2015/07/30 のログ
ご案内:「収監施設・面会室」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「収監施設・面会室」に『囚人』さんが現れました。
レイチェル > 「さて、と……」
五代からの連絡を受け、警備の者を通して、元『美術屋』と話をする機会を得るに至ったレイチェルは、
面会室の椅子に座って、目的の人物が現れるのを待っていた。

公安委員会の、西園寺偲。
そしてフェニーチェの二人、すなわち『癲狂聖者』、『七色』。

彼らともっと、話し合ってみたかった。
出来れば、何か別の手段で解決したかった。
この手で救いたかった。

この学園に来てから関わった事件の数々。
そこで、剣を、銃を、交えた人々。
振り返れば、いつだって後悔ばかりであった。
振り向けば、いつだって血塗れの道であった。

『美術屋』とじっくり話し合う機会を得ることが出来たのは、
レイチェルにとっては喜ばしいことだった。
出来るのならば、更生の手助けがしたい。
心の底からそう思っているが故に。


手元の書類に目を通しながら、元『美術屋』を待つ――

『囚人』 > 「ーーお、ヒロインじゃないか」

手錠に足枷。白い囚人服。
色白な肌は、生気が感じられない
何処かふわふわしたその声は現実というよりも
舞台の上のような

「舞台の上のことはおしえられることは少ないよ。
生憎、舞台裏専門だから」

腰を椅子に下ろして告げた

レイチェル > 「風紀委員刑事課所属、レイチェル・ラムレイだ。『ヒロイン』じゃねぇよ」
対してレイチェルは平素と変わらぬ風貌である。
元『美術屋』――『囚人』の声とは対照的に
はっきりとしたものではあるが、鋭さを感じさせない声だ。
その表情はといえば、『ヒロイン』と呼ばれたことに
対して抗議の色を見せるでなく、穏やかな顔で『囚人』を
見ていた。

「そうか。いや何、確かに個人的に聞きたいことが無い訳じゃない。
 けどまぁ、結局は過去のことだ。フェニーチェは既に無い。 
 別に、お前からあれこれ聞き出すつもりでここまでやって来た訳じゃねぇさ」
『囚人』が椅子に座れば、レイチェルはリラックスした感じで椅子に深くもたれかかり、
両腕を頭の後ろにやると、天井を見上げた。


「過去のことを話してオレとお前に何か利があるっつーなら小一時間続けたっていいが、
 別に今更終わったことを話しても、な。刑事がこんなこと言うのも変かもしれねーが、
 よ。でも、もう判決も下って全て終わったことだ。舞台は閉じたんだよ。だったら、話す
 べきはこれまでのどうこうじゃなくて、これからの事、だろ?」
そう言って、レイチェルは『囚人』に視線を戻す。
そして問いかけると同時に、小首を傾げた。

『囚人』 > 「あぁ、まあここではそうか」

誰にも見られることは無い舞台裏
七色がかけた魔法はここでは効力を発揮しない
だがスポットライトを浴びれば
そこには。意志と意思はかんけいない
そう言う魔法だ

「未来……」

まだ実感がわかない。
過去にまだしばられていたい
その気持ちの方が大きい。
前に向いてはいるものの
そんなに強くは無い。彼らと違って

「その手は慣れてなく。話題をくれると助かるよ」

困った様にもうしわけなさそうに告げた

レイチェル > 「ここでは、じゃなくて……ま、いっか。その辺は追々、な」
やれやれ、と頭を抱えるレイチェルであったが、諦めたように再び
『囚人』に目をやる。自分を『ヒロイン』でなく、レイチェルだと認識
して貰うのにもやはり時間が必要なのだろうか、と。そう感じつつ。

「過去に縛られねぇ、ってのは難しいことだぜ。オレだって未だに過去に縛られてる。
 だからお前に、過去に縛られるな、なんて大層なこと言える身じゃねぇし、言わねぇよ。
 けど、時々過去を振り返りつつも、ちゃんと見据えるべきはきっと前、未来だってことは――
 今は実感できねぇかもしれねぇけど、頭の片隅にでも置いといてくれ。お前の前にある未来は
 今は見えないが、いつだって自分の手で切り開くことが出来る! ……ってのはまぁ、
 オレの師匠の受け売りなんだけど」
そう言って少し笑った後、普段の癖のままに胸の下で腕を組むと、『囚人』の言葉を受けて語を継ぐ。

「ま、今ここで未来だ前だ、なーんて口で言ったって実感湧かねぇだろ。公安からはギルバートも
 来たと思うが、風紀からはオレが、お前がこの島のルールに則って生活を送れるように、
 観察、サポートすることになった。という訳でよろしくな。同じ一年ってことで、さ。
 お前が更生したいって思ってるなら、オレとしては観察員として、よりは一人の友人のように
 付き合えたらいいな、と思ってるぜ」
それだけ口にして、『囚人』の反応を待つ。

『囚人』 > 「いや、分かる。けれどアンドでいて欲しいんだよ」

なかったことにしたくないんだーー
そう付け足して俯く。
芸術家として一番哀しいのは作品をわすれられることだ。
それだけは、嫌だった。

「難しいなぁ1人では……誰かとずっと一緒に生きてきたから」

依存は彼の生き方だった
それらは彼を構成してきた
だから誰かと一緒にいる過去を捨てられない
まだない未来よりもそちらの方が安心できる
心の支えがない彼にとっては

「更生なんて大仰な事は言わないで僕はまだ何も知らないんだから」

そう、赤子のように
生まれたての自分は友人を持つ事はおろか
自分の足で私を踏みしめ世界を歩くことすらできない
なのに彼らは世界を教えてくれてしかも隣で友人としていてくれると言う
その感覚が自分には現実として理解することができなかった
だからふわふわとしたまるでこの世にいないかのような表情で声音でそう告げることしかできない

レイチェル > 「……そうか、悪かったな。ま、気持ちは分かるが、これから呼ぶときはレイチェルで頼むぜ」
暫しの沈黙の後、レイチェルは何か納得したように頷いて、『囚人』に向けて口を開く。
これまで自分が支えにしてきたもの、それが舞台、それが作品。そうなのだろう。
しかしながら、今後はそうもいかない。学園で、一般の学生として過ごしていくには。
何もかも忘れろとは言わないが、少しずつでも過去への依存のない、そんな
彼になって貰いたいものだと、レイチェルは思うのだった。

「一人で生きられる――たった一人で自己完結してる奴なんて、そうそうこの世にいねーよ。
 特に、何も知らないお前を放り出すことは、風紀も公安も……学園も、しねーよ。だから、
 オレとギルバート、五代先輩がお前を支える。風紀が公安が、学園が、お前を支える。
 お前の両足を、支えるんだ。だから、安心して外に出な――今日は、
 何よりもそのことを伝えに来たんだ」

真剣な眼差しで、レイチェルは『囚人』を見やった。


「更生って言葉は嫌か? じゃあこう言い換えてやる。
 『常世学園へようこそ』だ――六道 凛。
 困ったことがあったら五代先輩やギルバート、それからオレをいつでも頼りな。
特にオレとギルバートはな。お前と同じ学年の、同級生ってやつなんだからな」

そう口にするレイチェルの背後で、面会終了を告げるベルが鳴り響く。

「やれやれ、もう時間かよ」
そう言って、椅子から立ち上がるレイチェル。

『囚人』 > 「わかった」

善処しようそう思う。
しかし心の中でそう思うそう呼んでしまうのは許して欲しい
団長をなくしてから憧れ続けた7色の一作なのだから

「サービスはすぎるなここはいたせりつくせりだ
さすがは教育機関といったところかな」

ほんの少しだけ明るい表情でそう告げる
どこか昔に聞いた言葉を思い出しながら

ーーあーもうあんたはなってないよね

ーー違う違うそこはそういう感じじゃないこーゆー脚本なんだ

そう演劇を始めたばかりのあの頃の
これを口にすれば怒られそうなので決して言わないが

「ーー……」

何故か涙が溢れてきた
一筋の雫が静かに落ちる
これでは彼に言ったセリフが霞んでしまう

レイチェル > 一筋の涙を流す六道に対し、無言のままに背を向けるレイチェル。
変わらなければならないのは、きっと彼だけではない。
彼とか変わっていく、レイチェル自身も、変わっていかなければならない。
彼が安心して学園を歩めるように。そのしっかりとした支えとなれるように。

「安心しな、六道凛」
力強い口調で、その名を呼ぶ。

「オレはお前の大好きな団長みたいに、お前を引っ張って、導いていくことは無理かもしれねぇ。
 けど――ちゃんと、一緒に、隣で、歩いてやるから」
クロークを翻しながら、レイチェルは去っていく。
また会おうな、と最後に、それだけは優しく言い残して。

『囚人』 > ーー安心しちゃっていいのかな

頼りになるしかし小さな背中を見送りながら
見えなくなった後声も出さず涙も流さず
ひたすらに過去の思いが落ち着くまで泣き続けるのだった

ご案内:「収監施設・面会室」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「収監施設・面会室」から『囚人』さんが去りました。