどうにかできない事もある。
それに、式を自分で考案するっていうのも、楽しいでしょ?
(最も、お金持ちが貧乏人の働く様を見ているのと似ているのかもしれないけれど。)
わー、職権乱用だー!
あっはは、礼儀を払うなんてやなこった。
ま、良かったら授業は取るよ、単位くれるなら、ね?
(片目をぱちりと閉じて、あどけなくもあざとい笑みを返して見せよう。
ただし、効果の程はたかが知れているだろうけれど。)
ん、じゃあ私と同じくらいかな。無限歳。若しくは測定不可能。
それだけわけのわからん日にちを達してまで、まだ求め続けるの。
根源が、一体何か分からないけど、何処まで行っても、それこそ無限遠に手を伸ばすくらいの道のりじゃないかな。
…それが、キミの生きがいで、生きる目的、なんだろうね。
活き活きとしてなきゃ、いずれ腐ってくる。それは、神仙共に同じだろうさ。
滑稽って言えば滑稽だろうし、そうでないと思えばそうでない。
ま、影から応援してるよ、力を貸して上げられるかは分かんないけど。
キミの足が止まりそうになった時には、また背中を押してやるくらいはする。
といっても、この分じゃキミが足を止めることなんて、ないだろうけど?
(遠目を見遣る彼の視界を遮って、また見せつけるかのような、悪辣で悪戯な、どうしようもない嵐の様な笑みを向ける。
青黒く除いたその深淵を覗き込むのではなく、暗澹とした永劫の闇に飲まれる訳でもなく。ただ、気紛れに、通り過ぎて。
気紛れな己は、彼の切望を何処まで理解しているのか。その深さを何処まで理解しているのか。)
…あっはは、やっぱりメントスって言えばコーラがセットに出て来ちゃうのかな。
確かダイエットコーラなら15m程の噴水が出来るって書いてあったけど、どうよ。
(学校の先生がこれって少々問題なのではと、今更思うのだが。
そこは、己も悪戯っ子である。加担するようにそんな入れ知恵をしてみて。)
■梢弧月 > 人の欲望など生きる活力の発露でしかないからのう
食欲しかり性欲しかり金銭欲しかり
それをイチイチ気にしておっては俗世になど降りれぬわ
うちなんか凄いぞ?ちっとまえの皇帝とか妊婦拉致って来て腹の中の子の性別当てクイズで盛り上がったりしとったしな
あれにくらべれば、かわゆいものよ
(気にした風もなく肩をすくめて見せ、差し出されたメントスは素直に受けとり
やはり口に入れては眉根を寄せる
嫌ならやめればいいのに止めない辺りは嫌では無いのだろう
なお、彼の語るちっと前は紀元前の王朝のエピソードである)
星の瞬きが如く儚く、しかしそうであるがゆえに時にわしらには思いもよらぬ速さで変わっていく
今やもう失くしてしもうた感覚よなあ…
ふん、言っておれ
(ぽろりと己の口から漏れ出てしまった言葉を拾い上げられ、笑われてしまうと腕組みをして拗ねたように体ごとそっぽを向き
付け足された言葉が聞こえれば、横目に視線だけをやって
もう一度、ふん、と鼻を鳴らす
表情が微妙に笑みの形に変わっている事には気付くかどうか)
ならば言い方を変えようか、達人の憧れる境地である、とな
ま、わしほどともなれば本気で妬ましいとも思っておらぬがな
うむうむ、繋がらぬかと試行錯誤しておった線が繋がり形になった時などそれこそ小躍りの一つもしてしまうくらいにな
結局は好きでこうしておるのよ
真面目に授業を受けるならばきちんと単位をくれてやろう
それにおぬしに先生と呼ばれるのはそれはそれで楽しそうだしの
(笑みを浮かべれば不意を討たれたかのようにさっと顔をそらし…
ぶふっと吹き出した、妙なツボに嵌ったらしく顔を真っ赤にしている
笑いで)
さあてな?
この世の全ての真理があるという
願いが全て適うという
この世界の神になれるともいう
自分が望むがままに世界を新造できるともいう
全てがある…が、ゆえに何もないと言えよう
もしかすればそこに飛び込めば無に還るだけやもしれぬ
しかし止められぬのがわしら仙道という生き物でな
(くくっと堪らぬといった笑みを浮かべる
それは趣味で身を持ち崩し、しかしそれこそが通人よと己の仕方なさを喜ぶ酔狂者の笑みと同質のそれで)
うむ、そうさなぁ力が必要とあらば遠慮なく言わせて貰おう
足が緩む事などありえんと言いたいところだが…そう見えた時は甘えさせて貰おうかの?
(自分に対する絶対的な自負は足を止める等ありえない、自分は必ず根源へとたどり着くと揺らぎはしない
しかしながら、ほんの僅か、ほんの僅かながらありえないと思いながらも友の好意という、この世の何よりも甘く感じる言葉には甘えた言葉を返してしまう
人であって人でなく、人を辞めながらも人であった部分が捨て切れない
梢弧月とはそのような人物であった)
ふむ…今教えておるのは空間圧縮技術、つまり見た目より遥かに内部の広い容れ物を作る技術でな
それを受け止められるほどの物が作れれば単位の1つもくれてやろうさ
さて、わしはそろそろ行くとするよ
そろそろ月が天頂に昇る、その時間帯でなければ出来ぬ仕込みがあってな
(と、空を見上げ、いつの時代も変わらぬ青白い光を地に落とす月を見上げ…
はたと気付いたように視線を降ろし)
おお、そうだそうだ。月にちなんだ良い酒があってな
今度月見酒と行かぬか?
(と、唐突にそんな提案を)
■蒼穹 > そうだね。何かしたいっ!って、思わないと生きてけないんだよ、人も、人でない者も。
三大欲求は人ならではだけど、私だって壊したいっ!って、そういう欲求が常に付き纏ってる。
キミだって知りたい!極めたい!って、そう思ってるんでしょ。それが、生きてる証だよ。
例え、命が尽きない種族でも、永遠と活き活きしてる事は出来る。
…それにしても、何だそりゃ。…腹の子の性別当て?…ろくでもないなぁ、それ。
拉致にクイズ、人間はやることえげつないね。私よりえげつないんじゃないかな。
(まずい!おかわり、と言った具合にまた一つメントスが減った。
己なりの見解を述べるが、人間の欲求こそ底を突かない気がする。)
星って言うのも不思議なもんだよね。
…まー、それにしても。光陰矢の如し、だっけ。絶妙な比喩を相変わらず使いよる。
だー。誤魔化すんだ。そりゃあ寂しい。
(やれやれ、と肩をわざとらしく竦めてみる。
にやけ顔を、横目に見せつける如く。ただ、寂しいと言った風はまるでなかった。)
あっはは、達人の憧れる、か。それは、どうだろうね。
ん、つっても私は私でキミはキミでしょ。お互い出来る範囲って違うのよ。
ああ、それ、人間の言葉でアハ体験って言うんだっけ。
ま、こうキタ!っていう達成感があるんだろうね。
えー。私は真面目に授業なんか出ないの知ってるでしょ。それに、先生とも呼ばないだろうし。
あ、コラ。何がおかしいのさ!
(笑われて、咽られたらしい。…いや、そこまで獣であるとか、思ってないし。
乙女にたいしてこれは失礼ではないだろうか。むすっとした顔にて問い質しつつ。)
色即是空空即是色《オールイズヴァニティ》ってヤツでしょ?知ってるよ。
この世は空虚であるし、この世は実体でもある。
この先、無限遠の事を見据えるだなんて、生死について考える不毛さと一緒だと思うけど。
…キミは、神様になれるかな。本当の意味で。
(実に、酔狂な考え方だった。知識欲を満たしたいと、自らそれを率先するのだから。
空虚かもしれないと知ったとしても、それを分かっていながらも止められない。
まるで、死が何か分からないから死んでみようと、それくらいに酔狂に映った。
だけど、彼は止めたところで止まらないし、止める気もない。
寧ろ、これくらいに狂おしいからこそ、面白い人物なのでもあろう。)
あっはは、了解了解。
…知っているさ。キミが歩みを止める事を止めないってね。
(それでも、その冗談めかした申し出でさえ、こう言う真面目な話で断らないのは、彼なりの在り方だろう。
浮世離れ、俗から離れて仙道を歩くけれど、孤独を好むわけではない。人らしさの残る人物像。)
…ああ、なんかあった。私もそれ便利だって思うけど。
前にそんな術か異能を使ってた人見たかも。…考えておくさ。答えは出来たら聞かせてよね。
お、そっか。じゃあ、これで。…お疲れ。
(彼の月見は、どれくらい続こうか。
久しくあったが互い変わらぬままに。)
あはは。そんなの持ち合わせてるなんて抜け目ないね。
私は酒には強いけど、酔わせないようにだけ、注意してもらおうかな。
んじゃ、その時には月見団子でも持っていこうかな。
了解。
(向き直りもせず、背を向けたまま緩く敬礼のシルエットを青白く光を落とす中に浮かばせて。
ちょっとした諸注意を述べた後、後ろ手を振って、そのまま山の何処かへと。)
ご案内:「青垣山」から蒼穹さんが去りました。
■梢弧月 > 構わぬよ
おぬしが時の流れで擦り切れぬ事なく居てくれるように
わしはそう簡単には壊れぬでな
もしもおぬしが堪え切れぬのならば受け止めてやろうさ
(ふ…と笑みを浮かべ、慈愛とも呼べる物を瞳に浮かべ)
おぬしの欲望のはけ口にな
(と、酷い言い回しで口にした
偽りではなく本心で、友人であるというありがたさを噛み締め
万感の思いを柔らかな声音を乗せて、言い回しだけは最低だった)
さて、わしも行くとするかの
(引き返して反撃を食らわぬうちにと歩を進める
一歩、また一歩と踏み出す度にその姿はチラつき、掻き消え、数十m先に現れる
短距離の空間転移を繰り返し山中を見る間の内に駆け降りて行く
ある程度の洞察力を持つ者なら気付こう
それは空間を渡っているのではなく、梢の隙間から差し込む月光の中を渡っているのだと)
ご案内:「青垣山」から梢弧月さんが去りました。
ご案内:「廃神社」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
■谷蜂 檻葉 > 「……ま、やっぱり気のせい……か。」
今日、授業を終え普段なら図書館に向かうタイミングで檻葉は空を飛んでいた。
昨日、島の外から来た少女―――篠森との会話の間に”視えた”光景。
遠く彼方までくっきりと見える蒼天。
黄金が落ちる夕焼け。
満天の星空。
それを探して、それが今も見えるのか、空を飛んでいた。
けれど、何処か違う。
何処にでもあるはずの空の景色は、この島で見ることは出来なかった。
―――あれに一番近いのは、
再放送のドキュメンタリーとしてテレビに放映されていた田舎の光景だろうか。
外国だったか、日本だったか……。
どうにも記憶が定かではなかったけれど、ずっと昔の空が"ああ"だったのだと。
でも、そんな『空』を私は知らない。
そんな『空』を、飛んだことがない。
彼女には、「空を飛ぶのは爽快だ」と言ったけれど。
あの、排ガスの汚れが全て取り除かれたような透き通る空に比べたら、
歴史の汚れを受けていない、あの空に比べたらこの飛行は、なんとも思えないものでしか無い。
「……………。」
霞がかった月を見つめれば、その手前、蛍のように月光に踊る妖精たちがこちらに手を振る。
それに、気だるげに手を振ってまた前を見つめて思索にふける。
■谷蜂 檻葉 > 空を飛んで飛んで……
一番景色の良さそうな場所を、と。
学園地区から遠く離れた山の中まで来た所で
ふと見えた、ぽっかりと木々が避ける場所に降り立ってはや一時間。
記憶を辿って、ぼんやりと木々の間と空を交互に眺めていた。
「いつから、なんだろう………。」
”最近”、何かと人に尋ねられることが多かった。
髪の色だとか、魔術のことだとか……。
以前にも、少し話した事はあったはずなのに、不思議なものを見る目で尋ねられていた。
そして、それを話す度に『何か』が引っかかってはホロホロと粉雪のように形にならずに散っていく。
それが、何かとても大事なことのようで。
けれど、それ以上に何もとっかかりがなくて。
ほんの少しの引っ掛かりが緩やかにその張りを無くしていっていた。
■谷蜂 檻葉 > 多分、きっと。
何か別の形にならないような不安とか、漠然とした無気力感が寄り集まってこんな感情を引き起こしてるんだろう。だなんて、自己診断をしてみるのだけれど。
いずれ無くなるだろうこの思いが。
この思いがいずれ無くなるという事実が、チクリと胸を刺していた。
■谷蜂 檻葉 > 寂れた神社の石段から立ち上がると同時に、音もなく風が山から吹き降りる。
その風にかき乱されて、月を隠していた霞が千切れていき
白い光が、一人ぼっちの舞台を照らす。
(いつからだっけ)
振り返った先に、影が一つだけ伸びているのが無性に物悲しかった。
(私が、一人で居たのって)
その感情を振り払うように視線を移して、学園地区の灯りを見つめる。
■谷蜂 檻葉 > 「帰ろっか。」
それでも今は、一人じゃないから。
灯りに向かって、一直線に緑色の線を引きながらかつての神社を後にした―――
ご案内:「廃神社」から谷蜂 檻葉さんが去りました。