2016/06/01 のログ
ご案内:「青垣山」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
■谷蜂 檻葉 > 夜。
遅くまで水平線に居残る夕日も、遊び疲れて海の果てに姿を消した頃。
人通りの途絶えた山道の途中、落雷で崩れ落ちた大きな木の残骸が、
僅かに踏み鳴らされたその横で静かに横たわっていた。
ある時は道を進む若者が休憩に、ある時はその虚に雨宿りをした小動物がそこに訪れる。
そして、またある時は―――
「はぁ……心地いいな、やっぱり。」
身体の線が見えないような、微風にたなびく緩やかな装束を身にまとった妖精が腰を下ろして独りごちた。
地を離れる事を是とした少女は、時折思い出したようにこの静かな老木の元で腰を下ろしていた。
月に数度、いつしか友人と催した「劇」の役者のように着飾って。
何をするわけでもなく、静かな時間を過ごしていた―――。
ご案内:「青垣山」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 > 夜。
誰もいない場所。
明かりはなくて、暗いくらい黒。
でも目がなれれば、そんな世界も光が浮かぶ。
街、では決して見れない空。その輝きはまぶしくも感じる。
この前大きな落雷があって。木が折れたのを覚えている。
そこを通れば、”稽古場”だ。
「………………? だれか、います?」
この山に、この時間には誰もいないはず。
なのに、誰かいたということは。獣かそれとも――?
訪れた、者は。休みに来たのではなく――
走ることしかできない”少女―わかもの―”だった
■谷蜂 檻葉 > 遠目に見れば誘蛾灯にも見えなくもない優しい緑光を背負いながら、ふと聞こえた声に首を傾ける。
「?」
けれど、視線を向けた先にあるのは 闇、闇、闇 ――――
常人にあらずとも、『判らない』恐怖に心を擽られる檻葉は、ふとこの状況で阿呆な思考に寄り道をする。
『なんだかこの感じ、小説で読んだな。』
誰か、は解らずとも声を聞けば年端の行かぬ……いや、自分と同じぐらいの年代の少女だとは判る。
そんな少女が闇の中、遠くに見える幻想的な(自画自賛ではなく、客観的な感想だ。一応。)
光景に声をかける……
ええと、確かこんな感じに
「……問うのであれば、名を名乗るが良い。娘。」
決まった。
完璧だ。
悪ノリが過ぎたことに頬を染めるまで、後十数秒――――
■伊都波 悠薇 >
『え、やばくない? ちょっと、はるっち、こりゃ頭土地くるってますよ、バーサーカーってやつですよ!!』
叫んだのは、携帯ストラップ。
何事かと目を丸くする。
すごく、中二病な人がいる。
これは――
『いや、同類じゃねぇから。はるっちはもっと分別だし。想像の方向性がまったくもってちげぇし』
ぴしゃっと否定が入る。小雲雀は優秀だった。
なにはともかく。
「……あの」
うん。
「すごく、かっこいい台詞ですね?」
なんて返したらわからないので、すごく困った顔で。思った感想を告げてみた
■谷蜂 檻葉 > (マジ返し《ボケ殺し》―――!!)
やられた。
瞬時に鋭く突きさすような言葉に頬がジュッと熱を帯びる。
僅かな光では、その色の変化が解りづらいのが不幸中の幸いか。
「……ん”ンッ……。 そう、思うのなら、先の一人芝居は要らないと思うのだけれど?」
喉を鳴らして、取り直し。
少しだけ刺々しい口調で、肩を竦める。
「それは兎も角、こんな遅くにどうしたの? この先はずっとずっと暗いわよ。
貴方は "ヒトデナシ"なのかしら? それとも、"成らずモノ"?
異界の麓の先だなんて、只の生徒なら夜が深まる前に帰ることをお勧めするけれど?」
朽ちてなお、雄々しさを感じる大きな倒木の上に立って見下ろすようにして少女に問う。
ご案内:「青垣山」に金良 楽さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
「……一人芝居?」
何を言ってるのかという表情。首をかしげて。
仕方がない。コミュ障に、そんな器用なことができるはずがない。
「……? 人でなし? ならず者……? 異界の麓?」
首を横にかしげて。なんだろう。
聞いたことのない言葉が羅列される。ここは自分の家が近い。
そんな話聞いたことはない。
「……あの、ここはその稽古場っていうか」
気圧されたように、一歩下がった
■金良 楽 > 「ありゃ?こんな時間に人がいるなんて珍しいなぁ」
脇道からのっそりと、細身の男が顔を出す。
ジーパンにシャツ、頭にはタオルが巻かれている。
「どうもこんばんわ、怪しいモンじゃございませんよ……
って言っても説得力無いか」
アハハ、と能天気な笑い声である
■谷蜂 檻葉 > (―――何か、食い違いを感じる。)
しかし、けれど。
諦めればそこでコミュニケーションは終了であり、疲れたような半眼になって言葉を重ねる。
とはいえ、今の彼女は特段交流に飢えているわけでもなく。
「『ただの何の力もない子が迷ってきたの?』って聞いたのよ。
まったく、調子が狂うわね。 それで、稽古場って言ったの?
……こんなところにまで来るなら、素直に演習場にでも行けばいいのに。ま、別に人の勝手か。
お好きに稽古でも何でもしててちょうだい。
私は、ただちょっと此処で休憩してただけだから。」
そんな、どこか突き放すような言葉を放ってまたゆっくりと倒木に腰を下ろす。
かつて人の胴体ほどの太さの枝があったであろう木の瘤にもたれるようにして。
―――チラチラと、伊都波を視線の端に捉えたまま。
■谷蜂 檻葉 > 「………本当、全くだわ。」
ほぼ同時、脇道から突然現れた青年に難しい表情をすると小さく呟いた。
千客万来という奴だろうか。 自分もまた、この木の客であることだし。
■伊都波 悠薇 >
(……ひ……また人が増えた)
増えるのは別にいいのだけど、一人だと思っている場所でこうも立て続けだと、困る。
なにせ、学校では準備ができる。心構えができる。
でも、今は違う。一人のつもりだった時の、不意打ち。
すぅはぁっと、深呼吸をして――
「こ、こんばんは」
これ以上ないこわばった顔で、挨拶。
笑顔のつもり、それでもやはり怖い。
「……――」
力がないといわれた。間違いはなし。間違いなく、伊都波悠薇はだれよりも力がない。
でもだから――
「一番家からここが近いんです。すぐ、そこの屋敷ですから」
好きにしろと言われれば、ちらちらとこっちを見る女性を気にしつつ。
『ちらちらみてる、見られてる……そんなのでドキドキする趣味ははるっちにはございません!!』
携帯ストラップは騒ぎながら。
少女も気にしつつ、ゆっくりと稽古の準備
■金良 楽 > 「ああ、あのお屋敷、君の家だったのか」
少し感心したように言う
この山に来るたびに度々目にしていたが
まさかこの少女が住んでいるとは
やがて彼の背後からガサゴソと音が聞こえ
猫がひょっこりと顔を出した
■谷蜂 檻葉 > 「…………。 それで、貴方は迷子? それとも彼女の追っかけかしら。」
伊都波を視界に捉えながら、金良に問いを投げる。
間違っても、この山は―――ないしこの場所は人通りの多い場所でもなければ目的を持ってやってくる場所でもない。 不意の邂逅にしては奇妙な男に、訝しげな視線を送る。
猫に視線を一瞬奪われたのは誰にも気付かれはしないだろうけれど。
■金良 楽 > 「やぁ、ただの根なし草の変り者
とでも言っておこうかな」
ケラケラと笑いながらそう言うと
「ま、この外れで野宿をしていてね
何やら声が聞こえてきたからちょっと来てみたんだ」
■谷蜂 檻葉 > 「……そう。」
自分の身を棚に上げて、一から十まで違和感の塊である。
けれど、ソレ以上の情報を持たずに居るだけの男に注視するのもそこそこにして、再び首の収まる位置に顔を向けて伊都波を観察しながら、静かに口を閉ざした。
■伊都波 悠薇 >
「……あ、はい。一人じゃなくて家族と住んでるんですけど」
服を脱ぐつもりだったのだけど、今は人がいる。
だから、さらし一枚になるわけにもいかない。なにせ男がいる。
女性、だけだったらわんちゃんあったかもしれないけど。
『露出へきかぁって疑われるぜ、はるっち』
気にしないようにしてたのに、と心の中でつぶやきつつ。
ただ、いつもの場所に位置を取る。
ただ何もない。倒れた木から、ちょうど10歩の位置。
談笑も、悪くはないが。今は焦りのほうが強い。
そんな風に時間を費やしてもいられないので、お言葉に甘えて訓練をする。
『ふしゃーーーー』
携帯ストラップは猫に、威嚇をしていた。
もしかしたらマスコット的な意味で危機感を覚えたのかもしれない。
「せぇ――っ」
稽古をする、ただの突き。
基本の型を復習していく。が――
誰が見てもその力量は。素人に毛が生えた程度で――
■金良 楽 > 「せいが出るねぇ」
なんともジジムサイ事を言う男
これでも19なのだが……
「なーご」
足元の猫が、やや抗議したような声を上げた
「え?腹が減ったって?
もう少し待ってくれよ、ピート」
どうやらこの猫、ピートと言うらしい
■金良 楽 > 「ま、そろそろ飯にしようか
お二人とも、僕はここらで……」
そういってガサゴソと猫と共に戻る楽であった
ご案内:「青垣山」から金良 楽さんが去りました。
■谷蜂 檻葉 > 「稽古、ね。」
突き、突く、戻して、また突く。
基本の動き。
声を張り、力を流し、突く。
……けれど、武術的というよりはどちらかと言えば、ただ「沿うだけ」の体育にも見える程度の突き。
何遍続こうと成長する未来を想像のできない、『繰り返し』。
強いて言えば、体幹や腕力ぐらいは鍛えられるだろうか。
けれど、色々と渦巻く言の葉を全て飲み込んで静かに伊都波のソレを眺め続ける。
■伊都波 悠薇 >
ひたむきに、努力しているようには見える。
だが――その動きは本当に。無駄なんじゃないかと思うくらい、連連されていない。
きっと、武術家がみたならばこう告げるだろう。
――才能を微塵と感じない。
だが、少女は繰り返す。
ただ、ただひたむきに汗を流しながら。
そして、男性がいなくなったと思えば。少し思うことがあったのか。
「……あの、なにか、変、ですか?」
服に手をかけながら、聞く
■谷蜂 檻葉 > 「いえ、別に?」
ふと、何かの区切りに手を止めて此方に問いを投げられれば、
いつの間にかジッと、まっすぐに見つめたそのままに応えを返す。
「何も、変ではないわ。
綺麗な『繰り返し』よ。 ”稽古”って、そういう稽古なのでしょう?」
■伊都波 悠薇 >
見えるのは羽、翅。
だから、わかる、人ではない。そう、人ではない。
人ではないということは、それだけ知識が深い。
もしくは、自分の”価値観”の外にある可能性。だから聞いてみた。
初めての人だし、気遣いもない、そう思ったから。でも
「……っ――」
きゅっと、唇を噛む。噛む。
繰り返し。そう、繰り返しだ。
だがそこに、プラスを感じない。感じ取れない。
相手は、何も感じなかった。その事実が――
昔は、なにかしら努力の端を、誰かが感じ取っていたのに。
今ではもう、”堕ちた”
頭が痛い。
姉は成長し続けているのに――
自分は、十年近く、この道を歩んで――
この、程度
■谷蜂 檻葉 > 見下ろして、足掻く少女の内心を知らないまま問われればと溜め込んでいた言の葉を撒く。
「まるで、教科書の最初の『1ページ』を見てるみたい。
『初々しくて』 私は好きよ。 そういう直向きさって。
――――ちなみにこの稽古、『何日目』?」
無邪気に、笑いかける。
彼女のことを知らない谷蜂は、目の前の彼女を見て微笑んだ。
■伊都波 悠薇 >
痛い。それが間違いのない事実。
なんで、どうして。
この前少しは、前に進んでいると思えたのに。
自分はまた、進んでいないというのだろうか。
また、おいつけない? いいや、まだ。
まだ自分の稽古が足りないだけだ。まだ、自分が未熟なだけだ。
姉のせいになんて、絶対にしない。全部自分が悪い。
稽古を、通院なんかで休まなきゃよかった。
「……ぇっと」
絶望は、する。当然だ。だから、若干顔色は悪い。
でも、頑張って笑顔を浮かべる。
絶望の淵、笑顔だった姉がいた。だから自分も続け。
「――十年目、です。この稽古は、その。物心ついたときからしてるんですよ?」
笑えてる。だって見本がいた。だから大丈夫と言い聞かせて。
でも、どこまでも今にも、泣きそうな笑顔で。
姉とも似つかない――
■谷蜂 檻葉 > 「あー……それは……その、悪かったわね。 適当に、初々しいなんて言って。」
ピシリ、とまるで形の無い空気に罅が入ったような幻聴が聞こえるような重い発言に静かに顔を覆う。
成長の早い植物達であれば10度もきっちり実を結ぶような、長い長い時間に対する感想ではなかった。
「家族、居るって言ってたっけ。 物心が付いた頃からってことは、その家族に教わっていたのかしら?
お父さん?お母さん―――は、ないか。 お兄さんとか?
女の子だと、その、中々芽が出にくいかもしれないけどそのうちなんとかなるわよ。きっと。」
バツが悪そうに、少し早くなった口調で励ましの言葉を投げる。
■伊都波 悠薇 >
「両親ともに健在。家では父が、今は当代で。姉が、その後継者、みたいな」
気にしないで下さいと、もう一度笑ってみる。今度は少し、ましかもしれない。
「お姉ちゃんは、すごくて。伊都波凛華って聞いたことあります?」
学校関係者ならば知ってる、と思う。もしかしたら”来たて”の人かもしれないけれど。
異邦人、突然やってきた客人ならば聞いたことないかもしれない。
「いえ、気になさらず。聞いたことに答えてくださりありがとうございます」
ぺこり。礼をする。礼は欠かない。それが自分の信条だ
■谷蜂 檻葉 > 「……凜華?
伊都波、凜華? へぇ……あの娘って妹さんが居たんだ。意外っていうか、なんていうか。
あ、もしかして――― あ、いや。いいわ。なんでもない。」
その稽古は誰かに合わせてやっているのか、と口にしようとして。
二度あったことに三度目を予感して口を閉ざす。
「なるほどねぇ、伊都波さん、か。
……そういえば、『名を名乗れ』ーなんて言ったけど私も名乗ってなかったかな。
私は、谷蜂檻葉。 苗字はあんまりすきじゃないし、檻葉って呼んで頂戴な。
常世学園在学三年目の図書委員さんよ。 宜しくね、伊都波さん。」
■伊都波 悠薇 >
「……? はい、妹です。悠薇っていいます。あはは、姉は有名なんですけど、私はその。こんな感じで」
さっきの光景のことを言っているのだろう。
前髪を整えて視線を隠しながら。
「伊都波だとお姉ち――姉と同じになっちゃうので名前で大丈夫です」
ついいつもの呼び方をしそうになったので慌てて訂正。
口を閉じたことには不思議そうに見つめて――
「……先輩だったんですね」
改めてよく見てみる。きれいな人だなぁ。
翅がかわいいなぁ………
そして気づく
………ぱじゃま?
「……もしかして寝るところ、だったとか」
■谷蜂 檻葉 > 「それじゃ、貴方は後輩ちゃんね。 宜しくね、ハルカちゃん。」
最初の邂逅の瞬間に比べれば、だいぶ砕けた雰囲気でヒラヒラと手を振る。
どちらかと言えば、きっとこちらが彼女の『素』だろう、というのがアリアリと感じられる。
「―――?」
寝るところ?
「―――あ、いやっ…違うわよ?ゆったりとした服だけど寝る時用じゃないし、いやこれで寝る時もあるけど、そうじゃなくてパジャマで外に出るほどズボラじゃないし、此処に来る時のお気に入りっていうか、落ち着くからこれを着て来てるっていうか……!!」
疑惑を素早く、執拗に否定する。
■伊都波 悠薇 >
ファーストタッチは、不自然だったし。不意打ちだったから
心配だったものの。目の前の女性が寛容、かつ、こちらに興味? を持ってくれたのが幸いだった。
さすが先輩。一日の長、といったところか。
「夜のお散歩に着ていく一枚って感じですか?」
デートの時はこれって決めている、そういう人がいると聞いたことがある。
自分にはよくわからないことだけれど――
「かわいいですね。似合います。すごく」
自分も馬さんパジャマがお気に入りだからすごく気持ちはよくわかるし、それくらいその服が好きな表れ。いいと思った。
「はい、よろしくお願いします。先輩」
そして、突如。制服に手をかけて、さらりと、服を地に落とした
■谷蜂 檻葉 > 「えっ…あ、うん。そういう。そんな感じの……!」
物分りの良い娘で良かった。
檻葉は彼女に優しくしてあげようと心の片隅でメモに書き留める。
「かわ――……に、似合うっていうのはちょっと嬉しいかな。ありがと。」
同室の少女はひたすら可愛いを連呼してきて、大分いぢめられた。
が、それだけ気に入ってるし、自分でもしっくりきて好みの服であることには違いない。
そして、うんうんと頷いて、視線が元に戻って、服が落ちて、
またピシリと空気が固まった。 主に檻葉の周囲が。
「んっ…?」
(この子なりのコミュニケーション術……風習……何かのメッセージが……?)
脳裏に様々な憶測がラインダンスを踊りだして『稽古』の単語を隠して笑う。
■伊都波 悠薇 >
気分が楽になった。
いつもの恰好。動きやすい、さらし一枚にスカート。
ちなみに最近、さらしをいつものように巻くときつかったりする。
「ふぅ――」
基本の型、空手や武道の準備運動は今ので終わり。
そう、才能がないのはいつものこと。追いつけないのもいつものこと。
でも、がんばらないのは、違う。
努力しない理由にはなりえないし、なにより、まだまだがんばれると言い聞かせて。
「えっと、それじゃもう少しだけ。稽古、しますね?」
古武術。秘伝の型は、ありはする。が、一応練習用のものもあったりする。
なので、練習用の。伊都波流の型をこれからなぞることにしたのだ。
「――ふっ」
やはり、才能はない。丁寧に丁寧になぞるだけ。
観客を喜ばせることといえば、実践的なものが組み込まれてるくらいか。
急所を穿つもの。魅せるではない、殺す、実技。
「……ふっ!!」
ただ、ちょっとした違和感。
本気で、この女が。殺す気で自分の出せるいっぱいを、稽古にぶつけているということを気づく、だろうか
■谷蜂 檻葉 > (そう、そうよね。 稽古をしてたんだものね。動きやすい服装にするのは当然…何考えてるのよ私…。)
ぶんぶんと頭を振って、雑念を払う。
「うん、見てるから。 続けて。」
互いに、許可など要らないだろうからこれは只の会話のツナギ。
彼女が、何を思って稽古をするのか。
何の為の稽古なのか。
彼女と自分しか居ない、他に目に映る興味のない空間で静かに思索に耽る。
彼女の努力は実る未来が見えない。
それは”ちょっとやそっと”の次元ではなく、何かに縛られているのかと疑う程に芽がない。
なにせ、素人目に見ても【何がダメか分からないけれど、これがダメなのは解る】というレベルを、
10年も続けて到達したというのだから筋金入りのへっぽこさ加減だろう。
それでも続けようとするのは、【諦めない】のは何故だろうか。
逆に、『何か』に縛られているからこそ―――
「志だけは一人前 ……なんてね。」
悠薇 には聞こえない程度の小さな声で呟いた。
そして同じ程度の声量で、もう一言。
『遊んであげて』
――闇に揺蕩う精霊が、悠薇の前に”人影”を映す。
幻視の具現。 相対する者の思うがままの影。 だが、それ故に万化。
中身の無い影法師、想いを詰め込む実態のないサンドバッグが悠薇の前にゆらりと立ち昇る。
ご案内:「青垣山」に金良 楽さんが現れました。
■金良 楽 > 「ありゃ?まだ二人ともいたんだ」
先ほどの少女たちはどこに行ったのか、少し気になった彼は再び見に来たのだ
「え、っと……」
呑気な彼も何やら固い雰囲気は感じ取った
片手に持ったコンソメスープを勧めるのを後回しにし
伊都波を見守る
■伊都波 悠薇 >
静かに、静かに。
ただ静かに、習った動きをなぞる。
純粋にただひたむきに。
そして目の前に、影が見える。 あれ、影が動いてる?
「うえ、あ、ぇぇ!?」
止まれない。止まれない。
出てきた影の、喉笛を指がえぐる。
残った手が心臓を穿つ。
だがまぁ、サンドバックだからこそできたことで。
相手が本当の人間であったのなら決まってないだろうけれど。
「――今の先輩の異能ですか?」
――もしそうなら、稽古を手伝ってほしいと。瞳がそう告げていて
ご案内:「青垣山」から金良 楽さんが去りました。
■谷蜂 檻葉 > 「異能―――まぁ、異能かしらね。 私の魔術であり、”私達”の魔術。」
ごめんなさいね、と苦笑する。
――が、その瞳は宙にそのまま霧散する『影法師』に向いていた。
慌てながら、そしてお世辞にも綺麗だとは言えない一連の動き。
けれど、その根底にある『武術の目的』のままに彼女の拳は幻を殺していた。
……幻でなければ、”其処にいるはずの誰か”を殺していた。
「―――今の、お邪魔しちゃったかしら?」
それとも、続けましょうか?
瞳に載せられた言葉に、視線で返す。
■伊都波 悠薇 >
今までと違う、稽古。
もしかしたら勉強の仕方と同じでこっちも、やり方の問題かもしれない。
私たち、ということには気になるけれど。
でも今は時間が惜しい。目の前の先輩が、帰る前に。
「よろしくお願いします」
初めての、他人との稽古に。ほんの少し胸を躍らせて。
少しの期待を、胸に。構えた――
天秤は、傾かない
■谷蜂 檻葉 > 「さて、力尽きる迄に一体何人殺せるかしら?」
再び、『誰か』が悠薇の前に現れる。
ゆらゆらと、立ち惚けるように。 それとも、構えて? 怯えて蹲っているだろうか?
悠薇の突きが、それを仕留める。
突き、殺し、戻す。
突き、殺し、戻す。
突き、殺し、戻す。
突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。突き、殺し、戻す。
幻が死んでいく。
実態のない、仮想の誰かを悠薇が殺す。
殺して、戻して。
繰り返す。
「―――そろそろ、私は寮に戻らなくちゃ。 ルームメイトに心配されちゃうわ。」
■伊都波 悠薇 >
どこまでも、才能はない。
だが、人を殺すことだけは出きてる。何故か。
これが幻だから遠慮がないのか、それとも止めるだけの力量がないのか。
どちらにせよ、新鮮だった。
「……はぁ、ぁ……ありがとう、ございました」
息が切れて、手がだるい。もう上がらない。
でも、楽しかった。
才能も微塵も感じないであろう、楽しくない稽古。
それに付き合ってくれたことに感謝して。
「私もかえ――」
制服を着る前に。
「あ、あの!!!!!!!!」
すごく大きな声で、呼びかける。
制服を着ようとして触れたものに、ちょっとした勇気を出せと言われた気がして。
「れれれ、れんらくしゃき、こ。こうかんしませんか……」
噛みながら。顔を真っ赤にして、携帯を差し出して――
赤いのは動いたから以外にもきっと。
■谷蜂 檻葉 > 詰まるところ、彼女には『発展』がない。
けれどそれは、真の意味での『停滞』ではない。
何も変わらないわけではなく、永遠に『最初の一歩』を踏み出し続けている。
間違えることなく、歩くのであれば『前に進む』。
喋るのであれば『声を出す』。
そして、殺人術を扱うのであれば――――
「満足できたらな良かったわ、どうしたしまして。
それじゃ… 『あ、あの!!!!!!!!』ヒャッ―――な、何?」
彼女に潜む”何か”を見れたような気がして、
彼女なりの収穫を得ていざ帰ろうとすれば急な大声にビクンと肩を震わせる。
そして、その大声に反比例するような蚊の鳴くような声でのお願いに苦笑すると。
「お安い御用、ね♪」
この日、二人の携帯のアドレスに1つずつ新しい名前が増えた。
ご案内:「青垣山」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
ご案内:「青垣山」から伊都波 悠薇さんが去りました。