2016/05/15 のログ
ご案内:「伊都波家」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
「……遅いな」

今日は久々に姉と帰ろうと思っていたのに。
待っても待っても、お姉ちゃんはやって来なかった。
少年にも”会えず”。ただただ、一人。
最近こういうことが多い。なんだか、気楽なのが複雑だ。

―― 誰かといる

……置いてかないで。

―― 一人でいる

「……頭、痛い」

その声は悠薇には聞こえない。
ちなみに、母にも父にも聞いてもまだ、帰ってきてないらしい。

なんだか、珍しく両親の反応がぎくしゃくしてたのは気のせいか。

「……おふろ、はいろ」

部屋を出て、母自慢のお風呂へと――足を伸ばした

ご案内:「伊都波家」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > 「……」

玄関で立ち止まる
頬が赤くならないように、パチンと両手で軽く張って、深呼吸

大丈夫、いつも通りの笑顔は作れる

「ただいまー!ちょっと遅くなちゃった!」

出迎えてくれる母親、奥からちらりとこちらを見る父親の顔も見れる
脱いだ靴を揃えて、玄関にあがり…両親との会話もそこそこに、お風呂へと向かう

早く、身体を洗いたかった

伊都波 悠薇 > 「……なんだか、長風呂しちゃった」

珍しく、身体を洗うのに時間がかかった。
いつもなら、汗とか流すのは手早く済ませるのだけど。
今日はなんだか、ゆっくりだった。気がする。

「――最近、視線が増えた」

良い意味じゃない。多分、悪い意味。
昔から、あの姉の妹ということで視線にはさらされておいたが。
高校に入ってから、なんだか嫌な視線が続く。
なんだろうとおもうのだが、心当たりはない。
しかし、決定的な違いは――

――お姉ちゃんのことで絡んでくる男子、少なくなったな

昔なら紹介してとか言われたり、した。比べて会話してくるというのもたまには。
でも最近はめったに無い。逆に、女の子のほうからが多くなった。
男の子といるのが、あったからだろうかなんて思う。

『顔がにやけながら、眉間にしわ寄ってるぞ―、はるっちー』

そんなこと考えていたら、なんだか妖怪百面相みたいなすごい顔になってたので。

「……上がろ」

湯冷めする前に身体を流して、ざばっと風呂に浸かり、扉に手をかけて――

……ガララ。

開く音がした

伊都波 凛霞 > 「あれ、はるか入ってるんだ」

玄関から直行したので姿は見ていなかったけど
規則正しいあの子が、こんな時間までお風呂って珍しいな

するりと上着を脱いで、リボンに手をかける

と、扉の開く音
リボンを解こうとした手を止めて

「長風呂?珍しいね」

くすりと笑みを向ける

伊都波 悠薇 >  
「……あれ、お姉ちゃん?」

開ければ、見えたのは待ち人。
湯気が脱衣所に入ってくる。髪も、洗ったばっかりだからか今ばかりは目を前髪が隠すこともなく。
くっきりと左の泣き黒子が目に入る。

「……? なにか、委員会でペンキでも使ったの?」

シャンプーや石鹸に混じったなにかの異臭。
ペンキのような、溝のような。そんな匂いに顔を顰める。
いつまでも、入り口を封鎖するわけには行かないのでお風呂場の扉を閉めて
自分も脱衣所で着替えるために、肢体についた水滴を拭っていく

伊都波 凛霞 > 「えっ?う、うんそんなところ、汗もかいちゃったし、早くお風呂入りたくってさー、直行だよ直行!」

あはは、と笑いながら、身体を拭く妹に背を向けて、リボンを解き、するすると衣服を脱いでゆく

大丈夫、痕跡は背中側にはないはずだから

手早く、手拭いで胸元から隠しつつ、足早にお風呂場へと入ってゆく
その扉が閉められるまで、結局妹と視線を合わせることはなかった

ご案内:「伊都波家」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「伊都波家」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
――不思議に、思う。
なんだか、珍しく。避けられてるような――

「お姉ちゃん?」

もう一度、呼んで見る。どこか、確認するように。
本当に、お姉ちゃんなんだろうか。
いや、姉なのには間違いないが――その、疑問は……

「最近、帰り、遅いね」

髪から水気を取る。ぽんぽんっとあてるだけ。
赤ちゃんにも使えるタオル。母がこだわる、最新のタオルだ。
吸水率に優れ、こする必要のないものとして昔から売れているヒット商品。
それで、しっかりと

伊都波 凛霞 > 扉越しに聞こえる声に、返事が帰ってくる

「うん、どうしたの?はるか」

入念に身体を流している様子が、きっと磨り硝子越しにもわかる
いつもなら、一番時間をかけるのは長い長い自慢の髪の毛なのだけど

「そうだねー、委員会で遅くなることもあるし。
 少し友達とも遊びすぎかなぁ、父様に怒られちゃいそう」

あはは、と笑い声

伊都波 悠薇 >  
「……ううん。呼んでみただけ。”返事してくれてよかった”」

綺麗に水気を切ったら、するりとパジャマを着る。
くまさん、ではなく馬が所々にあしらってあるファンシー? パジャマだ。

「お父さんもお母さんも心配してるよ。にしても珍しいね、お姉ちゃんが稽古の時間遅くするなんて」

ドライヤーを、なれた手つきで取り。櫛で梳きながら乾かしていく。

――結構ひどい汚れなんだ

伊都波 凛霞 > 「──うん、遅れる連絡できればいいんだけど、今日はちょっと手が離せなくって」

幾分か声のトーンが落ちる
心配させてしまっている、という落ち込みに聞こえなくもないだろう

「休みの日とか使って目一杯遅れは取り戻さないとねー」

シャワーの音が続く
まだ身体を洗い流しているらしい

伊都波 悠薇 >  
姉がこういうのだ。なら、いいだろう。本人が一番分かっているのだろうし。
呼んでも。答えてくれる。それがなによりの妹にとっての幸せだった。

「そういえば、おねーちゃん。最近、妙に視線が集まったりしてない?」

ふと、気になったので聞いてみる。自分だけなのだろうかと思って

伊都波 凛霞 > 「うん?どうして??」

きゅ、とシャワーを止める音
続いて湯船に入ったのか、少し声が遠のく

「私は特に感じないけど…はるか、何かあった?」

声に不安が混じる
妹に危害が及ばないように、絶対にそれだけはないようにと、耐え続けているのに…
そんなことになったら、目も当てられない

伊都波 悠薇 >  
「なんか。いっぱい見られてる気はしてるの。気のせいかもしれないけど」

――少人数に見られてる

……おいてかないで。

――大多数に見られる

「なんか、ちょっとあったのかなって。変な噂とかあったり、するのかなって。お姉ちゃん、そういうの詳しいでしょ?」

流行には疎いから、だから姉に聞くのが一番。
学校のことも一日の長があるし――

伊都波 凛霞 > 「…ちょっと、わかんないかな……」

ちゃぷ、ぱしゃ
湯の跳ねる音に混じって、そう声が返る

「もしかして、はるかが可愛いってことにみんなが気づいちゃったんじゃない?」

そして少しからかうような、明るい声

伊都波 悠薇 >  
「そ、そんなことないよ。可愛くないです。お姉ちゃん、からかってるでしょ」

むぅっと、口を尖らせる。多分そんな良い意味じゃないと思うから聞いてるのにと。
髪の手入れが終わる。そして、意を決して口にした。
今までのは、前振りのようなものだ。

「あのね、お姉ちゃん」

――測定、なにも伸びてなかった

消え入るような、まるで知られたくなかった秘密を知られてしまったような。
そんな。子供のような声が――静かな浴室に響く

伊都波 凛霞 > 「ごめんごめん。でもはるか、髪の毛ちゃんとしてたら男の子放っておかないと思うんだけどな」

それについては本心である
しかしそれを置いておいても…視線……
あのコトは、ほとんど広まってはいないはずなのに、と考える

と、消え入りそうな
まるで小動物が鳴くような声に、静まり返る

「……そっか」

妹の、悲しい悲しい小さな報告
どうしてだろう。向いているとか、いないとか…
才能がなくたって、人は足掻き足掻けば、伸びるもの
それとも妹は、そこがもう天井だとでも言うのだろうか
だとしたらそれはあまりにも酷い話だと思った

「お姉ちゃんは、はるかに頑張れ頑張れって、無責任に言うことしかできなかったけど…。
 それも、はるかが誰よりも私よりも頑張り屋さんだって知ってたから」

だから、実って欲しいという願いも込めて、励ましたのだ

「うん……結果が出なかったのは残念だけど。これからもそうと決まったわけじゃないよ。
 だってはるか、これまでと違って友達ができたり、してるでしょ?
 まだまだわかんないよ、今回はたまたま、かもしれないじゃん。
 …とりあえずお疲れ様、少し休養するのも気分転換にはいいかもしれないよ」

伊都波 悠薇 >  
姉の評価はいつも高い。
でも、一人の男の子が好きと言ってくれたからあんま卑下もよくない。
ので、ぐっとなにか口にしそうなのをこらえた

返ってきたのは、ただの頷き。
同情、かもしれない。もしかしたら失望かも。
わからない。姉の気持ちは姉のものだ。
自分がどうこうするものではない。波紋を広げることができようが
湧き出る源泉から、変えるのはなかなか難しいのだ。
それを向けられるのは、恐いけれど

「――うん。でも……才能がないのは、分かってたことだからさ」

でもなんでか、隠さず言わないといけないような気がしたのだ。
今日は、なんとなく。

「うん」

姉の言葉に相槌を打つ。

「でもね、すごく。すごーく、がっかりしちゃった。何もかんがえられなくて
 なにも、考えたくなくて、落第街、だっけ。其の近くまで走っちゃったりも、しちゃった」

なにも隠さず、報告する、全部全部。

「だけど――お姉ちゃん。お疲れ様って、言われて――……」

……私、いいのかな。妹で、いられるかな

伊都波 凛霞 > 「はるか。才能があるかないかなんて、開花してみるまでわかんないよ。
 だからあるかないかもわからないまま、みんな頑張るしかないんだから」

そう、そして妹は頑張っている
普通の人間ならば、開花せずとも少しずつ伸びていくもの
才能がない、にしても…少しくらいは……
だから、っそこで少し違和感を感じていた
妹ほど頑張っていて、伸びないはずがないのだ

「…危ないなぁ、あんなところ、用がなかったら近づいちゃダメだよ?」

大抵巡回している風紀委員達が止めてくれるだろうけれど、心配そうな声をあげる

「ね、はるか。
 私が去年まで専攻してた、異能力の開発コースみたいなの、ちょっと受けてみたらいいかもしれない。
 もしかしたら何かが隠れてて、それが邪魔してるのかもしれないよ?」

ざぷっ、と音がして、がらら、と
湯船の蓋を落とす音が続く

伊都波 悠薇 >  
「……そう、かな」

報われない人なんていっぱいいる。努力してもなにしても。
ちょっとでも伸びれば報われた、悠薇。
でも報われなかった。それは結構単純で、ありふれた話なんじゃないかと思う。
頑張れば、開花する。ある、ない――そういうのはちょっと信じられなくなっていた。
だって、目の前の”大輪”はこれほどまでに輝かしいのに。
才能や、努力なんかじゃ超えられないものだってきっとある。
がんばったって、伸びないことも、ある。

「……用があったら、いってもいいの?  なんでもない。嫌な子だ、私」

はぁっとため息一つ。サラシや、着ていた衣服を畳んで手にもって。

「……え、ないよ。ないない。だって、試験の時に、異能なしって診断されたし」

伊都波 凛霞 > そう、報われない人間はいる
でも努力は何かしらの形で、どこかその人に影響を与えるもの
完全に才気を有しない人間でも毎日同じことをすれば、慣れという上達を得ることができる
頑張り方が完全に間違っていれば伸びないまでも、減退する
それすらもない、というのが不自然なのだ
わからないけれど、多少の上達はあっても妹がそれを伸びたと認められないだけかもしれない
実際にその数値がどうだったのか、それはわからない

がらら、タオルで前を隠しつつ、脱衣所へとほこほこしながら現れる

「どうしても行かなきゃいけない用事があったらお姉ちゃんに言いなさい。
 ちゃんとついていってあげるから」

そう言って、笑みを向けて
いつまでも脱衣所にいると湯冷めしちゃうよ?と一言付け加える

そして…

「異能ってまだまだ全てが解明されてるわけでもないみたい。
 研究区ってあるでしょ?あそこで毎日そういう研究がされてて、
 今までの試験じゃ見つからなかった異能とか、そういうのもあるんだって」

伊都波 悠薇 >  
現れた姉の身体は、ほんのり赤く染まっていた。
淡いピンク色――それは。

「――行かないよ。だって、心配かけちゃうし。何かあっても、なにも出来ないだろうから。 お姉ちゃん、身体、こすり過ぎ」

自嘲とも取れるつぶやき。今日はいつにもまして妹は”弱かった”
いつにも、いつにも、増して。

「――じゃあ、もしかしたら異能があるかもしれない?」

でもそう簡単なものだろうか。
それに怖さもある。研究と聞くと、それだけで良いイメージは浮かばないから、頷くことも、できない

伊都波 凛霞 > 「あはは、思ったより汚れちゃってて…」

いつもとかわらない、笑顔

「…どうしたの、はるか。
 いつだってめげずに、お姉ちゃんについてきてたのに。
 ショックだったのはわかるけど。もしかしたらまだ充電期間かもしれないじゃん」

バスタオルに長い髪の水分を吸わせつつ…

「私はそう思ってるよ。
 だって父様も母様も、異能があるし、私だって発現した。
 だからはるかにも、とっておきの異能が眠ってる可能性はあると思うな」

伊都波 悠薇 >  
「だって――……」

――お姉ちゃんがおいていきそ……

吐き気がした。
頭が痛い。
置いていく、そう口にした途端に。
気持ち悪くて、頭が痛くて――

「……あれ?」

鼻から落ちる、朱。

「――あたま、いた……」

膝からかくりと、力が抜けて。

「――ぁ……」

意識が、消えていって

伊都波 凛霞 > 「…はるか?」

下着をつけて、パジャマに袖を通す
そこで、妹の異変に気づいた

ぱたっと脱衣所の床に落ちた、小さな赤い雫

「はるかっ!」

崩折れる妹の身体を抱きとめ、叫ぶ

「父様!母様っ!!はるかが、はるかがっ!」

…虫の声響く、静かな伊都並家に、その日ちょっとした騒動があったという──

ご案内:「伊都波家」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「伊都波家」から伊都波 凛霞さんが去りました。