2015/07/13 のログ
アルヴァーン > 「変なところ?変なところってどこなのか教えて欲しいんだけど…」
ちはやの指が引き剥がされ、あわやシュレディンガーの袴の下が観測されてしまうところであったがしかし、
正義の魔法女装少女を守る運命の時計がBパートの終了を告げるとき、おなじみの力が悪の束縛を引き剥がしたのだ!

「ちがう……そんなはずはない、"ただの"魔法女装少年の力がこんなに強いはずない!」
リグナツァのヴェールの奥の瞳が恐怖に揺れた!
圧倒的な力への怯え!
いやそれだけではない、それはあまりにも美しい光景への畏敬の念でも有った!

「何をしているリグナツァ!ヴェールエクスキューションだ!」
「バカ!分からんのか!こいつはただの魔法女装少年ではない!化け物だ!」
「至近距離からのヴェールエクスキューション以外で倒せるものか!」
臥せっていたアルヴァーンが立ち上がろうとしながら吠える!

たまたま近くに着地したちはやに、その偉大なソウルの持ち主に一歩でも一センチでも近づこうとする本能的な動きであり他意はない!
「他意はないと言っているだろうがッ、襟から服に潜り込む事故件数業界ナンバーワンのこの下等げっ歯類がーッ!」

「くっ…分かりましたアルヴァーン様!」
散り散りになった七色のヴェールを引き戻し、
立ち上る桜吹雪…魔法女装少年エナジーの奔流の只中へと必殺技を打ち込もうとしたその時、リグナツァの脳裏をよぎる一つのイメージが有った!

『『チェリーブロッサム・ハートバイブレーション!』』
そうだ、リグナツァはこの技名を知っている。
この技は、あの時一緒に戦っていた"先輩"の…!
「く、ぐあぁぁぁぁあ!」
わりと太い声を上げながらリグナツァは寮を囲む塀まで吹き飛ばされ、
「いや、この匂いは……そうか!わかった!」
あとすこしでシュレディンガーの袴の下がどちらの状態か観測できそうだったアルヴァーンは位置が悪かったのか星になった!

神宮司ちはや > (自身の渾身の必殺技が犬と悪の魔法女装少年へと炸裂した!
 これがぼくの全力全開といったように、後にはちらちらと舞い散る桜と砂埃が立ち上っている。
 びっくりするほど周囲への被害はない。魔法女装少年の力は悪の心を持つものにしか効果が無いのである。

 いつの間にか小汚いげっ歯類はちはやの肩に再び乗っかっていた。
 星になったアルヴァーンを見送り、腕組みをしてふんと鼻を鳴らした。)

「正義は必ず勝つぽよ……!今日も平和は守られたぽよ。
 アルヴァーン、お前はあまりにも女装少年への欲望をねじ曲げすぎたぽよ。
 その欲望を振り払わない限り、お前は真に女装少年の偉大なソウルを嗅ぎ分けることは叶わぬぽよ……」

(したり顔でなんかわかりきったようなことを言ってみたりする。
 一方ちはやは今自分が起こしたこととその結果に恐れおののいていた。)

どうしよう……これってぼくがやっちゃったんだよね?
ああー、困った……!人に攻撃するような魔法は使っちゃダメなのに……
あのリグナツァさんっていうひと怪我していないかな?
それにこんな姿誰かに見られたら言い訳できないよぉ……

(おろおろと青ざめたまま彼が吹き飛ばされた塀と星になったアルヴァーン、そして自分の格好を見回して顔を両手で押さえる。
 慰めるようにハムスターがちはやの衣服の胸元に潜り込んだ。)

「気にするなぽよ。魔法女装少年はあの程度じゃ死なないぽよ。
 それにああしなきゃやられてたのはユーだぽよ……ああーくんかくんかすーはー」

(おもいっきり自分の身体を嗅がれてひぃっと悲鳴を上げた後、胸元からハムスターをつまみ出して地面におろした。)

アルヴァーン > 砂埃が収まるとともに、リグナツァが吹き飛ばされた辺りが幾度かキラキラ光った。
魔法女装少年エナジーを感じ取れるものであればわかるであろう、変身解除エフェクトである。

そこには普通の…というには少し背の低い、樺色の髪をした青年が塀にもたれかかるようにして座り込んでいる。
「くっ……ここは……そうか、あの時先輩と戦っていた俺は、卑劣な敵の罠に掛かり、実は裏切り者だったアルヴァーンによって操られていたのか……」
流れるような自己認識であった。

「君が…助けてくれたのだな……
くっ…巻き込まれた形の君には迷惑であろうが、伝えねばならぬことが有る…」
ちはやに目線を向ける。いかにもCパートっぽい雰囲気である。

神宮司ちはや > (リグナツァが無事であることが遠目から確認できれば
 大急ぎで駆け寄ってくるだろう。
 同じように座り込み、相手の身体を気遣うように支える。)

リグナツァさん、良かった、正気に戻ったんですね……って言ってもぼくがやっちゃったせいで……
ごめんなさい。それで、伝えなければならないことってなんですか?
あの白い犬のひとが裏切り者……?

(とりあえず習いたての治癒魔術でいたいのいたいのとんでけーをリグナツァにしてみる。
 効果は本当にちょっと痛みが和らぐ程度であるが)

アルヴァーン > 「いや、アレのことは別にいい、放っておいても君の…ちはやの袴の裾に鼻先を突っ込んでいるだけだ」
大したことではないだろう、君ほどの魔法女装少年ならばな……というよくわかんない呟きがおそらくスタッフロールとともに展開に流されていく。

「君の本当の敵は…魔法女装少年を次々と洗脳し、
魔法女装少年エナジーを全て我がものとしようとしている、悪の魔導帝国の女帝は…
ぐぅうう…ッッ!!」
治癒魔術を受けたリグナツァが呻く。

「……いや、その魔術のせいではない……。
彼奴の掛けた呪いがこの体を蝕んでいるのだ…ッ」
必死に、全身を脂汗まみれにしながら最後の言葉を肺の奥底からねじりだした。
「彼奴こそは、君の……」
ちはやの耳元にだけ聞こえた言葉が、どれほど衝撃的だったか。どれほど身近な人物を指していたのかは……
物語のこれからを待つより他はない。

「ごふっ…がはっ……ハァ、ハァ……ちはや。」
「帰って来てよかった……うう!!」
「強い子に会えて……」
がくり、とリグナツァが頭を垂れた。

神宮司ちはや > 魔法女装少年エナジー?悪の女帝……?
い、一体何が起こっているっていうんです?

(さっきの今で急に話が壮大になっていることに戸惑いを隠せない。
 だが治癒魔術をかけたのに苦しみ悶えるリグナツァを見て思わず声をかける。)

し、しっかりして下さい!呪いだなんて……そんな!

(相手の手を握り励まそうとするが、その時に聞こえたリグナツァの囁きに驚愕の表情になる。)

え、そんな……!まさかそんなことって……?!

(一体何を囁かれたかは視聴者もこれを書いている人にもわからない。
 その内物語が進めば明らかになるのだろう。
 がくりと力なく頭を垂れたリグナツァを見て、わっと泣き出したちはやがその体にすがりつく!)

り、リグナツァさああああーん!!そんな!しっかりして下さい!
わあああー!

(これにはかのげっ歯類もそばに寄って顔を俯けざるを得ない。)

アルヴァーン > すがりつくちはやの手の中で、リグナツァの体が光になって次第にその重さを失っていく。
だが、その顔は最期まで安らかで――

『泣いていては駄目だ、ちはや』
『顔を上げたまえ、これが君の守った街だ』

最期の思念がちはやの脳裏へと届くと、ひとりの魔法女装少年の存在した証は、
カラン、と落ちたコンパクトだけになった。

がんばれちはや、負けるなちはや!
既に悪の魔導帝国はこの常世島に目をつけているらしいし、
あとなんだか島の住民には女装適性があるものが多いらしいし
リグナツァと一緒に掴まった先輩とやらも居るらしいし
女帝は君の身近な人物らしいが、
君の戦いは、まだ始まったばかりなのだから…!

ご案内:「ちはやのゆめのなか」からアルヴァーンさんが去りました。
神宮司ちはや > ああ……リグナツァさん……!

(光の粒となって消えていくリグナツァ。その最後の言葉を聞き届け
 ちはやは自身の涙を拭い、最後に残ったコンパクトを胸に抱きしめる。
 顔を上げ横にいたハムスター?へ決意を露わにした表情を向ける。)

ぼく、ぼくなるよ。魔法女装少年に……!
もうこんな悲しいことは繰り返しちゃだめだって、わかったよ……!
すごい恥ずかしいし、全然戦うのとか無理だし怖いけど……
頑張らないと、ぼくの大切な人や街がなくなっちゃうもん……!

(その答えを聞いてハムスターは大きく頷く。)

「ありがとう、ちはやくん。ぽよと一緒にがんばるぽよ!
 きっと君なら正しい魔法女装少年となってそのソウルを輝かせてくれるはずぽよ!」

(そうして少年とハムスターはお互いの手を差し伸べてしっかりと握手した。
 そう、悪の魔導帝国と彼らの戦いは始まったばかりなのだから……――)

神宮司ちはや > (……




 という壮大な夢を見たところでちはやはベッドから転げ落ちて目を覚ました。

 落ちた衝撃のあまりの痛さにその場で呻いてうずくまる。
 ついでに夢の中身まですっかり忘れ去ってしまった。)

んん……でも、なんか変な夢だったような気がする……。

(痛む膝をこすりながら、もう一度ベッドに潜り込んで大人しく二度寝をきめた。)

神宮司ちはや > 次回予告!

悪の魔導帝国と戦うには戦力が圧倒的に足りない!
新たな女装少年ソウルを持つものを求めてちはやはぽよ丸(ハムスター)とともに常世島を駆けまわる。
だがそんなときに新たな悪の魔法女装少年が襲いかかってきて――?!!

『ライバルは氷の美貌』

次回も一緒にチェリーブロッサム・バイブレーション!!!


(※この物語はフィクションです。実在の常世島の人物・団体とは無関係です。)

ご案内:「ちはやのゆめのなか」から神宮司ちはやさんが去りました。
ご案内:「洋館」にジブリールさんが現れました。
ご案内:「洋館」に相模原孝也さんが現れました。
ジブリール > 【その屋敷は住宅街の奥、すぐ傍にある海を高い場所から一望できる場所にある。あえて古臭さを残したとばかりの外観は、持ち主のこだわりが見て取れる。それでも現代的に対応できるよう監視カメラや数々のセキュリティが眼に見える場所に確認できて、威圧感すら漂わせる。
 半分はそんな目的のためにあるわざと見える位置においたそれらも、屋敷の主(代理)を務めている女にとっては見慣れたものだった。
 屋敷の正面扉は古めかしい鉄製の柵、隣にはやはり現代的なインターフォンがあった。】

相模原孝也 > つい昨日に教えてもらった場所に向かって、自転車を走らせる。とは言え急ぎではない。
あんまり急いでは、ケーキが崩れるかもしれないのだからと、早めに出発したのだ。
今日も暑いが、ケーキの入った箱には、店員さんにたのんで冷凍パックを入れてもらったから、悪くなってはいないはずだ。

「ここ……かな? あ、うん。ジブリールってば、すごいお嬢様…?」

キぃッと音を立ててブレーキをかけ、自転車を止める。
どこからどう見てもお屋敷だ……それも、門前からかいま見えるだけでガッツリとしたセキュリティつき。
……なるべく小奇麗にしてきたつもりだったが、

「いっそ制服で来るべきだったかな…。」

そんなことを考えるくらいには気後れしてしまっていた。
とはいえ、このまま足を止めているわけにも行かない。自転車を押して、屋敷の門前まで。
こちらを向いているカメラの一つに、ひらひら、と手を振って見せてから。
目立つ所にある、鉄柵脇のインターフォンを、人差し指で押し込んだ。

ジブリール > 【インターフォンが鳴り響く。2秒ほどして向こう側に反応があった。さらに間を空けること数秒。
 『――お嬢様からお話はお伺いしております。相模原孝也さまですね。自転車は中の扉の前に駐輪してかまいませんので、どうぞそのままお入りください』
 やってきた来訪者たる彼と同じくらいの年齢。声質。そして扉が自動で開いた。】

【正門と扉までは中庭が続いていた。流石に大豪邸というわけでもないためそう距離があるわけではないものの、通常の一戸建てのそれよりは広い。
 扉の前には従者らしい青年が待ち構えていた。きっちりとした佇まいで、頭を垂れる。先ほどインターフォンで応対した人物らしい。
 『ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ』扉を開き、駐輪した後に中へ入るよう促していただろう。】

相模原孝也 > 数秒の沈黙の後聞こえてきた声。多分、自分とそう変わらない年頃だよな?と思うけれど。物言いを聞くに、兄弟姉妹というわけでもなさそうだ。

「はい。相模原です。それじゃあ、おじゃましますね。」

カメラの方にぺこりと頭をさげてから、開いた鉄柵の門の中に足を踏み入れて、門から玄関の方へ。
庭広いなあ、とどこか間の抜けた感想が出てくるのは、一般庶民の感性のせいだろう。

「どうも、こんにちわ。相模原です。」
どうやらインターフォンの方が迎えに出向いてくれたらしい。玄関先でもぺこっと小さく頭をさげて。扉の横に自転車を駐輪したら、必要はないだろうけど、ちゃんと鍵はかけておく。

「おっと、忘れないように。」

自転車の籠に入ってたケーキの箱。それを手にさげてから、促されるがまま洋館へと足を踏み入れて。

「あ、ケーキはお預けした方がいいでしょうか。」

同年代か、少し上くらいに見える青年に、案内の途中で問いかけた。

ジブリール > 【彼はきっちりした様相を保ちながら、再度お辞儀をする。
『申し遅れました。私はお嬢様の付き人をしているヴァンと申します。以後お見知りおきを。お嬢様のご友人とのことで』などと堅苦しい挨拶を長々と続けたあと再び頭を下げる。
『よろしければこちらでお預かり致します。後ほどお運びしますので』彼が差し出すのを待ってから、受け取るよう手を伸ばす。】

相模原孝也 > 「ヴァンさんですね。 本日はお世話になります。」

付き人。付き人って何。あれか、執事っぽいのだろうか。
どうやらジブリールはオレが知っているコミックのたぐいに出てくるお嬢様とかそういうのとは一線を画しているようだ。心してかからねば……主に、昨日みたいな話し方が出来るように。

「じゃあ、ケーキはよろしくお願いします。えーと、それでどの部屋に行けばいいですかね?」

よろしくお願いします、とケーキを手渡す。
箱のなかに入ってるのは、桃のショートケーキだ。
財政上二切れしか買えなかったけど、代わりにチョコプレートがひとつ。【兎より、人魚さんへ】とメッセージが書かれてる奴である。

ジブリール > 【『このエントランスから右の応接室になります。』
 ケーキの箱を両手に持ちながら、そちらまで案内をする。『失礼します。相模原様がお見えになりました』彼が扉をノックしながらそういうと、中の人物はどうぞ、と短く答える。
 扉を開くと、女は椅子に座って待っていたらしい。
 学生服ではなく、ノースリーブの白いシャツと青色のマーメイドスカート。同様に白いブーツ。ピンクゴールドの指輪を嵌めた手を正面で組みながら、来訪者に頭を下げる。
 ……その眼は昨日と違って、白い包帯が巻かれていた。】

「ようこそおいでくださいました。本日は態々ご足労頂き……と硬い挨拶はここまでで、どうか緊張なさらずに普段通りでいてくださいませ」

【付き人を名乗ったヴァンは既に退室していた。準備にとりかかっているのだろう。】

相模原孝也 > 「わかりました。えっと、案内、ありがとうございます。」

なんだか、お礼を言ったりしてばかりな気がする。
やはり緊張していて落ち着いては居ないようだ。ヴァンさんがノックをしている間に、深呼吸。
すー、はー、よし。

「では、お邪魔します。」

開いた扉の向こうに、ひと声かけてから、足を踏み入れた。
目に入ったのは、昨日の水着とは違う、落ち着いているけれどどこか華やかな衣服を身につけた、ジブリールの姿。
昨日つけていたゴーグルではなく、包帯を巻いている様子に、昨日聞いていた目の話がふっと頭をよぎって。

「いえいえ、こちらこそお招き頂きましてありがとうございます…と。そうだな。正直来るまでの間ガチガチに緊張してたから、楽にさせてもらえるなら助かる。」

言いながら。応接室の内装を確認しながらジブリールの方へ歩み寄っていき、

「じゃ、改めて。こんにちわ、だ。ジブリール。 水着姿も綺麗だったけど、今の服も似合ってると思うぜ。」

見えなくても、近くにいる気配はわかるかなあと。腰を追って顔の高さを同じくらいにしながら、にっ、と笑いかけた。

ジブリール > 「せっかく遊び《デート》に来ていただいたのに、堅いままでは何かと大変ですわ」

【応接室の中はすっきりとしていた。大きな個人用ソファが4つあり、手広いテーブルがその中心においてある。何やら色々な資料のある本、時計。それ以外に目がつくことといえば、窓がないことくらいである。】

「あら、あら。ありがとうございます」

【スカートを摘みながら口元を緩ませた。すぐ近くに声が聞こえる。
 昨日は少し高い場所から声が降ってきたのに、今は同じ背丈ほどから聞こえる。彼がしゃがんでくれているのだろうと察して、正面を向く。】


【――合間にヴァンが再びやってきて、小分けされていたケーキと紅茶を持ってきた。無論『兎より、人魚さんへ』と書かれたプレートはジブリールの元へ。
 "おもてなし"としてジブリールが選別したダージリンを淹れたティーポットと、カップを添えて。】

相模原孝也 > 目の具合がどの程度かはわからないけれど、正面を向いてくれたのに、ふふ、と小さく笑い声が漏れた。

「心地よい程度に柔らかに……というのが兎さんの心得だね。 それじゃジブリール。今日は、ソファまでエスコートは必要かな?」

すっと伸ばした手は、見えているかわからないから、ここに手がありますよ、とばかりに、とんとん、と指でジブリールの肩を叩いてみる。もっとも、見えているのなら、その前に掴まってしまうかもしれないけれど。

と、ヴァンさんが入ってきて、お茶とケーキを用意していくのに、はた、と思いあたった。
窓のない応接室に、目元に包帯。正直な話、見えないようであれば……チョコプレートの文字は失策だったかもしれない…!
しかし、聞くにも聞けないしで、ちょっとだけまゆが動いたが、まあチョコプレートが食べられるし問題ないだろう、と結論づけて、気にしないことにした。
…次は気をつけよう。

ジブリール > 「必要は無い……と言いたいところですが、そのお言葉に甘んじさせていただきます」

【細い肩、同様の腕、手。矮躯は肩に触れられると軽く体を揺らした。急に触れられるのには少々戸惑うらしい。
 けれどそんな挙動、心の内は極力出さない。叩かれたその位置から恐る恐る手を伸ばした。位置関係上、その辺りにあるはずだと認識して、彼の手を取ろうとする。
 そのままソファまで誘導されるなら、それもまた甘んじる。】

「……」

【桃の香りと、ほんの僅かにチョコのかおり。よく街のケーキ屋で見かけるプレートが付けられていることが分かった。お誕生日ではないだろう、うん。】

「ヴァン、そちらにあるプレートにはなんと?」

【『はい、"兎より、人魚さんへ"と書かれています。』
 羞恥させる目的は無いが、舌先でプレートの文字を判別したり、今包帯を取ってしまうことは憚られた為の苦肉の策。彼は淡々と業務的に読み上げていた。
 女はにんまりと笑った。】

「……うさぎさん相手なら、泡となって消えることもございませんね」

【などと、意味深なことを揶揄る。】

相模原孝也 > 「悪い。驚かせちゃったかな。」

肩をつついたことへの反応に、やっぱりほぼ見えてないらしいと把握する。というよりも…見えないように、包帯を巻いているのだろうかと思う。

「甘えてもらえるのは嬉しいな。それに値するってのは、自慢にもなるし。」

伸ばした手に触れる細くて小さな手の感触。目を細めながら、手を取り返し、ゆっくりとソファの方へと手を引いて、ソファの方へ。
テーブルに置かれたケーキの場所に合わせて、誘導し、ジブリールが腰を下ろしたのを見届けてから、自分もソファに腰を落ち着かせてもらった。

「って、わ、うわ。ヴァンさん勘弁して下さい…!」
とは言え、すぐに落ち着けない。具体的には、読み上げられるチョコプレートの文章だ。
わたわたと両手を動かして、付き人さんにお願し……、

「………えっ。」
意味深な発言に、数秒のフリーズ、のちの驚きの声。

人魚さんが泡になるのは、人間に恋するせいである。

いや、いやいやいや。ない、モテ期はないぞ、オレ! 自分に言い聞かせつつも、

「代わりに兎さんは、背中の毛皮を剥ぎ取られる気がするなッ?」
若干声が上ずっているのは、ちょっと隠せなかった。

ジブリール > 「少々驚いてしまいましたが心配いりません。」

【柔らかく声を緩ませる。今はきっと大丈夫なはずだから。
 誘導されるときも落ち着いていた。ソファに腰を落ち着けさせても佇まいはしっかりしている。】

【『しかしこうしなければお嬢様にお伝えできませんので』】

「申し出たのはわたくしですから。ねぇうさぎさん?」

【首をかしげながら女は静かに笑う。ヴァンに下がって良い旨を伝えると、彼は深く頭を下げ、部屋を後にした。
 遠ざかる足音を耳にしながら、膝の上で手を組む。
 彼に伝うた意味深な発言に対する反応は少々……いやかなり面白かったのか、肩を揺らして笑いをこらえる。】

「毛皮を剥ぎ取ったら温かいコートの材料にできるでしょうか。冬に備えるには良さそうですわ」

【とある物語では犬の毛を剥いでコートにしようとするイジワルな女性が出てくるのだけども、うさぎさん一匹ではたがか知れている。
 うさぎ一匹ならばお肉に用事が出来そうだ。脳内でめぐらせるブラックジョークを口にするのは止めた。
 女はテーブルの淵に指先をやり、銀色を認めると先のとがった食器――フォークを手にとって、ケーキを一欠片掬って食べ始める。】

「……美味しいですわ、このケーキ」

相模原孝也 > 「勘弁してくれ…。」

ぐったりとソファに背を預ける。ぬぐぐ、このままでは、あだ名がウサギさんになりそうだ。
しかし。なら。果たして何になるのかと、首をかしげても思いつかずに、ジブリールが笑いをこらえる様子がかわいいなあとか、そんなことばかり考えてしまう。

「夏のさなかなんだ。せめて秋物の話にしてくれ…。」

冬のうさぎさんの毛皮バーゲンなんて、恐ろしいにも程がある。
勘弁してよと、両手を付きだして左右に揺らす。まだ顔は熱い、気分転換が必要だ。
ジブリールがケーキを食べるのを横目に、こちらはカップを持ち上げて、一口。

…紅茶はよくわからないが、甘いモノと一緒に飲むのが合う、んじゃないかと思う。

「最近女子の中で噂の、スイーツキングダムってトコで買ってきたんだけど。口にあったようで良かったよ。 紅茶の方も、美味しいな。こう…なんだ…香り高い?」

貧相な感想しかでてこなくて、言った後に申し訳無さそうな顔になった。

「なんか言い方が貧相で悪いけど、うん。美味しいってのはホントだからな?」

しかし、食べる方はふつーに大丈夫らしい。 あーん、とかが必要になってたら…?なんて一瞬考え、いやいやと、首を慌ただしく横に振った。

ジブリール > 「ウフフ、やっぱりあなたは面白いお方ですわ」

【からかうと面白い反応が見れるのだから。もっともこうまで揶揄ることもそうないわけだけれども。
 下級生相手だと少し強く出られるのが幸いしているのか。青い反応は見えずとも理解できるほど、感情の色はあたふた変化しているのが容易に解る。】

「まぁ、あのお店ですか。以前友人といっしょに行ったことがあります。冬の時期だったのですが……そうですか。ほどよく口に馴染みます」

【紅茶も口をつける。手ずから選別したそれを、彼は彼なりの言葉を使って気に入ってくれていると伝うておった。女は「はい」そう口にする。
 彼が否定的な脳内会議をしていることなどは理解に及ばない。ただ向けられたその言葉は深く染み渡っているようだった。】

「……お気に召していただけたならわたくしとしても至上の喜び。いいものを選んでおいた甲斐がありました」

相模原孝也 > 「むむ、楽しまれてるのはわかるけど、楽しませてる、ではないのが不本意だ。」

むぅ、と眉根を寄せて、かなり作った感じの口調で、不本意っぽいですよ!と演技臭いアピール。

「ああ、行ったことあったんだ。 オレは初めてで、女性だらけだったから、少し肩身が狭かったな。ん…お、ほんとだ。美味しい。」

とはいえそれは長々とアピールすることでもない。自分もフォークを手にして、ケーキを一口。
甘みを味わい、そこで紅茶を口に含んで……。

「おお…。」

スゴイな、と小さくこぼす。美味い。

しかし、と。ちょっと考える。
何を、話したものか…。
ジブリールの目の事を考えると、TVは見ないだろう。ゲームも難しいだろうし、じゃあスポーツ?それもムリだろう。この間の海のことを考えると、アレで結構精一杯じゃないだろうか。
こうしてケーキを楽しんでる様子を見ると、甘いモノは好きみたいだけど。
…話したり、触れ合ったりが好き、と言っていたのが、すこしだけ実感できた。

「んー…そういえば、色々と本が置いてあるけど、ジブリールの趣味についての本、とかだったりするのか?」

本を読む事自体が趣味とは思えないが、でも図鑑の類なら、色はわかるのかもしれないし、ヴァンさんが読むのもありだろうと。 応接室に置かれた書籍……書類?資料?の方に視線を巡らせる。

ジブリール > 「道化を好む人はそういませんからね」

【彼自身を道化とまでダイレクトに言うことはしない。例えるならやはりうさぎみたいな小動物。人間の指先に突かれて弄ばれる存在。
 でも彼は不本意らしい。当然といえば当然。】

「近頃はそういった施設にも男性が入ることは多いと聞き及んでおりますけれど。この島は女性が比較的多いようですから致し方ないのやもしれませんね。
 ご友人の男子生徒さんも、そういったものに興味はないので?」

【もぐ もぐ。桃の甘い味が口内に広がる。頬に手を添える。味わうようにゆっくりゆっくり。
 女は趣味らしい趣味は無い。テレビはニュースくらい。バラエティーを見ている従者達の話を横耳に聞くくらいで詳しいことはよく分からない。ゲームは一部を除いて門前払いな上、スポーツはほぼ無理。水泳のような個人競技が関の山である。】

「……あぁいえ。この部屋にあるのは経済学、政治学などの参考文献ばかりで、趣味というようなものでは」

【回答を躊躇うよう、少し困った顔をしながら紅茶を含む。喉に通すと、喋りたてのときよりも潤う。】

「趣味といえば道楽での蒐集……それとトランプなどのカジノゲームくらいです。この島にあるカジノにはよく足を運んでいるんです」

相模原孝也 > 「どっちかというと、笑われてるか、笑わせてるかの違いかなー。 どうせなら、ジブリールを楽しませて、笑わせたい。  ……脇をくすぐるとかどうだろう。」

うさぎさんのぎゃくしゅう。手をわきわきとさせながら、ちらり。
ノースリーブでガードの甘い脇を見てみる。…改めて見ても、細い、華奢な体つきだ。

「ん? 女性が多いんだ。それは知らなかったな。  んー…オレの友達はどっちかというと、粉モンの店の方かな。 お好み焼きとか、もんじゃとか、焼きそば&たこ焼きとか。 安くてハラにたまるヤツ。ソース味は男の子味ー。」

最後の一言は、ちょっと音程高めで歌うような調子の発音。
もう一口、紅茶を飲んでから、ケーキの上の桃にフォークをさして、大きく口を開けて…もぐり。
果肉が少々固めのおかげで、フォークを指しても崩れなくて助かった。

「…? ふむ。やっぱそういうのの勉強が必要なのか。お嬢様も大変だなー。 そのストレス解消に、コレクションとカジノか。 なんというか、この島にカジノがあったのか、とか。トランプの模様は見えるのかな、とか。色々気になることが増えるね。」

ジブリールの返事が一瞬遅れたのが、少し気になった。今まではすっきりとお話してたので、違和感があったのだ。
ただ……うん、蒐集の内容については、聞かないことにする。具体的に、何の、と言ってないし、先の違和感もあるし。 詳しく言ってたカジノの方に、食いついてみた。

「ちなみに、カジノで一番勝った時はどれくらいチップが積み上がった?」

ジブリール > 「あらあら、レディをくすぐって陥れようとするなんて、イケナイお方ですわ」

【するな、とまでは否定しない。それは楽しませて笑うというより、無理やり笑わせようとするものだ。
 ぎゃくしゅうするならどうぞ、とばかりに無防備な状態。構えもせずくすくす笑っていた。】

「粉もん……おこのみ?」

【頭に疑問符がふつふつ浮かび上がる。用は小麦を使った料理ということは理解できる。
 焼きそばはかろうじて解った。蕎麦という料理があることは知っている。……それを焼くのですか? 女は余計こんがらがった。
 ここの暮らしは長くとも、そういった日本料理を口にする機会はなかった。女は首を傾げるばかり。】

「将来この家の主となる身ですから、このくらいは当然ですわ。カジノは特に社交場としても利用できるので、いい"社会勉強"になります。
 普段、学生はカジノを利用する機会もございませんから無理もありませんわ。学生が組織運営しているだけあって、だいたいのカジノは健全ですけど。
 それとトランプでしたらわかりますわ。見えずとも見えております。形と色で何となく把握できますのよ」

【女は得意げにそんなことを語る。趣味であるカジノを語るそれははきはきとしていた。】

「――月並みなお言葉ですが"山ほど"勝たせてもらいましたわ」

相模原孝也 > 「むむむ。そのお言葉と無防備さ、挑発と受け取ったー。ひゃっはー。」

おどけた調子で告げながら、ソファから腰を上げる。
するりと動いてジブリールの隣まできたら、ソファじゃなく床に膝をついて。

「ふふふ…ここはどうかなお嬢様~?」

前宣言の脇…ではなく。髪に隠れたうなじのあたりに、つつつーっとくすぐるように人差し指を這わせてみせる。ふぇいんとだ!

「そう、お好み焼き。」
うん、と頷いたら、くすぐってた指を引き、

「まあ日本の下町的な料理だし、お嬢様には縁遠いかな?お好み焼きあたりなら、ホットプレートと素材があれば焼けるけど。 今度食べてみる?」
どうかな?と、くすぐってた指を今度は立てて。ふりふり、左右に振ってみせる。

「跡取り娘か。その社会勉強にカジノ……健全とは言え、驚きだね。んー…トランプが大丈夫なら、囲碁とか将棋とか、チェスなんかの、盤面がわかりやすいゲームも出来そうかな。うん、機会があったら、二人でトランプでもしようか?もっとも、オレは賭け事弱いかので、チップはおやつのポッキーの本数とかにして欲しいけど。」

いやそれでも、と一拍置いて、

「”山ほど”勝たれたら、ポッキーどころか、ウェハースもついたチョコパフェをおごることになるかもしれないな。」

ジブリール > 「……」

【ひゃっはーと飛び起き、こちらに歩み寄ってもなお彼女は堂々としていた。脇を擽られるのだろうか。はたまた】

【魔術:幸運発動 1D9を振り4以上消費できれば脇を意識した回避行動を取れる。ただしフェイントのペナルティ付きで実質5以上消費で回避できる。】
[1D9→9=9]
ジブリール > 「……フフッ」

【ひょい。彼が静かに歩み寄ろうと、彼が指を這わそうとする直前まで声を潜めていたとしても、彼が来ることを読んでいたかのように指先を避けた。加えてその手を取るべく手を伸ばした。】


「……うーん、興味はあります。食べてみたいですわ」

【それまでの行動が何も無かったかのように応対する。うん、美味しそうな響きだ。女は首をかしげる。用はショミンの料理ということになる。そういったものに憧れは抱いている。】

「チェスはわかりますわ。盤上ゲームは私一人では動かせないので、動かす人のいる代理付きになりますが。……でもトランプも良いですね。
 ……あら、でしたらわたくしは何を賭けましょう。お菓子でもイイのですが」

【甘いものは大好きだ。相手だってお菓子が嫌いなわけでないなら、対等な賭け事の物品を用意するのが筋だけど。】

「……約束事が沢山。いずれまた遊べるのを楽しみにしていますわ」

相模原孝也 > 「なん…だと…?」

何かをやろうとしていると言うのは伝わっていただろうが、指の動きまではわかるまい、そう踏んでいた。
だが結果は、ジブリールの白い肌に指先を触れさせることすら出来ずに…逆に、ジブリールの細い指先に、己の手が絡み取られているではないか…!

「負けた……完膚なきまでに…!」

と、それっぽい雰囲気で言いながらも。ふにふにと、手指でジブリールの指を撫でているあたり、転んでもタダでは起きないようだ。

「ん、じゃあ、そうだな。週末か来週辺りで、暇な時があったら連絡してくれ。ホットプレートとお好み焼きのタネを用意しておくから。」

予定が合わなかったら相談な、と。右目でウインクしてみたが、見えていないかもという思考は見なかったことにした。

「どこに動かすかだけ言ってくれれば、対戦相手のオレが動かすけどね。 まあ、最初はトランプで。…ふむ、なんなら野球拳方式はどうかねレディ。」

明らかに冗談めかして、紳士らしからぬ提案をしてみせる。通るわけはあるまい、というお遊びだ。…これくらいに踏み込んだ冗談がいけるか大丈夫かの、距離感はかりでもあったけど。

「そうだな。 色々約束しすぎちゃった気はするけど。せっかくの夏休みだし、色々遊んでくれると嬉しいな。 っと、そのためにも、連絡先の交換しとく? えーと、ヴァンさんに伝えておいたらいいかな?」

おそらく、ケータイの液晶とか危なさそうだし。付き人さんに教えるほうが良かろうかと提案するのだ。

ジブリール > 「転んでもタダではおかないと言いましたか。手付きが卑しいですわ」

【言う口は辛口。しかし悪い感情は抱かない。それすらも道楽とばかりに楽しむ様子だった。】

「……そうですわね。時間ができましたらご連絡いたしますわ。ヴァンに言っていただければあとは予定を組んでくれるはずですから」

【秘書的な役割も兼ねているらしい。帰りがけにでも彼に渡してくれればそれで良い。そんな風に提案する。
 続けられたその言葉にまた首をかしげた。】

「野球……?」

【そも、そんな知識すらないのがアンサーでした。お遊びかどうかも解らない始末。でも彼のいう遊びならそれは面白いのだろうか。
 女は相手の話には何にでも興味を持って話すし、そうするようにしている。知らない言葉があればそれを知りたがる。あとでヴァンに聞いてみるのも良いだろうか。
 互いの価値観、見ている世界の違いをまざまざと理解させられる。それは苦ではなく、やはり女にとっては"道楽に過ぎない。"】

相模原孝也 > 「くっ。言い返せないっ。 ウサギさんのかわいいイタズラってことにしておいてください。お願いします。」

オシオキだけは勘弁を、と大仰に。掴まってるのとは逆の手で十字を切ってみせる。 信仰してないけど、なんとなくカッコイイ動作なんで覚えてた。

「了解。 ならヴァンさんに話を通しておくよ。ついでに、ホットプレートがここにあるかの確認も。」

了解了解、と告げて頷いてから、掴まってた手をひょいっと引いて、逃れる。
時計を確認すれば、そろそろ、夜半の頃合いだ。

「あ、もしかして知らなかったのか、野球拳。」

やばい、お嬢様わかってないなら、ネタにならない。しかし説明しないとも行かないと、深呼吸してから口を開いて。

「野球拳、とは。じゃんけんで負けたほうがその、1枚ずつ脱いでいくというゲームでして……うん、その、冗談だったんですよ?」

だから許して欲しい。全身からアピールしたいそんな言葉。……無理そうな気がして、よし、逃げを打とうと決意した。残りのケーキを口に放り込み、紅茶でくいっと飲み下して。

「さて、それじゃあそろそろ、いい時間だし帰ることにするよ。 また今度、招いてくれるなら、兎は喜んで参りますよ。 海でも、お好み焼きの会でも、トランプでも、ね。」

ジブリール > 「ウサギさんの手付きなら可愛らしいものですわ」

【オシオキなんて、そんな物騒なことはしませんとばかりに。女は手の甲をかるぅく撫でてから彼の手を離した。】

「確か幕末の江戸時代に流行した遊郭の遊びだったでしょうか」

【知識を問うているわけではないのだけれど、うろ覚えの知識ではそんな起源しか記憶に無かった。歴史の先生がそんなことをネタにしていたようないなかったような。】

「脱ぐ、脱衣……あぁ、なるほどそういうことですか。判りました。そうですよね、殿方ですものね」

【何ぞ思うたのはそんな理解を表したこと。怒ったり機嫌を悪くしたというよりも『仕方ないなぁ』といいう感情。呆れ。許す許さないは明示してあげないことにした。】

「……おや、もうこんな時間でしたか。ではまた機会がありましたらお話しましょう。
 ヴァンに外までお送りして貰いますから、お帰りはお気をつけて。あとケーキ、ご馳走様でした」

【先ほどのやり取りはおいといて、屈託の無い笑みで彼を見送るべく、笑顔でもって彼に向けていた。】

相模原孝也 > 「ウサギさんの手には、肉球がついてるんだろうか。」

ジブリールの言葉にふっと浮かんで、そんな疑問が口をついて出た。けっしてオシオキが抜きで安心したせいではない、ないのだ。
が、まあしかし。

「くっ、そのしょうがないなあって反応が一番堪える…!でも実は、水着姿を直視したかったのも事実なんだ…!」

その疑問よりも、見逃されたというより呆れに近い反応に、胸を抑えてよろめいた。
やはりどこか、道化じみた身動きを好んでいるらしい。

「いや、こっちこそ、紅茶をごちそうさま。実はコーヒー党だったけど、紅茶もいいなと思ったよ。うん……それじゃ、またな。」

色々ありはしたけれど、最後にはにっと楽しげに笑って、手を振り立ち上がる。
そのまま応接室を出たら、ドアの向こうからもう一度、手を振ってから扉を閉めて。
帰り際にあったヴァンさんに、連絡を取ることがあるだろうからと告げて、携帯の番号を交換したら、自転車を回収して、本日はおじゃまさせていただきました、と。
丁寧な挨拶を残してから門の外へ出、自転車に乗って、自分の住まう学生寮へと、暗い夜道を走って行くのでした。

ご案内:「洋館」から相模原孝也さんが去りました。
ジブリール > 「肉球はございません。ふさふさした毛に覆われているとか」

【疑問については女が知る知識の元、何の気なしに口をついた疑問であろうと、それにはきちんと解答してみせた。】

「見られたところで、わたくしからはどうすることもできませんわ」

【自分が何もしなくても誰かが何かをするかもしれないが。女は結局口を尖らせて注意して見せることしか出来ないのだから。
 先の通り、『男性だから仕方が無い』とおおらかな反応を見せる女も女とて、コトの重大さを理解し切れていないのやもしれなかった。】

「えぇ、今度もまた美味しい紅茶をお出しできれば」

【でも粉ものを食べるなら、紅茶は中々愛想に無い。クッキーの付け合せに頂くものなら合うだろうか。焼く様子だし、小麦を使うし。
 やはり従者達に意見を煽ることにするためこの考えは飲み込むことにした。彼が応接室から去ってから、残ったケーキと紅茶をゆっくりと食べ進めていた。】

【なおヴァンは言伝どおり携帯番号のやりとりを済ませると門の前で彼が姿を暗闇に消すまで、ずっと門の前で頭を下げていた。
 夜の更ける空を眺めて、彼は深く息をついた。】

ご案内:「洋館」からジブリールさんが去りました。